影の国にようこそ
Twitterでリクエストをいただき、ケルトの戦士クーフーリン、スカサハ、フェルグスに可愛がられるアーチャーエミヤです。以前にあげたケルト×エミヤの総受け風味にたくさんの反応ありがとうございました!/続きではありませんが前回よりもさらにセクハラ度が増している上スカサハとフェルグスがエミヤにデレデレなので心の広い方向けです!/合わせて影の国の描写などはほぼ想像のものとなりますのでそちらも合わせてご注意ください!師匠の幕間であんまり詳しく教えてくれなかっげふんげふん/ブクマなど本当にありがとうございます!!お蔭様でルーキーランク68位いただきました!!
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管制室から離れた場所にあるカルデアの修練場、戦いを好むものが多いここでは絶えず使われる区画である。
そこで今日は青と赤の閃光が火花を散らしていた。
「オラァッ!!」
「ぐっ…せいっ!!」
ランサーのクーフーリンが振り抜いた槍を双剣で受け流したアーチャーはその勢いを利用して体を反転させ、回転の力も相乗して無防備な背を狙う。
しかしそれを当然見越していたランサーは振り抜く力をそのままに、軸足を残して脚を鞭のようにしならせ、アーチャーを牽制する。
片方の攻撃はもう片方のトリガーとなり、さらにそれは…と、まるで一つの舞踏のようにかみ合い、終わりのない演目を魅せていた。
間合いを取ってもう一度武器を構え直した2人がじりっと地を踏む足へ力を込めたその時、ピピピピ…と無機質なタイマーの音が鳴り響く。
それが聞こえた瞬間がくりと肩を落としたランサーは、極上の餌を取り上げるタイマーへ拗ねた目線を向ける。あわよくば続きを望む視線をひしひしと感じながら、終わった瞬間肩で息をしたアーチャーは設置したタイマーを止めると、続きはないというアピールで投影品のそれを消す。
「…ハァ、あー楽しかった。またやろうぜ、アーチャー!」
ため息をついたランサーはそれでも体を包む心地よい疲れにニカッと笑うと、疲労の色の濃いアーチャーが苦々しく顔を歪める。
「気安く言ってくれる」
「んだよ、お前も楽しいだろ?」
「君を相手にしてついて行くのがいっぱいいっぱいさ。制限時間付きでなければとても気楽に応じることは出来ん。ここには私以外にも良い対戦相手はいるだろうに、まったく」
やれやれと肩をすくめるアーチャーにランサーは小さくよく言うぜとごちた。
制限時間を設けて行われるアーチャーとの手合わせは、やはりあらゆる年代の英雄を集めたここで誰を相手にしても足りない高揚がある。
ある聖杯戦争から続く因果な縁、かつても全身の血が沸き体が震えるほど良い戦いを演じられたが今もそれは変わらなかった。
制限時間もそれは決してアーチャーへのハンデではない。マスターから喧嘩をするなら場所と時間を決めて!と、ルールが無ければ互いに動けなくなるまで終わらないのを見かねてのものだ。
体の節々を切り裂いた剣の冷たい感触が未だ鮮明に残るランサーは、素知らぬ顔でいい子ぶる好敵手の肩を抱いて笑った。
緊張の解けた修練場で、そろそろ戻ろうかと声をかけようとしたアーチャーはランサーと同時に背後を振り返る。
2人が弾かれたように向いた先の壁際に佇む美女は、随分前から居たのにも関わらず本人が気配を表すまで存在を知覚させなかった。
しかしその顔を見た瞬間それも納得したランサーに歩み寄ってきた美女…スカサハは、腰まで伸びた美しい髪を揺らす。
「楽しそうだな、クーフーリン」
「スカサハか、一人とは珍しいな、フラれまくって独り身か?」
「そんなところだ。鍛錬をしようとしたらはしゃぎ回るお前が見えたのでな、ちょっかいをかけたくもなろう」
一応修練中として気を使って気配を消していたスカサハは、ランサーと戦闘中だったといってもまるで存在を認識出来なかったことへ驚きを隠せないアーチャーに、小首をかしげる。
その人外の域に到達したスキルをすでに嫌という程知っているランサーの軽口を受け流したスカサハは、レイシフトの予定もなく察した通り退屈を持て余していた。
ランサーの師であるスカサハは日頃から武の研鑽を欠かすことない、それは彼女の生きる上で染み付いたものだからだ。
最近はよく中国人のランサーと槍を交わしているのを見ていたが、こちらもマスターがお願いだから殺し合いはやめて!!とストップをかけたのを噂で聞いた。
本人達にその気はなくとも、武の頂点を極めた者同士が力をぶつけるに足る相手を見つけ、心置き無く武器を交わすのはハラハラするものがある。マスターの心臓のため、もっと軽度の運動程度の相手を探しているスカサハだが、そうそう応じてくれる者はいないのが悩みの種。
ランサーとしては、スカサハは軽い気持ちで相手にして良いものではないため断る者達の気持ちもわかるものだ。
一人で槍を振るおうと思って来てみれば、可愛い弟子とその好敵手が演じる気持ちのいい戦いを観戦することができた。
見ているだけでも気分が高揚する二人の戦いに、顎に手を添えたスカサハは武の一端を担うものとして評価を述べる。
「見るにお前達は技の型はバラバラ、戦法も反対方向を向いているというのに不思議と違和感はない。いい相手を見つけたな」
「だろ?こんなに相性がいいのも珍しい、聖杯戦争に参加して得た何よりの宝だ」
ふっと緩められたスカサハの表情へクーフーリンはエミヤの肩を抱いて笑った。包み隠すことのない真っ直ぐな自慢へ長い人生未だ好敵手と巡り会えないスカサハは含みを持たせた笑みを浮かべる。
「対等な好敵手とは得がたいものだからな。白状すると、お前が羨ましいよ」
「こいつは俺のだからな、手ぇ出すなよ」
「少しくらい分けてもバチは当たらんだろうに」
自分を通り抜けて交わされる師弟の会話に、エミヤは密かに高揚する体を誤魔化すため小さく咳払いをする。
カルデアでも有数の達人であるスカサハに評価され、さらにはあの憧れの英雄クーフーリンに褒められて嬉しくないものがいようか。
本人は隠していても微かに溢れ出している傍らからの喜色にランサーは胸中で小さく可愛いやつ…と呟き、スカサハは2人を紅色の瞳の中に入れるとおもむろに口を開いた。
「ふむ、クーフーリンと渡り合える者か…これならば…。お前達、これから時間はあるか?」
「レイシフトもねぇしな」
「私も、今日は別のものが料理当番ですので」
「うむ、では少々私に付き合え」
答えに頷いたスカサハは紫紺の髪を揺らしてつかつかと歩いていく、互いに顔を見合わせた2人はとりあえずその背について行くのだった。
スカサハが二人を引き連れてきたのはレイシフトをするカルデアの中心地、マスターやドクターも今はいない部屋でほの暗い青い明かりに照らされながらコンソールを扱うスカサハへエミヤが首を傾げる。
「どこにレイシフトするおつもりですか?」
「影の国だ」
「影の…!?」
「影の国!?あんな魔境にレイシフト出来るものなのか?」
事も無げに言われた目的地にランサーとアーチャーは目を見開く。
噂に聞く遥か古代にあったという魔境にして異郷、スカサハが元々収める地でありクーフーリンが英雄として名を轟かせる力を磨いた場所だ。
場所を聞いて言葉を失うエミヤに変わり、そこを経験したものとして古代にレイシフトするとはわけの違う場所にランサーは油断なくスカサハを探る。
何を企んでいるのか怪しむ弟子に、表情の変わらぬ顔をどこか安心させるように緩ませたスカサハは、操作を終えた装置から離れた。
「本来ならできない。だからこれから行くのは影の国によく似た場所に過ぎん。マスターに断って空の仮想戦闘空間を使い、ルーン魔術も駆使して1から作り上げた」
「あんまりルーン魔術のハードル上げないでくれますかね?!」
スカサハから経緯を聞いて納得したものの、易々と偉業を成し遂げる師にランサーは堪らず声を上げる。ルーン魔術は万能ではないのに、夏頃からこの恐ろしい師匠が調子に乗ってやらかすあんな事やこんな事のせいですっかり誤解が定着してしまっている。最近のマスターの期待に満ちた瞳が痛くて仕方ないランサーはそれ以上の文句をぐっと飲み込む。
これでうっかり『ならお前もできるようになればいい』なんて言われたら愛すべきランサークラスからキャスタークラスへの強引な変更をさせられる程の修行が待っているだろうから。
諦めたランサーとスカサハに逆らえるはずの無いエミヤはさっさとレイシフト準備まで押しやられ、心の準備をする間もなくスカサハの作り上げた仮想『影の国』へ招待されるのだった。