中国からの訪日客は減少したはずだが…
この踏切を訪れる観光客の多くはアジア系の外国人だ。鎌倉市が2024年に行った調査によると、踏切周辺を訪れる観光客の約7割が中国人だった。中国政府が日本への渡航自粛を求めてから約3カ月、中国からの訪日客は大きく減少したと報じられている。
だが、踏切を訪れる観光客は、半年前より増えた気さえする。警備員も「減った気配はありません」と言う。当日、声をかけた観光客10人の国籍は、台湾5人、中国3人、韓国とマレーシア各1人だった。
「バスケットボール好きの息子と来た」という家族連れや、「スラムダンクを見て育ったので、ここは特別な場所」と言う若者もいる。
海と電車と富士山…魅力的な観光スポット
スラムダンクのファンではない人も少なくない。初訪日で中国・上海から来たという若い夫婦によると、この場所は「中国ではとても有名」だという。
「実際に来て、その理由を実感しました。美しい海を背景にレトロな電車が走る。富士山も見える。大声を出す人もなく、とても平穏です。ごみもない」(中国人夫婦)
つまり、この場所それ自体が日本の魅力を堪能できる十二分に魅力的な観光スポットなのだ。
周辺にごみが少ない理由
大勢の観光客が訪れるにもかかわらず、「ごみがない」のは、住民の努力のたまものだ。踏切近くの顕証寺の住職で、この地区の社会福祉協議会の理事でもある信清宏章さんは、こう語る。
「一時、付近に放置されるごみはすごい量でした。住民が散歩のときなどにごみを拾って、海岸の集積所に集めているんです。昨年7月から市の観光課がポイ捨て禁止の啓発活動を始めたおかげもあって、放置ごみの量は徐々に減っているようです」(信清さん)
観光被害は周辺の駅にも
鎌倉高校前駅の踏切は鎌倉のオーバーツーリズムの象徴として取り上げられることが多い。鎌倉市や住民の努力により、状況は改善したようにも見える。だが、同様の問題は、となりの七里ケ浜駅周辺でも起こっているという。
「要するに、観光客は江ノ電と海をバックに記念写真を撮りたいわけです」(同)
海に面した顕証寺の入り口には小さな踏切があり、江ノ電が通る。海も見える。同様の写真が撮れるスポットとあってか、私有地である境内から写真を撮ろうとする観光客が後を絶たない。
「一時は本当に傍若無人で、寺の入り口の地面に座り込む、ごみを捨てるといったことが頻繁にありました。たまりかねて観光客の立ち入りを禁止にすると、『写真を撮って何が悪い』と、片言の日本語で食ってかかられたこともあります」(同)
ごみどころか、尿入りのペットボトルやポリ袋が放置されたこともあった。尿入りペットボトルの衝撃は、昨年9月、報じたとおりだ。