WBCでも起きた「スポーツの国際大会が無料で観れない」問題 イギリスは“無料観戦の権利”を法で定めていた! スポーツは公共の文化
拡張すべきなのか
こうした現実をふまえたうえで、いま英国では制度のあり方をめぐる新たな議論が起きている。 ガーディアンによれば、BBCやITVなどの放送局は最近、ラグビーのシックスネーションズやサッカーのワールドカップ予選などを「指定イベント」に追加するよう政府に求めている。スポーツ放映権の価格が急騰するなか、有料スポーツチャンネルやストリーミングサービスが権利を獲得するケースが増えているからだ。 もしこうした流れが続けば、無料放送局が入札競争で太刀打ちできなくなり、将来的に無料で見られるスポーツが減る可能性があるという。 一方で、反対論も根強い。スポーツ団体にとって放映権は最大の収入源であり、無料放送の義務が強まれば収益が減るからだ。競技の運営や選手の育成にも影響が及ぶという声もある。 さらに近年では、アマゾン・プライムやDAZNのようなストリーミングサービスが放映権市場に参入し、規制の枠外で権利を取得できる「抜け穴」の存在も指摘されている。2024年には法律でこの抜け穴対策が試みられているが、デジタル時代のスピードに規制が追いつけるかは不透明だ。 スポーツは巨大なエンターテインメント産業であると同時に、多くの人が共有する文化でもある。ストリーミング時代の到来によって、この二つの価値は改めて衝突しつつある。ワールドカップのようなイベントは、市場で売買されるコンテンツなのか、それとも社会が共有する文化的財産なのか。 英国で再び始まった「クラウン・ジュエル」をめぐる議論は、その問いを改めて突きつけている。
COURRiER Japon