エミヤさんちともご近所さん1-優しい世話焼きお兄さん-
三兄弟の話の別ストーリー。時間的には皆でご飯食べた後くらいです。
どんどんエミヤに首ったけになっていくので、別シリーズで。
- 165
- 164
- 4,104
今日は、気分が重たかった。
グループワークがあったけど、一人余ってしまって
どこかに入れてとも言えず、結局は先生のはからいでとりあえず入れてもらった。
けれど、変にミスをしてしまって迷惑をかけて、余り物のくせに厄介者で。
自分が惨めに思うと同時に、情けなさがつりつのって真っすぐ前を向けなかった。
塾に行くことは行くけれど、全然頭に入らない。
油断するとため息が出てきてしまい、重々しい気分が強まるようだ。
胃を痛くしている間に塾が終わった後、足は勝手に喫茶店に向かっていた。
時間も遅いので、喫茶店にお客はいない。
残念ながらオルタはいなくて、二人席にちょこんと座った。
「お疲れ様、今日は何にするかね」
リツに気付き、エミヤがオーダーを取りに来る。
「えっと・・・どう、しようかな」
ぼんやりと、足が赴くままに来てしまったので何も決めていなかった。
いつもならケーキセットというところだけれど、胃が縮こまってしまっている。
「夜食がてら、軽いものにするかい」
「・・・あんまり、食欲なくて・・・」
声も委縮して、うまく発声できない。
様子がおかしいことを察したのか、エミヤは怪訝な表情をする。
「顔色が優れないようだが、体調が悪いのか?」
「え・・・あ、ちょっと・・・」
顔にまで出てしまっていたのかと、リツは目を伏せる。
「なら、家に帰ったほうがいい。あまり遅くなるとご両親も心配するだろう」
「あ・・・親は、今日はいないから・・・今、厄介な案件抱えてるみたいで、しばらく泊まり込みになるって・・・」
それだから、足が喫茶店に向かっていた。
泊まり込みは珍しいことではない、けれど、気落ちしているときは辛かった。
一人になりたいと思う反面、構ってほしいとも思ってしまうのだ。
エミヤは何か察したように、その場から離れた。
呆れさせてしまったと、リツは心苦しくなる。
一方で、エミヤはキッチンを片付けたり、戸締りをしたりと店じまいの準備をしていた。
「ご、ごめんなさい、もう帰りますね・・・」
「いや、もしよかったら家へ来ないか。ここにはあまり材料がないが、帰ればあっさりしたものも作れるだろう」
リツは、きょとんとエミヤを見る。
「胃があまり受け付けないなら、柔らかいものの方がいいな」
「あ・・・」
そんなの悪いとか、申し訳ないとか、断ろうとする言葉が続かない。
リツは黙って、ぺこりと頭を下げていた。
エミヤの家に来るのは二回目だけれど、相変わらずすっきりと綺麗にしている。
しばらく待っているように言われ、リツはちょこんと椅子に座っていた。
清潔感のある白いテーブルと椅子のセットは、いつでもお客を呼べそうだ。
手持ち無沙汰で、鞄をぎゅっと抱いて待つ。
子供っぽいかもしれないけれど、気落ちしているとこうして何かに抱きついてしまう。
自分を必死に守っているような、そんな風に。
一人になると辛さを思い出して、涙が落ちそうになる。
けれど、いきなり泣き出してはミヤも良い顔はしないだろう。
零しちゃ駄目だと意識しつつ堪えていると、そのダメージは胃に行くようだった。
とっくに空っぽになっているはずなのに、全く鳴りもしない。
鬱々とした気分でいたところに、台所からふわりと香りが漂ってきた。
卵や鰹出汁の、食欲をそそる匂い。
せっかく作ってくれているのに、果たして食べられるだろうか。
そんな申し訳なさを感じつつ、待つこと数分、エミヤが台所から出てきた。
「お待たせ、卵雑炊だが、食べられそうかね」
テーブルに、土鍋に入ったほかほかの雑炊が置かれる。
ほんのり色付いたお米は見栄えもさながら香りもよくて、食欲がないはずなのに唾を飲んでいた。
小皿もレンゲもあり、さあ召し上がれと言わんばかりだ。
「・・・いただき、ます」
一口も手を付けないのは失礼すぎると、雑炊を小皿にとり、少し冷ます。
そろそろいいかと思ったところで、控えめに口を開けて舌へ運んだ。
瞬間、出汁の香りと温かさが身に染み渡る。
柔らかめのお米を噛むと優しい味わいがじんわりと広がり、喉を通り過ぎていく。
「おいしい・・・」
一言呟くと同時に、ぽろりと涙が落ちた。
我慢していた感情が、胃が緩んだことで溢れてしまう。
まるで、冷たく冷え切った心が溶かされていくようだ。
「あ、あの・・・あんまり、おいしいから、感動、して・・・」
苦しい言い訳、気遣わせたくないと思うのは今更かもしれない。
エミヤはふっと笑い「それはよかった」と、リツを穏やかな目で見詰めていた。
本当はわかっているのに、エミヤの優しさにまた涙が溢れてくる。
「お、おいし・・・おいしい、です・・・」
頬を伝う雫はそのままに、リツは雑炊を食べ続けていた。
hatoushinさんさてはお料理上手さんですね…?食事の描写が半端なくてお腹鳴りました…。へへ…気づいたのがこんな遅くなってしまいましたが、2話目以降は明日の楽しみにさせていただきます…(*´﹃`*)世話好きエミヤくんがどう転ぶのか…めちゃくちゃ楽しみです!