天覧正妻戦争 in恋愛脳曼荼羅ノウム・カルデア Ⅲ
本作を見る前に以下の注意事項をお読みください。
・この物語は、第六異聞帯攻略後の物語であり、登場するキャラクター・サーヴァントはそれまでに登場した者に限る。
・聖杯はこれまでに一度も使用していない。
・マスターは男であり、性別変更はない
・この物語は”正妻戦争 in恋慕輪廻基地カルデア”シリーズの続編である。
・若干のキャラ崩壊。
・誤字脱字あり。
感想等のコメントはどしどしお書きください。毎度全て読ませていただいております。
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~左京中心部~
「とりあえず、内裏に向かいましょう。聖杯の魔力の気配の方向にいけばたどり着くはず」
「罠の匂いがぷんぷんするけどね。まあマスターもそこにいるようだし、どのみち行くしかないか」
シャルロット・コルデーとフランシス・ドレイクはマスターと聖杯を目指して歩き始めた。単純に朱雀大路に一度出れば、そのまま眼前の内裏に行くことができるのだが、同様に配置された妖精國の、面々及び殺生院キアラの魔力を感じ、不必要な衝突を避けるために細い道を進むことにした。幸い碁盤の目のような平安京なら、特に複雑な地形はない。
しかしそのまますんなりとたどり着くわけもなく、三条大路に通りかかったとき、道満の仕掛けた罠が現れる。
「! ドレイクさん」
「分かってる。出てきな!隠れたって魔力ですぐ分かるよ!」
ドレイクの呼び声に、角から二つの人影がぬぅっと出現した。
「おうおうこいつはとんだ貧乏くじだぜ。こんな性癖直球野郎と組まされただけでなく、ババアの相手まですることになるとは」
「しかし引き受けた以上仕方あるまい。それに、カルデアで普通に生活していては、こうして戦う機会もないのだから」
「あ、貴方たちは……」
「ティーチ!」
「バーソロミューさん!?」
現れたのはエドワード・ティーチとバーソロミュー・ロバーツであった。どちらもクラスはライダーで、さらにどちらも有名な海賊である。しかし前者が快楽と欲望に忠実な海賊であったなら、後者は厳粛かつ高潔な海賊であり、その性格は対極ともいえる。
「あっ、コルデー嬢~。今日もバリ可愛でござるなぁ」
「あー……どうも、ティーチさん」
「こうして巡り合わされたのはやはり生前の縁なのだろうか。まあしかし、采配としては文句ないがね」
「あんたたち、何しに来たんだい?あんたたちも、マスターを取り戻しに来たわけ?」
「いいえキャプテンドレイク。我々は貴方たちを脱落させるための刺客として送り込まれたのですよ」
「し、刺客!?」
「そうだ。俺っちたちはあの蘆屋なんたらってやつに頼まれてな。なんでもマスターの負担を減らすための正妻戦争とか。そんな面白そうなイベント、参加しないわけにはいかねぇ!」
「私は最初は断るつもりだったんだが、”和風の目隠れウィッグセット”なるものをくれるとなれば、話は別だ!」
「というわけでコルデー嬢、ババア、ここでやられてくれや」
「そ、そういうわけにはいきません!私たちはマスターを取り返すんです!」
「そういうことだ。悪いけど、あんたらはここで倒れてもらう!」
~左京七条付近~
「じゃあ道満さんとマスターのところに行きましょうか」
「うん!多分こっちの方向だよね」
「ええ、楽しみだわ!」
アビゲイル・ウィリアムズ、ジャック・ザ・リッパー、ナーサリーライムの三人もまた同様に内裏に向かい始めた。絵面だけなら可愛らしい少女たちが楽しそうに街を歩いているだけなのだが、ここは仮とは言え平安京、しかもあの蘆屋道満の展開した仮想空間である。彼女たちに関しても、すんなりたどり着くわけもない。
「待って。誰か来るわ」
「え?本当だ」
「誰かしら」
建物の角からゆっくりと誰かが現れる。それは────────────
「かぼちゃ?」
「かぼちゃ」
「まあ、パンプキンナイトね!」
骸骨にハロウィンのカボチャを被せた、今ではおなじみのエネミーである。平安の都にあまりにもマッチしない組み合わせであるが、しかし少女たちにとってはそのようなことは問題ではなく、これが道満の用意した玩具(本人は罠のつもり)だとすぐに理解した。
「かぼちゃの騎士ね!でもなんか……顔に紙張ってるわ」
「あれ、どーまんが良く使ってるやつ」
「ヒト型の折り紙よね。魔力をかすかに感じるわ。多分あの紙でナイトを操っているのね」
がちゃがちゃと骨を鳴らすパンプキンナイトたちはぞろぞろと三人に詰め寄る。
「どうやら倒さないと進めないみたい」
「望むところ」
「ええ。頑張って倒しましょう」
アビゲイルは虚空より触手を呼び寄せ、ジャックは持ち前のダガーを構え、ナーサリーライムは本に魔力を集中させた。
~内裏~
「さてマスター。此度の正妻戦争、こちらで遠隔にてご覧いただけます。魔力パスが無いため魔力の譲渡が不可能ではありますが、拙僧も本当に殺すつもりはありませんのでご安心を、協力者の方々にも加減をするように言ってありますし、我が式神は言うまでもなく拙僧が操作しておりますので」
「まあそれならいいけど……あんまり酷いことしないでね?」
「当然。拙僧かつては確かに御身らに敵対しておりましたが、しかし今は共に人理を守る身。程度は弁えております」
既に戦闘を始めたコルデー組とアビゲイル組の様子を見ながら、マスターは不安そうな表情を浮かべる。対して道満は口ではこう言っているが下卑た笑みを浮かべていた。
「さあて次は妖精國の皆さまを────────────ん?」
画面をモルガンたちに切り替えるが、そこには誰も映っていなかった。羅城門は無人であり、既に出立しているのだと考え朱雀大路をよくよく観察するが、どこにもその姿が見えない。どころか、四人が歩いた痕跡すらない。
「消えた?まさか都から退場したのか?しかしあやつらはそのような連中では──────」
道満が思案していると、突如内裏が大きく揺れ始める。
「な、なんだ?」
「これは……結界が崩れかけている!?馬鹿な!既にここにたどり着いた者がいるというのか!?」
「これ大丈夫なの!?」
「……ご安心くだされ。この結界はあくまで侵入を一時的に邪魔するだけのもの。結界が破れても内裏自体には影響はありません。しかしあまりに早すぎる!拙僧の帳をまるで紙を破るがごとく──────」
『ほう?これは東洋の結界であったか。しかし結界というにはあまりに脆い』
「な、何者か!」
「この声は……!」
空間が揺れる。青白い光が空を切り裂くように出現し、そのまま激しく発光すると、その中から四人の女性が現れた。
「き、貴様は……!」
「お待たせしました、我が夫」
「あれ?もしかして私たちが一番?やったー流石お母さま!」
「御無事ですか?マスター。外傷は見られないようですが……」
「もう大丈夫。僕たちが来たからには何も心配はないよ」
「モルガン!それに皆!」
件の妖精國の四人、モルガン、バーゲスト、バーヴァンシー、メリュジーヌが現れた。羅城門から直接内裏へ、結界をぶち抜いてモルガンの魔術”水鏡”で転移したのだ。
「なるほど転移魔術……!これは大きな誤算でした。かの女王モルガンならば我が結界を破り羅城門より内裏に転移することも可能!」
「さて道満とやら。どういうつもりかは知らんが貴様の術は破った。我が夫と聖杯を渡してもらおうか」
「す、すごい。こんな一瞬で……」
「当然でしょ。だってお母さまだもの!」
「そうですねぇ、確かに拙僧の術は破られ、内裏への侵入を許してしまいました。しかし」
「ん?」
「あなた方は何か勘違いしていらっしゃる。この儀式は正妻戦争。マスターの正当な伴侶を決める催しなれば、まさか”4人全員正妻也”と言うつもりではありませんなぁ!?」
「あっ」
「……」
「……」
「……」
「……」
沈黙する4人。互いを見つめるその視線は、友愛や信頼のそれではなく、自分の障害となる敵を見るものであった。道満はニヤリと笑い続ける。
「ここまで来てしまったのですから、ええ喜んでマスターと聖杯はお渡ししましょう。しかしそれはあくまで”一人”!どうぞ話し合いでも殺し合いでもなさってお決めください」
魔術に疎いマスターでも、経験則から4人の魔力が急激に上昇にしていくのを感じた。まるで4人を取り囲む空間が、ゆらゆらと陽炎のように揺れ動いているような感覚であった。
「ここまで来れたのは私の魔術のおかげ。ここはその功績を鑑みて私がふさわしいでしょう」
「そう言いたいんだけどさ、お母さま。今回は私に譲ってくれませんか?」
「失礼ですが、此度はこのバーゲストも譲れません。たとえ陛下や同胞たちが相手でも」
「そういうことなら、僕も譲る気はないよ。マスターは僕のものだ」
「私の命令が聞けないと?」
「娘の玩具を取り上げないで欲しいな」
「これだけは、決して」
「渡す気にはなれないかな」
モルガンが杖を構える。バーヴァンシーは弓(というか琴)を、バーゲストは剣を構える。メリュジーヌも仮面をつけ戦闘態勢に移行する。
「お待ちくだされ」
「「「「!!」」」」
「仮想とはいえここは宮中。帝もおらず名ばかりではありますが、それでも宮にございます。故に皆々様、流血沙汰はご法度なれば、どうか内裏の外で刃を交えていただきたい」
「……確かに。それにここではマスターにも危険が及びます。3人とも一旦外へ──────」
「いえいえここまでお越しくださったのですから、戦いの場は拙僧が用意したしましょう」
「何?」
道満がそういうと、空間がねじ曲がり、内裏の整然かつ厳かな雰囲気が、その建築が、その風貌が、黒い太陽と髑髏の大地の、まさに”地獄”といっていい様相の空間へと変貌した。下総、そして平安京でみたあの空間。否、あの舞台。
「死合舞台!?」
「まあ仕組みはそうですが、此度は殺し合いが目的ではなくマスターの正妻を決める場なれば、名をつけるならさしずめ、”天覧見合舞台”でありましょう」
「天覧見合舞台………」
「生き残ったものこそ聖杯とマスターを得るにふさわしい御仁。故に皆々様、昏き太陽の元にて、決着をつけられよ!」
~右京~
各地で様々な戦いが勃発している中、殺生院キアラは一人悠々と歩いていた。
右京の端、最も内裏に遠いところから歩き始め、一人悠々と歩く。
「何も起きませんね……」
キアラは一人呟いた。何故こんなことになっているのか。原因は前述の妖精國の4人の襲来に原因がある。
ビーストとして一度は完成した(第3の獣の片割れであるが)殺生院キアラは、道満にとっては最も注目しているサーヴァントであった。都には協力を頼んだサーヴァントや自分の式神を各地に配置しているが、彼女に関しては”蘆屋道満本人が”直々に相手をするつもりであった。道満が呼んでいる客人は、その間マスターを警護してもらうための人員であり、キアラがある程度内裏に近づいた時点で道満が彼女の元に向かう予定であった。
しかし件の妖精國の衆が内裏に一番に侵入したことを受けて、急遽天覧見合舞台を展開、すぐにはキアラの元へ向かうことができなくなった。自分にも何らかの大きな壁が立ちはだかると考えていたキアラにとっては意外も意外。拍子抜けもいいところであった。というのも、彼女はその気になればこの程度の都くらいはその宝具で一撃で消し飛ばすこともできるのだ。ただマスターがいるからしないというだけで。
「どうしましょう。このままたどり着いても良いのでしょうか?」
言ったものの、特に立ち寄る価値のあるものはなく、仕方なしに内裏へと歩を進めるのであった。
~朱雀大路中央部~
「では行きましょう。一刻も早くマスターを取り戻すのです」
「ええ。ああ言ってたけど、蘆屋道満ならいつ裏切ってもおかしくないわ。源氏棟梁の頼光さんなら百人力、いいえ千人力ね!ちゃちゃっととっちめちゃいましょう」
「はい!」
宮本武蔵と源頼光も朱雀大路からまっすぐ内裏へと向かい始めた。戦国最強の剣豪と源氏棟梁。どちらもその腕は確かでカルデアでも即戦力となるメンバーである。マスターも二人を重宝しており、その実力は折り紙付きである。今回の参加者の中では実は最有力の組みである。
しかしそれだけに相当な罠が仕掛けられている。先程の殺生院は蘆屋道満が直々に手を下すつもりであったが、今回は別、"別個体"。
「というわけで」
「「!?」」
「先程ぶり、ですね。拙僧はしっかりと説明申し上げましたかな?」
刹那、道化の首が飛ぶ。
「………………」
「擬態のつもりか。首を刎ねても死なないのが外道というもの。起きろ!」
「………ンンンンこれは失礼いたしました」
首の無い胴体が、両手で首を持ち上げて元の位置に戻す。先程と同様の笑みを浮かべ道化は続ける。
「しかしいきなりこの始末とは荒々しさもここまで来ると恐ろしいですなぁ。たとえ味方といえども」
「あなたねぇ、カルデアに召喚されたとはいえ、過去の所業がちゃらになるわけないのよ!?」
「あなたは根っからの外道。同じ主に付いてさえいなければ、即刻首を刎ねています。というか今確かに切り落としましたが……やはり式神ですか」
「いかにも。魂の情報を転写し必要な魔力を充填させればいくらでも我が分身は作れます。本体より力はありませんが、このように体の切った貼ったは容易いのです」
「なら、死ぬまで殺すだけよ」
再び二人は刀を構える。対して道満は空中に印を結ぶと、そこからわらわらと鎧武者が現れた。
「名だたる武者二人に最初から勝てるとは思っておりません。これはあくまで時間稼ぎ。何事にもふさわしい時期があります故、今お二人が内裏に到着してしまうのは惜しい」
「こんな雑兵ども……」
「すぐに片づけます!武蔵さん!」
「ええ!」
~内裏 紫宸殿~
「さてマスター」
天覧見合舞台から一度脱出し、安全な紫宸殿に移動したマスターと蘆屋道満は、争いとは程遠い平穏な空気に心を和ませていた。というのも、件の”客人”がやってきたのだ。
「拙僧としては此度の正妻戦争でマスターの正妻を決めるだけでなく、その先のことも考えておるのです。というのも、正妻と言えばつまりはマスターとその方は夫婦になるわけですから、やはり正しい夫婦のあり方を知っていて欲しいと思うのです」
「正しい夫婦のあり方か……。確かに俺、結婚どころか恋愛経験もないけど……」
「しかしこの蘆屋道満も残念ながら色恋の作法の心得はなく、どうにも拙僧ではお力になりませぬ。そこで、カルデアでも特に仲睦まじい夫婦にお越しいただきました」
「夫婦?サーヴァントの?」
「はい。お入りください」
そういうと、足音とともに二人のサーヴァントが入ってきた。
「こちら、今回拙僧がお呼びした」
「無事か?マスター」
「ごきげんよう、マスター」
「シグルド!それにブリュンヒルデ!」
シグルドとブリュンヒルデ。第二異聞帯ゲッテルデメルングにも遭遇したサーヴァントであり、互いに愛し合うその姿は誰がどう見ても二人が恋仲、夫婦であると知らしめるほどの、つまり所謂、”カップル”である。
「ささこちらへ」
「ありがとうございます」
「なにやら不穏な気配をいくつも感じるのだが……」
「問題ありませぬ。何かあればこの蘆屋道満、命に代えてもお二人とマスターをお守りいたします」
「(ぜっっっっっっっったい思ってないこと言ってる)」
「それはそうとお二人には今回、夫婦円満の秘訣などをお教えいただきたく思い、こちらに招待させていただきました」
「夫婦円満の秘訣……?」
「はい。どうですかシグルド殿、何か思いつきますか?」
「そうだな……当たり前のこともしれないが、思いを口にすることが大事だと思う」
「というと?」
「阿吽の呼吸なんて言葉があるが、所詮愛し合っていたとしても心を読むなんてできやしない。だから自分の思ったこと、感じたことを言葉にして伝えるのが大切だ。例えば……ブリュンヒルデ」
「はい?」
「今朝お前が作った朝食。とても美味しかった」
「!」
「特にあのフレンチトーストというもの。初めて食べたが非常に良かった。今日に限った話じゃない。お前が作ってくれた食事はどれも最上の味だった」
「あれは……食堂のエミヤさんから教わったもので……ですがはい、ありがとうございます……///」
「……とこのように、些末なことでもいいから、思いを伝えることが大切だ」
「なるほど」
「(ブリュンヒルデがめっちゃ頬赤らめてる!シグルドもすぱっと言い切れるのはかっこいいなぁ」
「マスター、貴方も男性にしては思いを口に出すタイプではあるから心配はない。しかし夫婦になったから言わなくても分かる、という考えはお勧めしない。これまで通りに接してあげるべきだ」
「う、うん。すごく参考になるよ」
「ブリュンヒルデ殿はどうでしょう」
「わ、私は……その、適度なスキンシップが良いかと」
「すきんしっぷ?」
「はい。例えばその、ハグとか、手をつないだりとか」
「(少女か!でも可愛い!)」
「私も、二人で出かける時は、手を……///」
「そ、そうだな……///」
「(甘ったるい空気だ)」
「なるほど。いかがでしょうマスター」
「え?ああうんすごくいいと思う。スキンシップは確かに大事だね。ほら、スポーツとかでもハイタッチとかするし、肉体のちょっとしたふれあいは大事だと思う」
「力になれたようでよかった」
「はい。これならお二人をお呼びした甲斐もあるというもの。さて最後にもう一つ聞いておきたいのですが……」
「なんでしょう?」
「マスターの正妻には、誰がふさわしいと思いますか?」
「「!」」
「ど、道満!」
「あくまで参考です。ええ、分からないならそれでも」
「………」
「………」
「ふ、二人とも、気にしなくていいよ。道満ってその、こういうやつでさ」
「当方は」
「え?」
「やはりマスターが自分で決めるべきだと思う」
「ええ。愛は心と心のぶつかり合い。故に外野がどうこう言うことではありません」
「誰を選んだとしても、マスターの決断なら不満はないだろうさ。煮え切らない回答かもしれないが、これでもいいかな?」
「……うん。ありがとう、二人とも」
そういうと二人は平安京を去った。道満は最後に二人にお礼と言って、京都観光ツアーペアチケットを渡していた。
「さて、それでは正妻戦争の方は、どうなっているでしょうか」
「少し時間がたったけど、みんな大丈夫かな……」
マスターと道満は再び、サーヴァントたちを映す画面へと視線を戻したのであった。
道満やっぱいいキャラしてるわ!! 続き待機してます!