この性分は死ななきゃ直らない
母の死から八年後の平成十年、北野武が主演・監督した「HANA-BI」に岸本は武の妻役で出演。「いつか北野映画に出たい」と自らを奮い立たせてきた夢が実現する。同映画はベネチア国際映画祭でグランプリ、岸本は日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。以降、北野映画に不可欠の存在となっていく。
私生活ではその前年、都心の一等地に三階建て住宅を建築。一部スポーツ紙などで「結婚準備か!?」と報じられたが、それは二世帯形式の自宅。岸本は今もそこで父親、弟夫婦一家とともに暮らす。「オフの日はめいとおいに遊んでもらってます」と話す顔は平和そのもの。だが、人生最大のこの買い物が「実は大失敗。日当たりはよくないし、くぼ地で水はけが悪い。おかげで基礎工事代が倍以上かかったけど、住めば都だという気持ちで暮らしてます(笑い)」
聞けば土地を下見したのは夜で、交通の便がいいというだけで即決したとか。数年後、今度は車で失敗する。「丈夫で安全な車を買おう」と、知人の紹介で購入した四けたの万の“ベンツ”が一カ月ほどで動かなくなった。「安物のエンジンを使った偽物だと分かり、車屋に電話をしたら失踪した後。結局、二束三文で売り、以後、車は正規のディーラーを通して買ってます」
自分の愚かさを反省しつつも、「懲りないというか三歩歩くと忘れちゃう。一万円単位までは細かく計算するのに百万円を超すと十秒で決断。この性分は死ななきゃ直らないとあきらめてます」。かつては恋多き女としても名をはせ、六年間交際した彼氏とは結婚秒読みと騒がれたが“破局“。「縁がなかったんでしょうね」と人ごとのように話す。もはや結婚願望はないそうだが、「子供だけは産んでおけばよかった。いろんな人に恵まれて今のわたしがあるように、世の中にはすてきな“宝物”がたくさんあるということを教えてあげたかった」。人生まだ半ば。これからも岸本は「三歩の精神」でたくましく生きていく。