「帰ってきてくれてありがとう」、14年7か月ぶりに抱いた6歳の娘…震災行方不明者なお2500人
そこで実施したのは、細胞の中にある小器官「ミトコンドリア」のDNA型鑑定だ。ミトコンドリアの遺伝情報は母親からのみ子どもに遺伝する。鑑定では、母親との血縁関係に「矛盾なし」との結果が出た。
だが、性別はわからなかった。鈴木准教授は、たんぱく質を分析する「プロテオーム解析」を提案した。歯のエナメル質に含まれるたんぱく質は、DNAよりも長期間残りやすく、男女で性質が異なる。数千年前の遺跡で出土した骨の性別判定に用いられたこともある。捺星ちゃんの遺骨は解析で「女性の可能性が極めて高い」と判定され、他の鑑定結果と合わせて身元が特定された。
遺骨の発見から2年半あまり。鈴木准教授は「1本の歯からでも、読み取れる情報はすべて拾い、手がかりを追い求めていく」と話す。捜査班の京野祐也班長は「前任からの地道な活動が実を結び、ようやく返すことができた」と振り返り、「残る遺体も、帰るべきところに帰してあげたい」と述べた。
続く捜索「一日でも早く」
岩手、宮城、福島の3県警は震災以降、沿岸部を中心に行方不明者の捜索活動を継続してきた。重機や熊手で海岸の砂や小石をかき分けて漂流物を探し、近年はドローンも飛ばして海上や崖などを捜索している。
福島県では2015年に身元不明の遺体がゼロとなったが、岩手、宮城両県ではまだ計53体あり、県警は身元特定に向けた相談会を継続的に開催している。
身元不明遺体が6体ある宮城県では、県警が13年以降計11回、相談会や情報交換会を実施。2人の身元特定につながった。
岩手県の身元不明遺体は47体で、県警は14年から相談会を75回開催。似顔絵や着衣の情報を示し、DNA型鑑定の資料提供も呼びかけている。
1月に釜石署で実施した相談会には4人が来場。同県山田町の山根捺星ちゃんの遺骨が見つかったと知り初めて訪れた高齢女性は、会社の従業員が見つかっていないが、「チャンスはあると信じている」と話す。
震災後の火災で損傷し、DNA型鑑定での特定が難しい遺体も多い。だが、県警捜査1課の大久保顕次・第2検視官は「一日でも早く家族のもとに帰すのが最大の目標」と力を込める。
盛岡支局・福守鴻人、坂本俊太郎、山森慶太、編成部 十河靖晃、デザイン部 沢田彩月が担当しました。