弟は姉の幸せを願う
桜ルートを調べていて、どうしてもイリヤに幸せになって欲しかったので書いていたらエミヤ中心になっていました。
この家族には本当に幸せになってほしい。
エミヤが、士郎ぽくなってたりします。
鯖はキャラ崩壊が怖かったので兄貴しかでません!
誤字脱字やおかしな表現もあると思いますが、指摘していただけるとありがたいです。
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夢を見る
差し伸ばされた手を取ると幸せそうに笑う彼女
白銀の髪をなびかせ、吸い込まれるような赤い瞳で見つめてくる
その近くには爺さんがいて、アイリさんもいて、藤ねぇもいる
誰もが心の底から幸せそうに笑ってる。
だから、思った
これは夢なのだと
なら、少しでもこの温かな光景を目に焼き付けておこう
彼女にあげたかったこの世界
だが、夢だと自覚した途端、さっきまで見ていた光景は霞がかったようにぼやけてくる
あと少しでいい、あと少しでもいい、せめて夢の中では…
そんな願いなど叶うはずもなく、目覚ましの音に目を覚ました
頬に一筋の雫が流れる
サーブァントが夢を見るはずがない。見るとしても過去の記憶か契約者であるマスターの過去のどちらかだ。
しかし、最近はよく似たような夢を見る。どの世界でも幸せにすることのできなかった彼女がずっと笑っている夢を…
生前、自分が強く願っていることを夢に見る、というのを聞いたことがある。夢を見ないはずのサーブァントが見るほど強く願っていることなのだろう。召喚されて随分立つ。カルデアの中でも古株に分類される方だろう。だが、最近までは夢など見たことが無かった。
きっと、あの出来事が原因なのだろう。
「えっと、イリヤって言います。小学生五年生です。
一応…魔法少女、やってます。はい。うぅ、わたしなんかがやくにたつかわからないけど……でも精一杯、頑張ります!」
数日前のこと、マスターに頼まれ立ち会った召喚で光放ちながら召喚されたのは虫食いのような記憶でも鮮明に思い出すことのできる彼女によく似た人物だった。
「イ、リヤ…」
「ん?エミヤの知り合い?」
思わず漏れた声にマスターは聞き返してくる。
「いや、何でもない。知り合いに少し似ていたのでな」
いつものように素っ気なく返す。マスターはへ〜そうなんだと深く追求することはなかった。
「エミヤさん?て言うんですか。どこかお兄ちゃんに似ているような…」
少女は召喚サークルから出てくると遠慮がちに眺めながら言った。
「エミヤがお兄ちゃんに似てるの?」
「雰囲気というか面影というか、、、衛宮士郎ていう名前なんですけど…『イリヤさんの想いを寄せる相手でもありますね』ちょっ、やめてよルビー!」
余計なことを言わないで!!と言いながら顔を赤く染めながらルビーと呼ばれるステッキを黙らせようとぐるぐると追いかけている。
「お兄ちゃんが大好きなんだね」
マスターはその光景を微笑ましそうに見ている。
どこにでもいるお兄ちゃん子な少女。
そういうただ、家族に囲まれ普通の少女として生きる世界もある事に喜びを感じた。それと同時にあの運命の夜を必死に戦い生きていた彼女にも味わって欲しかったと思った。だが、そんな想いを晴らすべく軽く首を振った。過去は変えられない、彼女は聖杯戦争の犠牲になったのだから…
夢を見る
夢を見る
夢を見る
夢を見る
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「おい、何やってんだ!」
いきなりパッと右手を捕まれハッと意識がかえる。
右手には包丁が握られている。どうやら、調理をしていたようだ。
掴まれた左手の方に目を向けると青い髪の槍兵がいた。
「なにとは?」
「はぁ!?おまえきづいてねぇのか?見てみろ左手が真っ赤だろ」
青い髪の槍兵に言われたとうりに左手てを見てみると親指の付け根からザックリと切れ、どくどくと赤い血を流していた。
「切れてるな…」
「っっ…切れてるなじゃないだろ!馬鹿かよてめぇは」
「馬鹿とは何だ、これぐらいすぐに治る」
「そういう問題じゃねぇ!」
青い髪の槍兵はガッと私の胸ぐらを掴み一気に近くなった距離で彼女と同じ赤い瞳で睨んだ。
「最近、おかしいぞ。普段ならこんな小さな失敗はしねぇし、何より意味もなくボーッとしたりもしない。今は料理してる時に手を切るだけですんでるが、レイシフトした時に同じようなことをしてみろ!てめぇのせいで仲間だけでなくマスターまで危険な目に合うんだよ!わかってんのか!?」
「うっ、すまない…」
「ッチ、、、」
青い髪の槍兵は静かに掴んでいた手を離した。そして背を向け扉へと進んでいった。
「なにも言い返さないお前なんてつまらん。早くどうにかしろ。あと、マスターが読んでいた。……じゃあな」
そう言うと食堂から出ていった。
青い髪の槍兵の言葉を聞いて次の行動に移すことにした。
マスターが呼んでいると言っていた。すでに塞がった血まみれの左手を水で洗い流し、血に濡れてしまった場所を掃除してからマスターを探しに行った。
しばらく、廊下を歩き探しているとマスターの後ろ姿を見つけた。
なのでゆっくり近づき声をかけた。
「マスター、呼ばれたと聞いたのだが」
呼びかけた声に気づいたマスターは赤毛の髪をひょこひょこ揺らしながら近づいてきた。
「エミヤ!探してたんだ。はい!これあげる!!」
マスターは手に抱えていた金色の盃、聖杯を渡してきた。
「ま、マスター。このようなもの、私にはもったいない」
「何言ってんの!?エミヤはずっと私達とこのカルデアを支えて来てくれたじゃん。だから、感謝の気持ちとこれまでのご褒美だよ!!
それとも何?私の選択は間違ってると言いたいの??」
少々頑固になったマスターにはかなうことはできない。人理修復のために戦ってきたマスターはちょっとやそこらのことではヘタこれない。
これは引くしかないと思い差し出された聖杯を受け取った。
「ありがとうマスター。これからも頑張るとするよ」
「うん!これからもよろしくね、エミヤ!!」
いつもありがとう、と言いながらギューと腰のあたりに抱きついてきたマスターの頭をそっと撫でた。
「フフ、エミヤってお母さんみたいだなぁ」
「やめてくれ、こんなガタイのいい男の何処がお母さんなんだね」
「う〜ん?優しいとこ、叱ってくれるとこ、料理が美味しくて、家事も完璧にこなすとこ!!」
「なんだねそれは…」
呆れたような嬉しいような。だからか咎める気持ちにはならなかった。
「あと、、、」
「ん?」
まだあるのかね?と聞きつ耳をかたむけた。
マスターは抱きついたまま顔をあげた。
「誰にも相談せずに抱え込むとこ」
さっきまでの笑顔とは違い何もかも見透かすような表情だった。
一瞬戸惑ったがいつもどうりを装った。
「なんのことかね?」
「私のお母さん、秘密ごとが多くていつも一人で抱え込んではこっそり泣いているような人だったの。そして子供の私の前だけは何事も無いように笑っていたんだ。
その時のお母さんの笑顔とエミヤの笑顔が一緒なの。
ねぇ、エミヤ。私は頼りないマスターかもしれない。けどね、もっと頼ってほしいの!最近みんながエミヤの様子がおかしいって相談にくるの。みんなエミヤのことが大好きだからもっと心配かけてもいいと思うよ?」
言葉の途中で涙を流しながらも懸命に訴えるマスター。誰かにこんなにも大切にされていると感じるのはとても嬉しく感じる。私のような英霊の紛い物でもこんなに情を移してくれるマスターは心の底から優しい少女なのだろう。
だが、、、、
「その心遣いありがたく思うよ。だが、この問題は誰かに話したところで解決することはないり私自身でどうにかしないといけないのだよ」
泣いているマスターをあやすように撫で、涙を拭った。
「だが、解決できたらぜひ聞いてほしい。私の一つの願いを」
「うん、わかった。待ってるから!」
そう言うと抱きつくのをやめ、いつものようにニカッと笑い去っていった。
夜になり自室にずっと手に持っていた聖杯を枕元に置きベットに横たわり目を閉じた。
マスターにもみんなにも迷惑をかけた。きっと気づいていないだけで多くの人達にも迷惑をかけているのだろう。早急にどうにかしないといけない。
だが、彼女への願いを消し去ることは簡単なことでは無い。
幸せにになってほしかったのだ。あの冬の城で一人待ち続けた彼女に。
(私は士郎のお姉ちゃんだもん)と笑って身を差し出した彼女にただ当たり前の生活を送ってほしかった。
一緒に買い物に行って、両親に囲まれながらご飯を食べ、他愛のないことを話し笑い合う、そんな生活を。
もしかしたら、この願いは俺自身の願望を彼女に押し付けているのかもしれない。
そうこれはきっと、俺の身勝手なワガママだ。
「何言ってるの!?馬鹿じゃない!!」
ここにはいないはずの姉の声が聞こえた。驚いて目を開けるとそこには白い服を着た姉がいた。
「ということは、夢、か?」
「ゆ、め、じゃない!もうシロウはこんな時でも頭がお花畑なのね」
顔をぷうっと膨らませながら怒る姉は間違いなく俺の知る姉だった。
「夢じゃない?」
「そうよ、ここは聖杯の中の空間。この聖杯自体に願いを叶える力はないわ。霊基を強化するのに特化しすぎたせいね」
「じゃぁ、なぜここにイリヤがいるんだ」
「あら、忘れたの?私は小聖杯になったんだもん。まぁ、分霊に近いものだけど居てもおかしくないでしょう?」
そう言いながらこちらに近づいてきた。
「ねぇ、シロウ。しゃがんで?」
「え?」
「早く!!」
姉の強めの言い方に言われるがまま膝をおり姉と同じ視線ぐらいにした。
「うん、よろしい」
そう言うと姉は手を伸ばしそっと俺を包み込んだ。そして一定のリズムで赤子をあやすように頭を撫でた。
「シロウが願ってくれてた事は私にとっての願いでもあったの。切嗣がいてお母様がいて、そしてシロウがいて。なんでもない普通の日常。
そんなのをおくってみたかった。だからね、ありがとう。私のぶんまで願い続けてくれて」
頭を撫でる手が心地いい。その温かさに安心と後悔が込み上げてくる。
「俺はずっとイリヤと姉弟でいたかったんだ…」
少しだが、涙が溢れてくる
「あら、私とシロウはこれからもずっと姉弟よ?」
「あぁ、わかってる。だがらイリヤを守れなかったことがずっと…『もう、そんなこと気にしないでよ!』」
声を張り上げた姉は俺の顔をを手で包こんだ。
「いい?もう過去の事を後悔しても仕方ないの。それに私はシロウを守れて嬉しかったんだから。だからね、後悔されたら私の行動が無駄になるじゃない!わかった!?こういう時なんて言うの?」
強気で言って彼女の目にも涙が溜まっていた。今にでも溢れそうなのに必死にに我慢して、俺が言うのを待っているようだった。
そんな、姉の優しさに胸が苦しくなった。
「守ってくれて、、、、ありがとう 」
「うん、どういたしまして」
姉は微笑むと大粒の涙を流した。
「シロウ、私達の願いが叶うことはもうないわ。だけどね、それが不幸な事だと思わないで。だって私は幸せだから、こんなに姉思いな弟、他にいる!?こんなにも私を大切に思ってくれるなんて本当に私は幸せものだなぁ。
だからね、私もシロウに幸せになってほしいの。私ばかりじゃなくて他の人もシロウの事を大切に想ってくれるでしょう?その人達と一緒に幸せになって。それが今の私の願い」
溢れてくる涙に視界が滲んでいく。
「もう!泣かないでったら!
シロウはお姉ちゃん想いの弟だから叶えてくれるよね?」
「あぁ、もちろん」
「うん。それでこそ私の自慢の弟ね!」
力強くっ抱きしめられ、姉の背に手を回し抱きしめ返す。その温かな体温に安心する。
しばらくそうしてると泣きつかれのか瞼が重くなり意識が遠のいていく。
「シロウのこれからの生活に祝福を」
そう言うと俺の瞼にそっと口づけた。
「ありがとう、姉さん…」
その言葉が言い終わるかいなかで完全に俺の意識は飛んだ。
飛ぶ少し前に姉さんが今まで見たことのないような笑顔で笑っている気がした。
「、、い、お 、あ、、、おい!アーチャー!!目を覚ませ」
強く揺さぶられるのとうるさすぎる声に強引に起こされた。
「な、何かね…」
寝ぼけた私の顔面に拳が飛んできた。
「なにかね、じゃねぇだろ!お前、何日目を覚まさなかったと思ってんだ!!まる3日だぞ、、、どれだけ心配したか………」
ランサーはうなだれるようどこか安心したように呟いた。
「す、すまない?」
「コノヤロー。お前が目を覚まさなくてマスターは号泣だし、みんな心配すぎてわちゃわちゃするしで大変だったんだぜ!」
あの日と同じように胸ぐらを掴まれると訴えるように揺さぶられた。
「本当に申し訳なく思ってる。だから、この手を離し、た、ま、、え!!」
流石に苦しくなり掴んでいる手を無理やり離させた。
すると、ランサーは一瞬驚いたあと、ニヤリと笑った。
「お?もう悩みは晴れた、てか?」
「あぁ、喝を入れられてしまってね」
さっき会った姉を思い出し微笑む。もう心配はかけられないな。
「ふ〜ん、それは良かったな」
ランサーはでかくゴツゴツした手でワシワシと頭を撫でてきた。
「チョッ、やめろランサー!」
さっきと同様手を払いのけ、キッと睨みつけた。
「おぉ、こわい。こわい。
あっ、早くマスターに顔を見せに行こうぜ、ずっと泣いているんだからな」
「そうか、彼女には本当に迷惑をかけたようだな、それに…」
「ん?それに?」
「マスターには私の願い事を話すと約束したのでな」
「そうか、なら早くいかねぇとな!」
「あぁ」
先に歩くランサーについていくように足を進めた。
部屋を出る前にふと振り返り聖杯をながめた。
(姉さん、俺はきっとこの願いは叶えるから)
そして、前を向きあるき始めた
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うん、それでいいの
幸せになってをねシロウ、
しばらくは見守っていてあげるから
私は シロウのお姉ちゃんだもん
弟の幸せをずっと願ってるからね
END