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2023.11.20 16:00

【山極壽一×伊藤穰一】人類学とテクノロジーから見るこれからの「まち」の可能性

京都大学前総長/現総合地球環境学研究所所長で、ゴリラをはじめとした生物の研究を通じて「人間とは何か」を探究してきた人類学/霊長類学者の山極壽一と、米・マサチューセッツ工科大学にてメディアラボの所長を務め、現在はデジタルガレージ 取締役や千葉工業大学学長、デジタルアーキテクト、ベンチャーキャピタリスト、起業家としても活動する伊藤穰一。人間とテクノロジーが“本当の意味で”共存し、イノベーションを起こしていくためにはリアルな「まち」での「体験」「縁」が重要になっていくという。それぞれの分野におけるトップランナーであるふたりの対談から、その可能性を紐解いていく。

人間の社会性を培ってきた「3つの自由」の変革

——これまで人類学/霊長類学を研究されてきた山極先生、社会とテクノロジーの変革を起業家、哲学の視点から論じてこられた伊藤先生ですが、「まちづくり」「コミュニティづくり」という視点において、お互いの専門領域について、どのような交わりがあるとお考えでしょうか?

山極壽一(以下、山極): 僕はそもそも人間が“まだ人間でなかった頃の人間性”に興味を持ち、ゴリラを対象に研究をしてきました。

700万年の人類の進化のうち、99%は狩猟採集という正業様式をとってきましたが、そこで出てくるキーワードは「分散」です。一カ所にとどまらず移動し、環境にあった形で集団サイズを変える中で培った人間の社会性は、私たちの心身に埋め込まれてきました。

ところが、1万2000年前ごろから農耕牧畜が始まり、「定住」「所有」という概念が生まれました。都市生活、領土の侵略、産業革命がおこり、時間と人間は管理されるようになった。そのスピードはあまりにも速く、人はその変化に適用しきれていないと思うんです。

これは逆説的ですが、伊藤さんの専門領域であるブロックチェーンや情報通信技術は、いま我々が取り巻かれている社会の在り方をひっくり返すことができる可能性を秘めている。“分散型インターネット”の新たな展開によって、変革が起こる可能性があると見ています。

これまで、人間の社会性は「移動する自由」「集まる自由」「対話する自由」の3つの自由で培われてきました。それをいま、情報通信技術が変えようとしているのだと思うのです。ただ、人間の身体性や心は、生の身体と生の付き合いに依存していますから、バーチャルな世界に浸りすぎず、地に手や足をつけておく必要があります。

伊藤穰一(以下、伊藤):山極先生のゴリラの話は僕も大好きで、人類の歴史についてはよく考えているんです。

技術が進化し、世の中が複雑化していくからこそ、どこかで地に足がついていなければいけない、というのはおっしゃる通りだと思います。シリコンバレーのAI界隈の方と話をすると「自分たちはシミュレーションの中に住んでいるのではないか」と本気で信じているんだな、と思わされます。それはなぜかというと、哲学者の西田幾多郎さんの言葉でいう、「純粋経験」がそこにはないからなのです。

コンピューターは人間が体験したものを解析して処理していますが、リアルな世界で「今日は暑い」「おいしそう」などと感じることから、私たちの倫理が生まれます。若い世代が環境問題に関心を持っているのは、純粋経験による肌感覚があるからでしょう。「この地域は変わってしまった。もっとこんなまちをつくりたい」という気持ちは、感情をコンピューター処理しているだけでは生まれない心の動きだと思います。

人間は進化の中で、会計の概念を生み出し、人々が持つ異なる価値をお金に換算して文明を発展させてきました。いまの日本は、お金の勝ち負けに換算できるグローバルの競争の世界では、負ける未来に向かっているかもしれない。その中で活気あるまちをどうやってつくっていくかを考えれば、キーになるのは、「お金で換算できないものをいかに管理し、表現できるか」になるでしょう。

YNKに根付く「拡大なき生きがい」という価値観の可能性

——YNK(八重洲・日本橋・京橋)のように、老舗の飲食店や大企業、スタートアップなど、さまざまな規模、属性の人や企業が集まっているまちに、どのような可能性を感じていますか。

山極:YNKエリアは日本経済の主要な大都会であると同時に、400年続く土地の文化を守り続ける方も住んでいるという特異な場所です。日本文学史を研究されてきたドナルド・キーンさんは、日本の魅力を「昔の暮らしがそのまま残っていることだ」と話していました。茶道や華道は生活に根付いていますし、調度品も昔に使っていた貴重なものをそのまま大事に使っていたりする。暮らしの中の細々としたものの中に、何百年前と変わらないものが色濃く残っていたりするでしょう。

文明はスクラップ&ビルドの考え方で、過去のものは廃棄して新しいものを建てて発展してきました。一方で、キーンさんは「日本人は過去を捨てない」とおっしゃった。その良さは、ここYNKエリアにも共通するもののような気がします。



伊藤:江戸から続く地域の中で隣同士が仲良く、過剰な発展がなくてもハッピーでいられる。それはアメリカにはない、日本人ならではの価値観だと思うんです。

いまでも何代も続いているお店には、「拡大なき生きがい」があります。店の大きさを広げることなく、親から受け継いだ土地をそのまま子どもに引き継いで、“老舗”が生きている。そこには、同じことを続けていくことに美を感じるという価値観があります。

イノベーションを生み出すベンチャーの世界では、拡大を追いかけるのが勝ち筋になるでしょう。一方で、サステナビリティや平和の観点で見れば、競争と拡大よりも「自分の地域の中でどうやっていきいき暮らしていけるか」を追求することに大きな価値がある。江戸文化や町人商人の伝統を受け継ぎ、決まった土地の中で心豊かに生き続けられるという点で、YNKエリアには、社会が求めるサステナビリティの重要なヒントがある気がしています。

——確かにYNKエリアの老舗の旦那衆は町会活動等を通じたボランティアに熱心に取り組みつつ、大事にお店を守り続けられていますよね。

いまこそ見直される「社交の時代」

——多様な価値が融合しているYNKエリアで、イノベーションをいかに生み出していくべきか。その中で「受け継がれるべき考え方」とはどのようなものであるとお考えですか。

山極:大事なのは「つながり」です。職人のまちには“ほんまもん”がありますよね。世界にひとつしかないもの、長い年月をかけて受け継がれてきたものなど、“ほんまもん”は人によって価値が異なります。それらに触れ、それらを介して人がつながることで、価値は新たにつくられていく。つながりが幾重にも折りたたまれて存在していることが、人々の心を豊かにし、発展する余地をつくるのではないかと思います。

伊藤:どんな場所にも、新しいものが入ることはすごく必要です。でも、新たな環境に対応して進化する力、変化するレジリエンス(逆境に向き合う柔軟性)がなければ、古いだけの価値はポキッと折れてしまう。しかし、400年続いてきたこのまちは、そういった新しいものや人を受け入れる柔軟性や寛容性があったのかもしれません。僕は地域に残っている、その地域が持つ性質を捉えることが、レジリエンスを高める重要なひとつの要素だと思っているんです。

以前、文化的なまちの研究をした際に、アートが栄えたまちの特徴を調べたことがありました。例えばソーホーのようにアートがまちに根付いた地域は、まちづくりとして意図したわけではなく、アーティストが自然と集まって生まれました。地域開発において、もともとある文化と新しいものを入れて、自然な進化論が起きる設定をつくっていくことは、非常にチャレンジングなこと。価値ある社会実験ですよね。



山極:まさにそうですね。これからは、バーチャルの世界でもリアルの世界でも、「社交の時代」が改めて見直されると思うんです。人間が本来持つ「移動する自由」「集まる自由」「対話する自由」を駆使しながら、いろんな人たちが会って、一緒に何かをつくり出していく。小さなコミュニティが立ち上がって、集まることが楽しくなる。まちはこれから、それを支える場になっていくでしょう。

そのときに必要なのが“ほんまもん”で、その場に合った道具や、時には料理や芸術などを介して社交の場が演出されることでコミュニティはより強固になっていきます。そこに伝統や歴史があればなおいい。

伊藤:僕は茶道を嗜んでいるのですが、「道」と名付けられるものは、人が使ったものをとても大事にしているんだなということを、改めて学びました。外国人の学者など知人が来日したときには、お茶室で400年以上前に江戸時代に使われていた茶道具を使ってお茶をお出しします。すると、「歴史の中に自分が入れた」と本当に感動されるのです。

拡大や成長よりもまず、「昔の茶道具をずっと大事にしていく」ことに価値を置く文化は、世界のほかの国にはない、日本の強みでしょう。しかも、博物館の展示品を眺めるのではなく、みんなが手にとって触れて、参加しながら伝統に感じられる。入り込めたという参加の感覚が、リアル空間での人と人との「縁」をつくっていくと思います。

山極:そして、これからは人々が「分散」しながら、それぞれの個性を発揮できるような小さなコミュニティづくりが必要ですね。

伊藤:昨今のオンラインのコミュニティで見えてきた課題は、コンテクストがない中で情報がすべて外に出てしまうと、すぐ炎上してしまうということでした。そこで出てきたのは、少しだけ情報を見せて、入りたい人が来れば入れるというクローズされたコミュニティです。

YNKエリアには、外からちゃんと見えているけれど、実際に来なければ体験できない、老舗と新規の融合があります。「わかる人にはわかる」という濃いカルチャーでありながら、ちゃんと外の世界と接続されている。そのバランスがとられたまちだなと思います。

山極先生がおっしゃる“ほんまもん”を残しながら、いかに多くの人たちの純粋経験を増やし、かつ文化の濃さを薄めずに持ち続けられるか。そんな難しい挑戦を、これからも期待して見ていきたいです。


山極 壽一◎人類学者/霊長類学者。第26代京都大学総長。鹿児島県屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地でゴリラの行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し、人類に特有な社会特徴の由来を探ってきた。著書に、『家族進化論』(東京大学出版会)、『「サル化」する人間社会』(集英社インターナショナル)、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』(朝日新聞出版)、『共感革命―社交する人類の進化と未来』(河出新書)などがある。

伊藤 穰一◎ベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者。現在はデジタルガレージの共同創業者取締役兼専務執行役員Chief Architect、千葉工業大学学長、同変革センター長。2011年から2019年までは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務めた。主な近著に、『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』(SB新書)『〈増補版〉教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン』(講談社文庫)がある。

Promoted by 東京建物 / Text by Rumi Tanaka / Photographs by Shuji Goto /Edit by Miki Chigira

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2025.09.25 20:00

日本文化の新たな価値創造拠点へ!カルチャープレナーが語る東京・八重洲のまだ見ぬ可能性

開発が進むなかでも文化の薫りを残す街、東京・八重洲。進化のさなかにあるこの街を、カルチャープレナーが読み解くとどうなるか。工芸、酒、茶の各分野から気鋭の3人が集結し八重洲を巡って白熱鼎談。未来の八重洲像が浮かび上がる。


交通の要衝であり、大企業が集まるビジネスの中心地・東京駅前。その一帯を指す八重洲・日本橋・京橋(YNKエリア)は、老舗の飲食店が路地を照らし、江戸時代から続く日本三大祭の山王祭があるなど歴史や文化も色濃く残っている。革新と伝統、経済と文化の溶け合うこの街の可能性は、カルチャープレナーの目にはどう映るのか。

鼎談するのは、茶道家でTeaRoom代表取締役CEOとして茶の湯文化を産業へ届ける岩本涼、工芸領域の付加価値向上を目指す丹青社「B-OWND」室長の石上賢、日本の酒文化を広く伝える酒販業「いまでや」の創業家出身の小倉爽椰。八重洲エリアだからこそ実現する、日本文化のアップデートの可能性を語り合う。

岩本 涼(以下、岩本):八重洲エリアでは東京建物と協業し、オフィスでのウェルビーイング向上支援サービス「オフィスで茶の間」の開発などに取り組んできましたが、そのなかで感じるのは日本の「玄関口」である街としての厚みと深みですね。特に訪日客にとっては、必ず通るであろう「入り口」であり「出口」です。

「入り口」として東京駅に降り立つと、おそらく駅前の高層ビルを前に、都会らしさを感じるでし ょう。そこから地方へ出かけ、趣の異なる風景や日本の伝統文化を目にして「出口」として八重洲へ戻ってきたときには、日本を体験する厚みが増しているんじゃないかと思うのです。

八重洲の路地や老舗に目を向けてみようとなるかもしれない。日本での体験を通じて街の見方を変えることができるわけですね。その意味で、八重洲エリアは、何度降り立っても新しい気づきが得られると思います。

いわもと・りょう◎TeaRoom代表取締役CEO。1997年生まれ。 2018年にTeaRoomを創業。幼少期に茶道裏千家に入門し、茶道家としても活動。中川政七商店社外取締役。
いわもと・りょう◎TeaRoom代表取締役CEO。1997年生まれ。 2018年にTeaRoomを創業。幼少期に茶道裏千家に入門し、茶道家としても活動。中川政七商店社外取締役。

小倉爽椰(以下、小倉):訪れる人も多様ですね。東京駅西側の丸の内と印象が異なるのは、八重洲はビジネスパーソンから訪日客、家族連れまで偏りなく幅広い層が集うこと。そんな場所は、東京のなかでもここくらいでしょうね。行き交う人々の「ハブ」になるような街というか、人と人との関係を深めるツールになるお酒と似ている部分がありますね。

石上 賢(以下、石上):アクセスの良さも相まってさまざまな人に開かれている街ですよね、八重洲は。こうした街の寛容性と出会いの偶然性があることが、文化の発展に効いてくると思うのです。

岩本:行き交う人たちの「玄関口」である特性を踏まえて、八重洲で日本文化のアップデートを考えていくとなると、まずは偶然の出会いを創出するタッチポイントの設計が重要になるでしょうね。例えば、日本でも海外でも人気の抹茶は、茶の湯文化につながる有効なタッチポイントになりそうです。

小倉:お酒でいうと、酒屋の一角でお酒を楽しむ日本独特の文化「角打ち」がうまく作用しそうですね。隣の人と自然に始まる会話を通じて、訪れた人たちの心がすっぴんでいられるような空間です。まさに偶然の出会いが生まれる八重洲でこそ楽しめると感じます。

おぐら・さや◎いまでや商品コミュニケーション本 部、madam IMADEYA執行役員。1996年生まれ。新卒でいまでや入社。その後サッポロビールに転職。24年、いまでやに戻る。
おぐら・さや◎いまでや商品コミュニケーション本 部、madam IMADEYA執行役員。1996年生まれ。新卒でいまでや入社。その後サッポロビールに転職。24年、いまでやに戻る。

岩本:お茶・お酒・工芸は、互いに影響を受け合いながら発展してきたといえますよね。茶事は、お茶と日本酒の両方を楽しむ様式ですし、それぞれ神事にも用いられたりもしている。これらがそもそも独立した存在同士ではなかった。

小倉:文化のコラボレーションは当社も取り組んでいます。例えば日本酒とお着物。銀座にある老舗の呉服屋さんに協力してもらい、かつては女性禁止でつくられたお酒と、男性向けではなかった着物とをジェンダーレスの時代に文化の成り立ちと一緒にそれぞれを楽しんでもらいました。堅苦しくなく、様々な方に楽しんでもらえる提案のひとつですね。

文化は「閉じながら」伝えるもの

石上:ただ、同時に文化には「開かれているけど、一部閉じている」設計も必要ですよね。僕が携わるB-OWND事業で話すと、取り扱う作品や価格帯を、あえてマス向けに開きすぎないように設計しています。

岩本:茶の湯でいえば、抹茶ラテは入り口で、そこから興味を深めていった人向けには、茶会を用意するというような。サービスではなくセレモニーであるという本来の精神性を伝える本格的な茶会や茶事を行うことで、付加価値向上につなげたいのです。いわば、文化体験の強度や密度の使い分けですね。

小倉:そうですね、文化のアップデートにも、グラデーションが必要でしょう。お酒も、生産者が命を込めてつくっている一滴と飲み放題のそれって同じ価値ではないのだと思います。当社はもともと千葉で創業した小さな酒屋ですが、両親が全国の蔵元に直接足を運んで泥くさくコミュニケーションを重ねてきました。一緒に農作業をしたり、お酒を交わしたりして生産者の方々と家族のようにつながり、お酒の持つ価値を肌で感じてきました。その価値を届けていきたいという意識が強くありますし、業界への責任も果たさなくてはならないとも考えています。

石上:工芸の世界もそれに似たところがありますね。工芸の場合は、マネーを生んでいくことに対しても、より切実な現状がある。市場規模はバブル期から8割減の800億円以下という崩壊危機にある業界で、売り切って結果を出すことにコミットする必要があります。作家さんには「売れなくなったら契約解消でも構わない」と伝えています。「B-OWND」はそういう本気度のなかで文化を継承している側面もあります。

いしがみ・けん◎丹青社 B-OWND室 室長。1992年生まれ。10代から画家である父の作品販売を手がける。 2019年、アート・工芸作品のプラットフォーム「B-OWND」を創設。
いしがみ・けん◎丹青社 B-OWND室 室長。1992年生まれ。10代から画家である父の作品販売を手がける。 2019年、アート・工芸作品のプラットフォーム「B-OWND」を創設。

八重洲を知財集積の「実験場」に 

岩本:レガシー業界や文化の背景も併せて伝えるための付加価値向上をどう考えるかですね。あらためて八重洲の特徴を踏まえて考えると、この場所は日本文化のもつ精神性への興味喚起を促す場、そして日本のあらゆる文化関連事業者へ送客する発信地としてとらえることができますね。

加えて、コーヒーやアートがそうですが、西洋諸国は「誰もが知るもの」を意図的に生み出し、付加価値を上げる方法に長けている側面があります。他国、ほかの領域から学ぶなどして日本文化でもしたたかに仕掛けることが非常に必要だと思います。

その意味では、八重洲は文化発展の知財が集約される、付加価値向上の実験場にもなりうる。その試行錯誤を文化間でシェアしていきたいです。

小倉:当社でも日本酒や日本ワイン、国産蒸留酒を低温熟成庫で寝かせて、高付加価値商品に生まれ変わらせる取り組みを行っています。タッチポイントを多層的に設置できる八重洲だからこそ、日本を深掘りできる場所になるといいですね。

石上:僕がプロデュースする際に大切にしている価値観が、職人や商人の文化がつくる「歴史性」、最先端の今をうつす「時代性」、街について個人が思い思いに考えられる「個人性」。これらを交差させ、最大化することが重要と考えていますが、八重洲はこれらがすべてある、文化発展に最適な街だと感じます。

文化は「冷凍保存」しないほうがいい。保存や記録だけでは、あとで食べられなくなってしまうので、時代に合わせながら継承していく必要がある。まさに西洋の模倣でない、日本の美の評価基準や様式、表現のルールを定めていけると素晴らしいですね。

文化は「文明開化」の略という話もありますから、八重洲から固定化できない面白さを開花させられるのではないでしょうか。


東京建物
https://tatemono.com/


八重洲や日本橋・京橋一帯「YNK」エリアのイメージムービーを公開中。さまざまな人々が共創する様子を音楽の「Session」になぞらえた。

YNK SESSION MOVIE
監督 : 野田智雄/音楽 : 吉岡たく

<協力>
野永喜三夫(日本橋ゆかり)/伊藤東凌(臨済宗建仁寺派 両足院) /岩本涼(TeaRoom)/八木幣二郎/一般社団法人江戸消防記念会/T3 PHOTO FESTIVAL/白木屋伝兵衛/TOKYO SQUARE GARDEN/TOKYO IDEA EXCHANGE

Promoted by 東京建物 | text & edited by Rie Suzuki | photographs by Kizuku Yoshida

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2025.08.19 16:00

世界に「ジャポニズム3.0」で旋風をおこせ。カルチャープレナーが語る、文化×経済の未来

文化と経済に新たな接点を創造する「カルチャープレナー」。その活動を後押しする京都市と、東京八重洲・日本橋・京橋といった日本経済の中心地を担う東京建物が、文化と経済の好循環を見据え、CULTURE PRENEURS11名と多様な領域のCXO、金融機関、支援者らとともに、一堂に会す場を設けた。ここでは新たなインサイトが生まれたキーノート・セッションの一部を紹介する。


コロナ禍をへて日本文化が三度世界へ

起業家、投資家、事業会社が集う日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS Kyoto 2025」最終日となる7月4日。そのサイドイベントとしてForbes JAPAN 藤吉編集長司会進行で、「カルチャープレナー交流会~文化と経済の好循環を目指して~」が京都市内で行われた。

カルチャープレナー(文化起業家)とは、文化やクリエイティブ領域で新しいビジネスを広げ、豊かな世界を実現しようとする人を指す。カルチャープレナーの支援団体、カルチャープレナーコレクティブズの理事も務めるBIOTOPEのCEO佐宗邦威は 「世界の流れとして『ジャポニズム3.0』が来ている」とキーノート・セッションの口火を切る。

「19世紀に浮世絵が、20世紀後半に電気製品が席巻した時代をへて、コロナ後の今、改めて日本文化が注目されています。アニメ、漫画、ゲームを入り口に、食や工芸がある。その背景にある日本の精神性が幅広く、奥深く世界から認知されつつあるように感じます」

現在の日本の国際収支で黒字なのは、IPとインバウンドのみ。これらを生かして文化的価値を上げていくことが、今後の日本経済の鍵を握る。

「日本は文化と経済を接続しなければ国が持たない状況にあります。そして、この二つをつなげられる存在こそがカルチャープレナーです」

キーノート・セッションにはカルチャープレナー代表として、シーベジタブル共同代表の友廣裕一とB-OWNDプロデューサーの石上賢が登壇。佐宗は2人を「この2〜3年で一気に文化と経済の両輪を回し始めている人だ」と評する。

文化の最前線でビジネスを展開する2人の目には、何が見えているのか。モデレーターを務めた佐宗の進行のもと、それぞれの現在地、そこから見えてくる世界の潮流について語られた。

モデレーターを務めた佐宗邦威
モデレーターを務めた佐宗邦威

2030年には市場規模1.7兆円。海藻に集まる世界からの共感

海藻の生産を通じた食文化のアップデートを目指すシーベジタブル。「今、海藻が世界から注目を集めている」と友廣は言う。

「海藻は太陽光だけでタンパク質を生み出すことができ、例えば海苔は40%がタンパク質です。海藻はサステナブルでヘルシーでエシカルな、人類がこれから向き合うべき食材。世界銀行が2023年に発表したレポートでは『2030年には海藻が1.7兆円の産業になる』と試算されています」

世界では過去ほとんど海藻は食べられてこなかった。そんな中、一気に存在感を高めているのが日本だ。

「海藻の食文化の最先端は日本です。日本には1500種類もの海藻が生え、約50種類が食べられている。縄文時代から海藻を食べ続けてきた歴史と多様性は圧倒的で、世界中の星付きレストランのシェフが『海藻の食べ方を教えてほしい』と日本にやってきて、僕らのところにも訪れるほどです」

ただ、日本の海藻の収穫量は減少傾向にある。海苔の生産は20年間で半分以下に落ち込み、価格はこの4年で2倍以上に。日本国内の一人当たりの海藻の消費量も28年間で50%減った。その現状をシーベジタブルは「新たな生産技術」と「食文化のアップデート」によって変えることを目指す。

「海藻はこれまで天然採取が中心でしたが、僕らは研究開発を重ね、10種類以上の海藻の量産技術を確立しました。一方、和食でしか海藻を食べないことで海藻の消費が減っていることから、多様化する食文化に適応した新しい海藻の食べ方を開発しています。そうやって両輪を回すことで、日本の食文化を守り、発展させたいと考えています」

シーベジタブル共同代表の友廣裕一

海で海藻を育てると、海の生き物が増える。それは養殖の海藻であっても変わらない。研究の結果、そんなエビデンスが取れたことで潮目は一気に変わったと友廣は振り返る。

「海藻の消費量が上がるほど海藻の生産は増え、海の環境は良くなっていく。つまり海藻は消費されることで好循環が回る商材です。小売業の中には『川下から社会を変えたい』という強い思いを持っている方がいるのですが、そこに海藻がフィットしました」

2024年秋には伊勢丹新宿店と日本橋三越本店のデパ地下を海藻でジャックする「EAT&MEET SEA VEGETABLE」という企画が実施され、120店舗が海藻を使った170以上の新商品を開発。さらには、セブン&アイ・ホールディングスや良品計画など大手企業からも声がかかり、新たな企画につながっている。日本が世界をリードしている海藻食文化は、国内でも再定義されつつある。

「これまでも海藻は『美味しくて、体に良くて、海にも地域にもよいものだ』と信じてはいたものの、その価値が伝わりづらいのを感じていました。そこにエビデンスを示せたことで、一緒に食文化をアップデートしようとする人が現われて世界線が変わっていった。今では僕らの事業に共感した方が自走してくださっているような感覚があります」

「次なるアートは工芸」。世界トップキュレーターの視点

B-OWNDは「テクノロジーを活用し、日本の工芸をアートとして世界に広める」ことを掲げる。石上は工芸をアプリケーションに、その基盤となる評価基準や様式をOSにたとえ、こう説明する。

「工芸を単体で輸出しても、文脈が切断されてしまっては本来の価値は伝わりません。アプリケーションとOSはセットであり、要するに様式自体を輸出して展開することが重要です」

2024年にはマイアミで行われた世界最大アートフェア「SCOPE MIAMI BEACH 2024」の一角に茶室を作り、茶会を通じて世界に祈りを捧げる作品「"Ichinen” ーーThe Life Force at Every Moment」を発表した。

「茶器や掛け軸、生花、お茶会を開催できる権利などをNFT化し、それら一式をセットにして数千万円の価値がつき実際に購入されました」

千利休からはじまった茶道界でもお茶の行為自体に値段がつくということが初めて。海外市場にとってどれだけ日本文化が尊ばれているのかがわかる歴史的な出来事だったのかもしれない。

従来は国内を中心に活動していたが、近年は海外顧客が激増。2024年は売上の20%が海外を占め、「今年は昨年を超える勢いがあり100万円を超える作品が毎月SNSを介して売れている」(石上)。

「ある欧州の著名なキュレーターは、現代アートは末期であると話しています。1917年にマルセル・デュシャンが『泉』を発表したことで現代アートが始まり、価値基準はビジュアルの美しさからコンセプトに変わりました。一方、美術史は揺り戻しの連続であり、現在は、価値の源泉がコンセプトだけではなくなってきており価値基準が移行しつつあります。新しい価値基準の象徴としての工芸に可能性があるのではと世界のキュレーターが言っているのです」

そこへの追い風となったのが配信サービスだ。日本のアニメが一気に世界へ広まったことで「日本の考え方を海外のクリエイターが理解できるようになった」と続ける。

「西洋の美術史はキリスト教がベースであり、二元論です。片や東洋はもののあわれや侘び寂びなど曖昧であり、ゆえに説明が難しかったわけですが、それが世界に浸透してきている。そうした流れの中で、日本の文化や工芸の理解が大きく進み、様々な国や機関から展示の依頼が来ています」

戦争や経済格差、異常気象。奇しくも不安定な世界情勢によって「日本文化に価値が帯びる」と石上は指摘する。

「わびさびは、戦国時代に浸透し今に伝えられてきた概念であり、明日生きられるか分からない中で発展してきました。言語だけでなく、茶道などフォーマットとして儀式化することでつないできた文化が日本の美しさ。分断や対立を乗り越えてきた文化形態であり、それが西洋から望まれているのを感じます」

B-OWND プロデューサーの石上 賢

鍵は産業を超えた「文化×経済」の共創

海藻と工芸。それぞれ領域は異なるが、「自分たち以外」の存在の重要性が共通点だ。石上は「共創が不可欠」と、連携の重要性を訴えた。

「産業と文化が分断してしまっているのは、文化が短期的にはお金になりづらいからだと思います。でも長期的な視点に立てば金閣寺のLTVはすさまじく、国益になり続けます。歴史あるものに現代性を掛け算することで価値が生まれると考えれば、日本文化全体の価値が上がることで、そこに乗っかるブランドが成立する。それは企業が個別にやれることではなく、国家統合戦略として考える必要があると思っています」

石上は韓国の文化統合戦略を例にあげ、「K-Popと韓国ドラマで席巻し、そこにコスメとファッションを乗せ、最後に伝統文化を串刺しにする構成」と説明する。大きな絵を描き、産業を超えて取り組まなければ太刀打ちはできない。

「全員でまとめてかからなければいけません。どうすれば日本文化全体の付加価値が上がるのか、みんなで共創し、底上げをする。そんなムーブメントをつくっていくのが急務だと感じています」

友廣は「お金だけで実現できることではない」と前提し、仲間を増やすことが必要だと語る。

「文化を作り、その先の世の中を変えるのは、僕らだけで背負えるものではありません。みんなでやれば絶対に世の中は良くなっていくし、文化ができれば皆さんの暮らしが豊かになる。海藻は肥料やバイオプラスチック、燃料など、食以外にも多様な展開があるはずなので、大企業を始めさまざまな方たちと事業創出をやっていきたいです」


日本文化をアップデートし、世界に飛び込んでいく希望の文化起業家たち。今回、交流会に出席したCULTURE PRENEURSは以下の11人(同行者除く。五十音順)。今後も京都市と東京建物はCULTURE PRENEURSを支援し、世界に誇る日本文化醸成の新しい兆しを模索していく。

秋吉浩気(VUILD CEO)

石上 賢(丹青社 B-OWND室 室長 / プロデューサー)

扇沢友樹(めい 共同代表)

小山ティナ (Pieces of Japan 代表取締役)

諏訪将志(水玄京 代表取締役社長 角居元成 代理)

高橋史好(concon代表取締役社長 / TOKYO LOLLIPOP)

塚原龍雲(KASASAGI 代表取締役社長)

友廣裕一(シーベジタブル共同代表)

藤本 翔(Casie 代表取締役)

矢川裕士(ヘラルボニー Co-CEO 松田 崇弥 松田 文登 代理)

山川智嗣(コラレアルチザンジャパン代表取締役 / 建築家)


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