「外来種」タヌキがウミガメの子を食い荒らす 世界遺産屋久島で被害

福島慎吾
【サムネイル動画】屋久島のウミガメがタヌキに食べられる=NPO法人屋久島うみがめ館提供
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 世界有数のウミガメの産卵地として知られる世界自然遺産屋久島鹿児島県)。その砂浜で孵化(ふか)したばかりのウミガメがタヌキに食べられる被害が増加していることがわかった。もともと島内にタヌキは生息しておらず、40年ほど前に人間が持ち込んだ「国内外来種」。現在の頭数など詳しい実態はわかっておらず、地元自治体や環境省が今後の対策を検討中だ。

 ウミガメの産卵地として知られる島北西部の永田浜。産卵期の夏場になると、びっしりとつけられた小動物の足跡が確認できる。クレーターのように深く掘られた穴の周りには、ウミガメが砂の中に産んだ卵の殻が散らばる。

 ウミガメの保護活動をしている、NPO法人「屋久島うみがめ館」が設置した無人カメラが、その実態を捉えた。タヌキ(ホンドタヌキ)が、孵化して砂から出てきたばかりのウミガメを食べるだけではなく、前脚で砂浜を掘り返して食いつく姿だった。

よちよち歩きで海に向かう子ガメをねらっていたのは、屋久島には本来いなかったタヌキでした。すでに屋久島の広い範囲で生息しているとみられていますが、実態はよくわかっていません。

 鹿児島県本土から約60キロ離れた屋久島に、もともとタヌキはいなかった。1980年代に人為的に持ち込まれて繁殖したと考えられる。生息地は全島(約505平方キロ)に広がっているとみられ、標高1600メートルほどの山岳部にある湿原・花之江河(はなのえごう)でも目撃されたという。

 屋久島町に寄せられる農作物被害の情報は、シカやサルによるものがほとんどだが、実際はタヌキによる被害の可能性もあるそうだ。

 今夏まで同町議を務めていた真辺真紀さんは、約30年前に移住してきたが、「タヌキを見かけることがかなり増えた」と話す。

【動画】屋久島の砂浜で、孵化して砂の中から出てきたばかりの子ガメを捕食するタヌキたち=NPO法人屋久島うみがめ館提供

子ガメを狙って浜に来るタヌキ

 同館の上田博文・代表理事によると、2010年ごろからタヌキによるウミガメの食害が目立つようになってきたという。

 砂の中から出てきた子ガメは、ネコやカラスなどにも狙われるが、タヌキは前脚で砂浜を掘って子ガメをつかまえる。上田さんは「孵化する時期を知っていて、砂浜に来ているようだ。ほかのエサでわなを仕掛けても、見向きもしないで砂浜に向かう」と話す。

 環境省の2014~16年の調査では、毎年20~50カ所の産卵地で食害の痕跡を確認したという。

 同館の調査では、昨年は特に被害が多かった。ある砂浜では子ガメが孵化した約430カ所のうち、約100カ所で食害の形跡が見つかった。産卵した穴の7~8割が掘り返されていた砂浜もあったという。

 上田さんらは、夜間の砂浜の巡回、産卵場所の周囲に網を張るなどの取り組みをしてきたが、産卵地の砂浜は広いうえ、網の隙間からタヌキが侵入するなど完全に防ぐことが難しい。「ウミガメだけでなく、屋久島の生態系への影響も懸念される。このまま放置していると、農業被害なども含め、大きな問題になりうる」と上田さんは危惧する。

見えていないタヌキの現状

 地元の屋久島町や環境省屋久島自然保護官事務所は今後、タヌキの島内での分布状況や生態系への影響の調査、永田浜での駆除方法などの検討を進める方針だ。同事務所の竹中康進(やすのり)・首席企画官は「タヌキが生態系にどんな影響を与えているのかまだわからないが、ウミガメの食害を減らす努力は必要だ」と話す。

 各地でアライグマの駆除に取り組み、屋久島うみがめ館と連携して対策にあたる、北海道大発のスタートアップ企業「外来種防除円卓会議」(札幌市)の池田透・同大名誉教授(保全生態学)は「屋久島で外来種のタヌキは、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの感染症を媒介する可能性もある」と指摘。「島にはマイナスの存在であり、ただの獣害とは考えず、外来種問題として地域の人にも参加してもらって対応にあたる必要がある」としている。

 屋久島とウミガメ 島北西部の永田浜(いなか浜、前浜、四ツ瀬浜)は、世界有数のアカウミガメの産卵地として知られる。5~8月ごろ、アカウミガメやアオウミガメが上陸して砂の中に産卵。卵は9月にかけて孵化(ふか)する。永田浜は2005年、貴重な湿地の保全を目指すラムサール条約に登録された。

     ◇

<おことわり>配信していた記事に当初、提供写真「孵化したばかりのウミガメをくわえるタヌキ」を掲載していました。指摘があり、調べたところ、写真は生成AIが使用され、事実と異なる部分が含まれていました。朝日新聞社の確認が不十分でした。写真を取り下げます。(11月26日14時00分更新)

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