埼玉県戸田市は全国で先駆け、小中学生を対象とした教育総合データベースを構築する。同市が保有する住民データや校務データ、学習データについて個人ごとにひもづけ、分析できるようにする。不登校の児童・生徒を早めに見つけ、支援につなげることなどが狙い。ただ、データが不十分だったり、収集・保存形式がバラバラだったりするのが現状で、効果につなげるデータ利活用は緒に就いたばかりだ。

不登校の予兆を早めに捉えて支援につなげる

 戸田市は2022年4月、デジタル庁が進める「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」に採択された。2023年3月までに、活用するデータ項目の精査やシステム構築、データベース構築などを進めた上で、分析し予測精度の高いデータ項目などを検討する。

 データ活用の目的はまず、児童・生徒の不登校の予兆を早めに捉えて、支援につなげることである。文部科学省は病気や経済的な理由など以外で年間30日以上欠席したケースを「不登校」としているが、そうなる前の児童・生徒を複数のデータを組み合わせることで早めに捉えられるようにするのが狙いだ。

 データ分析を通じて、「どのようなデータがあると予測精度が上がるか、どのタイミングで予測し支援につなげることで不登校を防げるかが検証できれば」と担当する戸田市教育委員会事務局次長で教育政策室の横田洋和室長は期待する。

 不登校の兆候を捉えられれば、支援につなげやすくなる。例えば、戸田市は2022年度から不登校傾向の児童・生徒を支援するためのサポートルームを小学校の校内に設置するが、こうした支援に早めにつなげられるようになるとみる。

現状のデータの管理はバラバラ

 データベースは、戸田市が保有する3種類のデータベースから必要なデータを抽出し、個人とIDをひもづけて構築する。市の基幹系システムでは個人の氏名や住所などの基本情報を、一意の「宛名コード」とひもづけて管理している。この宛名コードを、データベース間をまたぐ共通のIDとして活用する。その上で、現状は共通のIDが割り振られていない学力調査などの教育関連のデータには新たに一意の「教育ID」を設定し、「宛名コード」と「教育ID」をひもづけて、全体を管理できるようにする。

戸田市が教育総合データベースで利用するデータの例
戸田市が教育総合データベースで利用するデータの例
出所:戸田市の資料と取材を基に日経クロステック作成

 不登校傾向の予測で利用するデータは、他には例えば、学力調査の質問紙で行っている生活や家庭についてのアンケート結果、戸田市の教育センターで行っている児童生徒の教育相談の記録なども想定している。

 ただ、実際に想定しているようにデータ連携ができるか、どのデータを連携して分析すれば不登校傾向の予兆が捉えられるかなどは、これから精査する。

 現状のデータに課題は多い。例えば、学習系のデータは、Excelでバラバラに管理されていたり、調査が年に1~2回など頻度が少なかったり、小学校1年生から3年生までは調査を行っていなかったりしている。

 データベース構築や連携管理システム構築を担当する戸田市デジタル戦略室の大山水帆室長は、「教育関連のデータは現状バラバラで管理している。データの形式や項目などを標準化できるように、データの整備から進めていく」と話す。

 2022年夏までにデータ項目を精査して、データベースの設計、データベースにアクセスする職員の設定などを行う。また、市の部局をまたいでデータを利用する場合は目的外利用となるため、市の個人情報保護審査会に諮問する。データベースを利用する職員は最小限になるよう、教育委員会の一部にとどめるという。

 2022年秋以降、実際にデータ連携し分析を進める。データ分析には経済学者で米エール大学の成田悠輔助教授が代表を務めるスタートアップの半熟仮想(東京・渋谷)が協力する。成田助教授は同市教育委員会のアドバイザーを務める。

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自治体が主体となった教育データ利活用

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