超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。


前話にて中々に賛否が分かれておりましたので、少々急いで書きました。




第63話 星の屑

 

 グワンザンから出撃した俺は、コロニーを大きく迂回して、コロニー後方の宙域へと移動する。

 

 戦況データのリンクによると、コロニー進路前方の地球側には、コーウェン中将傘下の第3機動艦隊が集結しつつある。

 もっとも、コーウェン中将が失脚すれば、その時点でこの艦隊はジーン・コリニー大将や、その部下であるジャミトフ・ハイマン准将の指揮下に入ることになるだろう。

 原作では、艦隊指揮官であるバスク・オムの手際の良さからも、既にコーウェンの失脚前から話はついていたようにも思える。*1

 

 

 ということは、少なくとも俺がこの第3機動艦隊を相手にするという選択肢はない。

 後のティターンズになる連中の目の前で暴れまわって、無意味に連中の警戒心を高めたところでデメリットしかない。

 

 対して、コンペイトウからの艦隊やガンダム試作3号機を擁するアルビオン隊は、既に派閥としては死に体になっているワイアット派とコーウェン派だ。

 ワイアットはコンペイトウへの核攻撃で既に死亡しているし、コーウェンも失脚は時間の問題である。

 

 彼らが何を証言しても、コリニー派が耳を傾けることはない。

 なので、俺が相手をするのはこいつらということになる。

 

 彼らがいくら「『白銀』にやられた」と証言しても、『負け犬の遠吠え』と一蹴する程度には傲慢なのが、未来のティターンズだ。

 俺への警戒より、「『白銀』と戦って負けた」という()を相手に与えないことを優先する。

 

 非常にくだらない話だとは思うが、連邦は派閥競争の余力で戦争をしている。

 

 前線のパイロットとしてはたまったものではないだろうが、今回はそこに俺が何とか滑り込める隙がある。*2

 

 ハスラー少将も、それを踏まえて俺に依頼したのだろう。

 

 というか、白銀色を一部残したのって、連邦の死に体の派閥連中に()()()()()言い訳をさせるためか。

 ジンクスとして機体色を全部、あるいは一部をあやかって塗る文化というものはたしかにある。*3

 

 連邦軍の派閥構成は、俺が基地に潜入してハッキングした際に入手していたし、それは補佐の軍人を通じて、ジオン関係者にも共有している。

 しているので、ハスラー少将が連邦内の派閥の不毛さを知っていても、別段おかしくはないのではあるが……。

 

 まさかとは思うが、ワイアット派閥をコリニー派閥にこき下ろさせて、連邦軍内に不和の種を蒔いておくつもりだったのだろうか。

 

 だとしたら本当に狸親父である。*4

 

 

 

 レーダーに反応が見える。

 コンペイトウからの艦隊が近づいてきたようだ。

 

 彼らに直接的な恨みはないが、このルートはデラーズ・フリートの兵士がアクシズに撤退する際に通る宙域にも近い。

 排除せざるを得ない。*5

 

 なるべく推進機関や砲台を狙うようにして、突撃しつつメガ粒子砲を発射する。

 数隻の軍艦が沈黙し、別の数隻が誘爆を起こして轟沈する。

 誘爆までは責任が取れないと割り切って、艦隊の中央を突っ切っていく。

 

 相手のメガ粒子砲は、こちらのIフィールドをもってすれば完全に防ぐことが可能だが、フィールド頼りで動いていると実弾兵器が紛れ込んでいた場合、手痛いしっぺ返しを食らってしまう。

 だから可能な限り回避しながら、敵陣を駆け抜ける。

 小回りがきく分、ビグ・ザムよりは楽だな。

 

 艦隊を完全に抜けたところで踵を返し、即座に第2波の攻撃へと移る。

 急襲からの2段返しが終わった程度の段階ではあるが、既に艦隊の状態は半壊に近い。

 

 これでしばらくの間は、この艦隊は浮足立つことになる。生き残った艦船も、ほとんど何もできないだろう。

 こんな状況でデラーズ・フリートの撤退を妨害して戦闘を行ったとしたら、自力航行できないだけの艦船のクルーにも大勢の犠牲が出る。

 ワイアット派閥の人間に、味方を犠牲にしてもジオンを1人でも殺したいという、バスクみたいな人間(狂人)はさすがにほとんどいないだろう。

 彼らには精々、人命救助で時間を浪費してもらいたい。

 

 

 機体各部をチェックする。

 推進剤もまだ余力は十分。各部のパラメーターも問題はないことを確認し、俺はその場を離脱した。

 

 次に優先すべき相手はガンダム試作3号機――デンドロビウムだ。

 あれの広域殲滅能力と、冗談のような推力は撤退部隊の障害になり得るだろう。

 

 通信から流れてくるデラーズ陣営の情報をもとに、3号機とデラーズのMS部隊が戦闘をしている宙域へと急行する。

 ――いた。

 

 デラーズの部隊に「撤退するように(邪魔だ、どけ)」と指示を出しつつ、俺はノイエ・ジールの最大火力でもあるメガカノン砲でデンドロビウムを狙撃した。

 デンドロビウムもIフィールドを装備しているため、有効打とはならないが、それでもメガカノン砲の衝撃は大きい。

 盛大にバランスを崩し、ガンダム3号機の侵攻が止まった。

 

「すまんが――」

 

 つい声が漏れる。

 

 漏れてくる気配から相手はコウ・ウラキで間違いないだろう。

 通信はされていないため、相手に俺の声が伝わることはない。

 

「時間稼ぎに付き合ってくれ」

 

 世話しておいて、本人の知らないところで勝手に敵になって――悲しいのは宮仕えである。

 

 俺はノイエ・ジールをデンドロビウムに向かって突撃させた。

 ノイエ・ジールはその搭載兵器の多くがビーム兵器であるため、同格のパイロット同士の戦いを想定した場合、高速機動する武器庫とも言えるガンダム試作3号機デンドロビウムには不利な立ち回りを余儀なくされる。

 

 だがそれは、あくまで()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

 俺はモビルスーツやモビルアーマーの搭乗時間ならば、おそらく人類で1位か2位を争えるレベル、いわゆる超が付くベテランだ。

 つい1ヶ月前まで、ザクに乗って新型ジムの仮想敵を務めていた新米少尉に後れを取るわけにはいかないだろう。

 

 デンドロビウムからの砲撃をすべてかわしつつ、こちらのメガ粒子砲を的確に直撃させて、相手の焦りを引き出していく。

 

 Iフィールドの弱点はいくつかある。

 

 まず機材が大きすぎるため、モビルアーマークラスの大型機体にしか搭載できず、それでいて稼働時間に制限があること。

 次に、あくまで弾くのはビーム兵器に対してのみであり、実弾兵器には無力であること。

 そして、フィールド内部に潜られての接近攻撃には、フィールドがそもそも意味をなさないことだ。

 

 焦って別の武装を展開しようとして、デンドロビウムの動きが鈍った。

 行動が素直すぎる。

 俺はその隙に再度、メガカノン砲を直撃させた。

 ダメージはないものの、デンドロビウムは盛大にバランスを崩し、動きが停止する。

 俺はそのまま急速接近し、サブアームに展開したビームサーベルで、デンドロビウムのメガビーム砲の長い砲身を斬り落とした。

 

 これでガンダム試作3号機の最大火力は、もう使い物にならなくなった。

 

 慌てて離脱しようとするデンドロビウムだが、そう甘くはない。

 

 背後からメガ粒子砲を連続で着弾させて、盛大にバランスを崩したところにミサイルランチャーを発射する。

 1発が左側の大型クローアームに直撃し、捥げて落ちたところで、フレアを撒き散らしながら撤退していった。

 場所的にはIフィールドジェネレーターに不調が起こってもおかしくはない位置だ。

 

 Iフィールドに頼りすぎの弊害だな。

 あの図体で火器管制と高機動戦闘の両立は、オールドタイプなら死にそうになるだろうが、それならせめてパイロットを2人用意すべき機体である。

 

 まあ、そこそこのダメージと消耗は強いたはずだ。

 応急修理と補給をするにしても、しばらくはかかるだろう。

 俺はそう判断して、最寄りのデラーズ・フリートの艦船でプロペラントの補給を受けることにした。

 

 

 その補給の合間に、何かがモニター越しに光ったのに気が付いた。

 ノイエ・ジールのモニターを、最大望遠で拡大する。

 ちょうど地球の方向に、太めの十字にも見える影がある。

 

 ……ちょっと待て。

 これは、ソーラ・システムⅡではないだろうか?

 

 思わず声が漏れる。

 

「こっちにもいたのか、()()()()()()

 

 獅子身中の虫。

 その意味は組織の内部に居ながら組織に害をもたらす者、恩を仇で返すもの。

 原作においてシーマ・ガラハウが担った役目だ。*6

 

 『星の屑』の全容を事前に連邦に裏取引で漏らし、ソーラ・システムⅡを事前に展開させておき、さらにエギーユ・デラーズを襲撃してその身柄を確保、デラーズ・フリートに停戦命令を出す。

 原作中では、デラーズを勢いのまま射殺してしまったことによって、ガトーが激昂し『星の屑』を続行する。

 そのまま連邦軍に寝返ったシーマ艦隊は、何故か味方になったはずのアルビオン隊に襲撃され、交戦の末に全滅する。

 

 もし、本当にデラーズ・フリートに裏切者がいたならば、コロニーが落ちるということはないだろう。

 あのコロニー、アイランド・イーズは地球に落着する前に、6000度にも上昇する反射太陽光の集中を受けて、溶解して崩壊する運命となる。

 

 原作においてソーラ・システムⅡに急襲をかけ、照射直後にコントロール艦を破壊して、コロニーを地球に落とした最大の功労者はこのノイエ・ジールだ。

 俺自身にその気がないのもあるが、俺の現在位置からではどう足掻いても照射には間に合わない。

 物理的に止めようがないというのは立派な理由である。

 

 マンスフィールド大佐のガーベラ・テトラであっても、推力はノイエ・ジールの足元にも及ばない。

 彼がコロニー防衛艦隊の側にいたとしても、到底間に合わないだろう。

 

 そうなると――、阻止限界点まであと数分といった時間ではあるが、もはやこのカウントにも意味はなくなってくる。

 俺はコロニーが蒸発するまで、アルビオン隊の相手を適当にしていればいい。

 

 デラーズ・フリートの連中には堪らないだろうが、俺個人としてはいい仕事してくれたと内心思っている。

 さすがに口には出せないので、内心で思うだけではあるが。

 

 さて、続いてデンドロビウムの相手をすることにしよう。

 さすがに面倒を見た相手がコロニーに取りついて、ソーラ・システムの照射で蒸発するのは寝覚めが悪い。

 オーキスをぶっ壊すなりして、足止めをしておくとするか。

 そうすれば、ステイメンの推力ではコロニーに追いつくのは不可能だろう。

 

 それにしても……。

 

「いったい誰だ?

 獅子身中の虫」

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 デラーズ・フリート旗艦グワデンのブリッジにおいて――。

 

 数名の死体が無重力空間のブリッジに漂っていた。

 周辺にはマシンガンを構えた、ジオン公国の軍服を着た男たちの集団。

 

 彼らに銃を突き付けられたまま、デラーズ・フリート指導者エギーユ・デラーズは艦長席に座っていた。

 

「まさか、ここまで恥知らずであったとはな」

 

 そう言うと、眼前に立つ男を睨み、その名を呼んだ。

 

「アサクラよ……」

 

 グワデンのブリッジを襲撃した集団を指揮するアサクラ大佐は、不愉快そうに鼻をふんっと鳴らした。

 

「言ってくれる。

 同じギレン閣下に仕えた身でありながら、これまで我々を冷遇していたのは貴様だろうが!

 今コロニー落としを企む貴様が、何故俺たちの行為に対して冷遇などできる!?」

 

 実際、彼らがデラーズ・フリートに合流してから、彼らの扱いは酷いものであった。

 仲間であるはずのギレン派からは白い目で見られ、重要な仕事は任されない。

 あろうことか、キシリア派のマレット・サンギーヌといった狂犬どもの方が重用される始末だ。

 

 同じギレン派であるはずなのに、どうしてこのような無体なことができる。

 俺たちはコロニーを落とすためにコロニー市民を虐殺した。だがそれは今コロニーを落とそうとしているお前たちと何が違うというのか。

 

 そう憤慨するアサクラに対してのデラーズの返答は、ただひたすらに白い目であった。

 

「なにも理解しておらぬようだな」

 

「何だと!」

 

 いきり立つアサクラに、デラーズは静かに語りかけた。

 

「儂が、我々が軽蔑したのは、コロニーに毒ガスを流したことなどではない。

 それはギレン閣下がお決めになった作戦行動の一環。何ら恥じいるものではない。*7

 儂が許せんのはな、アサクラ。

 それを配下の艦隊に押し付けた挙句、その責任からも逃げようとした貴様の軽薄さよ!」

 

 ア・バオア・クー戦の後、サイド3におけるドズルの叱責は、多くの将兵の口を通してデラーズへも伝わっていた。

 彼にとってはギレン・ザビこそが唯一絶対の主である。

 彼が計画したブリティッシュ作戦。

 間に立って命を発したのがキシリアであったとはいえ、ギレン閣下が主導した作戦を恥として末端に押し付けるとは、将の風上にも置けない。

 

 それがデラーズの回答だった。

 

「だ、黙れ!」

 

 アサクラは激高して、デラーズの顔面を殴りつけた。

 鼻血を流すデラーズの襟首を掴んで、強引に持ち上げる。

 

「俺たちがギレン総帥に従っていたのは、それが一番出世に近かったからだ。

 残党に合流するだけならまだしも、そこで白い目で見られるために、わざわざこんなところに来たんじゃない!」

 

 アサクラにとって、ギレン・ザビの派閥というのは出世コースの代表例でしかなかった。

 彼は上からの命には素直に従い、責任は下に押し付ける。

 それが彼の処世術であったのだが、あの日、ジオンの敗北とドズルの叱責により、全てが狂ってしまったのだ。

 

 連邦に下ることも考えたが、彼らはソーラ・レイの開発・運用チームである。

 アサクラに至っては、それに追加して毒ガスの使用の罪も加算される。

 何か手土産がない限り、連邦に投降しても裁判で極刑が下されることは確実であったので、デラーズ・フリートで耐えるしかなかったのだ。

 

 鼻血を流しながらも、デラーズは嗤った。

 

「ふっ、いかに儂でも拝金主義の売国奴までは導けんか」

 

 怒りで顔を真っ赤にしながらも、さらなる激昂をなんとかこらえて、アサクラが笑みを作る。

 何を言われようとも、こいつは既に敗軍の将である。

 自分は、負け犬の遠吠えにいちいち腹を立てるような人間ではない。

 

 手に持った銃で、デラーズに立ち上がるように促す。

 

「さて、移動していただきましょうか、デラーズ閣下。

 閣下はこれからコロニー落とし未遂の容疑で、連邦で裁判を受けていただくことになりますからな」

 

 コロニー落としの情報とデラーズの身柄、これが連邦に下る際の最低条件である。

 連邦に下った後は、連邦軍の一員としてデラーズ・フリート相手に戦闘も行わなくてはならないだろうが、デラーズの身柄はこちらで押さえている。

 戦闘中止命令を出せば、連中は動くことはできない。

 

 そうアサクラが考えていると、デラーズはこらえきれなくなったという様子で笑い出した。

 

「未遂か……く、くはははは」

 

 アサクラを含め、グワデンのブリッジを襲撃した人員が皆、ぎょっとする。

 アサクラがデラーズに銃を突きつけた。

 

「な、何がおかしい」

 

 襲撃者の1人に手錠をかけられながらも、デラーズの嘲笑は止まらない。

 

「儂が本当に、貴様らのような志を持たぬものを、まったく警戒していないと思ったか?

 貴様らは我が『星の屑』の真の姿を知らぬ」

 

 手錠をかけていた男が、思わずデラーズにマシンガンを突きつけた。

 

「話せ!」

 

 だが、デラーズは笑みを浮かべたまま、かぶりを振るだけだ。

 

「言っても既にどうにもならぬよ。じきに分かることだ」

 

「このっ」

 

 マシンガンのストックでデラーズを殴ろうとした男を、アサクラが止めた。

 

「止めろ。

 こいつの身柄を連邦に引き渡すのが最優先だ。

 連邦の歓迎を受ければ、こいつも口を割るだろう」

 

 そのまま、デラーズは男たちに抱えられて、グワデンのブリッジを後にする。

 去っていく最中(さなか)、デラーズは誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。

 

「行け、マンスフィールドよ……」

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 補給を終えて十数分が経過していた。

 すでに阻止限界点は過ぎているが、俺にはあまり関係のないことである。

 

 俺の目の前には、すでにボロボロになり、かろうじて動くのが精一杯になったデンドロビウムがいる。

 既にオーキス部分のブースターは半分以上がスクラップになり、武装コンテナは右側が爆散してもげている。

 ステイメン部分の頭部と左腕すら欠損した状況だった。

 

 そりゃ、Iフィールドジェネレーターにダメージを受けた状態で、俺のノイエ・ジールと再戦したらそうなるよ。

 再戦中に、2発目のメガカノン砲を受け止めた際、ジェネレーターが爆発してIフィールドが消失、受け止め切れなかったメガカノン砲が武装コンテナを貫いたのだ。

 そうなってからはもう可哀想なぐらいの残虐ファイトである。

 コンテナを失って盛大にバランスを崩した機体では、碌に回避行動もとれなかった。

 

 ともあれ、こうなった以上は、もはや残されたオーキスの推力ではコロニーに辿り着くことも不可能だ。

 アルビオンにいるガンダム女さんが発狂しているかもしれないが、コウは多分無事なので勘弁してもらいたい。

 

 と、ソーラ・システムⅡが稼働したようだ。

 盛大な光とともに、コロニーが崩壊していく様子がリアルタイムで見て取れる。

 

 なんとか、『星の屑』は俺にとっては無事に終了してくれたということか。

 後は離脱するデラーズのパイロットたちを、アクシズ先遣艦隊までエスコートすれば俺の仕事は無事完遂である。

 

「こちらヴァルツァー。

 デラーズ・フリートの友軍に告げる。

 コロニーの崩壊を確認した。

 友軍各員は速やかにアクシズ先遣艦隊に向けて脱出を――」

 

 そこまで告げたところで、ノイエ・ジールのコンソールがデラーズ・フリートとのデータリンクから新しい情報を受け取った。

 何だ?

 デラーズが取っ捕まって戦闘停止命令でも出たか?

 

 俺はコンソールを操作して、新しい情報をモニターへと表示する。

 

 ここが現在位置、崩壊したコロニーがある地球圏と、連邦の艦隊にデラーズ・フリートの艦隊が出てくる。

 その遥か彼方、地球衛星軌道のコロニーがある位置から、地球を中心として90度ほどズレた宙域に、新しい()()が表示された。

 ここからは当然として、崩壊したコロニーからも数時間は余裕でかかる位置である。

 

 その名前を見て、俺は目を疑った。

 

「アイランド・ブレイド……だと?」

 

 アイランド・ブレイド。

 2基奪取されたコロニーのうちの、もう1基である。

 

 

*1
原作でのソーラ・システムⅡの展開が早すぎる。

*2
なおジオンもギレン派閥が似たようなことをやっているのが今回の事態であるので、連邦をまったく笑えない。

*3
後世のリック・ディアスとかは後々、シャアの機体でない機体まで赤く塗られている。また、ドムの制式カラーも『黒い三連星』にあやかって決定されたものである。

*4
なお当人的には「あわよくば」程度だった模様。

*5
原作においても『星の屑』完遂後のデラーズ・フリートに対して投降を呼び掛けた、逃げ道を塞ぐ形で展開している艦隊があった。バスク指揮下の艦隊が投降を呼びかけるとは考えづらいので、これはワイアット派閥であると考察。

*6
もっとも、原作のシーマは恩など受けていなかったが。

*7
こいつもこいつでおかしい。




読んでいただきありがとうございます。


『星の屑』は隙を生じぬ二段構え、な話。

月に落着する→推進剤点火で地球に落着する。
で誰も彼も焦って、もう一つのコロニーに対する警戒が完全になくなった隙をついた形となります。
ミノフスキー粒子があるので、一度対象から外れたコロニーを再度補足することはそれなりに難しい。
何より、連邦の目はアイランド・イーズしか見ていなかったのもあります。

原作よりデラーズ・フリートの戦力が増していたことから可能となった作戦ではあります。
マンスフィールド大佐はこっち側にいる。



そしてみんな大好き?アサクラ大佐。
久しぶりの登場ですかね。
獅子身中の虫にするなら、シーマ様の対となる彼しかいないと決めていました。

筆者的には、メタな意味でエルンストを戦場に引きずり出した動機の一つでもあります。
こうしないとこいつ殴れない、というのが……。

彼が冷遇されていたのは『毒ガスで虐殺した』ということ自体ではなく、『ギレンが考案した作戦の実行という責任から逃げた』という点です。
「お前ギレン閣下が立案した作戦を恥だと思ってたの?」的なサムシング。
デラーズ・フリートでは肩身がとても狭かったかなと。

アサクラの人間性については、原作でアクシズに赴く際にシーマに「迷惑だ」とまで言い放っていたことから、こういう人間性なんだろうなとプロファイルしています。

で、そんなアサクラのような人間を警戒していたので、『星の屑』の第2の矢を準備していたデラーズという構図になりました。

要はこっち方面全部囮。主人公も実は蚊帳の外。
こっち側のコロニーは「落着するのならそれはそれで」的な扱い。

ソロモン戦といい、陽動作戦が本当に好きだなぁと自分でも思います。



あと、ひとつだけ前提としておきたいのですが、私は作中で一度もデラーズ・フリートをテロリストと呼称したことはないと思います。
彼らは実情としてジオン公国ギレン派残党という位置付けであり、パルチザンやミリティアとの区別も難しいのが現状です。

エギーユ・デラーズやデラーズ・フリートが嫌いな方が多いのは理解できますし、私もデラーズのことは好きではありません(ぶっちゃけ嫌いな方です)が、「悪者は酷い報いを受けなければならない」的な論で言われましても、「そもそもガンダムって勧善懲悪な話じゃないですし……」としか私には返せそうにありません。

申し訳ありませんが、これ以上に説得力の持てるであろう描写は自分には難しいですので、その辺りはご容赦ください。

62話、63話、書き直してエルンストがノイエ・ジールに乗らない、デラーズ紛争で一切戦わない展開に直そうと思えばできますが、どっちの方が良いですか?  参戦させた理由の一つが、読者の皆さんがアサクラを処したいかなと思ったからですので、物語の大筋においては大差ないです。 アサクラが多分最後まで生き残って、62話の時点で、やることがなくなって0083編が終わるぐらい。

  • 書き直して。
  • そのままで。
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