【加筆修正版】第一話 家族が増えます!
7月の蒼天で出させてもらったお話の第一話です。
同シリーズの加筆修正バージョンとなります。
大きく変わったことはありませんが、以前から上げていたものよりもボリュームアップしてます!
今日から7日掛けて本編7話まであげようと思っています。
よろしくお願いします!
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◇ さいど ひとりっ子 ◇
「もしもの話よ……お父さんがいたら士郎は嬉しい?」
オレはある日、母さんからそんなことを言われた。
初めのうちは仕事に疲れた母さんの冗談だと思ったが、いつになく真剣な表情からそうではないと理解した。
母さんは所謂シングルマザーというやつで、オレを一人で育ててくれた。
不自由なんて今まで感じたことはなかったし、幸せだった。
それでも時折仕事から帰ってきた母さんがとても辛そうで、疲れきっていて、何もできない自分に苛立つことはあった。
オレはそんな頑張り屋さんな母さんが大好きで、今まで〝父親〟が欲しいと思ったことはなかった。
授業参観だってどうにか都合をつけて駆けつけてくれる母さんがいてくれたから。それだけで充分だったのだ。
だから母さんからの唐突な父さんが欲しくないか、という問いに何と言えばいいのかわからなかった。
「母さんがいてくれたら、オレはそれでいいよ」
オレは素直な気持ちを伝えた。だってそれが本心だったから。でも、オレの返答は母さんが欲しかった言葉ではなかったらしい、と控えめな溜息を吐いた母さんの様子からオレは察した。
わかりやすく落胆する母さんを見て、本当に好きな人がいて、その人のことをオレに認めて欲しいんだろうな、と子供ながらに理解しまったのだ。
「やっぱりお父さんがいたら嬉しい、かもしれない?」
オレは少しの間考えてから、ポツリとそう伝えた。
すると母さんの顔はみるみる笑顔になり、そんな母さんの表情が見られて良かったと思った。
それに母さんが認めた人が少しだけ、ほんの少しだけ気になったからというのもあったりする。
そんな母さんとの話からとんとん拍子に話が進み、オレは遂に未来の〝父親〟候補の人と会うことになった。
場所はオレの家で、オレを慣れないところへ連れ出す必要はなかろうという相手の気遣いもあり、そういうことになった。
少しでも母さんにイヤな思いをさせる人だと思ったら認めてなんかやらないぞ、と自室で拳を握り、気合いを入れたオレは呼び鈴の音と共に勇ましくリビングに向かった。
そんなオレの決意を嬉しい意味で来訪者は裏切ってくれた。
お父さんはとても優しい顔が出来る人で、母さんと話す姿はお互いにとても幸せそうだった。
この人なら母さんが今までみたいに辛い目に遭うことはないだろうと、ほんの僅かな時間だったが、そう思えるほどにいい人だったのだ。
オレもお父さんの言葉に答えながら笑顔になっていった。
オレが〝父さん〟と呼ぶことにもようやく慣れ、父さんもオレのことを〝士郎〟と滑らかに呼べるようになった頃、ある提案をされた。
「士郎が良いと思ってくれるのなら、僕の子供と会ってくれないだろうか? 士郎からしたらすごく年上になっちゃうから嫌じゃなかったら、の話なんだけどね」
僕の子供、という言葉に理解が追いつかず、傍から見ればオレの頭の上にははてなマークが何個も浮かんでいたと思う。
やっと父さんの言葉の意味を理解したオレは兄弟ができるかもしれないということに気が付いた。
実は学校の友達から兄弟の話を聞く度に、ほんのちょびっとだけ憧れていたのだ。
特に兄がいてくれたらいいのに、と思うことが多く、すぐに「会ってみたい」と父さんに伝えた。
そんな話をしてから数日、遂に父さんの子供との顔合わせの日になった。
オレは父さんとの顔合わせのときとは打って変わり、緊張と不安でガチガチになってしまっていた。
家中に響き渡る呼び鈴の音に心臓はドクンと大きな音を立てているのに、体は石のようにリビングのソファに座った形で固まったようにびくとも動かなくなっていた。
しばらくしてからリビングには見慣れた父さんの顔と、知らない顔が————なんと五つも並んでいた。
「驚かせてしまったかな?」
「そりゃねえだろ、親父」
オレの驚き顔に父さんは茶目っ気に溢れた笑顔でそう言った。その背後にはドッキリ大成功と書かれた看板の幻覚が見えたくらいだった。
そんな父さんに一番年上に見える人がやれやれと言った様子で指摘していた。
しかしオレが驚いたのは人数に対してではなかった。
いや、五人もいるとは思っていなかったので驚きはしたが、それよりも目を引いたものがあったのだ。
「お兄ちゃんたち、きらきらしててかっこいい」
オレの口から勝手に言葉が溢れていた。
青い髪と真っ赤の瞳に対して、子供らしい純粋な感想だった。
そんな言葉に対して、五人はそれぞれ思い思いの行動をした。
恥ずかしさからか目を逸らす者、オレの頭を優しく撫でる者、照れくさそうに頬を搔く者、嬉しそうに笑う者、無言でオレを抱き上げる者。
そんなふうに接してくれる五人に対して、オレは自然と兄が出来たのだと納得した。
なによりも嬉しかったのは突然できた五人の兄はオレのことを気に入ってくれたらしく、両親が再婚を決めたこの日から暇があればオレと遊んでくれたことだ。
これは、母親の再婚からたくさんの家族ができたひとりっ子だった子供のお話。
六人兄弟の末っ子となり、幸せになる士郎のお話である。