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カルチャーメディア エソロジー
Interview:
GEMNIBUS vol.2
Movie
2026/3/6
次代を担う監督たちの感性が混ざり合うオムニバス映画 GEMNIBUS vol.2 監督インタビュー【関駿太・土海明日香 編】
3月6日(金)から1週間、TOHOシネマズ 日比谷にて期間限定公開される「GEMNIBUS vol.2」。日本を代表する豪華俳優陣の出演とともに、ジャンルや表現手法も異なる6作品がひとつのスクリーンで楽しめるとあって、公開前から話題を集めている。
それぞれのクリエイターがどのような想いのもと、映画を作っていったのか。Ethology;では、GEMNIBUS vol.2で監督を務めた6名にインタビューを敢行。今回は、関監督と土海監督のインタビューをお届けする。
Text&Edit: Ethology;
Photo: TOHO

日本の映画界を牽引し続ける東宝が展開する才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」。このプロジェクトは、フォーマットやメディア、これまでの実績を問わず、すべてのクリエイターが自由に才能を発揮できる場を提供することを目的に、東宝の若手社員により立ち上げられた。
2025年6月、4名の気鋭監督による短編映画を集めた「GEMNIBUS vol.1」を初公開。2週間限定の映画は満席続出。上映延長になるほどの盛況ぶりを見せた。
この度、vol.1の反響を受け、待望の第2弾の劇場公開が決定した。本作は、これからの日本映画界を担う6つの才能が集結。圧倒的な映像美の中で、幸せについて問いかける作品からアイデンティの商品化をテーマに近未来のディストピアを描いたSFサイコロジカルホラー、生命の尊さを幻想的な世界観で描くアニメーション作品など、ジャンルや表現手法も異なる6つの短編映画が上映される。
さらに、森七菜や黒島結菜、浅野温子、本郷奏多など、日本を代表する豪華俳優陣の演技も必見だ。

あらすじ
陸上競技大会100m走予選のスタートラインに立った高校陸上部員のイサオ(西垣匠)は、極度のプレッシャーから精神世界に閉じ込められてしまう。真っ暗な空間には、怪しい作業員とイサオの記憶を映し出すテレビデオ。陸上部イチ足が速いアキ先輩(山﨑天)や、幼いころに出会ったさすらいの旅人リキ(戸塚純貴)との思い出が、走馬灯のように駆け巡る。イサオは過去の記憶と向き合い、走り出すことができるのか・・・・・・。
日本大学芸術学部映画学科の卒業制作として監督・脚本を務めた短編映画『ボウルミーツガール』が2024年に開催されたTOHOシネマズ学生映画祭にて、グランプリとGEMSTONE賞を受賞いたしました。この時に審査員を務められていた東宝の栢木統括プロデューサーよりお声がけをいただき、本企画に参加させていただく事になりました。
本作は新たに考案した企画です。実はこのストーリーに辿り着くまでに、3本ほど企画を没にしていました。議論が煮詰まった際、「部活は何をしていましたか?」と尋ねられ、中学時代に陸上部に所属していたことを話しました。その中で、100m走が大嫌いだったというエピソードをお話ししたところ、「それは面白いかもしれないですね」と言っていただき、そこから本企画の萌芽が生まれました。

一人の軟弱な青年の混乱した精神状態を、視覚的に面白く描くため、主人公の“扁桃体”、つまり頭の中を再現した空間を設定しました。その空間には、自分が幼少期の頃に大好きだったテレビデオとVHSを登場させ、それを再生することで記憶へと接続するギミックを用いています。
キャストには西垣匠さん、山﨑天さん、戸塚純貴さんにご参加いただきました。撮影前には、通常よりも長めに演技テストの時間を設け、シーン全体の動きを何度も試しながら芝居を構築していきました。

特に、西垣さんと山﨑さんが夜のグラウンドで会話するシーンでは、何度もテストを重ね、飽きそうになってきたタイミングで「歩き方をドラクエのように直角の動きにしてみましょう」みたいな演出なのか悪ふざけなのかわからないものをねじ込んでいきました。そうした遊びの要素が、芝居への新たなとっかかりとなり、結果的に印象的なシーンになったと感じています。

また、撮影の空き時間に戸塚さんとお話しさせていただいた際、「自分がやりたいと思ったことを積み上げていった先に、自分が憧れていたような映画に、自分だけの形で辿り着けるはずだから」という言葉をかけていただきました。今でもその言葉を励みに、制作に向き合っています。
音楽にはPAS TASTAさんにご参加いただき、BGMを書き下ろしていただきました。また、アルバム『GRAND POP』の冒頭2曲『GRAND POP!!!!!!』から『BULLDOZER+』へと続く流れを、そのまま劇中で使用させていただいております。大学在学中からPAS TASTAさんの音楽を愛聴しており、プロデューサーの橋本さんもファンであったことから、自然と本作の構想段階で彼らの楽曲が頭の中に流れてくるようになりました。そうした経緯もあり、恐縮ながら音楽参加のお声がけをさせていただきました。
「恐怖や葛藤から逸脱せよ!」みたいな事を思いながら作っていました。同じような事で頭を抱えた人が偶然、映画館でこの映画を観ていたなら、劇場を出た時に少しは胃のムカムカがなくなってくれてるといいなと思います。ただ、映画は娯楽なので、何も考えずに画と音を楽しんでいただけたら何よりも嬉しいです。
プロのスタッフ、キャスト、アーティストの皆さんとご一緒できたことは、大学を卒業したばかりの自分にとって、計り知れないほど価値のある経験でした。制作中は、本作の主人公のように悩みすぎて思考が止まってしまう瞬間もありました。しかし、こうして作品を劇場に送り出せたという事実が、今後、自分の思考と判断で進んでいくための確かな自信につながっているのではないかと感じています。
少し前になってしまいますが『ワン・バトル・アフター・アナザー』ですね。本当に最高。主人公が戦わないまま前進し続ける、ストーリーテリングに度肝抜かれました。ディカプリオが何にもできないのに娘を心配してタラタラ進み続けるんです。映画の主人公が背負うものが正義でも大義でもなく、「戦わずに勝つ」という在り方で提示されている点が、現代ハリウッドの一つのオルタナティブになっているように感じました。

2001年生まれ(24歳)新潟県新潟市出身
2024年、日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業。
卒業制作として監督・脚本を務めた短編映画『ボウルミーツガール』が東京国際映画祭で上映されたほか、第17回TOHOシネマズ学生映画祭ショートフィルム部門グランプリ、札幌国際短編映画祭 国内最優秀賞などを受賞。

あらすじ
とある星に降り立った名もなき双子。臆病な妹と、無邪気な兄。 二人は案内人に導かれ、まだ見ぬ母を探し不思議な世界を進んでいく。しかし、行く道は母の悲しみによって崩れかけていた。 これは「とつきとおか」の記憶になる前の物語。
これまではミュージックビデオやPVなどを仕事として制作してきましたが、心の中ではいつかオリジナルの映画を作りたいと密かに思っていました。以前、音楽ユニット・YOASOBIさんの「海のまにまに」のMVを担当した際、そうした思いから映画を意識した作りにしていました。その後、東宝のプロデューサーの方にお声がけいただき、映画制作が実現しました。
今回の映画の核となる部分は、大学時代に作った自主制作作品のアイデアから発展させたものになります。当時の結末は、子どもが前世の記憶に囚われたまま、胎内で自ら生命を断つという、非常に暗いものでした。
あれから約18年の時が経ち、今、私には子どもがいます。 いろいろな経験を経て、当時とは違う思いを持った今、結末がどう変わるのか自分自身に問いたいと思い、この映画を作り始めました。
母親のいる現実世界と、子どもたちのいるファンタジーな胎内世界。その二軸で描いてくということが、自分なりの試みでした。自分がすでに大人になったからか、当初は母親目線のシーンが多くなっていました。
しかし、いろいろな方の意見を聞く中で、もっと主人公の子どもたちにフォーカスすべきだと思い、観てくださる方々に主人公を応援してもらえるよう意識しながら絵コンテを描きました。
今回、胎内の世界をファンタジーとして描くにあたり、様々な映像表現を試みました。
特に注目していただきたいのが、胎内で輝きながら揺れる草です。 初めはもっと違う見た目をしていたのですが、何度も試作を重ねていくうちに今のルックに辿り着きました。
また、胎内の細胞たちをイメージした、ふわふわしたキャラクターたちがたくさん登場するのですが、 通常のTVアニメとは違う質感を重視したいと考え、作画とは異なる別フローで制作していきました。
今回は素材の種類が非常に多岐に渡り、それらをひとつにまとめあげるのが大変でした。 でも、そのおかげでこの作品らしい、唯一無二の表現になったのではないかと思います。
生まれる前という”if ”の物語に、想像を膨らませていただけたら嬉しく思います。
まだ、形の見えないオリジナルアニメーションを多くのスタッフと共有しながら形にしていく経験は、非常に大きな学びになりました。本当に描くべきものは何かを悩み続け、自分の核を問い続ける行為は、今後の制作においても大切にしていきたいと思っています。
私はゲームが大好きなのですが、最近は「DELTARUNE」というゲームが好きで、優れたグラフィックと音楽、想像力豊かな闇の世界。そしてその奥底には作者の優しい眼差しが感じられて、強く心を惹かれます。

1989年山形県生まれ。東北芸術工科大学で映像を学ぶ。色彩豊かなビジュアル表現を特徴としたアニメーション作家、監督。個人制作のショートフィルムがザグレブ映画祭にノミネートされるなど、国内外の映画祭で上映され評価される。また、アニメーションチーム「騎虎」のディレクターとして、YOASOBI「海のまにまに」などのミュージックビデオを手がける。 初のオリジナル劇場短編映画として『もし、これから生まれるのなら』を作り上げた。 今を生きることの意味を、作品を通して描き続ける。
映画『GEMNIBUS vol.2』
公開日:2026年3月6日(金)~3月12日(木) TOHOシネマズ 日比谷にて1週間限定上映
公式サイト:https://gemstone.toho.co.jp/
公式SNS:公式X :@GEMSTONE_JP

■『青い鳥』
監督・脚本・撮影:増田彩来
出演:森七菜、黒川想矢
■『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』
監督・脚本:大川五月
出演:黒島結菜、浅野温子
■『顔のない街』
監督・脚本:村上リ子
出演:吉田美月喜、香椎由宇
原案:西田充晴(ペンネーム:奇多郎)「顔のない街」(東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト 大賞受賞作品)
■『インフルエンサーゴースト』
監督・脚本・編集:西山将貴
出演:西野七瀬、本郷奏多
■『ソニックビート』
監督・脚本:関駿太
出演:西垣匠、山﨑天(櫻坂46)、戸塚純貴
■『もし、これから生まれるのなら』(アニメーション)
監督・脚本:土海明日香
音楽:原摩利彦
主題歌:坂本美雨「Lullaby」(Universal Music)
制作:騎虎
©2026 TOHO CO., LTD.


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