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2026.03.07 18:30

米国がイラン製ドローン「シャヘド」の攻撃を阻止できない可能性

2026年3月1日、バーレーンのマナマで、イランの報復攻撃で自爆ドローンが複数の建物に衝突した(Photo by Stringer/Anadolu via Getty Images)

2026年3月1日、バーレーンのマナマで、イランの報復攻撃で自爆ドローンが複数の建物に衝突した(Photo by Stringer/Anadolu via Getty Images)

米国とイスラエルが実施した、イランの弾道ミサイル生産施設や発射装置を標的とする攻撃作戦は、大きな成果を上げている。しかし、イランの長距離攻撃型ドローン(無人機)である「シャヘド」を止めることは、また別の問題だ。

弾道ミサイルは、組み立てや配備に大規模なインフラを必要とする。一方、シャヘド型ドローンはガレージでも組み立てられる上、ピックアップトラックの荷台から発射することも可能だ。そのためイランは、新たなシャヘドをほぼ無期限に生産し、発射し続ける可能性がある。米軍は、発射前の段階でこれを阻止する取り組みを続ける必要があるものの、当面の間はシャヘドによる攻撃に直面し続ける可能性がある。

イラン発のシャヘド型ドローンが、米軍基地や大使館を狙う重大な脅威として浮上

シャヘド型ドローンはすでに、イラン発の脅威として浮上している。バーレーンの米第5艦隊関連施設では火災や損傷が確認され、クウェートではドローン攻撃で死者が出た。サウジアラビアの米国大使館も攻撃を受けた。

約1727億円の価値がある早期警戒レーダーなど、特定の建物を攻撃

重大なのは、カタール当局によれば、イランのドローンが同国の早期警戒レーダー施設を標的にしたことだ。公開情報では、これはAN/FPS-132早期警戒レーダーとみられている。このレーダーは弾道ミサイルを追跡するためのシステムで、その価値は11億ドル(約1727億円。1ドル=157円換算)規模にのぼる。また、イランのドローンは地域各地で石油・ガス施設にも火災を引き起こし始めている。

これらの事例は、長い航続距離と精密な照準能力を備え、特定の建物を正確に攻撃するシャヘドの能力を示している。公開されている基本型の仕様では、シャヘド136は翼幅約2.5メートル、速度は時速約185キロ、弾頭は約50キロとされる。これは弾道ミサイルや巡航ミサイルに比べれば小さな弾頭だ。米国のトマホーク巡航ミサイルは約450キロの弾頭を搭載している。しかし、シャヘドは高い命中精度を持つため、適切な(あるいは最悪の)場所に当たれば大きな被害を引き起こす。

推定製造コストは約550万円と安価、問題はその数と消耗戦になる点

個々のシャヘドは、それほど撃墜が難しいものではない。ただし運用側は、レーダーを避けるために海面すれすれの低空を飛ばしたり、川沿いの谷をたどらせたりする。問題はその数と、消耗戦になる点だ。

パトリオットや米海軍のスタンダードのような数百万ドル(数億円)級の迎撃ミサイルは効果的だが、数が限られている。一方ロシアは、タタールスタン共和国アラブガの量産拠点で生産されるシャヘド型ドローンを、毎月数千機規模で投入している。1機当たりのコストは数万ドル(数億円)規模、あるいは3万5000ドル(約550万円)前後とみられている。イランがどれほどの数を備蓄しているのか、また毎月どれだけ生産できるのかは分かっていない。大半のドローンは迎撃されるが、一部は突破する。発射が続く限り、被害は発生し続ける。

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翻訳=上田裕資

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2026.03.06 11:30

ウクライナ、湾岸諸国にドローン迎撃技術の提供を表明 低コスト化する戦争

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

ウクライナは湾岸諸国にドローン(無人機)迎撃技術の専門家を派遣する用意があると表明した。ただし、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの提案の条件として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に少なくとも2週間、可能なら2カ月間の停戦に合意するよう促すことを求めている。

「提案がある。中東の指導者たちはロシアと良好な関係にある」とゼレンスキー大統領は3月2日、ブルームバーグのインタビューで語った。「彼らならロシアに1カ月間の停戦実施を要請できるはずだ」

中東では2月28日に米国とイスラエルがイラン攻撃に踏み切り、最高指導者アリ・ハメネイ師と複数の高官を殺害。イランは報復としてイスラエル、イラク、バーレーン、クウェート、カタールにある米軍施設をドローンやミサイルで攻撃し、ドバイをはじめ湾岸の各都市にもイランのドローンやミサイルが襲来している。

米民主党のクリス・マーフィー上院議員は3月3日、トランプ政権の当局者が連邦議会で行った非公開のブリーフィングで、イラン製の自爆型攻撃ドローン「シャヘド」を米国は阻止できず、さらに多くの米国人が死亡するだろうとの説明を受けたと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

学ばれなかった過去の教訓

警告の兆しは何年も前からあった。サウジアラビアは2019年、イエメンの武装組織フーシ派が犯行声明を出したドローン攻撃により石油生産量の半減を余儀なくされた。今、同じ脅威が規模を拡大して繰り返されようとしている。3月2日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコはドローン攻撃を受けて、日量55万バレルの生産能力を持つラスタヌラ製油所の操業を停止した。

ウクライナでは2022年にロシアの全面侵攻が始まって以来、限られた防空装備で執拗な空襲に対処せざるを得なかった。パトリオット迎撃ミサイルなどウクライナ側の装備が不足する中、ロシアは2025年までにドローン生産を拡大し、一晩で数百機をウクライナ各地の都市へと投入するまでになった。

2025年12月、ウクライナ軍第47機械化旅団の元将校ミコラ・メルニクは「現状、わが国の防空システムでは全てを迎撃できない。ロシアは今後もドローン攻撃をいっそう拡大し、空襲を続けるだろう」と筆者に語り、こう付け加えた。「米軍が学ぶべき最大の教訓は、敵がこうした兵器を保有していることだけではない。それが安価で効果的だという点だ」

米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』への2025年7月の寄稿で、筆者は「最も高価なシステムでさえ、ドローンのもたらす脅威の規模と適応性に対処するのは困難だ」と警告し、湾岸諸国はウクライナを参考にすべきだと指摘した。この予測は今、2つの前線で同時に現実味を帯びつつある。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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