薬局事業から畑違いのホテル業に赤字覚悟の挑戦…大手には来てもらえず「それなら自分で。地域に必要」
「観光、地域振興のために」と、薬局事業を展開する大分県宇佐市の「ワタナベ」が建設した宇佐グランドホテルが2月11日、同市四日市にグランドオープンした。畑違いの業界への挑戦で「投資するなら地域へ還元したい」という総支配人の渡辺一平さん(51)に、建設の経緯や狙いを聞いた。(大石健一) 【写真】大分県の宇佐神宮で天皇陛下の使者を迎える10年に1度の神事「勅祭」
――ホテル建設のきっかけは。
「宇佐は観光資源が豊富だが、宿泊施設が足りず、別府や中津、由布に泊まる人が多く、通過点になっている。そこで昨年の宇佐神宮創建1300年を前に、宇佐商工会議所の会頭だった父の渡辺幹雄社長(現在は名誉会頭)がホテルの誘致に動いた」
「しかし、大手ホテルチェーンで来てくれるところが見つからず、『それなら自分で建てよう。地域に必要だから』と決断。社内は反対が多かったが、何に投資するのがいいかを考えた時、採算よりも地域貢献、地域に役立つものに投資しようという点で父と意見が一致した」
――建設には苦労もあったのでは。
「2024年12月に着工したが、翌月、父が脳梗塞(こうそく)で倒れた。さすがに父も弱気になったが、ここまで来たら私がやると建設を引き継いだ」
「基礎工事で水が出て、水をせき止める工事に3か月かかり、昨年中のオープンが間に合わなくなった。温泉を掘ったら、機械が途中で壊れるなどトラブルが続いた。だが、幸いにいい炭酸水素塩泉が出て、ホテルの裏のほこらの神様に毎日手を合わせ、宇佐神宮の奥宮が鎮座する御許(おもと)山にも参って感謝した。ホテルはスポーツジム、展望ラウンジも備え、温泉は大好評だ」
――畑違いのホテル運営はたいへんなのでは。
「8階建てでワンランク上のビジネスホテルをイメージした。93室に最大226人が泊まることができ、家族連れでも使ってもらえる。電気、ガス、水道で月500万円以上かかり、大き過ぎたかなと思うくらいだ。建設費の21億円の回収はできないけど、もともとボランティアでつくったと思っている。7割稼働させて単年度収支を黒字にできればありがたいが、赤字でも維持していきたい」