マナーは向上していない
信清さんは市に対して、8年ほど前から被害を訴えてきた。昨年7月、市観光課は「立入禁止」「私有地、カメラが作動しています」というポスターや掲示板を寺の入り口に設置した。年末には私有地への立ち入りを調査するため、AIカメラも設置した。
ポスターや掲示板の設置以降、尿入りペットボトルを見ることはなくなった。
「市が真摯に対策してくれたので、『違反行為』に注意を払う観光客は増えたと感じています。けれども、マナーが向上したとは感じていません」(同)
記者が寺の入り口で取材した15分足らずの間にも、カメラを手にした外国人が4人、境内に入ろうとした。その都度、信清さんは、「ノーエントリー。ノー、フォトグラフィー」と注意していた。見つからなければ、「敷地に入って写真を撮るくらい、いいだろう」。そう考える観光客も多いのかもしれない。信清さんはため息をつく。
「何回注意しても、翌日には新しい観光客がやってくる。キリがない」(同)
「観光マナー」学んでほしい
政府は観光立国を推進し、30年に訪日外国人観光客数6000万人、旅行消費額15兆円を目標とする。オーバーツーリズム対策として観光庁は「インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立」を掲げ、26年度は100億円の予算を充てる。
根本的な対策として、信清さんは、外国人に観光マナーを学んでもらう必要性を訴える。
「文化や習慣の違いにより、日本人にとって当たり前のマナーでも、訪日外国人にとってはそうとはかぎりません」(同)
ごみの放置、列への割り込み、大声での会話など、問題は多岐にわたる。
「スラムダンク踏切」が日本の象徴的な観光地に
昨年から取材するなかで、現地に何度も足を運んだ。住民の努力や苦労、戸惑いを聞く一方で、笑顔でカメラを構える観光客の姿も多く見た。「スラムダンク踏切」周辺は、いまや世界中の人が知る日本の象徴的な「観光地」となりつつあるように思う。
観光は、地域住民の犠牲の上に成り立つべきではないと、強く思う。では、どうすればいいのか――。より具体的な対策を検討すべき時期に来ているのかもしれない。
(AERA編集部・米倉昭仁)