インタビュー

一人一人の女性がつくる大きな動き 日本版「女性の休日」に集った声

畑山敦子 佐藤美鈴 高室杏子

 今日は家事も仕事も休みます――。東京・新宿駅前で6日にあった日本版「女性の休日」アクション。アイスランドで半世紀前、女性の大半が仕事や家事を一斉に休んだストライキを道しるべに、日本はジェンダー平等に向かうことができるのか。ミモザやペンライト、プラカードなどを手にスタンディングに駆けつけた人たちに、この場に集った思いを聞いた。

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 仮設のステージでスピーチが始まった午後6時、数百人が広場を埋め尽くしていた。駅に続く階段や陸橋の上でも立ち止まってステージを見つめる人々も。

■岩手と長野、つながった2人

 自作のプラカードを手にしたイラストレーターの山本ゆき子さん(57)は遠路、岩手県から来た。隣には長野県から駆けつけた会社員の女性(33)。黄色いプラカードを掲げてデモを見守った。

 女性は仕事を休むために前日は早く出勤し、残業もしたという。「仕事や家事を休むこと、デモに参加することは誰もができることではないけれど、大きな力になるためには、1人の小さな動きも大事。それを感じられたらと思って」

 離れた土地に暮らす2人を結びつけたのは、オンラインの「女性塾」だった。山本さんは、女性は結婚して子どもを産むものだと決めつけたような見方をされたり、「女は黙ってろ」と言われたり、日常の中で家父長制的な価値観に直面し、嫌な思いをすることもしばしばだったという。2人の娘にはそんな思いをしてほしくない。ジェンダー平等を目指すために何ができるか学ぼうと2022年、もりおか女性センター(盛岡市)主催の「女性塾」に参加。行政の計画や方針に女性の視点を盛り込むよう提言していくことなど、さまざまな議論を通して、同じ思いを持つ人と知り合えたという。

 そうして山本さんとつながった会社員の女性は、半世紀前、アイスランドの女性の9割が参加したというストライキ「女性の休日」を描いたドキュメンタリー映画を見て思ったという。「とても大きな動きだけど、参加しているのは一人ひとりの女性なんだ」。いま、新宿駅前に集う私も山本さんも、そんな一人ひとりだ――。

■「推し」用のペンライトを持って

 社会学者の上野千鶴子さんらが次々スピーチに立ったステージに向け、ペンライトを振ってエールを送る女性たち。そんな介護福祉士の今西毬藻さん(32)と政党職員の中川亜美さん(41)は10年来の友人同士だ。「推し」のライブで盛り上がるためのペンライトを持ち寄り、参加したという。

 「もともと政治に関心なんてなかった」と今西さん。趣味を通じてつながってきた中川さんとは近年、選挙のたびに福祉業界の課題を議論するようになった。介護現場の人手不足を痛感する今西さんは「女性が多い職場で、ケアの対価がこれでいいのか、持続可能なのかと思う瞬間がたくさんある」と憤る。街頭アクションに加わるのは初めてだったが、「隣に彼女がいるから安心して参加できた。トークも学びになったし、いい『休日』になった」と話した。

■変わってほしいのは「男性の意識」

 東京都の環境NGO職員、吉田明子さん(44)は7歳の長男を連れてきた。これまで参加したデモは気候変動に関するものだったが、日本版「女性の休日」プロジェクトを知らせる記事を読み、登壇者の声を聞きたいと思ったという。

 産休・育休、そして復職してからも子育てのために仕事をセーブする時期もあった。夫は毎日出社し、休みづらい仕事だという。子育てや介護を女性が中心的に担う一方で、男性はキャリアを積んでいく。結果、企業や組織の意思決定層には男性が多くなる――。環境やくらしを大切にする社会に変えていくためにも、「女性が仕事や家事を休むには、男性の意識こそ変わってほしい」。

■怒りながらも、楽しく

 にぎわう広場を歩行器を押して歩く東海奈津子さん(59)は、星形のペンライトを持ち、ステージ近くでスピーチに聴き入った。

 「1時間くらいなら立っているのはつらくない。こういうのは楽しくやることが大事だからね」

 笑顔で話すが、「女性の休日」に参加する一人になろうと思ったわけを語る言葉に怒りがにじんだ。思い出すのは30年ほど前、働いていた職場のことだ。

 男性上司に結婚や出産の予定を聞かれ、セクシュアルハラスメントだと訴えても「なんのことかわからない」と言われた。

 同じ仕事をしているのに、男性の方が多く給料をもらっていた。

 そして今も、SNSを通して「ものを言う女性」たちが誹謗(ひぼう)中傷にさらされるのを目にする。女性が軽んじられる性差別はまだ続いている。「誰もが自分らしく過ごせる社会になるよう、不公平に対して怒りながらも、楽しくアクションをしていきたい」

■連帯を広げていくために

 名古屋市から来た非正規社員の女性(31)は、地元の映画館で「女性の休日」を鑑賞した。感想を語り合う会に参加し、この日のアクションについても知ったという。

 映画の中で「最初は無視され、笑われ、けんかを売られ、最後に勝つ」という言葉が出てくる。今は三つ目の「けんかを売られる段階」だと感じている。SNSでフェミニズムについて発信すると、アンチから山ほど反応が来る。けれど今は「いつか勝つ」と思えるようになった。映画では、ストライキを「休日」と言い換えるなど、ときに妥協もしながら、保守やリベラルまで様々な立場の女性が連帯していた。

 「日本でも妥協できるラインを探って、こうして集える数を増やしていけたらいい。今日は通り過ぎていった人たちも、皆が立ち止まるくらいにこの動きが広がっていくことを願っています」

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この記事を書いた人
畑山敦子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
人権、ジェンダー、クィア、ケア
佐藤美鈴
デジタル企画報道部|Re:Ron編集長
専門・関心分野
映画、文化、メディア、ジェンダー、テクノロジー
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    太田啓子
    (弁護士)
    2026年3月7日23時47分 投稿
    【視点】

    この新宿での女性の休日アクションの実行委員会の1人でした。このように参加者のリアルな声を報道や SNS で見て、日本社会の性差別構造という同じ問題にそれぞれの場で対峙している、同時代の仲間があちこちにいるという思いを強めています。 映画「女性の休日」を見て、差別的な構造が強かったアイスランド社会が女性たちが声をあげたことから動いていく様に勇気づけられました。 社会は変わる、声をあげれば少しずつでも変えられるというメッセージを強く感じる映画です。 日本社会でもできることは色々あるはずだと思い、全く同じようなことをやることは難しくても、何か普段のジェンダーに関するモヤモヤを可視化することはできるのではと考えて企画しました。 同じ思いの方々が各地でそれぞれの動きをしていることにも励まされます。 1回だけのイベントではなくて、今後も続いていけると良いのではないかと考えています。アイスランドでも「女性の休日」は1975年の初回から2025年まで、8回もなされているそうです。

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