(政府の)犬です、よろしくお願いします   作:TE勢残党

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91 十師族が死んだ日

2095年10月31日 8時0分

 

 各地での戦闘が一段落または膠着しているこの日、京都の国際魔法協会本部で臨時の師族会議が開かれた。

 

「急ぎの開催にも関わらず、招集に応じていただき感謝する」

 

 緊急のためオンラインでの開催となったその会は、慣例により最年長である九島(くどう)真言(まこと)の挨拶によって開会される。

 

「まずは五輪殿、この度はご愁傷様で……」

 

 続く二木舞衣の言に合わせ、出席者たちが一様に沈痛な眼差しを向ける。

 

「お気遣い痛み入ります。代理の身で恐縮ですが、精いっぱい努めて参ります」

 

 視線の集まる先には、五輪家代表代理として会議に参加している澪の姿があった。

 

 現在は国防海軍の基地に保護されている彼女だが、目下直系の人間で関門海峡の戦闘に出ていないのが彼女だけであるため、こうして会議に出席しているのである。

 

 ……現時点では他十師族にも伏せられているが、五輪家直系の人間は澪以外の全員が死亡あるいは生死不明の状態にある。

 

 五輪家は本邸・別邸とも壊滅しており、現時点で死体が上がっているのは当主・五輪勇海と次期当主だった長男、そして澪の世話をしていた次男。当主の妻=澪の母の行方はまだわかっていない。

 

 要するに、五輪家は当主・次期当主・そのスペアまでもを失い、事実上の断絶状態となっていた。今関門海峡の前線を支えているのは分家筋の術者を仮の大将に据えた「第五・第八研究所連合軍」とでも言うべき陣容であり、実際の前線指揮は五頭家が担当していると言う。

 

「それで、その……」

 

「不躾だが、後ろに控えておられるのは誰だ?」

 

 みなが言いづらそうにしていたところに切り込んだのは、やはり一条家当主、一条剛毅だった。

 

 今の澪が国防海軍に保護されているという情報は入ってきている訳だが、それにしてもオンライン会議の画面に映る澪の後ろ、直立不動で見切れているやけに大柄な男の姿が目に付く。

 

 本来なら、師族会議は最高の防諜体制のもとで行われる秘密会議である。

 

 各家の当主およびその代理以外は出席、どころか傍聴さえ許されず、会議の場で何が行われていたかは終了後も基本的に公開されない。

 

 この慣例を破ることが可能なのは、師族体制そのものを作り上げた男・九島烈のみだ。

 

 指摘を受け、澪はさも「今気づきました」と言わんばかりの態度で説明する。

 

「こちら、現在()()()()()()()()()国防海軍の少佐殿です。事情が事情なので、護衛としてこの場にも同席頂きました」

 

 説明を受け、背後の偉丈夫が落ち着いた様子で声を発した。

 

「国防海軍対魔装特選隊 隊長代理、階級は少佐。"鉄仮面"と呼ばれています。軍機となりますので、これ以上の説明はご遠慮いただきたい」

 

 会場に(オンラインだが)ざわつきが広まる。

 

 鉄仮面の名を知らない魔法師などいない。国防海軍の最終兵器、つい昨日まで大亜連合相手に大暴れを演じた秘匿戦略級魔法師、十師族体制に属さないイレギュラー。

 

 澪の後ろに立つ男こそが、その張本人であると名乗ったのだ。これまで国防軍の機密のベールに守られていた鉄仮面の突然の登場に、師族会議の関心は一時そこに集まった。

 

「……本物か?」

 

「今この場で証明する手段を持ち合わせてはおりませんが、そうです」

 

 これまた、全員が心では思っていただろうことを正面切って聞いたのは剛毅で、鉄仮面は平然と応じた。

 

「一条殿。そこは問題ではないでしょう。そもそも師族会議は部外者厳禁のはずです」

 

「しかしな……五輪殿の置かれた状況を考えると」

 

 一方で、そもそも部外者を議場に入れるなという七草弘一のツッコミに抵抗したのもまた剛毅だった。

 

 ただ結局、いくらかの問答が行われた末、師族会議の本来の形式に則って"鉄仮面"は室外で待機ということになった。

 

「鉄仮面殿。済まないがそういう訳だから」

 

「いえ、こちらこそ無理を申し上げました。それでは失礼します」

 

 "鉄仮面"は特に抵抗することなく一礼し、部屋を出る。

 

 この場はそれで収まったように見えるが、実際のところ十師族の面々はこの「茶番」の意味を理解していた。

 

(国防軍め、露骨に圧を強めて来たな)

 

 弘一も剛毅も、「五輪家は完全に国防軍の側についた」というのを見せつけられた形だ。そして国防軍は、それを足掛かりに十師族への介入を強めようとしている。 

 

 誰もが無言のうちに考えを進める中、ドアの閉まる音と施錠音が音声に乗って届いてから、九島真言が再度音頭を取った。

 

「……では、改めて会議を始める。最初に、かかる()()についてだ」

 

 この時点でどの陣営からも宣戦布告が行われていないことから、一連の戦闘について公式記録上は「横浜事変」あるいは「事変」と称されている。

 

 後の時代では「第四次世界大戦」で纏まることになるが、戦争初期には各国や組織によって呼称が統一されていない時期が続いた。

 

「現時点での戦況をまとめさせた」

 

 真言が画面を共有し、簡素な地図を見せる。

 

【挿絵表示】

 

「昨日10月30日14時30ごろ、日本は大亜連合軍による奇襲攻撃を受けた。大亜連合はかなりの大兵力をこの戦いに振り向けていると見られ、現時点でその多くは撃退されているものの、一部地域では戦闘が続いている」

 

 本来、大亜連合が用意していたのは自国のほぼ全軍、4個艦隊。それと新ソ連の1個艦隊だ。

 

 北海道に上陸していた新ソ連の機甲部隊は、しかし本国の方針転換を受けひと当たりしただけでそそくさと撤退。残された国防軍は毒ガス攻撃で滅茶苦茶になった札幌市街の救援に当たっている。

 

 横浜へ向かった艦隊は、居合わせた「鉄仮面」の反撃を受けて壊滅、旗艦の原子力潜水艦は核攻撃未遂の疑いで国際魔法協会に拿捕されてしまった。

 

 そして北陸・鹿児島への上陸を狙っていた大亜連合艦隊は、昨日2度に渡って行われた「深淵改二」での攻撃によって跡形もなく消滅。

 

 もはや戦力を残しているのは九州方面の艦隊のみ。しかしこの艦隊は既に接岸している上国防海軍が頻繁に攻撃を実施しているため、巻き添えの恐れから「深淵改二」での攻撃ができない状態にあった。

 

 ゆえにこの日、31日午前の時点で、戦況という言葉は九州に上陸した大亜連合軍と国防軍の戦いのことを指すようになっていた。

 

 真言がちらりと見やると、八代家当主の代理として出席している八代(やつしろ)隆雷(たから)が応じる。

 

 八代家は沖縄を除く九州の防衛を担当する家柄で、現在行われている大亜連合の九州上陸に際して義勇軍を結成、その侵攻を矢面に立って防衛している。

 

 四国防衛担当の五輪家が壊滅状態である関係上、当主の雷蔵が総大将をやっているため、弟の隆雷が会議に出向いているのだった。

 

「現在、福岡県・佐賀県の広範囲から大亜連合軍が上陸して来ています。国防軍は福岡県南部まで段階的に撤退しつつ筑後川沿いに防衛線を構築、現在は久留米の駐屯地と幹部候補生学校を前線基地として防衛に徹しています。ただこの小康状態は敵は長崎の確保を優先して南進圧力が少ないためと考えられ、敵主力が佐世保に到着後取って返せばこちらが主戦場になるでしょう」

 

 隆雷の説明通り、既に福岡・北九州周辺は占領され、現在は福岡県南まで前線を後退させて河川を盾にしている状態だ。

 

 九州全土の国防軍が防衛のため集結しているが、敵は少なくとも3個師団およそ4万人を上陸させてきており正面からの撃破は難しく、なにより上陸部隊を引き連れてきた艦隊と航空戦力を相手に手も足も出ない状況が続いている。

 

 現在は対馬海峡周辺に集結していた国防海軍が徹底的なハラスメント攻撃を繰り返して攻撃に集中できない状況を作っているが、現代の艦載型フレミングランチャー(レールキャノン)は優に射程200kmを超えて来る。これが本腰を入れて攻撃を始めれば、沿岸からたかだか50kmしか離れていない防衛線など容易く粉砕されることは想像に難くない。

 

 まして開戦初期に飛来した大量のミサイルと航空爆撃によって待機していた航空戦力やミサイル基地を軒並み破壊され制空権を喪失しつつある現状、国防海軍はなけなしの艦載機と対空砲火・ミサイルでの対応を余儀なくされており、戦力を擦り潰しながら時間稼ぎを続けている状態だった。

 

 そもそも、大亜連合軍の大半は「深淵改二」で海の底に沈んだとはいえ、彼らが持ち出した4個艦隊は1つ1つが国防海軍全軍と大差ない規模を有している。「鉄仮面」の大暴れによって3/4が消失してもなお、ある程度損害を制御できているだけで大金星だ。

 

「中国・四国の部隊は関門海峡の封鎖に終始、我々魔法師の部隊はこちらに居ます。初期こそ義勇兵のみで交戦していましたが、現在は関西の国防軍が合流して防衛線を構築できています。向こう岸を抑えられているため攻められずにいますが、本州・四国方面への侵攻は防衛可能かと」

 

 元々、福岡市に在住していた八代家は、侵攻を察知するとまず通信の確保に動いた。

 

 学者一族である八代家の中でも隆雷は電波工学者であり、全国的な緊急通信ネットワークへの魔法的アプローチ導入をかねてから主導していた魔法師だったからだ。彼らは魔法の性質の関係上軍とは無関係を貫いている一方で、仮想敵である大亜連合が「霹靂塔」という魔法を有していることの危険性を最もよく知っている者たちでもあった。

 

「隆雷殿のおかげで、我々は敵の空爆が始まる前に組織的抵抗を開始することが出来ました。まさしく英雄的な働きと言えるでしょうな」

 

 その点を指摘して、弘一が大げさに褒め称える。

 

 だが実際、隆雷本人と彼の組んだ通信システムの本拠地が他ならぬ福岡にあったから、福岡・北九州、そして対馬沖と3発もの霹靂塔攻撃に巻き込まれたはずの九州北部が暗黒地帯と化さず、どころか全国的な通信復旧まで32分という奇跡的な偉業を果たし得たのである。

 

「しかし、敵はなぜ南下ではなく長崎方面の確保を狙ったのか?」

 

「鹿児島にも艦隊が近づいていたと聞いています。無理に攻めずとも挟み撃ちにできると考えていたのでしょう」

 

 十文字家当主・和樹の問いには澪が応じた。実際、鹿児島と九州の二方面から上陸されれば国防軍の戦力ではなすすべがなかったと思われ、戦局は明確に日本優位に傾き始めている。

 

「かかる情勢を受け、日本政府は()()()()()()()()()()()と聞いている」

 

 鉄仮面の大暴れによって、戦況は比較的単純化された。後は九州から敵勢力を叩き落し、空爆へ対処し、BC兵器に汚染された市街地を浄化すればよい。問題は山積みだが、道筋はとりあえず見えている。

 

 日本政府はそれには民間人の徴兵は必要としないと判断した。だが、彼ら師族会議にとって重要なのはこの後だ。

 

「ただし、我々二十八家に対しては従軍と、報復作戦への参加を要請するとのことだ。今日はこれについて話し合いたい」

 

 真言の発言を受け、室内の温度が下がる。

 

 この政府方針については既に防衛省を通じて各家に伝達されている。

 

 百家ではなく二十八家なのは、在野だった古式魔法師や第一世代魔法師をまとめてラベリングしただけの百家と異なり、彼らが魔法技能師開発研究所を出自とすることを根拠としていた。

 

 九島家がわざわざこの忙しい時に師族会議を開いたのは、まさにこの点が原因だった。

 

 全員が言われずとも理解している。これは一種の踏み絵だ。

 

 今ここでどのような態度を取ったかによって、終戦後の十師族の扱いは……否、()()()扱いは全く違ったものになる。

 

 たとえば十文字が全面協力して七草が非協力的だったなら、戦後の論功行賞によってこの二家には大きな待遇の差が与えられる。それは政府が十師族各家の立場に大きな干渉をし得るということであり、そこに最早十師族体制の横並びの秩序は存在しない。

 

 それだけではない。お互い自分の家が得をしようと抜け駆けをすれば、他の家はさらなる協力をして政府に媚を売らなければならない。

 

 各家は競い、疲弊し、国軍と政府だけがそのリソースを潤沢に利用する。最後に非協力的だった家を「政治を優先して国難に立ち向かわなかった非国民」として処分し、軍の下での十師族統一は成る。

 

 十師族が結託して同じ回答を出さなければ、最早戦後秩序に十師族体制は存続しえない。

 

 魔法師の兵器としての利用を阻止するために生涯を費やして来た九島烈からすれば、自ら作った秩序がいよいよ崩壊に向かっている様を見せられているようなものだ。

 

 十師族のドンであり日本魔法界を実効支配してきた彼がこの場に現れないのは、最早時代や政府に抵抗するだけの実行力を、あるいは意志力を持ちえないことの証左であるのだろう。

 

 そう。

 

 この日、この場に現れなかったことで、公人としての九島烈は死んだ。

 

 あるいは、自分の孫が海軍の特殊部隊に魂を売り渡した時、既に烈の心は死んでいたのかもしれない。

 

 だから、()()が動くのを止められる者がいなかった。

 

「それは各家が判断することではなくて?」

 

 四葉真夜がバッサリと切り捨てたことにより、この場の空気を一気に彼女が掌握する。

 

「少なくとも我が家は、昨晩連絡を頂いた時点で戦力の提供を即決しております」

 

 今度こそざわめきが広がった。

 

 それは「あの秘密主義の四葉が」という驚きが半分、「四葉が十師族を見限った」という驚きが半分だ。

 

「魔法師とて、日本国民であることに変わりはありませんもの。この国難を打開するため微力を尽くすのは当然のことです」

 

 いけしゃあしゃあ、というのはこのような表情のことを言うのか。

 

 愉快そうに通り一遍の原則論を歌い上げる真夜を、最早誰も止められない。

 

「そういう訳なので、今まで秘匿していた()()()()()()()()()についての機密を解除の上、()()()()()()として陸軍にお預けしました」

 

 それは政治的対処なのか。

 

 あの日の悲劇の復讐なのか。

 

 少なくとも四葉真夜は、今最もいい空気を吸える立場にいることは確かだ。

 

「なっ」

 

「四葉殿、それは――」

 

「達也と言うと第一高校の――」

 

 どよめきはついに形を持って四葉真夜のもとへ届くが、彼女の笑みは動かない。

 

「議題がそれだけならば、私はこれで失礼します。この後国防軍の方々と会合がありますので」

 

 トドメとばかりにそう言い放ち、一方的に回線を切断。

 

 後には混乱に満ちた師族会議の面々だけが残された……かに見えた。

 

 しかし数秒後。

 

「……六塚(むつづか)家は、四葉殿を支持する」

 

 おずおずと、しかし断固とした声色で宣言したのは、六塚(むつづか)家当主、六塚温子(あつこ)。師族会議最年少の27歳である彼女は、以前から四葉真夜のシンパで知られていた。

 

「我が五輪家は初めから鉄仮面殿と共にあります」

 

 すかさず澪が沈黙を破る。

 

 それに乗ったのは、なんと一条剛毅だった。

 

「……一条家は何よりもまず、国防が為されることを望む。その点に関して我々"一"の魔法師は鉄仮面殿に大きな借りがある。少なくとも、あれほどの活躍をまったく言及しない十師族よりも軍の方が信頼に値しよう」

 

 北陸艦隊の殲滅によって、一条家を筆頭とする民兵たちは上陸してくる大亜連合艦隊と戦う必要がなくなった。

 

 今回は以前のような小競り合いではない戦争だ。もしそのまま艦隊が到達していれば、正規軍でもない彼らは艦砲で薙ぎ払われ、爆撃され、今頃は全滅していたところだと、一条剛毅は読み取っていた。

 

 派閥の論理により戦果を褒めることができない、という十師族の陰湿な貴族仕草は、剛毅が見切りをつける最後の一押しとなるに相応であったようだ。

 

「便乗する訳ではないが、十文字家および十山には政府との協約があり、このような有事には統合軍令部の指揮下に入ることになっている。申し訳ないが、我々はお役に立てそうもない」

 

 十の家は首都の最終防壁だ。このような状況下では師族会議のまとまりよりも政府との関係が優先される。

 

「三矢家も同様です。我々は武器商人ですからな、戦闘よりも輜重や諜報で役立つことになるでしょうが」

 

 三の各家もまた軍とつながりが非常に強い。ついでに言えばいくつかの利権のほか、手柄次第では数字落ちの「屯倉」「岬」両家の復権を内密に約束されており、提示される飴としては十分と言える。

 

 これで「一」、「三」、「四」、「五」、「六」、「十」。

 

 一瞬にして過半数を失った師族会議を見て、九島真言はただ茫然と座っているしかなかった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「……という具合です」

 

 そして、「九」。

 

 九島(くどう)光宣(みのる)は、元気を取り戻すと共にとっくに軍に降っていた。

 

 この戦争における彼の主な功績は、今のところ大阪・京都での「霹靂塔」使用阻止が挙げられるが、ある意味最大の貢献はこちらかもしれなかった。

 

 現在、創一朗らは横須賀の特選隊本部におり、五輪澪もここに匿われている。

 

 創一朗は澪と同室から出された後、廊下を挟んで向かいの部屋へ移動。そこで光宣とテレビ通話を繋ぎ、そして彼を通じて師族会議の様子を盗聴していた。

 

「お前凄いな……」

 

 あくまで恩人の役に立ててうれしそうな光宣を見て、創一朗はやや引き気味に褒めてやる。

 

 原作からして思い立ったら一直線というか、情が深い割に人の心に欠けているところのあった彼だが、体質が改善して本来の実力を発揮できるようになった今、無邪気なモンスターぶりに拍車がかかっていた。

 

「別に、あんな人達に掛ける情けはありませんよ。ただ事実として血が繋がってるだけです、それって別に無条件で味方する根拠にはなりませんよね。……お祖父様には、少し悪いことをしてしまったかもしれませんが」

 

 彼が最後に心残りとしていたのは、唯一彼を可愛がっていた祖父、烈の動向だ。

 

「祖父は今でも十師族体制を諦めていませんが、僕がこの通り元気になったことで家の中でも意見が割れてまして……毎日誰か怒鳴ってて雰囲気最悪ですよ。まあそこから逃げ出してぶらついてたおかげで、例の爆弾を見つけられた訳なんですけど」

 

(流石の九島閣下も孫には甘い。おかげであっさり九島家から情報が抜けた訳だけども……)

 

 その性質を利用した創一朗は、自ら唆して九島家を裏切らせておいてドン引きしていた。

 

 九島烈は原作でも虚弱な孫が可愛いあまりに道を踏み外し、耄碌への道を辿って行った挙句最後はその孫に殺されることになる。

 

 どうやらこちらの世界でもロクな道筋は辿らないんだろうなと、光宣の言い分を聞いて創一朗は他人事のように思っていた。

 

「で、十師族はもう瓦解状態ですけどこれからどうするんです?」

 

「あー、光宣君は一回本部に来てくれるか? 霹靂塔の術式を解析したい」

 

 何の気なしにそう指示した創一朗だが、続く光宣の発言に度肝を抜かれることになる。

 

「あぁあの爆弾の術式ですね。確かに"スパーク"が得意な()()()()()()()()()()んで、実はちょうど弄ってみてたんですよ」

 

「ん?」

 

「あと一押、それこそ皆さんの協力があればきっと行けると思うんです! 本当は市販の特化型CADから出せれば一番カッコ良かったんだけどなぁ」

 

「えぇ……」

 

 今まさに特選隊がやらせようとしていた計画を勝手にやってしまう実力の高さ・発想の柔軟さ・倫理観のなさを併せ持つ光宣の話を聞いて、創一朗はいよいよ返す言葉を失い始めていた。

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