卵は鷹の夢を見る【前編】
記憶喪失・精神退行した弓の話(シロウ返り・外見そのまま)
独自解釈多数。色々間違ってたらごめんなさい。
弓以外に、アルトリアがちょっと壊れたかもしれない。
記憶が戻るまでは書くつもりです。
槍弓は風味程度。
本編と関係ないですが、以前読んだ漫画のキャラ(後天性白髪)で「変わっちゃった髪色に拒否感があって、無意識にでも自分の髪を視界に入れたくないから前髪を作らないようにしている」という設定がありまして。
もしやFate/SNでの弓がかたくなにオールバックなのは白くなっちゃった自分の髪を、自分の愚行とか取り返しの付かない過去の象徴みたいにとらえていて見たくないからだったりするのかなと思いつきました。(一番可能性の高い理由は童顔隠しかもしれませんが)自分嫌いに定評のある彼なら「今の自分」のわかりやすいアイコンである白髪も、あと褐色肌も見たくないものだったりするのかな。服が長袖、かつ派手めな色なのも?
あれ?
でもそう仮定すると、のちのシリーズで髪下ろしてたり、軽装の率が増えてるのって?
・・・・あれ?
前作までのブックマーク、コメント等ありがとうございます。嬉しく拝見しております。
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息せき切って駆けつけた。
ふだん狭いはずの廊下が無限に続くような、自分の周囲だけが時間から取り残されたような焦燥感に駆られて男は歯噛みする。神速の名声をほしいままにする己がこのような気分を味わうなど、考えたこともなかった。
出先で敵に会い、倒れたと、同行していた同郷の後輩は言った。
―――なんだ、アイツ?怪我したのか。どうせまた無茶しやがったんだろ、懲りない奴。
―――負傷……その程度ならばむしろ、よかったのですが。
たった数分前、話を理解するまで呑気に高をくくっていた自分を張り飛ばしたいが、今はアイツが先だ。走る、とにかく走る。肝心なときに間に合わずして何が最速のサーヴァントか。
「アーチャー………!!」
メディカルルームの扉を半ば突き飛ばす勢いで開け、呼気も荒く一歩踏み込んだ槍兵はしかし、その場でたたらを踏んだ。
まず眼に飛び込んだ、部屋の中央で簡素なパイプ椅子に座らされた男。いつもの赤い上着を脱がされた身体には目立った傷があるでもなく、昏睡から目覚めないとかそういった様子でもないことに、いささか拍子抜けを覚える。
だが青年が、彼に応えることはない。今の呼び声が届かなかったはずはない。感覚に異常でもあるのかと思いかけたとき、もっと異常なことに気付く。
こちらに斜め背を向けて座る青年。その前にいるのはカルデアの頭脳、少し離れた隣に赤毛の少女とその親友。そして今回のレイシフトに同行したもの、また自分と同じように様子を見に来たらしいものがいる。
見舞いに来た人間に声もかけず、あまつさえ一瞥もしないなどあの男にはありえない。しかも中には因縁ぶかいセイバーまでいる。
騎士王……アルトリアはおどおどと立ち尽くしているが、男のほうはそんな彼女の様子にも気付いていないらしい。
「おい。嬢ちゃんたち、」
なにがあった、と訪ねるより先にカルデアの天才が動いた。青年の正面に座りなおし、わざとらしく咳をひとつ。
「やあ。君の御名前と、年齢を教えてくれないか?」
……なんだ、そりゃ。
彼が本物の彼かどうかなど調べればわかることだし、自分たちに年齢を聞くなどそれこそ無意味だろう。そう思った槍兵だったのだが。
男――エミヤと呼ばれる弓兵――はどこか茫洋とした眼をダ・ヴィンチに向け、小さく、しかしその場の全員に聞こえる声で、言った。
「……えみや、しろう。……八才……」
と。