ふしぎな手拭(399話)

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高知県の昔話

とんと昔、ある村の一番(いちばん)大きな金持(かねも)ちの家へ、ある日、ひとりのみすぼらしいなりをしたお遍路(へんろ)さんがやって来たそうな。

門口(かどぐち)に立って、御詠歌(ごえいか)を歌(うた)い、何がしかの寄進(きしん)を乞(こ)うたと。

すると、そこの奥(おく)さんは、「このせわしいときに、お前なんぞにとりあっていられん。さあ、とっとと出て行き」と言うて、邪険(じゃけん)に追(お)い払(はら)ってしもうた。

この様子(ようす)を、この家(いえ)の女中(じょちゅう)さんが見ていて、こっそり握(にぎ)り飯(めし)を作ると、いそいでお遍路さんのあとを追(お)いかけ、「お遍路さん、お腹(なか)が空(す)いたでしょう。これでも食べて」と言うて、お握りを渡(わた)したと。

 

 

するとお遍路さんは、「これはほんのお礼(れい)です。受(う)け取(と)って下され」と言うて、白い手拭(てぬぐい)をくれたと。

あくる朝、女中さんは顔を洗(あら)い、お遍路さんからもらった手拭で顔をふいた。ご飯の支度(したく)に台所(だいどころ)へ行くと、みんなから、

「色が白うなっている」

「きれいになってえ」

「昨日とずいぶん違(ちが)いやな」と言われた。

そこで鏡(かがみ)を見ると、見違(みちが)えるほどの色白(いろじろ)のべっぴんさんになっておったと。

「どうして」

「何をしたら、そうなるの」

みんなが根(ね)ほり葉(は)ほり訊(き)くので、昨日のお遍路さんの話をすると、それが奥(おく)さんの耳にも届(とど)いた。奥さんは、「ほんなことなら、私も何ぞやるがじゃった」

と残念(ざんねん)がり、女中さんを呼(よ)びつけると、「ええかね、今度(こんど)あのお遍路さんを見かけたら、じきに知(し)らせてよ」と、言いつけたと。

それからしばらくして、お遍路さんは、また村へやって来た。女中さんが見つけて、家へ招(しょう)じ入れたと。

「奥さま、この間、私に手拭をくれた方が見えました」と言うたら、奥さんはニコニコして、

「さあ、何でも欲(ほ)しい物をあげるよ」と言うて、手あたり次第(しだい)に物をやったと。

するとお遍路さんは、お礼だと言って、帯揚(おびあ)げをくれた。

奥さんが喜(よろこ)んで、早速(さっそく)締(し)めてみると、帯揚げはいつの間にか蛇(へび)になって、赤い舌(した)をシュー、シューと出したと。

奥さんはウーンと唸(うな)って、気を失(うしな)ってしまったと。

むかしまっこう 猿まっこう

猿のつべは ごんがりこ。

 

 

出典:日本昔話データベース

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