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間桐慎二がアーチャーのマスターになったようです/Novel by 凍護@コメント嬉しい

間桐慎二がアーチャーのマスターになったようです

8,422 character(s)16 mins

Twitterにてわかめしさんからネタをいただき『間桐家に召喚されたアーチャーがあまりにも慎二が悪い事をするのでガッツリお仕置きしたらドM覚醒してアーチャーに踏まれることが生き甲斐になるというfate』のお話、キャラ崩壊とかいろいろ注意ですので心の広い方向けです/凛がランサーを召喚し、桜が正規マスターとして令呪を持っています。一応SNのネタバレも含みます/筆が乗った、女王様弓最高だった、反省はしていないと供述…/ブクマ、評価、コメント(スタンプ)本当にありがとうございます!!心からネタ元のわかめしさんに感謝を!!

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魔術による結界が展開された校内、その淀んだ空気に眉を寄せた遠坂凛は、呼び寄せた自身のサーヴァントを従え結界の原因を破壊するため走っていた。
次々に出現するゴーレムをガンドと召喚したランサーの英霊で屠りながら、理科室前の廊下にたどり着いた時、そこには既に先客がいた。
聖杯戦争が始まる前からの仲、同じ御三家のひとり間桐慎二とその傍らに立つ屈強な男性、この状況でまともに呼吸ができている時点で関係は明白だ。間桐慎二も聖杯戦争の参加者であり、その男は呼び寄せたサーヴァントであろう。
「嘘、慎…二?」
「どうだぁ?遠坂?これが僕のサーヴァント!最強で、最高の…この僕にふさわしい英霊だろ!」
呆然と呟いた凛に顔を上げた慎二はにたぁと笑い、傍らに立つ男を自慢げに紹介する。
固まった凛を守るように半歩前へ進み出たランサーも、百戦錬磨の自身であろうと目前の奇特な光景が発する怖気を感じずにはいられなかった。
一気に緊張が走る廊下で、ようやくショックから立ち直った凛が戦闘体制に入る。
その姿にランサー陣営はマスターも戦闘員であることを察した慎二のサーヴァントがぴくりと眉を上げ、高らかに笑っていた自分のマスターを『踏みつけた』。
「あはははごふっ!!」
「勝手に喚くな、たわけ。竜牙兵に見つかったらどうするつもりだ?」
「あっ、はい、すみません…勝手に笑ってすみまぜっ!!」
笑い声を途切れさせた慎二は四つん這いの体制から自身のサーヴァントを見上げ、慌てて謝罪を口にする。
しかし慎二の背に足を乗せたサーヴァントは、そのまま自分のマスターをぐりぐりと踏みにじると、一言一言区切る度力を加えた。
「だから、どうするつもりだと問うたのだマスターよ。君の、その、あまり出来が宜しくない残念な思考回路で、今、この状況を、竜牙兵とサーヴァントを相手にするリスクをどう捉えるね?」
「はいっ!はいっ…!僕が使い物にならないので勝てません!」
「まぁ勝ち目が薄いということが理解出来たのなら及第点か。挨拶が遅れたな、君たちも聖杯戦争の参戦者か。おそらくクラスはランサー…か」
慎二から足を退け、腕組みをしたサーヴァントに声をかけられた凛とランサーは、ちょっとしたSMプレイにぽかんと開けていた口を閉ざして武器を構える。
廊下で対面した時からおかしいと思っていたが、予想がまんまと的中してしまった。
何故かサーヴァントの前で四つん這いになっている慎二、その姿を当たり前のように流しているサーヴァントの男性。やはりというか見たまんまと言うべきか、彼らの陣営はかなり奇特な主従関係に落ち着いているようだ。
「そっそういうあんたはアーチャー…?弓兵がわざわざ屋内に来るなんて、何考えてるのよ」
これまで出揃ったサーヴァントのクラスを照らし合わせ、慎二のサーヴァントは消去法でアーチャーだと導き出される。
本来距離を取った戦法を主とするアーチャーが、わざわざ不自由な場所へついてきている事を指摘すると、そのサーヴァントは少し意外そうに口を開き、顎をさすった。
「見たまえマスター、君のお粗末極まりない采配に比べて彼女はとても優秀なマスターであるようだ。まったく羨ましい」
「ふぇっ!?だっダメだから!アーチャー!お前は僕のサーヴァント!絶対遠坂になんかやらないからな!」
思わずアーチャーの口から出た本音に、慎二は慌てて赤い腰布へ縋り付く。案の定すぐに蹴倒されて再度地に手をつかされているが、凛はあのプライド高い慎二が完全に力関係の逆転している現在を容認していることへ目を丸くさせた。
サーヴァントの力に怖気づき、言いなりになっているのならわかる。しかし今のやり取りでは、慎二はこの関係を許すどころか望むような口ぶりを見せた。
普段の姿とはまるで違う級友に、対峙してしまった敵陣営であることも忘れて凛は呆然と口を開く。
「あの…先に聞いていい?何があったの?何が起こったの?何があったら慎二もそんな…えっと…」
「自分のマスターをドMに調教するサーヴァントがいるとはな。まぁ、傀儡にするって点じゃおかしくはないか」
しかしいくら優秀な魔術師と言えど凛もまだ年若い乙女、ぐりぐりと踏まれては嬌声を上げている慎二へうまく言葉が見つからず口を開閉させる。そんなマスターに代わって、ランサーが自身の槍で指し示すと、意外にもアーチャーは不服そうに顔を歪めて慎二へのSM行為をやめた。
「傀儡とは誤解だ。これは私も不本意でね、やむを得ない教育的指導というものだ。私とてこんな形で他参戦者の前に出たくなかったのだが。何があったかだなんて?そうだな…」


それはアーチャーが召喚されたところまで遡る。
何の運命のイタズラか、誰の陰謀か、アーチャーは依り代を持つ遠坂凛ではなく、間桐家によって冬木の地へ召喚されていた。
早速伝えられた本来のマスターを蔑ろにして、代理者を立てなければいけない都合等、いろいろと思うところはあったが、アーチャーも聖杯の寄るべに従ったサーヴァントととして、マスター代理の言うことに従い、これから始まる戦いに参戦する気でいた。
しかしそれはアーチャーにとってかなり難しいことであるとわかるのに、そう時間はかからなかった。

「サーヴァントってのは魔力で強くなるんだろ?ならもっと魔力を与えてやるよ!そうだな、この街全体…全部の人間の魔力をやったらぱっとしないお前も使えるようになるだろ」
間桐の家の一部屋。腕を広げて恐ろしい計画を語る慎二の歪んだ笑いに、壁際へ佇んだアーチャーは深いシワを眉間に刻む。
召喚されてから耐えることのないため息をついたアーチャーは、名のある英雄ではない自分をあまり快く思っていない慎二へ口を開いた。
「お言葉だがマスター、それは些か作戦と言うには乱暴すぎる。そんな大きな結界、まず察知されるリスクが大きく、展開までに敵へこちらの動向を掴まれてしまう。さらに私はアーチャー、莫大な魔力をかけた戦法よりも狙撃を得意とするクラスだ。そんな魔力を得ずとも、今君から与えられている魔力で私は十分…ッ」
突如殴りつけられたアーチャーは言葉を切り、自分よりもずっと下の視点のマスターを見下ろす。
自分が思い切り殴ったところで、よろめかせる事も出来ない鋼のような肉体を忌々しく睨んだ慎二は、理由もなく傷つけられたくらいでは欠片も揺るがない鋼色の瞳へヒステリックに叫んだ。
「この僕に口答えするっていうのか!?サーヴァントの分際で!」
「話はちゃんと聞いてくれ。私にはアーチャーとして単独行動のスキルもある。つまりあらゆるクラスの中で、ある意味最も魔力を必要としないクラスなんだ。君も魔術師として未熟である点は否めない、ならばこのアドバンテージを生かし必要最低限の魔力で敵の隙を突いた方が…!」
襟首を掴まれ勢いよく引き倒されたことでいよいよアーチャーも膝をつく。
信じたくない正論を聞けない子供にアーチャーは眉をひそめ、見上げた先で瞳に淀んだ光を宿してサーヴァントを見下した慎二がギリギリと歯軋りをした。
「何お前、勝手に喋っちゃってんの…?つまり何か?他の奴らが戦ってる間コソコソ隠れてろっていうのかよ!」
「そういう事だ。アーチャーとは本来そのような使い方をすべきなのさ。かつての聖杯戦争ではかなり派手な奴が召喚されたと聞いたが、私は生憎そのような術は持っていない」
どこまでも変わらない冷静な声のトーンに神経を逆なでされた慎二はとうとう足を振り上げ、地に手をつくアーチャーを蹴り飛ばした。
「ほんっと使えない地味サーヴァントだよ!お前!」
アーチャーが抵抗しないのをいい事に、どんどんエスカレートしていく殴打がアーチャーの褐色の肌を傷つけ、次第に血を滲ませていく。
それでも静止一つ行わないアーチャーに、傍観者でならと入室を許可された桜が思わず兄を止めようと駆け寄る。
「兄さ…きゃっ!」
「桜くん!」
しかしヒートアップした慎二の腕が乱暴に桜を押しのけ、細い体はあわや転倒しかけたところでアーチャーに抱きとめられる。
固くも優しい腕に抱きとめられた桜は、これまでどんな注文をつけようと従順にしていたサーヴァントが、初めて燃えるような意思を瞳に宿すのを見た。
慎二も桜を殴るつもりはなかったが、もう引っ込みがつかなくなり罪悪感を打ち消すように声を上げる。
これまで冷静沈着を絵に書いたようなサーヴァントが初めて反抗を見せるのが、妹に関してのことだったのもさらに輪をかけたのだろう。
「何勝手に話に入ってきてんだよ!今更サーヴァントに未練でも出来たのか!?…ははは…お前もそういう事なのか。僕がマスターだから、サーヴァントの癖に生意気な口聞いて、僕をムカつかせる事をするんだ…。お前はどんなに偉そうにしても僕の奴隷なんだよ!その証拠、見せてやる!おい、令呪を使え。命令は今後一切僕へ口答えしないこと、絶対服従だ!」
乾いた笑いに肩を揺らし、こちらを見上げる鋼の瞳に歯をむきだしにした慎二の加速した劣等感は留まるところを知らない。
そしてついに本来のマスターである桜へ令呪の行使を命令した慎二は、勝ち誇った笑いを響かせる。
所詮如何なる武勇を持とうとサーヴァントは使い魔でしかない、令呪を使われればどんな望まぬことであろうと従う他ないのだ。
ぐっと唇を噛んで悔しさをやり過ごすサーヴァントの姿を見ながら、令呪の刻まれた腕を握った桜は、兄の言う通りの呪縛を加えようと唇を開く。
桜はこれまでアーチャーがどんな命令にも従ってきたのは自分を守るためだと知っている。望まぬことも言いつけ通りに遂行しながら、絶えず自分を気遣ってくれた不器用で、優しい、どこかある先輩に似ている優しいサーヴァント。
「…はい、令呪を持って命じます。…ごめんなさい、アーチャー…」
これまで慎二の言う事に異論を挟まなかった桜の、堪らず零れた呟きにとうとうアーチャーの堪忍袋の緒が切れた。
「こんのっ…たわけ!!」
「ぶへぇあ!!??」
桜が令呪を行使する寸前、思い切り慎二を殴りつけたアーチャーは肩を怒らせ吹っ飛んだマスター代理の元へつかつかと近づく。余談だが、アーチャーの全力の拳は殴られたなんて可愛いものではなく、正直慎二は鉄球かなにかが飛んできたと本気で思ったほどだ。
そして殴られた慎二はというと部屋の壁に激突してべシャリと床に落ち、自分の口から割れた歯とボタボタ垂れてくる血にぎょっと目を見開く。
サーヴァントの反抗に怒りを燃やし、すかさず身を起こそうとした先には、腕組みをしてこちらを絶対零度で見下ろす鬼のようなアーチャーがいた。
「何すんっ…です、か…あれ…?」
「これまで我慢していたがもう限界だ。マスター、貴様よっっぽどこの聖杯戦争に勝ちたくないらしいな。そもそも令呪とは限られた絶対権、それをこれしきの仲違いでみだりに使用することはおろか、命令も著しく具体性を欠くものとは…呆れて物がいえん!」
「ひぃ…っ!」
アーチャーの一喝は大気を震わせ、思わず背筋が跳ねた慎二は慌てて正座をすると、気を抜けば失禁もやむ得ないほどの威圧感に震えが止まらない。
これがサーヴァント、いい加減頭にきたアーチャーの前で蛇に睨まれたカエル状態の兄をぽかんと見ていた桜は、一瞬母親に叱られる息子の情景が頭をよぎって慌てて頭を振った。
「非効率な戦法。無関係な人間を巻き込もうとする考え。そして、か弱い妹へ手を上げる所業…どうしたらここまで愚かになれるのか、ご教授いただきたいな?シンジ」
額に青筋を浮かべ、歪な笑みを浮かべるアーチャーのなんと恐ろしいことか。指先一つ動かせない慎二の膝の上にアーチャーの足が乗り、踏みつけるついでに自身の膝で慎二の顎を上げさせる。
対面せざるを得ないアーチャーの冷たい瞳に見下ろされ、パクパクと陸に上げられた魚のように口を開閉させた慎二は、その時確かに自身の体の奥底からこれまでの人生で感じたことのない妙な興奮が湧き上がっていた。
「あの…っ名前…」
「口を閉ざせ!たわけめ!その腐った性根、叩き直してくれる!」


「…と、まぁこのように少し扱いを改めてみたらマスターの良からぬスイッチを押してしまったようでね。今は懲罰を強請られる有様だ」
「ぜっ絶対に衛宮に言うんじゃないぞ!遠坂!!」
「…言えるわけないじゃない。はぁ…なるほどね、一応クラスメイトとして、変な魔術をかけられたわけじゃないようで安心したわ。そしてつまり、あんたさえ倒しちゃえば慎二から戦う意志を奪うことは容易ってことね」
頭の痛くなるような回想に額を押さえた凛は次の瞬間魔術回路を煌めかせ、指を拳銃の形にして真っ直ぐアーチャーを狙う。
好戦的な相手の様子に肩を揺らしたアーチャーは慎二の肩に足を引っ掛け、後ろへ蹴るようにして立ち位置を入れ替えると両手に巨大な弓と矢を出現させた。
同時にもう一つ短剣を作ると、慎二に手渡したアーチャーはランサー陣営から隠すようにその広い背を向ける。
「さて、簡単には帰してくれなさそうだ。相手の手の内を見るにはいい機会だが、交戦するぞ。よろしいかね、マスター?」
「あ、はい!やっちゃってください!」
「了解した。ではマスターはとっととこの場から離れてほしい。その愚鈍な体でもたもたされてはこちらが不利になるのでね。ついでに結界の残りを破壊してもらえると助かる。場所は教えた通りだが…君の頭では理解出来たかな?」
「はい!」
「いい返事だ。結界解除が成功したあかつきにはたっぷりご褒美をくれてやらないとな?マスター」
「はいぃぃぃ!!!誠心誠意頑張ります!!」
「あっ!ちょっと!!」
男性特有の低く腰に響くような声で蠱惑的な囁きを聞いた慎二は、短剣を手に猛然と駆け出していく。あっという間に影も形も見えなくなった慎二へ呆気に取られた凛は慌てて後を追おうと足1歩踏み出した瞬間、そのつま先に赤い閃光が走る。
寸前ランサーに引き寄せられた凛は、つい先程まで自分が立っていた場所に鋭い矢が刺さっているのを見た。
「悪いがここを通すわけにはいかない。あんなのでも一応私のマスターなのでね」
不敵に笑うアーチャーに、相手があらゆる時代の英雄から弓兵として選ばれるだけの素質を持っていることを失念していた自分を叱咤する。
地の利を欠いていても相手の腕前は恐ろしい、ひとまず凛は遠回りでも確実な道を行くため後ろの階段から下がることにした。
「ランサー!頼んだわよ!」
「応よ、嬢ちゃんは先に行ってな!この女王様は俺がきっちり遊んでやるぜ!」
この場で唯一アーチャーと対等に戦えるもの、それは同じサーヴァントのランサーしかいない。廊下から下がる凛と入れ違いに、槍を構えたランサーが目を爛々と輝かせアーチャーを鋭く睨む。
相手が最速の英霊と見るや素早く手の武器を双剣に変えたアーチャーは、紅い切っ先をこちらへ真っ直ぐに向けるランサーへチラッと視線を送るとおもむろに褐色の唇を舌で湿らせる。
冷たい瞳に反してその舌は血のように赤く、ゾッとするような色香に頭を殴られたランサーへ手にした刃を器用に武骨な指で回すと、アーチャーはまるで愛しいものへ頬擦りをするように小首をかしげた。
「ほぅ?威勢のいい狗が1匹いるな。躾しがいがありそうだ」
「俺はノーマル、俺はノーマル、俺はノーマル、俺はノーマル……」
瞬間ゾクゾクっと全身を駆け抜ける悪い予感に、ランサーは堪らず壁に手をついて呪文のようにひたすら言葉を繰り返す。
あのランサーの見たことがない様子に廊下を任せようとした凛も立ち止まり、急いで青い背中へ駆け寄った。
「ちょっ!?あんた、ランサーに何したのよ!」
「いやっ何も!見ていただろう?ランサーのマスター!まぁ、強いて言えば私のマスターの教育的指導をし始めてから言動が加虐的になっているだけだが…」
アーチャーも突然戦意喪失した英雄につい慌てふためく。元々慎二に対する厳しい対応が転じてSMになってしまっているだけなので、アーチャー自身にそれらの趣味はない。だのにまさか他サーヴァントも魅了してしまったことに、隙を突くよりも戸惑いが先行してしまう。

そうこうしているうちに異界じみた色に染まっていた大気が揺れ、外の世界との境界線が上空の起点へ退くように消えていく。
ハッとしたアーチャーは予想以上の早さで結界の解除をやってのけた自身のマスターに笑みを浮かべると、武器を消して退却の姿勢を見せた。
「結界が解けたか…やるじゃないか、シンジ。では、ランサーとそのマスターよ。こちらは結界を破りに来ただけなのでね、目的を果たした以上離脱させてもらう」
「とっとと尻尾巻いて逃げるっていうの?」
「こちらはまだまだ戦いの準備が整っていないのでね。悪いが後始末は任せた。そしてそこの槍兵、……あの、悪かった…な?」
最後にランサーの様子を戸惑いがちにうかがい、困ったように眉を下げたアーチャーの垣間見える素の顔に、凛とランサーは目を奪われてまんまと逃げられてしまうのだった。


その夜、間桐邸の一室ではアーチャーがベッドに腰掛け、その足元に慎二が正座していた。
「今回の働き、君にしてはよく頑張ったじゃないか。マスター。これをいつも最初からやってくれれば私とて苦労はしないのだが…おい、聞いているのか?」
淡々と本日の戦果について話していたアーチャーはムッと顔を顰めると、目の前にスラリと伸びる靴を脱いだアーチャーの足に、瞳が釘付けになっている慎二へ額を押さえる。
「聞いてるよ!僕が有能ってことはわかりきってることだろ?それをぐだぐだ言われても仕方なっひぃ!?」
依然として変わらない傲慢な口調が不意に途切れるのは、おもむろに慎二の頬を弾くように軽く振られた褐色の素足によってだった。
足に頬を張られた慎二は、痛みは一瞬だけという絶妙なアーチャーの力にぐっと腹の奥から迫り上がる興奮へ息をだんだん乱していく。
「戦いの振り返りすら出来ないとは、つくづく救えないマスターだ。そんな悪い子は、どうやって…お仕置きされたい?」
伸ばされた脚には彫刻のように素晴らしい筋肉がついている。
軽く足を上げてするすると顎を撫で、指先で摘むようにして顔を上げさせられるのは、マスターの性癖が発見されてから大のお気に入りだとアーチャーは理解している。
堪らず垂れた慎二の唾液をすくってやると、美しい褐色の親指にとろりと伝う不浄の液体へ、次第に呼吸が乱れるマスターの様子にアーチャーは目を細めた。
「あっ…ふ、踏んでくださっ…!んはぁぁああ!!!」
欲望に濡れた熱い息のかかる足を上げ、言われた通り背中へ力を加えてやると堰を切ったように慎二の口から絶頂の声が迸る。
足へ力を加えるだけで喘ぐ、そんな曲がりなりにも自分のマスターに呆れ返ったため息をついたアーチャーは、力を込める膝の上に肘をついて頬杖をついた。
「まったく、サーヴァントは言わば使い魔。それに優位に立たれ、あまつさえ嗜虐を強請るマスターなど聞いたことがないぞ」
「こっこの僕を足蹴にしていいのはお前だけだからな!アーチャー!そこんとこ誤解するんじゃないぞ!」
「どうだか。さて、話の続きだが今回は見事だった。よって君にご褒美を与えよう」
ふっと表情を緩めてアーチャーが床へ次々と置くのは重厚なブーツや、光沢のある革靴、エナメルのヒール。
色も形も違うが全てヒールの高く、マスターが悦ぶ様なものを投影したアーチャーはニッコリと笑い、普段の氷のような相貌とのギャップに心を完全に掴まれる慎二へ自分の足をその手に置いた。
「…さぁ、君の好きな靴を選ぶといい。貴重な魔力を消費して、その情けない体を男のサーヴァントに踏ませたいという薄汚れた欲望のため、君の手で、私に履かせておくれ?なぁ、シンジ?」
「あああクソックソックソ!!」
悪態をつきながらその顔は真っ赤に色づき、自分のサーヴァントの足を預けられた手は興奮で震えが止まらない。

妖しい秘め事が行われるその部屋を覗く桜はどんどん道を踏み外す兄を憐憫の瞳で見つめ、対してそんな恥ずかしい姿を自分に見られてるとは知らない慎二に対して、ふつふつと胸に沸く愉悦という感情を知るのだった。

Comments

  • Yellink
    September 14, 2025
  • October 27, 2024
  • 十六夜
    April 1, 2024
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