つらさを闘志に変え演技派へ
「台本のせりふの『お土産』を『おどさん』て読んで笑われました。教養がないというコンプレックスは大きい。高校くらいはまともに行っておけばよかったと思う」
昭和五十二年、「ムー」でデビューした岸本は、以降、立て続けにドラマ出演。売れっ子新人女優として脚光を浴びるのと反比例して“本業”の学生生活からは次第に足が遠のいていく。結局、出席日数不足で高校は一年で中退。「もともと勉強は嫌いだったし、当時はまだ『芸か学問か、どちらかを選べ』とつきつけられる時代だった。大学に通いながらアイドルをする人がでてきたのは、しばらく後のこと」
“おどさん事件”は五十五年放送の日本テレビ系「真夜中のヒーロー」のリハーサル中のことで、翌日、岸本は共演者の故芦田伸介から思いがけないプレゼントを受け取る。それは新品の広辞苑だった。「でも、そもそも広辞苑が何であるかということも知らなかった」。見栄を張る人が多いこの世界で、なんとも正直な人だ。
さかのぼれば、「ムー」とそのパート2「ムー一族」のときには、やはり共演者の伊東四朗が岸本のために作った漢字の単語カードをスタジオに持参して、収録の空き時間にかまってくれた。