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2026.03.06 14:26

1.7兆ドルのAIバブルが問いかける「思考の終わり」

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人間の知性によって生み出された巨額の数字と不穏な予測は、AIバブルが膨張している確かな兆候である。たとえば、2030年までに世界でデータセンターへの投資が1.7兆ドルに達するという話だ。

今年だけでもマイクロソフト、アマゾン、メタ、グーグルが少なくとも6700億ドルを投じる見込みで、データセンターの建設は、1850年代の鉄道網拡張や1960年代の月面着陸に匹敵する規模に膨れ上がっている。大手テック企業とAI企業は昨年、政府の政策に影響を与えるために1億ドル超を費やした。この金額を超えたのは初めてのことだ。

これによりAI規制は遅れ、不安を抱く当局者を落ち着かせるかもしれないが、ウォール街は、こうした数百万ドルや数十億ドルがもたらし得る影響を懸念し始めている。現在、ファンドマネジャーの過去最高の割合が企業が過剰投資していると考えている。これは、テック大手によるデータセンター向け設備投資への懸念が高まっているだけでなく、企業が既存のITインフラにAIを統合するために支出するコストについても懸念が高まっていることを示唆している。AI導入の過程を見守る投資家にとっての重要な問いは「SaaSか、SaaSでないか」だ。AIが従来型ソフトウェアを置き換えるという話が盛んに語られるなか、ステート・ストリートのソフトウェアETFを構成する銘柄は、今年合計で1.6兆ドルの時価総額を失った。

知性ある人間は、根拠なき熱狂も誤った不安も、いずれも利用する術を知っている。無名に近いシトリーニ・リサーチが先週日曜日にSubstackで公表したAIの終末シナリオは、翌日の取引開始後1時間で7000億ドルの暴落を(少なくとも一因として)引き起こした。ウォール街の物語は「もはや投資銀行のアナリスト……あるいは従来型のビジネスニュース媒体……によって形づくられるのではない。代わりに、Redditのスレッドや……Xの投稿がそれを決めることがある」と、ベサニー・マクリーンは書いている

シトリーニの未来に関する憶測が拡散して成功したことは、私自身の憶測の1つへとつながる。今後は、より意外な情報源から、より多くの未来シナリオと不穏な予測が出てくるだろう。その一部はAIに支援された人間が作り、別の一部は「AIエージェント」だけが生成する。これはリチャード・ルメルトが「説得のコスト構造の崩壊」と呼ぶものだ。かつては「権威は作り出すのが難しく、維持するのにも費用がかかった」。しかし今や「その権威の見かけは、サンドイッチ代で生み出せる」。ルメルトは、億万長者の投資家スタンリー・ドラッケンミラーが迫り来る市場崩壊を乗り切るための手引きを明かしたとする「完全に捏造された」YouTube動画と、右派的言説を抑止する目的で作られた、英国の国費支援キャラクターであるアメリアの事例を挙げる。アメリアは「誰でも使える主流の生成ツールを用いて、乗っ取られ、反転され、拡散され、武器化された」。

そして、説得のコストがゼロになるという話を超えた、別の予測がある。AIに文章作成を頼ることは、思考をゼロにするということだ。あるジャーナリストが他のジャーナリストに対しAIへの抵抗をやめるよう促したことを受け、ウォール・ストリート・ジャーナルマシュー・ヘネシーはこう書いた。「AIは会社の45ドルを使って、政府関係者と塩辛いマルガリータを飲みながら酔っ払えるだろうか?」人と人のつながりが重要であることは言うまでもないが、ヘネシーは、教育現場でAIを推進する人々にはどうやら自明ではない重要な点を指摘している。「私は何を言いたいのか、何度も考えを変えた。書くとはそういうものだ。書くことは思考を助ける。しばしば私は、書こうとして初めて意見が生まれるのだ」

「思考など構うな、AIで全速力」は、長年にわたり重要な会議の冒頭で、全員が議題となる製品やプロジェクトを説明する6ページの文書を黙読することから始めてきた企業においてさえ、支配的な合言葉になっている。だが今、アマゾンの経営陣は従業員に対し、AIに文章を書かせるよう促している。

「社内の懸念は」、クリスティ・コールターは書く、「強力で新しいツールを追い求めるなかで、アマゾンが熟慮と思考を重んじる文化における『書くことの中心性』を見失いつつあることだ」。クリスティは長年のベテラン社員の言葉を引用する。「書くことは思考だ。それがアマゾンの文章文化の目的のすべてだった。物語(narrative)を書きながら何度考えを変えたか、数えきれない。たとえ変えなかったとしても、書きつけたことで議論はより精緻になった。今ではチャットボットが6ページ文書を書き、それを別のチャットボットが(マネジャー向けに)要約する」

書くことは思考であり、思考は理解である。理解とは、明確化し、あらわにし、憶測やプロパガンダと現実や証拠を区別することだ。たとえば、AIバブルは長く存在しており、むしろそれをデータバブルと呼ぶほうがよい、という理解である。「AI」は、とりわけ文字、ピクセル、音声サンプルといった種類のデータを処理するための新しいツールを提供する。

企業がこれらの新しい能力を吸収し活用できるかどうかは、上で触れた1.7兆ドル相当のデータセンターの計算資源(コンピュート)容量に対する需要、テック企業とAI企業の将来の成功、そしてAIが従来型ソフトウェアを置き換える速度を大きく左右するだろう。

そこで、次の点を考えてほしい。最近の調査では、企業のインフラを統括するシニアエグゼクティブの83%が、データインフラを大幅に刷新しなければ、2年以内に自社システムが破綻すると答えた。3分の1は、1年以内に起きると答えた。データ、そして企業の内外でそれを支えるインフラは、「熱狂が薄れたときに重要性が増す退屈な基盤」の重要な一部だと、今月初めに私はある成功した投資家から聞いた。

データへの注目は、いまAIの周縁と見なされているものを変える可能性もある。インドは世界のデータの20%を生み出し、国民の62%が少なくとも1社のテック企業の生成AIツールを使っている。だが同国が保有する世界のデータはわずか3%にすぎず、指導者たちは状況を変えることを目指している。ローカルデータを含むデータのホスティングとサービス提供をAI戦略の中心に据えているのだ。ビジネス上の検討を超えて、インドはAIに独自の刻印を残すことも目指している。ナレンドラ・モディ首相がこう述べたように。「指針となる精神『Sarvajan Hitay, Sarvajan Sukhaye(万人の利益のために、万人の幸福のために)』は、インド文明の哲学を反映している。技術の最終目標は『すべての人の福祉、すべての人の幸福』であるべきだ。技術は人類に奉仕するために存在するのであり、人類に取って代わるためではない」

AIを別の視点で捉え、AGI(汎用人工知能)や超知能をめぐる熱狂、得られるであろう富、失われるであろう何百万という雇用をいったん脇に置くという姿勢は、私が今月のAI記事だと考える次の作品からもはっきりと伝わってくる。ニューヨーク・タイムズのイーライ・サスローによる「自宅で暮らし続けるために、彼女はAIロボットを受け入れた」だ。

それは、イスラエルのスタートアップ、インテュイション・ロボティクスが、高齢者の親しみやすいAIの伴侶となるよう設計したエリキュー(ElliQ)の物語である。「彼女に似たものはほかにない」と、インテュイションの創業者ドール・スクラーは言う。「ほかの場所ではAIの身体を作っている。あるいは場合によっては脳を作っている。私たちは心を作っているのだ」

forbes.com 原文

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2026.02.27 16:00

「テクノロジーの力で世界を前進させる」GA technologies CEOの世界的企業への挑戦

テクノロジーの力と業界に対する深い知見で不動産業界の課題に切り込み、急成長を遂げている「GA technologies」。そんな同社の経営陣7名のミッションや経営信条を7回にわたって紹介する本企画の最後を飾るのは、同社代表取締役 社長執行役員 CEOの樋口 龍だ。樋口はなぜ「世界」を目指すのか。そのオリジンをひも解くとともに、彼の描く世界戦略に迫る。


「1回目の人生が終わって絶望していた24歳のとき、テクノロジーでイノベーションを起こし、世界的なビジネスパーソンになろうという、次の夢が決まったんです」

GA technologiesの物語は、代表取締役 社長執行役員 CEOの樋口 龍のその決意から始まった。

マーケットインの発想から生まれたRENOSY

小学1年生のときにサッカーを始めた樋口は、いつしか世界的サッカー選手になることを夢見て、高校卒業後は、Jリーグ・ジェフユナイテッド市原・千葉の育成選手になった。ところが2007年、ケガによってサッカー選手になる夢を断念せざるを得なくなる。目標を失い、どん底につき落とされた樋口を救ったのは、1冊の本だった。

「たまたま手にした『志高く 孫正義正伝』を読んで、孫さんの生き方と、社会を変革する情報革命に引き込まれました。この本を読んで、ビジネスでも世界を目指せることを知ったのです」

テクノロジーの虜になった樋口。だが、それまでずっとサッカー一筋だったために、ビジネスの経験はもちろんない。未経験からでも力を磨ける仕事をと考え、選んだのは営業職だった。そして、「最も難しい商材こそ成長につながる」と考え、高額な物件を扱う不動産業界に飛び込んだ。ところがそこは、テクノロジーから最も遠い業界のひとつだった。

「テクノロジーでイノベーションを起こしたいと意気込んでいたのに、不動産業界は当時それとは無縁の世界でした。でも当時、既存ビジネスと先端テクノロジーを融合させるクロステックという潮流が広がり始めていて、『不動産×テクノロジー』も必ず来るはずだと思っていました。それなら自分で実現しようと、起業を決意したのです」

13年、樋口はGA technologiesを創業。「世界のトップ企業を創る。」というビジョンを掲げた。樋口がターゲットに定めたのは、不動産の投資、管理、賃貸だ。

「不動産業はおもに開発、流通、管理、賃貸、投資の5つに分かれますが、開発は大手デベロッパーが行い、流通はそのグループ会社が担うのが一般的です。しかも自分が住む場合は内見が必要であり、テクノロジーが進化してもデジタル化できない部分が残ります。投資、管理、賃貸であればテクノロジーとの相性がよく、ワンクリックで物件を購入したり借りたりする世界を目指せるのではないかと考えました」

しかし、イノベーションを起こすことは簡単ではなかった。失敗を繰り返しながら少しずつ前進してきたと、樋口は振り返る。

「新規事業を3つほど立ち上げましたが、いずれも失敗に終わりました。理由は、プロダクトアウトで考えていたからです。ある記事で、Airbnbなどに投資しているYコンビネータの共同創業者、ポール・グレアムの『新規事業はマーケットインで考えるべき』という発言を見て、はじめて自分が不動産の取引に携わっていたときの非効率さや顧客体験の悪さに気付きました」

その気づきから着想を得て2016年にローンチしたのが、AI不動産投資「RENOSY(リノシー)」だ。事業は急激に拡大し、GA technologiesの中核事業のひとつへと成長した。会員数は約60万人に達し、東京商工リサーチが24年12月、25年3月に行った調査では、不動産投資における売上・買取実績ともに全国No.1を獲得した(※1)。その成功の要因は、3つあると樋口は分析する。

「まずは、顧客のマインドシェアの第一想起を目指して施策を行なってきたことです。政府の政策もあり、株式投資はかなり身近になりましたが、投資には、有価証券だけでなく不動産もあります。私たちは、RENOSYがNISA、iDeCoに次ぐ第3の選択肢となることを目指しています。こうしたブランド戦略により、会員数が増加したと考えています。2つ目は、商品ラインナップを拡充してきたことによってプレゼンスが高まったこと。3つ目は、テクノロジーの力で簡単に売買できて管理もしやすく、誰でも不動産による資産形成ができる環境をつくってきた成果だと考えています」

RENOSYはいまも進化を続ける。サービスをさらに拡充すべく、2026年は金融商品へとサービスを拡張する計画だという。

「不動産と金融は切っても切り離せない関係にあります。23年には、住信SBIネット銀行のサービスを活用した不動産投資家専用ネット銀行『RENOSY BANK』をリリースし、預金や決済、融資といった銀行サービスの提供を開始しました。さらに不動産取引において欠かせない金融領域に踏み込むことで利便性を高めようと、小口化事業を検討しています。高額な不動産を小口分割することで、少額投資が可能に。誰もが購入できる状態にすることで、資産のある人が物件売買でさらに資産を得るというサイクルではなく、資産の再配分ができますし、資産形成をできる人が増えるはずです」

樋口 龍 GA technologies 代表取締役 社長執行役員 CEO
樋口 龍 GA technologies 代表取締役 社長執行役員 CEO

「世界のトップ」を目指して

GA technologiesには、もうひとつの中核事業がある。それはリアルタイム不動産業者間サイト「ITANDI BB(イタンジ ビービー)」であり、運営するイタンジを18年に子会社化したことに端を発する。このようにGA technologiesは、M&A戦略によって事業を拡大してきた。

「18年7月に上場し、その4カ月後にはイタンジを子会社化しました。上場直後にM&Aをする会社は、ほとんどないのではないでしょうか。なぜそれが可能だったかというと、創業初日から経営戦略のなかにM&Aを組み込んでいたからです。海外でグローバルサービスを提供している会社は、M&Aでポートフォリオを広げている。ただし私たちは、何でも手を出すのではなく、不動産とテクノロジーの領域でシナジーが見込まれる企業しかM&Aをしません」

賃貸もターゲットに見据えていた樋口にとって、イタンジはどうしても必要なパーツだったのだ。GA technologiesの傘下に入ることでITANDI BBも成長を続け、現在は年間約100万件以上(※2)の⼊居申込に利用されている。

「私たちは、不動産業界のインフラになることを目指しています。RENOSYもITANDI BBも、本当の意味でのインフラになるフェーズはまだ先ですが、その土台となる基盤は構築できたと自負しています」

その後もGA technologiesは10社以上をM&Aしてきたが、いずれも樋口が自らオーナーや社長と直接交渉をしてきた。なかには、合意までに7年かかった企業もあるという。

M&Aの動きは国内にとどまらない。24年には、米国で不動産投資のオンラインマーケットプレイス「Renters Warehouse」を展開する「RW Opco(アールダブリュー・オプコ)」を子会社化した。それまでもGA technologiesは早くから海外を志向し、台湾、タイなど7つの国と地域に拠点を持っているが、なかでも米国を重点地域と位置付けている。

「RW Opcoには、グローバルなプラットフォームをつくるというビジョンがあり、私たちと考えが一致していたことがM&Aにつながりました。米国には、グローバルトップ10のほとんどの企業が存在していますが、その多くは、創業から20年ほどでグローバルサービスを構築しています。日本企業は地の利でどうしても米国に遅れをとってしまっていましたが、私たちは、創業30年でグローバルサービスを構築することを目指しています。逆算すると、創業20年を迎える33年にはその土台はつくっておく必要があるということで、今その種まきをしているのです」

これからRW Opcoを通じて、RENOSYのノウハウを米国で展開していくという。

GA technologiesの25年10月期決算は、売上収益が2489億円を超え、営業利益が70億円を超えた(※2)。その規模は、もはやスタートアップの域を脱する。決算資料によると、同社と世界の不動産テックトップ企業とは、時価総額ではまだ開きがある。しかし、売上高と利益を見れば、「世界のトップ企業」は決して絵空事ではなくなっている。樋口は、その目標に向かって着々と準備を進める。

「GAFAMは巨大なプラットフォームを構築していますが、彼らはデジタル完結のビジネスモデルです。一方で不動産領域には、GAFAMが入ってきていません。それは、オンライン×リアルのバーティカル領域だからであり、そこにチャンスがあると、私たちは考えています。このAIの時代に最も重要なユニークなデータを獲得していることが私たちの勝ち筋であり、その強みを生かしてグローバル展開していきたい。ただしそれを司るのは人であり、“人間力”が重要です。社員数1万人規模の組織を見据えて、引き続き人材育成やカルチャーづくりに尽力していきます」

GA technologies
https://www.ga-tech.co.jp/


ひぐち・りょう◎GA technologies代表取締役 社長執行役員 CEO。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成選手として所属。24歳でビジネスの世界に転身し、2013年にGA technologiesを設立し現職。18年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)に上場。AI不動産投資「RENOSY」の開発・運営など、不動産をはじめ、さまざまな分野のテクノロジー化に取り組む。


※1
RENOSY、投資用不動産の買取実績で全国No.1を獲得|2024年12月25日 
AI不動産投資のRENOSY、投資用マンションおよびアパートの売上実績で全国No.1を獲得 | 2025年03月11日
※2
2025年10月期 通期決算説明資料 |2025年12月15日

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