正妻戦争 in恋慕輪廻基地カルデア Ⅰ
本作品には以下の要素が含まれます。読む前に一度ご確認ください。
・本作品のカルデアは、メインストーリー1部、1.5部終了時点であり、召喚されているサーヴァントはその間のメインストーリー、イベントで登場した者に限る。
・マスターは男である。
・聖杯は特異点回収後、未だ一度も使用していない。
・若干のキャラ崩壊。
本作品が2021年最後の二次創作になると思います。来年もどうかよろしくお願い致します。
感想等のコメントはどしどしお書きください。毎度全て読ませていただいております。
良いお年を。
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カルデア。人理を守り、修復し、あるいは観測する希望の展望台。現代科学と魔術の最高峰であり、それは地球のどこかで秘匿され続けている機関。
目的は限りなく単純である。”世界を救う”。これこそカルデアの目的、存在理由。複雑なのは方法である。”レイシフト”。長い人類史、そこに現れた特異点を抹消するために過去に転移する。滅ぼされた人類を救うために、その原因となる事象を調査し、抹消する。
2016年、人類はカルデアを除いて全て滅びた。残されたカルデアは失われた世界を元に戻すため、たった一人のマスターとデミ・サーヴァントを七つの特異点に送りこみ、これを消してきた。人類愛がゆえに人類悪となった哀れなる獣を倒し、滅んだ世界は取り戻された。
この後、四つの特異点をさらに解決し、さらには一年後、新たなる敵と戦うことになるのだが、それはまた別のお話。今回語っていくのは、その”比較的”平穏な生活を送っていたカルデアのマスターの物語である。
「聖杯を使えばマスターの子どもだって身籠ることができるだろう?」
会話の途中、何の気なしにアヴィケブロンが放った一言は、カルデアに現界しマスターと契約を結んだ女性サーヴァントに大きな衝撃を与えた。
マスターの専属サーヴァント、シールダーでありデミ・サーヴァントであるマシュ・キリエライトに関する会話がそもそもの発端であった。試験管ベビーであるにしても、サーヴァントであるにしても彼女の肉体は紛れもない人間のそれであり、生物学的には何の問題もなく彼女は子を身籠ることができる。しかし他の女性サーヴァント、つまり本当に召喚されたサーヴァントは、あくまで人間ではない。”英霊”。まさにその言葉がふさわしい。従ってたとえ行為をしたとして、そこから新しい命は起こらない。
「しかし聖杯ならば──────」
聖杯。特異点すら発生させる絶対量の魔力のソース。通称”万能の願望器”。
聖杯をめぐってかつて血なまぐさい戦いが繰り広げられた。七人の魔術師と七騎のサーヴァントの凄惨な殺し合い。その果てに勝ち残った者は、どんな願いも叶えられる。
先に述べたように、カルデアは今まで数多の特異点を抹消してきた。それはいずれもその特異点発生の原因である聖杯の回収という形である。つまりその願望器が複数このカルデアに存在するわけだが、事情が特殊かつそのマスターの人柄ゆえに、未だそれは形を成し、使用されていない。
だがその願い、一体何が叶うのか。
魔力の塊。それも歴史を書き換えるほどの魔力。できることは多い。単純魔術的な強化、あるいは進化は勿論、一地域なら自分の好きなように改変することもできる。”万能”である。ならば、サーヴァントが受肉、つまり人の肉体となることもできる。そんなことは容易い願いである。
「いやいやいや。アヴィケブロン」
「するかどうかではない。やれるかどうか、という話だよ。まあそんな物好きがいるか、というのが第一の問題であるがね」
「そ、そうだよね、うん」
そう。アヴィケブロンが話したのは可能不可能の話。実際にやるのとは違う。そうであっても、思いもよらない聖杯の使い道にマスターは面食らってしまう。
アヴィケブロンと別れた後、マスターはふと考える。
そのカルデアに来て多くの出来事があった。それはとても語りつくせない大冒険であり、あるいは語るべきでない殺し合いの連続であり、語り継ぐべき英雄の物語だ。しかしそんな中で自分がなんとか生き延びてきて、人理をようやく救うことができて、それでもまだ戦いが続いていて、それ以外のことは考えて来なかった。そんな暇はなかった。
しかし言われてみれば、このカルデアの女性サーヴァントは確かに美人が多い。それもかなりの美女である。このマスター、未だ成人年齢ではなく、恋愛経験が特にあるわけではない。戦いと使命のせいでそんな些事は誰も気にしなかったが、彼は青年である。したがってどの女性サーヴァントも魅力的に見えて然るべきである。
「まあ一番はマシュなんだけど……」
長い戦いと冒険で、どのサーヴァントとも絆を深めている。これはつまり、絆レベルにして10は到達しているということなのだが、それだけに、仲間意識や信頼とは別の、恋心にも近しい感情を抱いてしまいそうになるのも仕方のないこと。端的に言えば、このマスター、少なからず女性サーヴァントにときめいてしまっている。
しかしそれは問題ではない。マスターとはいえ人ひとりの感情などそれこそ些末なこと。むしろ問題は、マスター側ではなく、サーヴァント側である。
「とりあえず………弁慶!」
「ここに」
マスターが呼ぶと、どこからともなくサーヴァント・弁慶が現れた。源義経の従者であり、死してなお守り続けたまさに豪傑。その屈強さ、忠義、武者らしさは英雄と言うに足りる人物であり、見事サーヴァントとして現界された。今ではこのカルデアの中で最も信用できるサーヴァントの一人でもある。
「如何いたしましたか、マスター」
「実は頼みたいことがあるんだ」
「何なりとこの弁慶にお申し付けください」
「ありがとう。聖杯を保管している部屋があるでしょ?そこを見張ってて欲しい」
「聖杯を……?」
「うん。具体的には、誰にも取られないように。誰かが勝手に使わないように」
「それは、このカルデアに裏切者がいるということですか?」
「いやいやそんなことはないよ!ただちょっと、嫌な予感がしていてね」
「なるほど……承知しました。この弁慶、命に代えても聖杯を守り通しまする」
「頼んだよ。ああ一応、合言葉を決めておこう。”カルデア最高”。これが合言葉ね」
「”カルデア最高”……承知!」
弁慶は駆け足で聖杯のある部屋へと向かった。
「間に合うといいんだけど……」
このやり取りはマスターと弁慶の二人しか知らないことである。これはなんら不思議のないことだと思われがちだが、普段ならそんなことはあり得ない。何故ならマスターのそばには常に、清姫、静謐のハサン、源頼光が潜んでいるはずだからである。しかし今回はその三人のいずれもがいない。
「何事もない、わけないか」
「…………」
「…………」
「マスター」
「ん?アルトリア」
アルトリア・ペンドラゴン。かのブリテンの王であり、円卓の騎士を従える者。クラスはランサー。第六特異点キャメロットでは敵であったが、その後カルデアのサーヴァントとして召喚された。全てを貫く槍は戦場では猛威を振るい、サーヴァントの中ではトップクラスの戦力である。
白馬に乗り、鎧を身に着け、金色の美しい髪を靡かせる。蒼い瞳でゆったりとマスターを見つめる。
「ここにいましたか。探しましたよ」
「探したって、何か用だった?」
「ええ。とても大切な」
「何?」
「マスターと私の婚姻です」
…………。…………。…………。
「え?」
「聞こえませんでしたか?私とマスターとの──────」
「いや聞こえてはいたんだけど、その、理解が追い付かなくて」
「確かに突然だったかもしれませんね。ですが安心してください。貴方は何も心配しなくてよいのです」
「そんなことないと思うけどね。ええと、一体どうしてそんなことを思い立ったの?」
「私とマスターとの隔たり。……人間と英霊でどうしても生じてしまう差異。たとえ互いの気持ちが一つでも叶わない想いだと思い、今までは胸の内に秘めていました。しかし聖杯を以て受肉すれば、マスターとの愛を育めると」
「やっぱりあの話聞かれてた!」
「さあ我が手をお取りください、マスター。共に参りましょう」
馬上より手を伸ばすアルトリア。マスターは当然断りたいところであるが、サーヴァントに対し人間は無力。抗っても捕まるだけである。
「(気持ちは嬉しいし、できることならしたいけど……あの聖杯を私的な理由で使うのは問題があり過ぎる!ここは丁重にお断りを………)」
「何を戸惑うことがありましょう、マスター!」
「!?」
「我が王と我が主が結ばれる……なんとめでたいことか!」
「式の準備から夢のマイホームまで、我らがお助けいたします、マスター!」
「ぐっ……円卓ズ……!」
突如現れたのはセイバー・ガウェイン、同じくセイバー・ランスロット、アーチャー・トリスタンの三人である。円卓の騎士であり、いずれも頼りになるサーヴァントであるが、今回は味方ではないようである。この三人は生前よりアルトリアと王と騎士の関係であり、その忠誠心は未だ変わらない。
「王は素晴らしきお方でございます。我らが口をはさむことではないかと思われますが、あえて言わせていただきます。この婚姻、何卒お受けしていただきたい!」
「我が王は見た目も素晴らしい。金色の美しい髪、シルクのような白く滑らかな肌、男なら目が離せない豊満なボディ、どれをとっても格別でございます!」
「是非このトリスタンに祝いの歌を奏でさせていただきたい。マスター、どうか」
「そ、そうは言っても………」
「マスター」
「!」
「嫌ならいいのです。嫌なら……」
キャメロットの王たる威厳、気高さを常に感じさせるアルトリアが、段々と涙目になっていた。声色だけは平静を装っているようだが、それも震えている。
「マスター、お願いです!」
「この通り!」
「是非ご婚姻を!」
「さ、三人まで土下座しなくっても……」
もはや断れない雰囲気である。ここは腹をくくってアルトリアを嫁にもらうしかないとマスターが折れそうになった、まさにその時。
「"我が麗しき父への反逆”!!!」
「えっ?」
「ん」
「「「ぎゃああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」」」
後方より突如、宝具が放たれる。一直線に、まるで生きた炎のように伸び、円卓ズを巻き込んだ。騎士たちの絶叫が木霊する。振り向くと、そこには険しい顔をしたモードレッドがいた。
「モードレッド!?」
「父上」
「……どうしましたか。同胞を、同じ円卓の騎士に何故──────」
「話は聞いています。聖杯で受肉し、マスターとご結婚なさるとか」
「ええ。その通りです。今マスター……我が生涯の伴侶を迎えに来たところなのですが」
「……恐れながら申し上げます。どうかおやめください」
「………どういうことでしょう」
「も、モードレッド……」
「マスターには、”先約”がおります故、何卒退いていただきたい」
モードレッド。円卓の騎士の一人にして、王であるアルトリアに反逆した者。クラスセイバー。カルデアでは共に人理を守るサーヴァントとして、かつての円卓のように王とも問題なく接してきた。しかし今、モードレッドの瞳には、かの王に対してさえも、邪魔するものは薙ぎ払うという強い敵意を抱いていた。まさにかつて、反逆の騎士となった時のように。
「………………なるほど」
「おい」
「は、はい」
「こっちに来い、マスター」
「わ、分かりました」
「マスター」
「あ、アルトリア?」
「こちらに」
「ええーっと………」
修羅場である。龍と虎に挟まれ、挙句片腕ずつ引っ張られている状態である。マスターとしてはどちらも選びたくないというのが本音であろうが、しかしそうなれば自分の命がないことは明白である。
「くっ………無事か、二人とも!?」
「私はアーチャーなのでなんとか。ランスロット卿は?」
「こちらもギリギリ生きている」
「太陽があればどうにか止められるのだが、今の我々では……」
「……分かりました。お二方」
「……なんだ?」
「おい、邪魔すんな」
「どうか話を聞いてください。本来なら判断はマスターに委ねるべきですが、いささか今回は強引過ぎました。現にマスターをご決断できない様子。であれば、ここは別の手段で決着をつけるべきかと」
「と、トリスタン!それは……」
「なるほどな。つまり──────」
「モードレッドと私の一騎打ち、ですね」
「!」
「左様です。会話が平行線ならば、その力量で決めるのが合理的」
「お、俺は別にそんなことしなくても」
「いいぜ。その方が分かりやすいや。父上!」
「ええ。場所を変えましょう。マスターはどうかお待ちください。すぐにお迎えに参ります」
「ええ………」
そうしてアルトリアたちは模擬戦闘シミュレーターへと向かっていく。トリスタンの機転によりなんとか一時期的に状況を脱することができたが、なにやら面倒なことになってしまった気がする。
「マスター。勝手に事を運んでしまい申し訳ありません」
「別にいいよ。いや良くはないんだけど……」
「ですがモードレッドまでその気だったとは。我々も気が付きませんでした」
「あれは女性サーヴァントとして現界した身。絆も十分に深まっております故、マスターに好意を抱いてしまうのは仕方ないでしょう」
「気持ちは嬉しいんだけど、まだ結婚とか考えてなくて……」
「先に申し上げた通り、我が王と是非ご婚姻を結んでいただきたく思いますが……やはり決断には時間がかかりますね。二人の事は我々にお任せください。やり過ぎないにならないところで止めますので」
「気を付けてね」
「はい。ありがとうございます」
そういうと、ガウェインたちは二人の後を追った。円卓はいつもこんな感じなのだろうか。
一方そのころ。
「む」
「弁慶」
「若!」
聖杯を守る任に就いた弁慶。予想に反し敵の気配もないので、案外暇だと思っていると、ふらりとあるサーヴァントが現れた。クラスライダー、牛若丸である。牛若丸とは源義経の幼名であり、弁慶とはこの名前の時に出会う。千本目の刀を取るつもりが、天狗に鍛えられた若武者に敗北し、その後死ぬまで仕えた僧兵は、英霊となり再び出会えたことに、この上ない喜びと感謝の念を抱いた。
「はは、こんなところで何をしているんだ?待つというのはお前の苦手とするところだろう」
「おっしゃる通りです。しかし拙僧、マスター殿の直接の頼みにて、ここを守ることを任されたのでありまする」
「へぇ……。ところでさ」
「なんでしょう?」
「実はマスターに頼まれて、聖杯を一つ持ってくるように言われたんだ。悪いけれど、そこをどいてくれないか?」
「なんとそうでしたか。聖杯を」
「ああ」
「それでは、”合言葉”を」
「………」
「………」
「………」
「………」
弁慶は数多の武具の中から、一番得手としている槍を取り出す。先ほどまで和やかだったその顔は、まさに破戒僧と呼ぶにふさわしい、猛々しい、荒ぶる鬼のような表情へと変化した。
「拙僧は悲しい。まさかかつて生涯の忠誠を誓った御方に、こうして刃を向けなくてはならないとは!」
「……弁慶、そこをどけ」
「できませぬ。今の我が主人はマスター殿なれば、この命は死んでも果たさなければならず」
「そうか。残念だ」
牛若丸も剣を取る。源義経の数々の逸話。それを築く前の姿とは言え、紛れもない天才の武者である。二人がこうして相まみえるのは、あの橋以来。
「我は武蔵坊弁慶!ここは決して通さぬ!」
「我は牛若丸!どかぬなら力づくで押しとおるのみ!」
「来いッッ!」
「行くぞッ!」
「なるほど。ははは罪な男もいたものだ!」
「色恋とは我々科学者は無縁ではあるが、それはともかくマスターの頼みならば断る理由なし」
「助かるよ」
マスターが訪れたのはエジソンとニコラ・テスラの元であった。歴史の中ではかなり記憶に新しい英霊であり、日本生まれのごく普通の人間であったマスターでも知っている人物である。
「聖杯を一時的に隔離する装置。我が電流をもってすれば実現可能!」
「今は弁慶が守ってくれてるんだけど、流石に一人じゃ無理があるからね」
「案ずるな。こやつと力を合わせるのはいささか気に入らんが、技術的にはなんの問題もない。大船に乗ったつもりでいたまえ!」
「ありがとう」
「しかし我ら二人では時間がかかりすぎる。エレナ女史にも協力願いたい」
「エレナさんか。分かった……ってあれ、今日は一緒にはいないんだ?」
「うむ。先刻より姿が見えなくてな」
「どこだろう。心当たりは?」
「こういう時はこのカルデア内の他分野の学友たちと語り合っているはずだが……」
「パラケルススとか?」
「そうだ」
「じゃあエレナさんがどこに行ったか聞いてみるよ」
エジソンたちと別れ、エレナ・ブラヴァツキーを探すためにパラケルススの元へと向かった。しかしその思いとは裏腹に、エレナはすぐに見つかった。というのも件のサーヴァントはパラケルススとなにやら難しい会話をしていたのだ。
「残念ですがそれは不可能でしょう、ブラヴァツキ―女史」
「そう……やっぱりそうなのね」
「”賢者の石”、”ホムンクルス”、これらは錬金術が生み出した物ですが、究極的にはこれは通過点でしかない。錬金術の目的、この世の真理の全てを暴くこと。即ち、貴女の求めるものもその過程で研究されました。しかし、”人間を作る”ということはとうとう叶わなかった」
「………………」
「お力になれずすみません。今カルデアで騒がれているように、聖杯ほどの力があればそれも可能でしょう。貴女が受肉すれば、人間として──────」
「ううんいいの。情報提供ありがとう、パラケルスス」
足早に歩き去っていくエレナをマスターは追いかける。
エレナ・ブラヴァツキー。神智学の祖であり、魔術にも精通している。彼女が口癖のように形容しているように、”マハトマ”という高次存在に接触し多くの叡智を得たとされる。クラスはキャスター。才人才女が集うカルデアで、その知識と学術はトップクラスであり、英霊となった今でも、”マハトマ”、”ハイアラキ”を研究し続けている。
「エレナさん!」
「ま、マスター!?」
「ええと、今暇かな?」
「え、ええ。別に問題ないわ」
「そっか。実は頼みごとが………………………」
「……?」
「あー……ごめん、言いにくいんだけど、聖杯を守るのを手伝って欲しい」
「……!」
「事情は話さなくても分かると思うけど、実は聖杯が狙われてて」
「分かってるわ」
「そ、そっか」
「………」
「………」
「さっきの会話、聞いてたんでしょ?」
「えっ」
「隠すのが下手ね。そう、私も聖杯を使って受肉して、マスターと一緒になりたい。生前はロシアの貴族と結婚したけれど、今は貴方に添い遂げたい」
「エレナさん……」
「でも聖杯をそんなことには使えないわ。だから他の手段で受肉できないか考えたの。でもパラケルススが言っていたとおりね、聖杯以外では実現不可能。最初からわかってたんだけど……」
「ごめん。気持ちは嬉しいけれど」
「いいの。マスターが気にすることじゃないわ」
「でも……」
「これできっぱり諦めます。でもせめて現界している間は、そばにいさせてね?」
「勿論」
「………」
「………」
「………」
「貴女らしくない」
「「!?」」
その時、突如現れたのは諸葛孔明……あるいはロード・エルメロイⅡ世であった。
「え、エルメロイⅡ世!?」
「現代魔術をもってしても、そもそも聖杯という魔力ソースは稀有な事例、あるいは貴重な産物だ。然るに、その使用・管理に慎重になるのは分かる。しかし、だ」
「!」
「それで己が願いを諦めるのは惜しい。これが正しいの用法なのか分からないが……”マハトマ”ではない」
「マハトマ……!」
「…………そうね。そうよ」
「エレナさん?」
「そうよ、こんなことで諦めるなんて”マハトマ”じゃないわ!!たとえ間違っていることだとしても、やめた方が良いとしても、気持ちを殺すなんてできない!!」
「ふっ……」
「ありがとう、エルメロイⅡ世。目が覚めたわ」
「まあ、マスターにとっては良くないことが起きているのだがな」
「え、え~~~~っ!」
「それじゃあマスター!私これから聖杯を取ってくるわ。多分エジソンとテスラはそっち側なんでしょ?あの二人をぶっ飛ばしてから、私の”マハトマ”を完成させる!」
高々に宣言すると、エレナは駆け足でエジソンたちのところに向かった。彼女が突然襲ってきたら二人は大きく動揺するだろう。一対二でも、今のエレナになら負けるかもしれない。
「しょ、諸葛亮……」
「すまない。しかし数々の不可能を可能にし、人理を救ってきた君も悪いぞ。たとえ英霊でも、かなり輝いて見えてしまうだろうからな」
こうしてカルデアの方々で、正妻戦争の幕が切って落とされた。しかしこれはまだ序章に過ぎない……。
人理くんはぶっ殺され汎人類史はデッドエンドを迎え、地球にはカルデアより新たなアダムが新人類史の種を植えようとしていた。 即ち、ユニヴァース時空誕生である