小学館の漫画配信サービス「マンガワン」の連載漫画で、性加害事件を起こした男性漫画家が別のペンネームで新たな連載の原作者に起用されていた。
被害者感情を置き去りに、連載を急いだと取られかねない。
小学館は第三者委員会を設置するが、再発防止へ調査を尽くしてもらいたい。
問題の漫画家は令和2年、女子生徒を撮影した児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕、略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。当時、漫画家は通信制高校の教員も務めており、未成年の教え子への卑劣な行為である。
生徒の女性は長期にわたる性被害を受けたとして損害賠償訴訟を起こし、札幌地裁は2月20日、漫画家に1100万円の賠償を命じた。
訴訟が起きる前の示談交渉に漫画家の担当編集者が関わり、女性側に性加害行為の口外禁止などを求めたことも問題となっている。
漫画家は事件当時、「マンガワン」で別の漫画を連載していた。事件に伴い同漫画の連載は中止されたが、令和4年にこの漫画家を原作者として新しい漫画の連載が始まった。作画は別の漫画家が務めた。
マンガワンを巡っては、別の連載漫画でも、他社で連載中に中学生への強制わいせつで有罪判決を受けた漫画家が変名で原作者となっていた。このケースについて小学館は、執行猶予期間の満了や反省の姿勢などを確認したと説明している。
更生や社会復帰の機会は必要としても、変名での起用は事件や問題の隠蔽(いんぺい)行為と映らないか。被害者側への説明や十分な配慮はもちろん、不信感を生まぬ対応が欠かせない。
「マンガワン」に対しては不信感を抱き、作品掲載をやめる漫画家が相次いでいる。
漫画は勇気や正義、思いやりなども伝え、海外からも注目される日本の文化だ。そのイメージをも損ないかねない。日本漫画家協会は「漫画界全体に関わる課題」だとして被害者の尊厳と安全に配慮した透明性ある調査を求めている。
質の高い作品を世に出すため、出版社や編集者は作家らを支える。だが、作品づくりを急ぐあまり、性被害の深刻さを忘れていなかったか。十分調査、検証してもらいたい。