半導体メーカーの全体像〜年収も成長性もトップクラスの業界理解〜
平均年収1,681万円。営業利益率49%。世界シェア100%。
これらは、トヨタでもソニーでも三菱商事でもない。おそらく名前すら聞いたことのない日本企業の数字だ。
東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック。就活や転職の人気ランキングにはまず登場しない。CMも街中の看板もない。だがこれらの企業は、世界中の半導体工場が止められないほど依存する装置や材料を作り、その圧倒的な競争優位性をそのまま社員の報酬に反映している。
知らないから調べない。調べないから選択肢に入らない。この情報格差のせいで、破格の条件を持つ企業群を大多数の人がスルーしている。
この記事は、その情報格差を埋めるための企業名鑑オリジナルの業界研究である。
半導体とは何か、なぜこんなに儲かるのか、日本にはどんな企業があるのか、どんな職種があるのか、業界のトレンド、選考対策、志望動機の組み立て方まで、面接で必要になる知識をすべて1本にまとめた。読み終えた頃には、半導体メーカーの志望度が高まり、面接官と対等に業界の話ができるレベルの理解が手に入るはずだ。
本記事の目次
- 第1章:半導体メーカーを知らないのは「もったいない」
- 第2章:そもそも半導体って何か
- 第3章:なぜ半導体メーカーは儲かるのか
- 第4章:日本の半導体メーカー主要プレイヤー徹底比較
- 第5章:半導体メーカーではどんな仕事ができるのか
- 第6章:半導体業界の今とこれから
- 第7章:半導体メーカーの選考を突破するために
- 第8章:おわりに
第1章:半導体メーカーを知らないのは「もったいない」
知名度ゼロでも年収はソニー超え
東京エレクトロン、信越化学工業、アドバンテスト、ディスコ。これらの社名を聞いて、何をしている会社かすぐに答えられる人はほとんどいない。
だが、平均年収を見ると景色が一変する。就活・転職の人気ランキング上位に並ぶ企業と比べてみよう。
5大商社の頂点である三菱商事にはさすがに及ばないが、東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテックの3社はソニーを上回る。ディスコにいたっては平均年齢37.3歳でこの水準だ。若いうちから高い報酬を得られる環境にある。人気ランキング常連のトヨタ自動車と並べても、差は歴然としている。
しかもこれらの企業の多くは世界シェアトップクラスの製品を持ち、海外売上比率が7〜9割に達するグローバル企業でもある。名前を知られていないことと、優良企業であることは、まったく別の話だ。
なぜ知られていないのか
理由は単純で、ほとんどの半導体メーカーがBtoB(企業間取引)の会社だからだ。
スマートフォンの中に入っている半導体チップを作っている会社、そのチップを製造するための装置を作っている会社、さらにその装置に使われる超高純度の材料を作っている会社。消費者が直接触れる製品を売っているわけではないから、テレビCMも街中の看板もない。
ただ、あなたが今この記事を読んでいるスマートフォンやパソコン、電車の制御システム、コンビニのレジ、病院のMRI装置。現代社会で半導体が使われていないものを探すほうが難しい。半導体メーカーは、見えないところで世界を動かしている業界だ。
この記事を読み終えたあとの状態
この記事のゴールは、半導体業界って何?という状態から、面接で業界の構造やトレンドを自信を持って語れるレベルまで一気に引き上げることだ。新卒も、第二新卒・中途で転職を考えている人も、この1本で半導体業界の全体像をつかめるように構成している。
長い記事だが、気になる章だけつまみ読みしても構わない。目次を見て、自分がいちばん不安な部分から読み始めてほしい。
第2章:そもそも半導体って何か
レストランにたとえるとわかりやすい
半導体という言葉を聞いて、理系の専門的な話だと身構える必要はない。レストランにたとえるとすんなり入ってくる。
目の前に届く料理(完成品のスマホやパソコン)は、さまざまな材料と工程を経て作られている。
食材にあたるのが半導体材料だ。シリコンウェーハという超高純度のシリコンの円盤や、フォトレジストと呼ばれる感光材料を作っているのが、信越化学工業やSUMCO。最高級の食材を育てる農家のような存在だ。
調理器具にあたるのが半導体製造装置。東京エレクトロンやSCREEN、ディスコは、世界最高の包丁やオーブンを作る専門メーカーにあたる。
レシピと調理技術にあたるのが回路設計と製造プロセス。ルネサスエレクトロニクスやソニーセミコンダクタソリューションズがシェフのポジションだ。
そしてレストランがApple、トヨタ、ソニーなどの完成品メーカー。最終消費者に製品を届ける役割を担う。
つまり半導体メーカーとは、レストランに最高の食材や調理器具を提供する裏方のプロフェッショナル集団だ。消費者の目には見えないが、彼らがいなければ製品は完成しない。
半導体チップとは何か
もう少し技術的な話をしておく。半導体とは、電気を通す導体(金属など)と、電気を通さない絶縁体(ゴムなど)の中間の性質を持つ物質のことだ。代表例はシリコン(ケイ素)。このシリコンの性質を利用して、極めて小さな電子回路を大量に詰め込んだのが半導体チップ(IC:集積回路)になる。
スマートフォンの中には数十個もの半導体チップが入っている。CPUは考えるチップ、メモリは覚えるチップ、通信用チップはつながるチップ、カメラのイメージセンサーは見るチップ。電子機器のあらゆる機能を司る頭脳であり神経だ。
なぜ「産業のコメ」と呼ばれるのか
半導体は産業のコメとも呼ばれる。コメが日本人の食生活の基盤であるように、半導体はあらゆる産業の基盤だからだ。
スマートフォンは1台あたり約1,000個以上の半導体チップを使う。自動車は約1,000〜3,000個で、EV・自動運転車ではさらに増える。データセンターではAI処理用の高性能GPU1基に数百億個のトランジスタが載り、医療機器のCTやMRIの心臓部も半導体だ。電力制御、通信基地局、鉄道の信号システムといった社会インフラも半導体なしには動かない。
2020年のコロナ禍で半導体の供給が滞ったとき、世界中の自動車工場が操業停止に追い込まれ、ゲーム機は品薄になり、家電の納期が数ヶ月遅れた。あの混乱が突きつけたのは、半導体のサプライチェーンが止まると現代社会そのものが止まるという事実だ。
半導体メーカーの5つの分類
半導体メーカーと聞くと1種類の企業を想像しがちだが、実際にはサプライチェーンの中での役割によって大きく5つに分かれる。転職・就職で志望する際、自分がどのカテゴリの企業に興味があるのかを明確にしておくと、面接での説得力がまるで変わってくる。
用語メモ:ファブレスとファウンドリ
ファブレス(fabless)は「工場(fab)を持たない(less)」の意味。チップの設計だけを行い、製造は台湾のTSMCなどに委託する。NVIDIAがまさにこの典型で、世界的に話題のAI用GPU「H100」を設計しているが、実際に製造しているのはTSMCだ。逆に、製造だけを請け負う会社がファウンドリ。TSMCは世界の先端半導体の約9割を製造していると言われており、もしTSMCが止まれば世界中のスマートフォンやサーバーの生産が滞る。
注目してほしいのは、日本企業は特に製造装置と材料の分野で圧倒的な世界シェアを持っているという点だ。半導体チップそのものの製造ではTSMCやSamsungに後れを取っているが、チップを作るための道具と材料では日本が世界をリードしている。転職先・就職先として半導体業界を考えるうえで、ここが最も重要なポイントになる。
第3章:なぜ半導体メーカーは儲かるのか
まず、業界の規模感をつかんでおこう。
世界半導体市場統計(WSTS)によると、2024年の世界半導体市場規模は約6,112億ドル(約90兆円)に達した。前年比19.0%の成長だ。2030年には1兆ドル(約150兆円)を超えるとの予測もある。
この数字を日本のGDP(約600兆円)と比べると、世界の半導体市場だけでGDPの約6分の1に相当する。単一の部品カテゴリとしては異例の巨大さだ。スマートフォンの進化、AIの爆発的普及、自動車のEV化、データセンターの拡大。半導体の需要を押し上げる要因は増えることはあっても減ることはない。
トップシェア=高利益率のメカニズム
半導体業界を理解するうえで最も重要な法則がある。特定の製品分野で世界トップシェアを持つ企業は、極めて高い利益率を出せるという構造だ。
メカニズムは3つある。
ここから先は長くなるので、↓のnoteで解説している。 半導体に興味がある就活生や転職者や投資家はぜひ一読してみて欲しい。
【半導体メーカーの全体像】
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