術ギルに会いに行こう!赤い弓兵編
7章のネタバレを含む?のでご注意の上、各自で判断お願いします!
ツイッタで呟いてたのをリメイク。
術ギル様にな、エミヤ特製ホットミルクをな、渡してほしかってん。
せっかくなのでツイッタの時とは違う方向にれっつごー(`・ω・´)
ええ、賢王を甘やかしたいんです!(終章終わっても7章ショックが止まらない)
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「ほぉ、来たか」
赤い弓兵はカルデア内を駆け抜けた報せにそう一言漏らして一つ頷くと、赤い外套を翻して先ほど来た道を戻っていった。
ギルガメッシュが割り当てらた自室のベッドに腰掛け、やっと一息をついた所に来客があった。
「お疲れ様」
その一言と共に差し出された物を賢王は反射で受け取ってしまい、それが温かな湯気を上げる白いカップだと確認して僅かに首を傾げた。
突然渡された事とカップから手の平全体に伝わる熱が心地よく、それを差し出してきた相手を認識する事が遅れた。
カップから視線を上げた先には褐色の肌に白い髪、赤い外套に身を包んだガタイの良い青年だった。彼から向けられる表情は静かなもので、ギルガメッシュはこのカップをどうしたものか判断しかねていた。
「…贋作者」
「む、私が分かるのかね」
この召喚では初対面。ギルガメッシュに至っては通常のクラスも属性も変わっている。
それでも遠い未来で、過去で、彼らは腐れ縁のように何度も出会っていた。
「あぁ、分かるとも。此処にも居ったか」
「当然居るさ。私の役はそういう物だ。しかしまぁ…」
カップを持ったままの賢王の姿を頭から爪先まで眺める。
「ジロジロと王の玉体を…不敬であるぞ」
「これは失礼。まさかキャスターの君を見る日が来るとは思わなかった」
「クラスなど些末な事よ。一つ試すか?」
賢王の声一つで背後の空間が黄金の波紋を描いて揺らめく。それにエミヤは両手を上げて「今は止めておくよ」と笑った。
「君の強さはバビロニアで見て知っているさ」
「ふん、相も変わらずつまらぬ奴よ。して、コレは何だ?」
持ち上げればカップの中身がたぷんと揺れる。
「何だと言われても、見たまま通りのホットミルクだが」
「………」
「あ、蜂蜜を入れているから甘いぞ」
思い出したようにエミヤが付け足す。確かに甘い匂いがしているから間違いはないだろう。ないのだろうが、ギルガメッシュが聞きたかったのはそこではない。
「我を誰だと思っている。王に捧げるならば酒の1本や2本持ってこいというのだ」
「だが疲れている時はこれが一番だぞ。良く眠れる」
「何?」
目を細め、目の前に立つ弓兵を観察する。異なる時間軸で自分達は敵対し、殺し合った事もある。このカップ一つに何か企みが注がれていても不思議はない。
「あぁ、牛乳は苦手だったか?」
「そうではないわ、戯け」
入れ替えようかと手を伸ばしてきた弓兵の手を避けてギルガメッシュはカップに口を付けて一気に飲み干す。
丁度良い甘さと温度の液体が喉から胃へ流れ、身体の中から末端へと温もりが広がっていく。
「うむ。まあまあと言ったところか」
「王の口に合って何よりだ。
今の君はカルデアへ召喚されたサーヴァントだ。今ぐらいゆっくりするといい」
そう言ってエミヤは空になったカップを受け取ると、ギルガメッシュは「貴様は阿呆か?」と嗤いながら立ち上がった。
「我は王だぞ?己のある場所が我が国だ」
王が手を伸ばせば王権と斧がその手に握られる。
その姿は第7特異点で見た、ただ一人となろうとも国を守り、立ち続けた賢王の姿。
「まさか…君」
「守りや細かい事には全盛期より今の我の方が向いていよう。
何、此度はサーヴァント。過労死などせぬわ」
ハハッと軽やかに笑い、王は兵へと命を下す。
「弓兵よ、我をあの白衣の元へと案内せよ」
「……まったく…。仰せのままに」
一度呆れたように天を仰ぎ大きく息を吐くと、エミヤは恭しく礼を取って部屋の扉を開いた。
「うむ。常臣下の礼を忘れぬ事だ、弓兵」
「はいはい」
部屋を出る寸前、ギルガメッシュはエミヤへと向かって足を止めた。
「先程の飲み物、また作るが良い。飲んでやらんでもないぞ」
じわりと広がる温もりは未だギルガメッシュの中から去ってはいない。
この温もりと甘さにはただ自分を労わる心だけが注がれいる事ぐらいもう理解している。
あのウルクで、生きていた自分は確かに見たのだ。
天文台の魔術師の後ろに控えた赤い外套の弓兵がその眉間に皺を寄せて、まさに命を削っている自分を怒りに近い眼差しで見ていた事を。
『過去』と『今』の記憶が繋がって漸くその眼差しの意味を、怒りの理由に気付いた。
要は、この弓兵は大変なお人よしなのだ。おそらく本人が自覚するよりもずっと。
「あぁ、また持っていこう」
ほら、とギルガメッシュは笑った。正義の味方も大変だ、と。
「許す。存分に我に尽くすがいい」
ギルガメッシュをドクターの元へと無事送り届けたエミヤは厨房でカップを洗い、自分用にコーヒーを淹れる。
今回渡すことが出来たホットミルクは、特異点となったウルクで賢王へと渡したかった物だ。
倒れそうな彼を見ても、何かを差し入れる事も、「お疲れ」の一言を掛ける暇さえなかった。
おそらくギルガメッシュ王は何一つ、言葉一つ受け取らなかっただろうけれど。
それでも敵でもない知った者が命を削っていく様を見るだけというのは、なかなかきつかった。
「…今ではただの自己満足なんだがな」
生きた彼に出来なかった事を代わりにしているのだと、敏い彼の王は気付いていただろう。
それでもキャスターの彼に渡せてよかったと心から思った。
彼の王はその無礼を「許す」と言ってくれたのだから。
「さて、ちゃんと休憩を取るようにさせなければな」
王の口に合う菓子は何だろうか?とエミヤは頭の中のレシピを捲りながら冷蔵庫を開けた。
賢王ギルは周囲からもっと甘やかされてもいいと思います。 姫抱っこ?まだまだー!! こうなったら、冬木の皆の反応もとい・・・は置いといて! 赤弓、ホットミルクを渡せてよかったですね!(ノД`)・゜・。