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エミヤの波乱な一日/Novel by 猫屋敷

エミヤの波乱な一日

7,949 character(s)15 mins

イベ呼符でエミヤ(アーチャー)さん来た記念に。
ひたすらミッションをこなしたいマスターと振り回されるエミヤさんの話。

実際、最後の二人が会ったらどうなるのか想像がつかないんですけど、こんな感じの出会いがあっても良いんじゃないかなって。でも呼び名問題はきっと起こってそう。

勢いで書いたら色々と設定ガン無視してることに気がついたけど、今更直せないとこまで来てたので諦めました()

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彼──エミヤが召喚された時、マスターは目の前にいなかった。否、正確に言うなら一瞬だけはいたのだ。何故だか妙に既視感を覚えるような顔立ちの彼女は、まるで幽鬼のような足取りでふらふらとそのままどこかへ行ってしまった。
──お握り、食べなきゃ。
その言葉だけ、最後に残して。


「アーチャーではないですか! 久しぶりですね」
「セイバー、君も喚ばれていたのか」
「ええ。此度の聖杯戦争は随分と様式が違いますが、共に頑張りましょう」
召喚された部屋から出て直ぐ、たまたま廊下にいたセイバーと久方ぶりの再会を果たすと、そうだ、とエミヤは思い付いたように彼女に尋ねた。
「マスターが何処にいるか知らないか?」
「マスター、ですか? 召喚されたのなら、貴方と共にいるのでは?」
「いや……それが、どうも言葉を掛ける間もなくすぐに出ていってしまってな」
正確に言うと、声を掛ける事すら躊躇う雰囲気、に近いが。どうにもあそこまでゾンビのような人間には話しかけづらくて敵わなかった。
「ああ、そういえば今は京都にレイシフトしているという話を聞いたので、そちらに向かったのかもしれませんね」
「京都?」
「鬼が暴れている、とか何とか言っていましたが。……私も行きたかったのですが、マスターが服装的に、とか何とか言いながら式さんを連れていくのを見かけました」
少し拗ねたようにそう彼女は言う。式さん、というのが誰かは分からないが、どうやら自分と同じサーヴァントの一人なのだろうとあたりをつけ、そうか、と頷きを返す。
「そうだ! ここに来たばかりなのでしたら、私がここを案内しましょうか」
「いいのか?」
「ええ、流石にカルデア内の見取りまでは聖杯の知識にはありませんから」
「それは有難いな」
では行きましょうか、とセイバーは先導して歩いていく。しかし、京都の異変とは、また妙なものに関わっているようだ。彼女が言っていたお握り、とやらに何か関係があるのだろうかなどと考えながらエミヤもその後を追う。
「今の時間だと、談話室にある程度人がいそうですね。不審者と間違われてもいけませんし、まず顔合わせをした方がいいでしょうか」
「不審者とは物騒だな。そんなに怪しく見えるかね?」
「いえ、怪しいというか、ここには知らない顔だととりあえず殴りかかる者が何人かいますので」
「ちょっと待ちたまえ」
「いえ、前にランスロットが来たときは大騒ぎになって大変でした。敵襲かと思って皆が宝具を撃ってしまって。まあ、私もエクスカリバってしまったんですけど」
「待て、そこは恥ずかしそうにする場面なのか!? そんなに気軽に宝具は撃つものではないだろう!」
まるで初々しく照れる少女のような様子でとんでもないことを言うセイバーに堪らず突っ込むが、逆に彼女はぐ、と握りこぶしを作り、力説してみせる。
「アーチャーもそのうち日常的にUBWることになりますよ、安心してください!」
「全く安心できないのだが!?」
というか、UBWるとはなんだ。エクスカリバるもそうだが、全く彼女の言っていることが理解できない。
戦くエミヤに、あ、そういえば、と何も気にしない様子でセイバーが話題を切り替えた。彼の記憶違いかもしれないが、心なしか新しいマスターの影響か以前よりもセイバーがフリーダムになっている気がしなくもない。
「ここにはアーチャーが沢山いるので、アーチャーと呼ぶのは紛らわしいですね」
「ああ……言われてみればそうだな。真名を隠す必要もないのだし、エミヤと呼んでくれれば──」
言いかける途中で、ぴた、と前を行くセイバーの歩みが止まった。かたかたと震えだしたかと思うと、突然ぐるりと振り向き、エミヤを勢いよく指差す。
「エミヤは駄目です!!」
「な、何故だ?」
「いえ、何故とか、そういうのではなく……ああ、あちらのエミヤはなんとアーチャーに説明すればいいのか……!」
「……何の話をしている?」
「……いえ、この話は後にしましょう。とりあえずはアーチャーと呼ばせて下さい」
「まあ、君がそれでいいなら構わないが……私は何と呼べばいいのかね?」
「それは、勿論アルトリアと。些かややこしいですが、差別化は出来ています。問題ありません!」
「……差別化?」
言っていることはよく分からないが、どうやらアルトリアと呼べばいいようだ。何だか改めて名前を呼ぶことに気恥ずかしいような気持ちになりながら、エミヤは口を開き、
「…………」
「どうしました?」
「……あ、ああ。いや、私もしばらくセイバーと呼んでも構わないだろうか」
「? ええ、良いですが」
不思議そうにするセイバーの名前を呼ぶのが、何故か古い記憶を刺激されるようでどうしても口に出せず、結局お茶を濁すように彼はそう言った。それに頷くセイバーにほっとしたような思いになり、カルデア案内を再会してもらおうとしたところで、背後から渋い老成した男の声が響く。
「──ラブコメの波動を感じるな。全く、吐き気がする!」
「はっ?」
反射的にエミヤが振り返るが、背後の視界には誰もいない。茫然としていると、下だ、下!、と声がする。少し視線を下げると、淡い水色の髪の少年がじろりとこちらを見上げていた。
「ふん、マスターがどうしてもと言うから最近の娯楽を共に見ていたが、変なスラングが移って困る」
見た目に似合わない低音。見覚えのない筈のその姿に、セイバーの名前を呼ぼうとした時とは別の様子の旧い記憶が呼び起こされる。
──旧校舎。桜色の彼女。そして、あの聖人の名をこよなく愛するあの変わり者マスター。
「アンデルセン……か?」
「なんだ、覚えていたのか。俺のような一作家を一々記憶するとは暇な奴だ」
「アンデルセン、マスターと共にレイシフトをしていたのでは?」
「はっ、最後の記憶はあの忌々しい鬼に蹴りをかまされるところだ。マスターの伝言曰く、あまりにも脆くて怖いから執筆してて、だそうだ。一体作家に何を期待していたのやら」
やれやれとアンデルセンは辟易した様子で首を振る。どうやら、レイシフト先でやられてそのまま帰ってきたようだ。
「マスターはまだ京都にいるのかね?」
「ああ。今も鬼を退けるべく奮闘しているだろうさ」
「成る程」
やはり本当に鬼と戦っているらしい。何故そんな事態に陥っているのかは分からないが、きっとマスターにもそれなりの理由があるのだろう。
それだけ伝えると、ではな、とアンデルセンは踵を返した。どうやら自室に戻るらしい彼に、別れを告げると、当初の目的である談話室へと二人は歩を進めたのだった。


「誰じゃそれは?」
「アーチャーです。貴女と同じクラスですよ、信長」
「新しいアーチャーだと!? ふっふっふ、つまりはわしと殺し合う運命にあるというわけじゃな……!」
「何故そうなる!」
「わし以外のアーチャー絶対殺すマンというわけじゃ! ほら、最近流行りなんじゃろ?」
「そうなのか!?」
談話室にいた、刀を下げた赤い軍服の少女の突然の言葉にエミヤがセイバーを見ると、何故か彼女は目を盛大に泳がせながら知りませんね!、と言い切った。どうしてそんなに視線を合わせようとしないのか。
「まあ、殺し合いはともかく、同じアーチャーとして先達のアドバイスをやろうではないか、心して聞くがよい!」
「ああ、まあ……助言をもらえるなら有難いが」
「ランサーを見たら逃げろ、以上じゃ」
「なんでさ」
またもやわけの分からない言葉にセイバーを見るが、それがこの戦争の摂理なのです、と言い切られた。私はきっと今しか貴方に勝てないのでしょうね、と据わった目で言う彼女に不吉なものを感じ、慌ててエミヤは話を逸らす。
「それより、他に人はいないのか?」
「今は見ての通り、わししかおらんな」
「変ですね、いつもならこの時間はもっと人がいるのに」
「さっきそこであの蜥蜴娘とアイドル皇帝がライブの準備をしてたからじゃろ」
「ライ……っ!? まだ諦めてなかったんですか!?」
「結局マルタにタラスク投げられて説教されながら連れていかれていったぞ。是非もないネ!」
お茶請けらしき煎餅をかじりながらそう親指を立てる少女に、目に見えて安心したようにセイバーは息を吐いた。エミヤの記憶にもあの惨憺たる歌声は残っているので、その安心はよく分かる。
「そういえば君の名前はなんと言うんだ?」
「わしか? わしは第六天魔王──織田信長じゃ!」
「そうか。エミヤだ。よろしく頼む」
「反応薄いんじゃが!?」
「確かに驚きはしたが、一々反応していたらここでは身が保たないだろう」
「それもそうじゃがそれではわしのプライドが……やはり出会い頭に三千世界さんだんうちをかましておくべきじゃったか」
「だから君達は気軽に宝具を撃ちすぎではないかね!?」
ぶつぶつと物騒なことを呟く信長に、熾天覆う七つの円環ローアイアスを展開しておくべきだろうか、と構えていると、突然談話室に一人の男性が飛び込んできた。
「緊急召集! 緊急……って、人いないね!?」
「ロマン、どうしたんですか?」
「ああ、いや京都の方から要請があって……至急、料理の出来るアーチャーを寄越してくれって」
「………………」
「……セイバー、何かねその目は」
「いえ。別に?」
じっと見つめる視線から逃げるように目を逸らす。恐らくここでマスターが要請しているのは戦力になるアーチャーだろう。自分が弱いとは言わないが、ここのカルデア式の召喚では一度も霊気再臨をしていない自分が行ったところで意味はないだろう、とエミヤは考えるが、それでも尚横から碧眼は見つめてくる。
「あれ、その彼は?」
「ああ、私は──」
「ロマン! 彼は料理が出来ます! そしてアーチャーです!」
「採用!」
「セイバ────ッ!?」


「だから、なんでさ……っ!」
最早抵抗する暇もなく、魔力放出をセイバーに使われレイシフトへと送り込まれたエミヤは京都の地にてそう心から呟いた。どうしてこうなったのか。数十分程前、セイバーに案内を頼んだ自分を全力でひき止めたい。
「あんたか、料理が出来るアーチャーってのは!」
「そうだが……君は?」
「俺は坂田金時。ゴールデンって呼んでくれ!
早速だが、ちょいとこっちを手伝ってくれ」
「構わないが、今の私に戦力を期待されては……」
言いかけるエミヤの前に、どん、と重々しい音を起てて何かが置かれる。銅色。重量を感じさせる質感。そして、炊かれたばかりの米の匂い。どこからどう見ても、炊きたてのお釜だった。
「さ、握るぜ!」
「なんでさ!?」


最早本日何度目か、事態についていけないままお握りを握り続けること数十分。目の前でカレー味のお握りを握るゴールデンに尋ねる機会も失い、ただただエミヤはお握りを作ることに邁進していた。仮にも台所の英霊などと揶揄されていたわけではないだけあり、その動きはプロもかくやというレベルだがそれを褒めるものは誰もいなかった。
一体どうしてこうなったのか、と何回目かの疑問を考えていると、京都市街の方から誰かが駆け戻ってくるのが見えた。銀髪の、片目を隠した少女である。彼女はこちらへと駆けてくると、いけました!、と声をあげる。
「いけたか!?」
「はい! あとはもう少しだと言っていたので、広範囲宝具のアーチャーを連れていきたいと……」
言いながら、こちらに目が向けられる。思わず目が合い、一応アーチャーだが、と告げるとぱあ、とその顔が輝いた。
「よかった、これでマスターがもうお握りを食べずに済みます……!」
「いや、どういう事態なんだね、それは……。それと、戦力を期待されているところ悪いが、こちらも先程召喚されたばかりで、まだ霊気の再臨すらしていないような有様だ」
「え、ええっ! どうしましょう、とりあえず先輩に……」
「呼んだ?」
「先輩!」
ひょこ、と銀髪の少女の後ろから、召喚の時に見かけた少女が顔を出した。前に見かけた時のような幽鬼のような様子は大分薄れ、疲れているようには見えるが目には生気が宿っている。
「ん、あー……ああ! さっきのアーチャーさん! ごめんね、放置しちゃって……!」
「いや、私は構わないが……」
「ちょっと鬼ごろしするのに忙しくて……」
「それはよく分からないな!」
初めまして、と改めて彼女は名を名乗る。それに自分もようやく名乗り返すと、きょとんとしたようにその目が瞬いた。
「エミヤ?」
「ああ」
「へえ、珍しい! ここにはもう一人エミヤさんがいるんだよ」
「……もう一人?」
まさか別の形で呼ばれた自分だろうか、と一瞬危惧するが、マスターの様子からそれはない、と判断すると同名の英霊だろうか、とエミヤは考える。
「ややこしいな……なんて呼ぼうか。エミヤは他の名前は無いの?」
「他の、名前は……」
ある。には、ある。遠い昔に置き去りにした、名前が。
思わず黙り込むと、他に無いと思ったのかじゃあ、とマスターは提案する。
「料理上手いし、鉄人……じゃ、捻りがないし、あ! アイアンマンとか!」
「シロウ! シロウだ! 頼むからその名前はやめてくれ!!」
あまりにもな呼び名に、言うつもりのなかった名前を思わず叫んでいた。いや、それはない。それだけはない。その名前で呼ばれる自分をセイバーに見られるところを考えると割と絶望するレベルである。本当に鉄だったんですね、とか何とか言われかねない。
「先輩、いくらなんでもその名前は……」
「え? なんで? ヒーローだよ、アイアンマン」
「そういう問題ではなくてだな……!」
「えー、じゃあシロウさん。よろしくね」
「…………ああ。よろしく、頼む」
差し出された手を握り、そう返す他なかった。
挨拶を済ますと、少女は急かすようにじゃあ、とエミヤに声を掛ける。
「さ、行こうか」
「いえ、先輩。まだエミヤさんはほとんど種火も入れてもなくて……」
「あ……そうだった」
ふむ、と腕を組むとどうしようか、と彼女は考え込む。何故だろうか、その姿に嫌な予感が止まらないのは。
「よし、分かった! シロウさん、初ミッションです」
「……ほう、聞かせてもらおうか」
にっこりと笑顔で、どこからか取り出した山盛りの林檎を彼に突き付け、マスターは宣言した。
「種火周回、行ってらっしゃい!」


「Arrrthurrrrrr!!」
「昼寝の時間だ、ワン!」
キャットとランスロットを連れていってね、と渡された大量の林檎と共に彼は出陣した。最早磨耗した精神がまたここまで削れる余裕があるとは、と思いながらもひたすら燃え盛る手を狩り、種火を回収し、またもや手を狩りに行くという一見、何の苦行だと思えるミッションをただひたすらに彼はやり遂げた。後列からセイバーによく似た聖女ジャンヌ・ダルクが心配げな目でずっと見ていたことだけが最後の方に残る記憶である。
「……マスター、ただ今戻った」
「あ、お帰り! じゃあはいこれ!」
「? なんだこれは……むぐっ!?」
「よし、行くよー、鬼やらい!」
「!?」
戻った瞬間、金色のお握りを口に突っ込まれ、半ば引きずられるように京都市街の方へとマスターと共に向かわされる。周りに漂う妙な酒の霧に辟易しながら、どういうことかをマスターに尋ねるが、説明は後で!、と急ぎ足で彼女は中央へと進んでいく。
「孔明さーん! アーチャー連れてきたよー!」
「よし、でかしたマスター!」
門の付近にいたスーツの男──何故だかサーヴァントの筈なのに見覚えがある──へと自分を引き渡すと、マスターはじゃあ行こうか、と歩き出す。
「待て、私は何も説明を受けていないのだが!?」
「安心しろ、私が君に魔力を投げる。それで君は宝具を撃つ。簡単な作業だろう?」
「死んだ目で何を言い出すんだね、君は」
「さあ、行くぞ。ああ、先達からのアドバイスとして言っておこう。キックは避けろ。以上だ」
「だからどうして君達のアドバイスはそう理解不能なんだ!?」
そんな会話をしつつ、襲い来る京人を撃退しながらたどり着いた先にて。
かの茨木童子によって、彼は信長の助言も、スーツの男──諸葛孔明──の助言も最早強制的に理解をせざるを得なくなるのだった。



「なんて人使いの荒いマスターだ……!」
京都市街から離れた、まだ平穏な空気が流れる場所までくると、エミヤはようやく息を吐き、その場に座り込んだ。召喚されてから、約数時間。種火周回が楽しく思える程の戦いを茨木と繰り広げ、マスター曰く今日のノルマは達成した、らしい。
「全く、あの凛を上回るサーヴァント使いの荒いマスターがいるとはな……」
かつてのマスターを思いだし、その場に寝転がる。少しだけ休息をここで摂るか、と目を瞑った。甘ったるい市街の酒の空気から離れた、山の澄んだ風がエミヤを緩やかに眠りへと誘う。


──遠い、夢を見ていた。
まだ自分が幼い頃の記憶。縁側で、まだ世界の広さも、恐ろしさも知らず、ただ正義だけを信じていたあの頃。
"僕はね"
懐かしい、旧い声が記憶を呼び戻す。
"正義の味方になりたかったんだ──"


「…………む」
──それから、どれくらい経ったのだろうか。誰かが近づいてくる気配があった。恐らくサーヴァント。うっすら目を開けてそちらを見るが、黒い外套を羽織っており、姿はよく分からない。
エミヤの横までくると、彼は腰を下ろした。マスターの使いだろうか、と考えていると、彼はおもむろに口を開く。
「──お疲れ様」
「…………っ!?」
──聞き覚えの、ある声だった。
驚きのあまり飛び起きたエミヤの横で、そのサーヴァントはゆっくりとフードを外す。記憶とは違う浅黒い肌、白い髪──それでも。
それでも、その姿は確かに自分がよく知るものだ。
「爺、さん」
「……爺さん? いや、流石にまだ、僕はそう呼ばれるような年齢ではないよ。まあ、サーヴァントに齢というものが適応されるならだけど」
少しだけ不思議そうに言うと、彼は固まるエミヤへと向き直った。懐かしい距離。かつて、あの縁側で何度も目にした光景。
「マスターから聞いたよ、君もエミヤという名前なんだろう?
奇妙な縁だが、まあよろしく頼むよ」
そう言って、彼は先にエミヤを取ってしまってすまないな、と呟く。そして、まだ自分は夢の中にいるのかと戸惑うエミヤへと、彼は手を差し出した。
「シロウ──、と呼べばいいんだったか」
「───!」
「よろしく頼むよ、シロウ」
"──士郎"
忘れかけた旧い記憶が、息をする。しかし、目の前にいる男は確かに現実だった。
「っ、ああ。よろしく……頼まれた」
任せろ爺さん、と聞こえないくらい小さな声で。
──エミヤ衛宮士郎エミヤ衛宮切嗣を、そう呼んだ。

Comments

  • rally
    April 17, 2019
  • 高里

    サーヴァントのかけあいにめっちゃ笑いました。ネタ盛りだくさんすぎてノリよすぎて大好きです。何より、エミヤ二人がこんなふうになっていたらと思うと嬉しくて泣きそうです。ありがとうございました!

    July 24, 2016
  • projectdear

    このマスター鯖充実してんなwww。こっちは最高戦力ヴラドと筋肉ダルマだけだっつーのに。

    June 12, 2016
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