第三章、ョ%レ氏の逆襲
1.古代遺跡-女神像
サトゥ氏と一緒にキャメルの取材を受けている。
「サトゥさんっ、メカドラ戦に引き続き大活躍ですね! 地下通路を見つけたとのことですが!」
「ええ。リビングアーマーに囲まれた時はもうダメかと思いましたが。これまでかと思った時にね、ふと脳裏を過ったんですよ。俺には仲間が。俺を信じて送り出してくれた仲間が居るんだって……!」
マイクを向けられたサトゥ氏がぺらぺらと綺麗事を口にしている。
サトゥ氏の隣に並んでいる俺は、それをジト目で見つめている。
キャメルが俺にマイクを向ける。何っつー笑顔だよ。さてはコイツ金のことで頭が一杯だろ……。
「バンシーさんっ、まるでドラマのような救出劇でしたね!」
ポンコツの襲撃を受けて仲間とはぐれた俺をサトゥ氏が単身救出してくれた、という筋書きだ。
俺は憮然として答えた。
「……まぁな。気に入らねーけど、借り一つってトコだ」
さしもの俺も、俺が周りからどういう目で見られているのかくらいは自覚している。
俺とサトゥ氏が二人並んでニコニコしてたら怪しすぎるだろ。何か隠してますと白状してるようなもんだ。
サトゥ氏が俺の肩をぽんと叩いた。
「借りなんて気にするなよ、バンシー。戦友じゃないか。戦友が危なくなったら助ける。当然のことだ」
コイツ……。良心の呵責とか一切ねえのか? 俺はジト目でサトゥ氏をじっと見つめた。
2.回想-ョ%レ氏との対決直後
マップに強制送還されるなり、俺は偽装工作に入った。
死に戻りのお陰で酔いは覚めた。ようやく頭が回り始めたのだ。
鬼武者の巣。俺と赤カブトがここにいるのはマズい。酔っていてよく覚えていないが、赤カブトは扉のパスワードロックを解除していたような気がする。
俺は、何やらもじもじしている赤カブトの肩を掴んで揺すった。
おい、俺はどのくらい居なくなってた? 一時間くらいか? その間に誰かここに来たか?
「……ペタさん。私のために。わ、私……」
おい! 聞けよ、俺の話! 感動するのは後にしろっ。マズいぞっ、こりゃ言い訳が通用する状況じゃねえ……!
だが、状況を把握しないことには動きようがない。見たところ室内には俺たち以外誰も居ないようだが……。
いや。
「何だ、ここは……? こ、コイツは、ランスロット・オルタだと……」
サトゥ氏に嗅ぎ付けられた。よりにもよってコイツかっ……!
いや、違う。偶然じゃない。サトゥ氏のアビリティだ。まだスイッチが切れていないらしい。ヤツはスライドリード事件の際、先生の居場所が何となく分かるようなことを言っていた。その時はボトラーの戯言と俺は相手にしなかったのだが。
サトゥ氏は、試験管の中で眠る鬼武者を呆然と見つめている。
俺は斧を掴んで、ゆっくりとサトゥ氏に近付く。こうなったら殺すしか……。
幸い、サトゥ氏の利き腕はブッ壊れてる。メカドラ戦でヒーラー連中のマナが枯渇していたため治せなかったのだ。
目撃者は消すしかない。
死ねえ……。俺はサトゥ氏の首に斧を振り下ろした。
だが、するりと躱したサトゥ氏が自然な動作で俺の背後に回った。見えてはいた。見えてはいたが……。か、身体が反応できなかった。
サトゥ氏が親しげに俺の肩に腕を回してくる。
「コタタマ氏。俺は両利きだ。プレイヤーの主体はむしろキャラクター側にある……。先生の教えを受けたのはお前だけじゃない」
くっ、俺に勝ち目はねえってコトか。
……このゲームの本質は、キャラクターを育てることにある。経験値を稼いでレベルを上げるというだけじゃない。言ってみれば子育てに近いだろう。何を思い何を為したかでキャラクターの性向や後天的な形質を獲得していく。
漫然と日々を過ごすだけで国内サーバー最強の座につけるほど甘くはない、ということだ。
クランぐるみで計画的にキャラクターを育成してやがる。それが俺たち雑魚との違いなんだと言わんばかりに。
うっ……。サトゥ氏は俺の喉元に剣先を突きつけた。慎重に俺から身体を離し、赤カブトを見つめる。
「驚いたぞ。まさか最深部まで来てるとはな……。俺としては、途中で追い抜いてしまったんじゃないかと心配してたんだが」
くそっ、コイツ既に赤カブトの正体を疑ってやがる。
だが、赤カブトは遠回しに尋問されていることに気が付いていない。俺は内心で悲鳴を上げた。スペック低すぎぃ! Windowsですらもうちょっと察しがいいんじゃねえのか……!?
赤カブトはハッとしてぺこりと頭を下げた。
「ご、ゴメンなさい! あの、どうしてもペタさんと二人きりで話したいことがあって……」
サトゥ氏はいつでも俺を刺し殺せる姿勢をキープしながらニコッと笑った。
「いいんだ。気にするなよ。合流できて良かった。ホッとしたよ。さ、みんなお前のことを心配してるぞ。コタタマ氏のことだ。問題は解決したんだろ? 部屋の外でささやきして来るといい」
魔力を使うと変な声が出る。サトゥ氏は気遣いできる男をアピールし、体良く赤カブトを部屋から追い出した。俺も引き止めはしない。サトゥ氏の口を封じねばならない。ここで刺し違えてでも、だ。
二人きりになるなり、サトゥ氏はいそいそと剣を鞘に納めた。
「コタタマ氏。何か事情があるんだろ? 深くは聞かないよ。俺はお前のことを信じてる。このことは俺とお前の胸の内にとどめておこう」
ぺらぺらと口を回しているが、まったく俺を見ていない。目ん玉をぎょろぎょろと動かしてハミルトンさんたちを忙しなく観察している。
こ、コイツ……。俺は戦慄した。このボトラー、鬼武者を独り占めするつもりだ。性根が腐ってやがる。いよいよ本性を現しやがったな。
サトゥ氏はぺらぺらと口を回している。
「俺とお前でジャムを守るんだ。俺たちは一蓮托生だぞ。晴れて運命共同体という訳だ。しかし最深部まで来ておいて何も見つからなかったというのは不自然だ。お前からそれとなくジャムに聞いてくれないか? このマップには他にも何か秘密がありそうだ。先生が言っていた気象を操る装置も見つかっていない。ヨロダンとも何らかの関連性があるかもしれない。なに、安心しろ。俺は口が固い。うまくやるさ。お前も俺を信じてくれるよな? 友達だろ?」
サトゥ氏は歯列をギラつかせて俺たちが運命共同体であることを強調した。
薄汚れてやがる。だが、俺にとって悪い話じゃないことも確かだ。
俺はサトゥ氏の提案を快く承諾し、赤カブトから地下へと続く隠し通路があることを聞き出した。
なお、女神像は施設内にあった。リチェットに蘇生された雪だるまが発見したようだ。相変わらず仕事の早い男だ。変な具合に雪と融合してしまったようだが。まぁ死に戻りすれば元に戻るだろう。
蘇生魔法には限界がある。俺のアルコールが抜けなかったように。
かくして新マップの騒動はひと段落した。
今後は発見された地下通路の調査に攻略組が挑むことになる。
まったり派の俺はここでいったん脱落だ。実家に帰らせて貰うぜ。凄みを増した人間関係は気掛かりだが、生憎と俺はゆるい日常ライフを送ると心に決めてるんでな。いかなる障害が立ち塞がろうとも、俺は屈さない。貫いてみせる……!
らき☆すた!
これは、とあるVRMMOの物語。
だが、運命は過酷なまでに人を責め立てる。まるで、それが咎人に科せられた戒めであるかのように。
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