(社説)小学館 疑問に答える調査を

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 出版社内で、性被害をあまりに軽視した判断が重ねられていたことが明るみに出た。

 教員による性加害で精神的苦痛を受けたとして、生徒だった女性が損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は先月、元教員に1100万円の支払いを命じた。元教員側は「交際関係に基づき同意のもと行われた」と主張したが、30歳ほども年上の教員が、判断能力の未熟さなどに乗じて優位に立ち、心身を害しうる行為を含む性的要求に応じさせており、性的自己決定権を侵害しており違法だとした。

 この元教員は漫画家でもあり、小学館は判決翌週、以前ペンネームで同社の漫画配信アプリ「マンガワン」で連載をしていたが、逮捕され児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で罰金刑を受けたため、2020年に連載を中止していた、と発表した。女性を被写体とした事件だった。

 逮捕で更新は止まった。ただそれまでの連載は、約2年半アプリに掲載されていた。

 判決によれば、掲載が続いた間、当事者間で「和解金を支払う」「女性は連載中止など執筆活動の制約を求めない」「口外禁止」といった内容の和解案が協議されており、協議には編集者も関与していた。編集者は協議内容を知った上で、連載再開の可能性を否定はしなかったことがうかがえる。

 罰金を払えば法的には罪を償えるとはいえ、児童ポルノ製造は重大な性加害だ。連載再開の検討は、事案の内容をよほど精査した上でないとできないはずだが、それがなされていたのか。

 和解は成立せず女性は提訴。その3カ月後、作者の「都合」を理由に連載の掲載中止が発表された。ほどなくマンガワンで、元教員が別名義で原作者を務める新連載が始まった。経緯に女性が納得していないと知りながら、なぜ起用したのか。企業には、取引先の人権侵害を把握し状況の改善に努める責任があるはずだ。

 小学館は、「人権・コンプライアンス意識の欠如があった」とサイト上で謝罪した。女性にも謝罪したという。

 これらの件とは別に今月、強制わいせつ罪で20年に逮捕され有罪になった漫画原作者が別名義でマンガワンに連載中であることも発覚。反省と更生がなされたと判断した上での起用だと説明している点が1件目との違いだが、小学館はこの件も含め第三者委員会で調査すると発表した。

 判断はどのようになされたのか。社内に性被害や人権を軽視する姿勢がなかったか。疑問に答える調査を求める。

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