その他

2026.03.07 18:30

米国がイラン製ドローン「シャヘド」の攻撃を阻止できない可能性

2026年3月1日、バーレーンのマナマで、イランの報復攻撃で自爆ドローンが複数の建物に衝突した(Photo by Stringer/Anadolu via Getty Images)

弾道ミサイル阻止は発射装置の追跡が鍵、一方シャヘドは専用車両などを必要としない

弾道ミサイルを止めるには、多くの場合、それを発射する特徴的な移動式発射装置(TEL)やその車両を追跡し、破壊することが鍵となる。1991年の湾岸戦争で行われた、いわゆる「スカッド狩り」は大きな成果を上げられなかったが、その後、航空機やドローン、衛星による監視能力は大きく向上した。実際、発射前に破壊されたイランのTELを示す映像も多数公開されている。イスラエル国防軍(IDF)は、多数のイランのミサイル発射機を破壊したと主張している。

一方、シャヘドは専用の発射車両を必要としない。通常は使い捨てのロケットブースターで空中に打ち上げられ、複数の発射ラックを備えたコンテナのような装置に収めて運用されることもある。また、ロシアではピックアップトラックの荷台から発射される例もあり、この場合は車両がドローンの離陸速度まで加速した後に機体を放つ。

2025年、イエメンのフーシ派が同様の戦術を用いたことで、小型ドローンの発射を阻止することは米軍にとって非常に困難な任務となった。結果として、フーシ派のドローン能力を完全に破壊することはできなかった。フーシ派にドローンを供給しているイランを相手にすれば、その対処ははるかに難しくなる。

イランのドローン攻撃が続けば、米軍が保有する防空ミサイルの在庫が次第に減っていく

イラン政権は、相手より長く持ちこたえることが最終的な勝利につながると見ている可能性が高い。シャヘドなどのドローン攻撃が続けば、米国とその同盟国には継続的な負担が生じる。断続的に飛来するドローンによって、米軍が保有する限られた防空ミサイルの在庫は次第に減っていく。その先に何が起きるのかは分からない。

ウクライナは、低コストで大量に用意できる迎撃ドローンを使い、ロシアのシャヘドの群れを撃墜する戦術へと切り替えている。現時点でこの能力を持たない米軍は、同様のシステムの実戦配備を急いでいると見られている。

また、ウクライナで見られるような長期のドローン消耗戦が現実となる可能性を踏まえ、米軍は高出力レーザーや、低コストのAPKWS誘導キットを用いた対ドローン向けシステムの配備も急ぐと見られている。

アナリストは、長距離で低コストの攻撃ドローンがもたらす脅威について、何年も前から警鐘を鳴らしてきた。そして今、米軍の指導部はついにこの問題に正面から向き合うことを迫られている。だが現時点では、ドローン戦ではイランが主導権を握っているように見える。

CNNによる3月5日の報道によると、トランプ政権の当局者は火曜日に連邦議会議事堂で行われた非公開のブリーフィングにおいて、複数の議員に対してイランのシャヘドは現在重大な課題となっているとの見解を伝えた。その脅威は当初の予想を上回っており、米国の防空システムですべてを迎撃することは不可能という。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事

経済・社会

2026.03.06 11:30

ウクライナ、湾岸諸国にドローン迎撃技術の提供を表明 低コスト化する戦争

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

ウクライナは湾岸諸国にドローン(無人機)迎撃技術の専門家を派遣する用意があると表明した。ただし、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの提案の条件として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に少なくとも2週間、可能なら2カ月間の停戦に合意するよう促すことを求めている。

「提案がある。中東の指導者たちはロシアと良好な関係にある」とゼレンスキー大統領は3月2日、ブルームバーグのインタビューで語った。「彼らならロシアに1カ月間の停戦実施を要請できるはずだ」

中東では2月28日に米国とイスラエルがイラン攻撃に踏み切り、最高指導者アリ・ハメネイ師と複数の高官を殺害。イランは報復としてイスラエル、イラク、バーレーン、クウェート、カタールにある米軍施設をドローンやミサイルで攻撃し、ドバイをはじめ湾岸の各都市にもイランのドローンやミサイルが襲来している。

米民主党のクリス・マーフィー上院議員は3月3日、トランプ政権の当局者が連邦議会で行った非公開のブリーフィングで、イラン製の自爆型攻撃ドローン「シャヘド」を米国は阻止できず、さらに多くの米国人が死亡するだろうとの説明を受けたと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

学ばれなかった過去の教訓

警告の兆しは何年も前からあった。サウジアラビアは2019年、イエメンの武装組織フーシ派が犯行声明を出したドローン攻撃により石油生産量の半減を余儀なくされた。今、同じ脅威が規模を拡大して繰り返されようとしている。3月2日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコはドローン攻撃を受けて、日量55万バレルの生産能力を持つラスタヌラ製油所の操業を停止した。

ウクライナでは2022年にロシアの全面侵攻が始まって以来、限られた防空装備で執拗な空襲に対処せざるを得なかった。パトリオット迎撃ミサイルなどウクライナ側の装備が不足する中、ロシアは2025年までにドローン生産を拡大し、一晩で数百機をウクライナ各地の都市へと投入するまでになった。

2025年12月、ウクライナ軍第47機械化旅団の元将校ミコラ・メルニクは「現状、わが国の防空システムでは全てを迎撃できない。ロシアは今後もドローン攻撃をいっそう拡大し、空襲を続けるだろう」と筆者に語り、こう付け加えた。「米軍が学ぶべき最大の教訓は、敵がこうした兵器を保有していることだけではない。それが安価で効果的だという点だ」

米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』への2025年7月の寄稿で、筆者は「最も高価なシステムでさえ、ドローンのもたらす脅威の規模と適応性に対処するのは困難だ」と警告し、湾岸諸国はウクライナを参考にすべきだと指摘した。この予測は今、2つの前線で同時に現実味を帯びつつある。

次ページ > ドローン撃墜は「非経済的」 おとり利用されれば防空網に穴

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事

欧州

2026.03.06 07:00

「プーチンの毒」は誰に盛られるのか? 毒殺国家ロシアの暗殺法

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Sefa Karacan/Anadolu via Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Sefa Karacan/Anadolu via Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の批判者が毒物を使って次々と暗殺されていることは、将来、北大西洋条約機構(NATO)との戦争に発展した場合、ロシア軍が化学兵器を大量に使用することを予兆している可能性がある。英ロンドン大学キングスカレッジでロシアの情報活動を専門とするエレナ・グロスフェルド博士が警告した。

英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダの欧州5カ国の政府は、2年前にロシアの刑務所で死亡した同国の野党指導者アレクセイ・ナワリヌイが、化学兵器禁止条約で禁じられている毒物によって暗殺されたとの調査結果を共同で発表した。これは、ロシア政府が国際条約を軽視していることを浮き彫りにしている。

外国であれロシア国内であれ、プーチン大統領の敵対者に対する暗殺は「国家に代わって情報機関が行う国家統治の一形態だ」とグロスフェルド博士は指摘する。ロシアがウクライナ侵攻で禁止化学兵器を使用し、毒物を持った暗殺部隊を国境を越えて派遣する行為は、国連が支持する法の支配に基づく世界秩序への攻撃を示すものだ。同国が化学兵器禁止条約などの国際的な取り決めを無視する姿勢は、今後、西側諸国との全面戦争が起きた場合、さらに拡大する可能性がある。グロスフェルド博士は次のように指摘する。「NATOとの全面戦争に発展した場合、ロシアがこれまで繰り返し無視してきた条約を気にかけるとは思えない。同国による化学兵器の配備が爆発的に増加する恐れさえある」

グロスフェルド博士は自身の博士論文の中で、1917年のロシア革命後に始まり、ソビエト連邦の指導者ヨシフ・スターリン時代に急増し、その後プーチン政権下のロシアで再び増加している、国家による暗殺の100年にわたる軌跡をたどった。スターリンはかつて自身と権力を争ったボリシェビキの指導者レフ・トロツキーに対し、亡命先のメキシコで暗殺を企てた一方、国内では同志の革命家を次々と排除していった。

昨今、ロシア大統領府(クレムリン)から派遣された暗殺者が、民主主義を訴える政治活動家やジャーナリストといった「国家の敵」を狙う際に拳銃を使うことはあるものの、プーチン大統領に対する著名な批判者らに対しては、大統領に最も近い軍や治安部隊の幹部など、権力の中枢によって独占的に管理されている毒物が用いられることが多い。ソ連が化学兵器として開発した猛毒の神経剤ノビチョクや、原子炉内でしか生成できない放射性のポロニウムといった、国家が製造した特殊な毒物を使用することは、ロシアの反体制派や世界の首脳に向け、この恐怖の道具を作り上げたのはクレムリンだという強力なメッセージを送ることになる。

グロスフェルド博士は次のように説明する。「一般的に、毒殺は特に恐ろしく威圧的な暗殺の仕方だ。暗殺の方法が何であれ、ロシア人の大多数は抗議活動に参加することを恐れている。国内での弾圧はかなり効果的だが、もちろんそうした見せかけの演出も追い打ちをかけている」

プーチン政権下ではクレムリンの工作員による暗殺が急増しており、反体制派を標的にした殺害件数では、ソ連時代の歴代の全ての指導者を上回った。グロスフェルド博士によると、最も劇的な毒物は、英国に亡命した元ロシア情報機関員のアレクサンドル・リトビネンコやセルゲイ・スクリパリのような「裏切り者と見なされる者」のために用意されているという。リトビネンコは英ロンドンでポロニウムによって毒殺された。英政府は数年にわたる調査の末、クレムリンが仕組んだこの暗殺は、首謀者であるプーチン大統領が個人的に承認した可能性が高いと報告した。

次ページ > 刑務所で死亡したナワリヌイの死因も「毒殺」だった

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事