コタタマの事件簿
1.マールマール鉱山-【敗残兵】前線基地
キャメルの取材がクソ長引いたので、【敗残兵】のクランハウスにお邪魔してそのまま泊まることになった。
ウチの子たちも一緒である。
いや、別に俺を置いてさっさと帰るなりして貰っても一向に構わなかったのだが、ウチの三人娘は俺が知らない間にリチェットと友誼を結んでおり、お泊まり会を決行することになったのだ。
もはやレジェンドと化している先生はトップクランのメンバーにも大人気。宰相ちゃんことメガロッパがガチガチに緊張してるのが見てて面白かった。
一方、アットムは【敗残兵】のガチ層に囲まれていた。
トップクラスのクランに所属する廃人は、大まかに言ってピラニア型とマニア型、お笑い担当の三つに分類される。
ピラニア型はありとあらゆるコンテンツを貪り尽くす万能タイプだ。器用貧乏なのかと言えばそうではなく、何をやらせても本職顔負けの腕前を持っている。
マニア型は職人タイプ。興味があることだけをとことんまで追求するプレイヤーであり、大半は戦うことが人生だと豪語するような戦闘狂である。
お笑い担当は分類不能なタイプで、なんでトップクランに居るのかよく分からないような雑魚キャラである。代表例はネカマ六人衆だ。
アットムを取り囲んでぼそぼそと談義しているのはマニア型の面々で、モンスターがこう動いたらああするだのとコアな話に花を咲かせているようだ。
少し離れたところでウチの三人娘と【敗残兵】の女衆がキャッキャと歓談しており、できれば俺もそっちに混じりたかったのだが、キャメルの猛攻を受けているサトゥ氏が離してくれなかった。
「ですからぁー。私はコタタマさんが無駄に垂れ流してるお喋りを記録に残すべきだと思ってるんですよ〜」
「いや、それはダメでしょ……。あの人、放っておくと本当にいつまでも一人で勝手に喋り続けるよ? しまいには通り掛かりの知らない人たちを呼び止めて仕切り出すから」
そんなことねえよ。俺は反論した。
「あるよ。何言ってんの?」
サトゥ氏は俺の反論に反論した。
「仕切り魔じゃん。びっくりしたわ。びっくりした。お前、言っとくけど人力自動マッチングのレコード保持者だからな? 未だに旧式のマッチングで捌き切れるのはお前くらいだよ……」
あ? 旧式って何だよ。新式とかあんのか?
「お前、掲示板くらい見ろよ。新式マッチングは職別に並ばせてバランス調整してから指名していく方式だ。旧式は仕切り役の負担が大きすぎたからな」
はあ? そんなのバランス取れる訳ねえじゃん。人力自動マッチングの利点は、強制的に組ませれば大抵のヤツは妥協するっていう事なかれ主義を突いた仕組みだぞ。
「そうなんだよなぁ。だから新式は荒れることが多い……。お前、定期的に広場に顔出せよ。お前のメソッドがあれば旧式の利点がハッキリしてフォロワーが増えそうな気がする」
面倒臭えな……。お前んトコから二、三人寄越せよ。俺が人格改造してやるから。もういっそのこと二人か三人、広場に常駐させたほうが早えだろ。
「人格改造って何するんだよ。怖えよ。お前の、あれだ、査問会から二、三人回して貰うのって無理か?」
無理だろ。なんで俺の可愛い部下を割かなきゃならねえんだよ。
いや、人格改造って言ってもソフトな感じのやつよ。人力自動マッチングのコツは如何にしてギリギリで全滅させるかだから。クソの役にも立たねえ善意を捨てさせれば一発だよ。簡単、簡単。
「簡単じゃないだろ。その時点で既に魔族に種族変更してるじゃん」
タンバリンはキャラ立ってたよな。
「ほらぁ、始まった。ここからが長いんだよなぁ。なに? ドラゴンボール? お前、超神水と仙豆について語らせるとマジで長いんだよな……」
長くないよ。ただ、カリン様については俺なりに譲れない部分があってだな……。
こうして俺たちの夜は更けていった。
AM 10:23
その翌日の出来事である。
「わ、わぁー!?」
リチェットの悲鳴が俺の耳をつんざく。
前線基地は常に死と隣り合わせの環境だ。モンスターによる襲撃など日常茶飯事である。
【敗残兵】のメンバーが素早く駆けつけ、少し遅れてウチの子たちも現場に急行する。
「なっ……!」
サトゥ氏が目を剥いた。
廊下ですっ転んだリチェットが血まみれになっている。
「リチェット……!」
しかしリチェットは無事だった。震える指先を廊下の奥に向ける。
「わ、私は大丈夫。転んだんだ。滑った。廊下が、血の、血の海だ。こ、コタタマ……!」
リチェットは二つ隣の部屋で寝ている筈の俺の身を案じているようだ。廊下にはバケツでブチ撒けたように大量の血液が付着しており、それはちょうど俺とリチェットの部屋を行き来するように広がっていた。
リチェットが俺の部屋のドアをばんばんと叩く。
「コタタマ! 無事か!? か、鍵が掛かってる。コタタマ、鍵を……!」
「リチェット、どけ!」
サトゥ氏が俺の部屋のドアに蹴りを叩き込んだ。
このゲームのキャラクターの身体能力は人間をやや上回る。基礎ステータスは、ほぼ体格を無視しレベルに準じる。サトゥ氏のレベルは20を越えており、国内サーバーではトップクラスだ。
蝶番が吹っ飛び、俺の部屋のドアが半ばからへし折れた。部屋に踏み込んだサトゥ氏が「うっ……!」と呻いて二の足を踏む。
サトゥ氏を押しのけたリチェットが、床に倒れている俺の身体に駆け寄った。
「し、死んでる……!」
外は土砂降りだ。カッと稲光が走り、遠雷がゴロゴロと鳴り響いた。
俺の死体がごろりと転がる。床一面が血の海だった。散乱した魔石が怪しい光を放っている。
「その場を動くな!」
珍しくひっ迫した様子で、先生が俺の死体を検分する。
「自殺ではない。凶器は見当たらないが、鋭い刃物でひと突きにされている。部屋には鍵が掛かっていた……」
先生は窓に近寄って縁の部分をじっと見つめた。
「外部から侵入された形跡はない。これは……」
先生は、ゆっくりと振り向いて宣告した。
「密室殺人だ。犯人はこの中に居る」
カッと雷鳴が轟いた。
AM 11:22
俺を殺した殺人鬼がこの中に居る。
リビングに集められた両クランのメンバーに、先生とサトゥ氏が中心となって聞き取り調査を行っている。
リチェットの証言。
「……昨日の夜にコタタマが酒くれとか言って私の部屋に入って来ようとしたんだ。23時頃だったと思う。酔っ払ってるみたいだから追い返したんだけど、あの時に部屋に入れてあげていれば……くそっ。コタタマ……。一体誰があんな……」
「23時……。少なくともその時点ではコタタマ氏は無事だったってことか。死亡推定時刻とも合致している。コタタマ氏が殺されたのは朝方だ。先生、やはり何らかのトリックでしょうか? 自殺じゃない、しかも密室と来れば……これはもう不可能犯罪だ」
「現段階では何とも言えない。部屋には何の手掛かりもなかった。しかし……。リチェット。君の部屋に訪ねてきたコタタマは、その時どんな感じだった? もう少し詳しく聞きたい」
リチェットは力なく首を横に振った。
「私は部屋に鍵を掛けてたから……。コタタマを直接は見てないんだ。声の調子から酔っ払ってることはすぐに分かったけど」
リチェットは、遅くまでウチの子たちと部屋でお喋りしていたらしい。アリバイがあるかと言えば微妙だ。何度か部屋と居間を行き来しており、ただ俺の酒の催促があって以降は部屋から出なかったらしい。
リチェットは俺の死を悔やんでいた。近くに居ながらどうして気付いてやれなかったのかと。
赤カブトの証言。
「お酒の催促、ですか? いえ、私はその時、リチェットさんの部屋に居ませんでした」
サトゥ氏が眼光も鋭く赤カブトを睨み付ける。
「お前がやったんだろ。言え」
赤カブトはわたわたと両手を振った。
「わわわ、私じゃありませんよぅ! わ、私だったとしても恥ずかしくて、そんなの言えません! サトゥさんのエッチ!」
「……朝方は何をしてた?」
「朝ですか? えっと……ポチョさんスズキさんと一緒に寝てました。アットムくんと一度、ドア越しに話してますね。そのぅ、朝食までにキチンと部屋を片付けるようにというお話でした。その時、ポチョさんとスズキさんも一緒にお返事してます」
「それは何時頃だ?」
「うーん。7時頃かなぁ? ゴメンなさい。あんまりよく覚えてないです」
ポチョの証言。
「7時30分だな。ハッキリ覚えてる。アットムは何かと私の職分に口を出してくる。そうやってデキる子アピールして後で先生とコタタマに褒められようとするんだ」
サブマスターのお前がぐーすか寝てるもんだからアットムくんが仕方なく動いたんじゃねえか。
しかし7時30分という具体的な数字が出た。俺の死亡推定時刻とほぼ一致している。赤カブトと口裏を合わせている可能性は低いだろう。そんなことできるほどウチの子たちは器用じゃない。
夜遅くまで騒いでいたこともあり、明確なアリバイを持っているヤツは少数派にとどまった。大抵が自分の部屋で寝ている時刻だったのだ。調査は暗礁に乗り上げ、こく一刻と時間だけが過ぎ去っていく。
ネカマ六人衆とじゃれ合っていたセブンが苛立ちも露わに席を立つ。
「ふん。下らねえ。どうせ痴話喧嘩の類だろう。先生。俺にはアリバイがある。俺は部屋に引っ込ませて貰いますよ。内部犯なんだろ? 殺人鬼なんかと一緒に居られるかよ」
「ちょっ、死亡フラグ……」
サトゥ氏が引きとめようとしたが、効率厨の決意を翻すことはできなかった。
そして三分後にセブンの死体が発見された。屋根から飛び降りての転落死だった。いや、ひょっとしたら突き落とされたのかもしれない……。
いずれにせよ、第二の犠牲者が出てしまった。俺の死は惨劇の序章に過ぎなかったのか?
セブンの遺体を前に、先生は事件の解決を誓う。
「サトゥ。全員を居間に集めてくれないか」
「先生。それでは?」
「いや。証拠などない。探しても見つからないだろう。この事件は、そういう事件なんだ」
先生はキッパリと言った。
「放っておけば犠牲者が増えるだけだ。先手を打つしかない」
PM 00:30
「集まってくれたようだね」
居間に集まった面々を眺めて、先生は名探偵よろしく室内を右往左往する。
「先に謝らせてほしい。この事件に関して、私はあまり口出しするつもりはなかった。そうした私の態度がセブンの死を招いたのだろう。全ての責任は私にある。この通りだ。どうか許してほしい」
先生はぺこりと頭を下げた。
サトゥ氏が慌てて手を振る。
「先生っ、頭を上げてください! 謝られても何が何だか分かりませんよ……。ハッキリ言ってください。コタタマ氏を殺したのは一体誰なんですか?」
先生は天井を仰ぎ、しばし沈黙してから、ひづめを立てた。
「その前に一つ。サトゥ。君は本件について不可能犯罪だと言ったね。その通りなんだ。君は惜しかった。さすがはトップクランを率いるマスターだ。しかし惜しかった。もう少し時間があれば、おそらく君は真相に辿り着いていただろう」
「密室トリックですか? けど、あれは無理ですよ。どこを探しても何も痕跡が見つからない」
「そうじゃないんだ」
先生はひづめをくるりと回した。
「考え方が違うんだよ。できないことは、できないんだ。こう考えるといい。コタタマを殺害した犯人が部屋に鍵を掛けることは不可能だった。ならば、鍵を掛けたのはコタタマ本人だ。それ以外にはあり得ないんだ」
【敗残兵】の面々がどよめく。
先生がひづめを立てたまま居間を横切り、一つずつ謎を解き明かしていく。
「この事件は三部構成になっている。三つの事件が折り重なっているんだ」
そう言って先生はリチェットの前で立ち止まった。
「第一の事件。ペタタマ殺害未遂事件だ。……リチェット、君はドア越しにコタタマと話したと言ったね?」
「あ、ああ。言った。酔っ払ってるようだった」
「そう。そして、その後、君は部屋から出ることはなかった。廊下の血痕はね、その時に付いたものだよ」
「……え?」
リチェットは混乱した。それはそうだろう。もしも先生の言うことが正しければ、事件はその時に既に起こっていたことになる。
先生は言った。
「リチェット。君の部屋のドアを叩いた時、コタタマは既に半死半生だった。血痕から見て、まず致命傷だ」
リチェットが「ひっ」と悲鳴を上げた。
「あ、あり得ない! わ、私はヒーラーだっ。どうして酒なんだ!? 一言、助けを求めててくれれば私はっ……!」
「コタタマはお酒を飲みたかったんだ」
先生は悲しそうな瞳をしている。
「少なくともその時のコタタマにとって、差し迫った死は大した問題ではなかったんだよ。慣れてしまったんだね。殺されることに……」
「そんなっ、そんなことが……!?」
半狂乱に陥るリチェットを、先生はゆっくりと宥めた。
「落ち着きなさい。……そう、リチェット。君は責任を感じていたんだね。けれど、もういいんだ。もう、いいんだよ」
「あ……」
リチェットが不意に脱力した。ソファに身体を沈め、小さな子供のように身体を丸める。
「わ、私……。先生……」
リチェットの縋るような眼差しに、先生は一つ頷いた。
「大丈夫だよ。リチェット。君は安心していいんだ」
そう言って、くるりと赤カブトに向き直る。
「リチェットは、第一の事件について犯人に心当たりがあった。彼女は常にサインを出していた。それは、ジャム。君を疑いたくなかったからだ」
第一の事件。俺殺害未遂事件……。
「ジャム。コタタマを刺したのは君だね?」
一斉に注目を浴びた赤カブトが耳まで真っ赤になって俯いた。
「は、はい。だ、だってペタさんが。ペタさんが、嬉しいこと言ってくれるんです。私のために、危ないことまでしてくれて。わ、私、我慢できなくて……!」
言っている意味が分からない。それで何で俺を刺す?
しかし先生は赤カブトの狂った思想については言及してくれなかった。
「そう。リチェットは部屋から出なかった。しかし、ジャム。君たちは自分の部屋に戻る際、廊下の血痕を目撃している筈なんだ。だが、肝心のコタタマは廊下には倒れていなかった。そうだね?」
赤カブトは頷いた。
「はい。私、ペタさんを刺す時に嬉しくて。嬉しすぎて、ちゃんとトドメを刺してあげれなくて……。は、恥ずかしい」
赤カブトの狂った証言に【敗残兵】の面々はドン引きだ。
だが、それゆえに第二の事件は引き起こされたのだ。
サトゥ氏がハッとして言う。
「殺害、未遂? そ、そうだ。先生。死亡推定時刻が噛み合わない。コタタマ氏が死んだのは朝方だ。生き残ったんですね? あいつ、最後の最後まで足掻いたんだ。そういうヤツだ、あいつは」
しかし先生の返答は無情だ。
「サトゥ。私は致命傷と言ったよ。ジャムに刺されたコタタマは助からなかった」
「でも、未遂って!」
サトゥ氏は興奮している。
「出血多量が原因で死んだなら、それは未遂じゃないでしょう!? コタタマ氏は死ななかったんだ! あいつは生きてた!」
雰囲気に呑まれている。
そうなるよう先生が誘導している。証拠がないからだ。犯人に自供させることでしか、この事件は解決しない。
俺の話術はネフィリアから教わったものだ。ネフィリアは、元々先生の教え子の一人だった。俺とネフィリアの話術は、先生を源流としている。
先生はつぶらな瞳をゆっくりと細めていく。
「ジャムはコタタマを殺してはいない。何故なら、瀕死のコタタマにとどめを刺したのは別の人間だからだ」
ギョッとしたサトゥ氏がポチョとスズキを見る。ポチョとスズキは何も言わなかった。容疑を否認すらしてくれないのかと、サトゥ氏は脱力した。
「く、狂ってる……」
「サトゥ。それは違う」
先生がサトゥ氏をたしなめた。
「違うんだ。リアルですら、そうだ。人それぞれに価値観は異なる。何に重きを置くか。失われたものは決して戻らない。しかし、そうではないとしたら。たった一つしかないと信じられていたものが、そうではないと理解できてしまったなら」
先生は、ゆっくりと振り向いてポチョを見つめた。
「第二の事件。ペタタマ殺害事件。手を下したのは君だね、ポチョ?」
「わ、私じゃない」
ポチョは容疑を否認した。顔を真っ赤にして目をキョロキョロとしている。
「し、死に掛けてるコタタマが居たら誰だって殺したいと思う。もう少しで、ああっ……もう少しで死ぬって分かってたら誰だって」
しかし興奮のあまり自白を始めた。
「廊下に出て、一目で分かった……! 致命傷だ。もう助からない。私、私……。他の誰にも譲りたくなかった。もう死んじゃってるかもしれない。そう思ったら、私……!」
そうして、部屋でぐったりしている俺を見つけたポチョは俺を刺し殺したのだ。
感極まってポロポロと涙を零すポチョを先生は優しく見つめている。わんわんと泣き出したポチョをスズキが抱き締めて、よしよしと頭を撫でた。
「先生。この事件は三部あるって言ってたよね。黒幕が居る。それは、私……だよね?」
スズキはにっこりと笑った。
「うん、正解。私がコタタマにお酒を飲ませたの。近頃、ジャムが元気なかったから。元気になって欲しくて。ゴメンね、ジャム、ポチョ。私が悪いの。全部、私が企んだの」
「いいや、違う」
先生はスズキの言葉を鋭く否定した。
「そうじゃない。スズキ、君には無理だ。君を軽んじている訳ではないが、この事件はそれでは終わらない。第三の事件……」
先生は言った。
「コタタマ殺害事件だ」
【敗残兵】の面々は、揃いも揃って鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
使い物にならなくなっているサトゥ氏とリチェットに代わり、メガロッパがその場を代表して質問する。
「せ、先生? コタタマさんはポチョさんに殺されたんですよね? どうして……」
先生は周囲の面々をじっくりと眺めてから、キッパリと言った。
「コタタマの部屋で殺害されていたのはコタタマではない。別人だ。床に散らばっていた魔石は捜査を撹乱するためのものだろう」
第一の事件。ペタタマ殺害未遂事件。
第二の事件。ペタタマ殺害事件。
そして、第三の事件。コタタマ殺害事件。犯人は……。
先生は、キッと天井を見つめた。
「もういいだろう。出てきなさい。コタタマ」
くくくっ……。
さすがは先生だ。
俺はずるりと天井裏から這い出した。
居間に降り立ち、キョトンとしている面々を眺める。クッ、何つー顔してるんだよ。
くくくくっ……ふははははははははっ!
俺は哄笑を上げた。
くくくっ……。仕方ねえな。種明かししてやるよ。
俺はな、ポチョに殺されてすぐに死に戻りしたのさ。
先生の仰る通りだ。俺の部屋に鍵を閉めたのは俺さ。ここに居る俺じゃなく、部屋に転がってるほうのな。
要はこうだ。俺は死に戻りするなり、査問会の一人を呼び寄せて俺の死を偽装するよう命じた。
クラフトした剣で刺してやって、自分で鍵を閉めるよう言ったのさ。
タネが分かれば簡単だろ?
先生。よく分かりましたね。やはり俺はあなたには敵わないらしい。参考までに聞いておきたいんですけど、いつから俺を疑ってたんですか?
「最初からだよ。それ以外に答えがなかったからね。入れ替わっていることに気が付いたのは、死亡推定時刻と証言に食い違いがあると気付いてからだけどね。……しかし一つだけ分からなかったことがある。何故こんなことを?」
それはですね。
俺はニコリと笑って、ウチの子たちの頭を順繰りに撫で回した。
「俺が生きてると分かったら、また殺されそうだったので」
命が惜しかったので隠れてたんですよ、と俺は照れ隠しに頬をつるりと撫でさすった。
これは、とあるVRMMOの物語。
なお、セブンは一人で勝手に死んだ模様。
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