ココロの詩コンクールinカルデア
初投稿です。慣れないので読みにくいかと思いますが、ご容赦いただきますようお願い致します。
当カルデアにやっと槍ニキが来てくれたので、つい勢いでやっちまいました。
設定は捏造と妄想で出来ている。
以上、許せる方のみよろしくお願いします。
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『第2回ココロの詩コンクール開催決定!いつもは伝えられない愛する人へのその想いをポエムにしてみませんか?匿名大歓迎!優秀作品は会報カルデアに掲載いたします。皆さんの愛がたっぷり詰まった作品をお待ちしております!もちろん、全員参加です。度重なる召喚失敗で屍化したマスターに、砂を吐くような愛の言葉を聞かせましょう!』
食堂の壁に貼られたこの目に痛いどピンクの怪文書から、アーチャーの苦悩の日々は始まった。
期間は一週間。できた者からマスターの部屋入り口に設置してあるピンクのポストに投函するように、赤いハートが散りばめられたピンクの貼り紙にしっかり明記してある。
ちなみに、未提出者にはペナルティがある。公衆の面前での愛の告白だ。これが嫌なら詩くらい書けという脅し文句に他ならないそれを避ける為に、アーチャーは頭を悩ませる。匿名大歓迎はどこに行った。
とりあえず、提出さえすればいいのだろうと思っていた。しかし敵もさるもの。再提出を命じられたのだ。
曰く、『愛がない』のだそうだ。
匿名なのに提出者を突き止めてのダメ出し。まだ年若いと少々侮っていたが、その手並みの鮮やかさに感動すら覚えた。成長に胸が熱くなるが、今はそれどころではない。
何とかペナルティを回避しなければ。奥ゆかしくてシャイな現代日本人には荷が重い。
カルデア内の廊下を歩きまわりながら、詩作のヒントになりそうなものを探す。とはいえ、愛する人に贈る言葉など無機質な廊下に転がっているわけもなく。足は自然とキャスターが創り出した森へと向かった。
古代の英霊達が特に好むそこは、穏やかな空気に満ちていた。新緑の香りを吸い込めば、ささくれだった気持ちも少しは落ち着く。
「お?珍しい顔があるな。どうかしたのか?」
声をかけてきたのは、キャスター・クー・フーリン。サーヴァントの中でも古株にあたる彼は、アーチャーとの付き合いも長い。
「お邪魔してしまったかな。申し訳ないが、少しの間うろつかせてもらう」
「いや、かまわん。結界を張ってるワケじゃないんだ。好きに過ごしてくれ」
クー・フーリンの中でも年嵩の彼は、むやみやたらとアーチャーに噛み付いてはこないので槍兵のクー・フーリンに比べたら格段に付き合いやすい。自然と態度も穏やかになり、顔も綻ぶ。
嫌な事が頭から消えるくらい、爽やかな空気だ。
「そういえば、お前さんはまだ砂吐くような愛の言葉の詩を書いてないらしいな」
否、消えてくれなかった。
「そう言う君は、もう提出したのか?」
「俺を誰だと思ってる?ケルトのドルイドだぞ。あんな詩作くらい、なんてこたぁないわな」
言葉で民を導く導師に、野暮な話だった。砂吐くような愛の言葉が何てことはないなんて、古代人が羨ましい。
「私は、生前から恋愛沙汰には疎くてね。愛の言葉など、囁いたことも、綴った事も無い。…正直なところ、どうしていいのかすらわからないんだ」
「まぁ、聡そうではないな」
自分に向けられている好意に、全く気がついてない辺り。キャスターはこの朴念仁に想いを寄せている人物が、気の毒でたまらなかった。
ここは迷える民の導き手として、何らかのアドバイスを与えるべきだろう。例えば…。
「お前さんは、愛情や愛着を持ってる相手はいるか?恋愛でなくてもいい。親愛や友愛や家族愛なんかを感じる相手は?」
「いないこともないが、唐突に何だ?」
「悩んでる様だから、詩作のアドバイスくらいしてやろうかと思ってな。テーマは愛だが、恋愛とは言ってないんだぞ、アーチャー」
目からウロコが落ちた。
目を見開いて固まったアーチャーに、キャスターは続けて言う。
「例えば、どんな時にその相手を思い出す?綺麗なものを見た時、肌触りのいいものに触れた時、いい香りをかいだ時、美味いものを食べた時。思い浮かべるのは、誰の顔だ?」
「あ、…」
思い浮かべられたらしい。キャスターはホッと息を吐いた。
「相手を思い浮かべて幸せだと感じる時の事を、言葉にすればいいさ。その言葉に、情が宿る」
「そうか。…やってみる」
アーチャーは立ち上がり、森を後にした。キャスターは座ったまま、それを見送る。
「さて、次の迷える民はお前か?ランサーの俺」
キャスターが寄りかかった木の陰から、赤い槍を持ち青い武装を纏ったクー・フーリンが現れた。
その彼が何やら渋い顔で、キャスターのクー・フーリンを睨む。
「キャスターの俺。お前の前じゃ、アーチャーはいつもああなのか?」
穏やかに笑い、皮肉も言わずに普通に会話するのかと、ランサーは問いかける。
その顔に、一片の余裕もない。返答次第では、キャスターを滅してしまうかもしれないと、震える右手にある槍が伝えてくる。
「ああ、うん。お前ら2人とも勘弁してくれ」
この両片思い共め。頼むから、さっさとくっつけ。
ランサーがアーチャーに好意を寄せているのは、最初からわかっていた。いくつかの聖杯戦争で敵対しつつも惹かれあい、愛し合っていた記録はもちろんキャスターにもある。だがキャスターが愛したのは聖杯の泥に侵されたアーチャーだった。自分の想いは行き場を失ってしまった。だからせめて、ランサーの想いを成就させてやりたいと陰ながら手助けしていたのだが。 全く上手くいってない。
そもそもアーチャーがキャスターの元にくるのは、少しでもランサーを感じていたいからなのだ。顔を合わせると諍いが起こるランサーとでは過ごせない穏やかな時間を、同じ顔のキャスターで代用して過ごしているだけ。アーチャーは無自覚だろうが、その目がキャスターを通して誰を見ているかは一目瞭然だ。
「損な役回りだな、本当によ」
「アーチャーに笑いかけられて、何が損な役回りだ。代われ」
小さな独り言に、鋭く反応するランサー。本当に余裕がない。赤い槍も、心臓を穿ちたくて震えている。
キャスター、消滅の危機。
「おいおい落ち着けよ、ランサーの俺。お前が態度を改めれば、アーチャーはいくらでも笑ってくれるだろうさ」
「頭がおかしくなったかと、皮肉げにな」
否めない。よく理解してるじゃないか。
いがみ合う事が多過ぎて、他の聖杯戦争のように素直になれないこの2人。
さて、どう導くか。
「ランサーの俺よ。愛の詩、もう提出したのか?」
「いきなり、なんだってんだ。まだだが、それがどうした?」
「迷える民の導き手に、ちょっくら台本を書かせてみないか?」
悪いようにはしないと笑うキャスターに、ランサーは賭けてみることにした。どうせ打つ手は無いのだ。曲がりなりにも同じクー・フーリンなのだから、陥れる事はしないだろう。
「未提出のペナルティ、覚えてるか?」
ニヤリと笑うその顔は、とても導き手には見えなかったが、何故か任せても大丈夫な気がしてくる。どんな手を使っても、目的を達してくれそうな絶対的な安定感がキャスターにはあった。
爽やかな風が吹き抜ける森の中で、密やかな企みの幕が上がる。
砂吐く愛の詩コンクール締め切り当日、アーチャーは意気揚々と食堂で給仕をしていた。
キャスターのおかげで出来上がった詩は、マスターからお褒めをいただき、今度の会報カルデアに載せたいとまで言われたが、謹んで辞退した。誰があんな恥ずかしいモノを大多数の人の目に晒すものか。
ペナルティからも解放されて、心の重荷もなくなった今、常にない機嫌の良さで食堂に入ってきたサーヴァント達に料理を運ぶ。まだサーヴァントの数が少ないからこそアーチャーが運んでいるが、増えてきたらセルフにしなければならないと考えている今日この頃。
「よぉ、アーチャー。ご機嫌だな」
親しげに声をかけてきたのは、キャスターのクー・フーリン。その後ろには、ランサーのクー・フーリンがしかめっ面で立っている。
珍しいこともあるものだと、アーチャーは深く考えなかった。
それが不幸の始まり。
ちょうど食堂に入ってきたマスターが、ランサーを見つけて詰め寄る。
「槍ニキ見っけ!ポエム、今日までだよ。早く出して!」
右手を差し出し、早く早くと催促するマスターに、ランサーは申し訳なさそうな顔をした。
「悪い、マスター。出来なかったんだ」
「それじゃあ、ペナルティだよ。愛する人に愛の告白、出来るの?」
「問題ない。やるのはここでいいのか?」
「そうだね。ちょうどみんな揃ってるし、やっちゃって」
了解と獰猛に笑い、ランサーはエプロンをつけて忙しそうにしているアーチャーに近づく。
「アーチャー、話がある。ちょっと来い」
「…すまないが、今は見ての通り忙しくしている。後にしてもらえないか」
「今だ。後では話にならん」
「だが、マスターの食事が…」
アーチャーが言うと、一緒に支度をしていたロビンがその役を請け負う。するとアーチャーの逃げ道はなくなった。
「アーチャー、ランサーの俺が頼んだんだ。聞いてやってくれよ。諍いが起こる時は、俺が止めるからな」
導き手にそう言われてしまったら、断る言葉も見つからない。仕方なく、アーチャーはエプロンを外してランサーについて行く。
何故か食堂の真ん中で立ち止まり、こちらを振り向いたランサーの意図が掴めず、アーチャーは思わず後ろに下がった。まさかここで戦闘開始もなかろうが、身体に染み付いた闘う者としての習性はランサーから距離をとった。
それがランサーの逆鱗に触れたらしい。その白皙の美貌に怒りの赤が広がった。
「そんなに、俺の側が嫌なのかよ」
唸る様に告げられた言葉は、食堂のざわめきに攫われ、アーチャーの耳には届かない。ただランサーの怒りだけは伝わってきて、それが余計に距離をとる原因になる。
話があると言われていたのに、一向に切り出してこないランサーにアーチャーは怯えた。
本気で嫌いだと、宣言されてしまうのではないかと。視界にも入ってくるな、目障りだと言われてしまったら、立ち直れないかもしれない。
ネガティヴで自己評価が低いアーチャーの、マイナス思考は止まらない。思考の波に押し流されて、ランサーが言った言葉の意味が掴めなかった。
「アーチャー、俺の炉端に来い」
「炉端?」
一部のケルト勢から歓声とどよめきが起こる中、意味がわかっていないアーチャーは、眉間にシワを寄せて首をひねる。
炉端というのは、日本の囲炉裏の様な物だろうか。だとしたら、料理人として来いと?だが、ここで料理を作って出しているし、よくランサーも食べに来ているのだから、今のままでも問題はないのではないだろうか。そもそも、1人の為だけに料理するのは効率が悪い。それに、まとめて作った方が美味しい物も多い。
という訳で。
「断る。その必要を感じない」
アーチャーはランサーの申し出を断った。スッパリと一刀両断されたランサーは。
「いい度胸だ。ここまでコケにされるとは、思ってなかったぜ」
「コケにしたつもりはないのだが、………え?」
怒りに体を震わせるランサーに戸惑い、アーチャーは視線を彷徨わせた。その時、ランサーの背後に陣取っていたキャスターに目が止まった。
正確には、キャスターが持っているホワイトボードに書かれている文字に、だが。
【炉端に来い=結婚してくれ 良かったなぁアーチャー】
「なんでさ⁈」
咄嗟に逃げをうったアーチャーを、拘束のルーンが締めあげる。それを放ったのはキャスターだ。
「こらこら、アーチャー。返事も無しでどこに行くつもりだ?ランサーの俺、後はゆっくりと2人で話して来いや」
迷える民の導き手は、最良の手段をもってカルデアの平和を守った。
飢えた獣に、特上の肉を。荒ぶるランサーに、大人しいアーチャー(ルーンで拘束済)を。
「キャスター!君がこんな事をするとは思っていなかったぞ!?」
「お前さん等があんまりにも、あんまりなもんでな。カルデアを壊される前に、手を打った。心配しなさんな。優しくしてくれるさ」
何をだ!と叫ぶアーチャーは、既にランサーの肩に担がれている。自分よりも逞しいガチムチを担いでも乱れない歩調。筋力Bは伊達じゃない。
「マスター。悪いが、しばらく俺とアーチャーは戦力外って事で頼むわ」
食堂を出る間際、目を見開いて硬直しているマスターに声をかける。それで義務は果たしたとばかりに、ランサーは自室に向かってまっしぐら。担がれたアーチャーが目を回す程の勢いだったとか。
残されたマスターは、ランサーの姿が見えなくなって、ようやく硬直から抜け出した。
「ちょっと待って、槍ニキ!ダメだよそんな…」
立ち上がり、追いかけようとするその肩を掴んだのは、迷える民の導き手キャスター・クー・フーリン。
「今回だけは見逃してやってくれよ。あいつも必死なんだ」
諭す様に言われ、その場にガックリと膝をつく。その落胆ぶりに、周りのサーヴァント達が心配そうに寄ってきた。
「マスター。そんなに気を落とさなくても…」
「槍ニキ、そこは姫抱きでしょう!なんで土嚢袋みたいな担ぎ方するのさ⁈」
悔しそうに床を叩くマスター。なんで、なんでよと咽び泣きながら、床に伏せている。
そこかよ!食堂にいたサーヴァント達は一斉にツッコミを入れた。
周りからのツッコミを完全無視してひとしきり悔しがったマスターは、突如がばりと起き上がり、食堂の入り口目指して猛然と走り出した。
「マスター⁈どうしたんだ?」
更なる奇行に驚いたサーヴァントが呼び止めると、マスターは振り返りもせず絶叫した。
「槍弓発生の瞬間を、この目で見なければーーー‼︎」
「「「やめてあげて〜〜〜‼︎」」」
サーヴァント達の叫びが食堂にこだまし、マスターはあえなく捕獲された。力一杯暴れたが、人間の力ではサーヴァント達には到底敵わない。
羽交い締めにされ、拘束されたマスターはしっかりと決めていた。この始末は、アーチャーにつけさせると。
完全な八つ当たりである。
後日発行された会報カルデアには、アーチャーの【砂吐く愛の詩】が批評付きで掲載されていたとか。それを読んだランサーのニヤケ顔が、しばらく消えなかったとか。アーチャーが自室に引きこもって1週間出てこなかったとかいう話は、カルデアの笑い話として新しいサーヴァントが来るたびに語り継がれることになりました。
めでたい………かな?