大谷翔平は「剛」「柔」「技」 筑波大監督の川村卓准教授が分析

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コンパクトな投球フォーム

 今季は投球フォームがコンパクトになったという。以前はテークバックで右腕を下ろしていたが、その動きがなくなり「最初から脇を開けた状態にして、手を置いておく」ようになった。「コンパクトにしたおかげで、腕がちょっと上から振れるようになった」

 以前の大きなテークバックでは、前への体重移動に対し腕を上げるのが遅れてしまい、球を握る手が体から離れて、斜めに腕を振ってしまうことがあったという。ただ、開幕当初はうまくいっていなかったようで「コンパクトに腕を振ろうとしたのと下半身が合っていないな、と」。下半身は、以前そうだったように、上半身の動作に合わせたダイナミックな動きのまま。そのため、引っ掛けたような投球や抜けた球が多かった。だが、それも4月、5月と投げていくにつれて改善していった。

 下半身の動かし方には日本ハム時代から課題があったと、川村さんはみる。軸足となる右の膝を深く曲げて「沈み込む」ような動きがあった。「そうしないと、プレートを強く押せないから」と理由を分析。その動きがあると、「どうしても下半身にすごく力を込めていく動きになるので、上がスムーズに動かなくなりがち」。体全体の動きを合わせることが難しくなり、「はまった時はすごく良いボールが行くけれども、はまらなくなると、どうにもならなくなる」という。さらに、この投げ方では力みが生じて、故障した肘への負担も大きくなる。

◇省エネ、効率よく100マイル

 今季の大谷は、それが解消され「上げたところからそのまま振り下ろす」ようになった。左足を踏み出す距離も短くなったような印象を受けるという。「ちょっとおとなしくステップして、そこにグイっと体が乗っていくような感じ」

 そのように変化したのはなぜか。川村さんは「いかに省エネで効率よく投げていくかを、いろいろと試行錯誤していたのではないか」と推察する。もともとの力を考えれば、このコンパクトなフォームでも十分に100マイル(約161キロ)を投げられる。「力を使わなければ、球数も投げられる、疲労も少ない、という考え方でやっていたんじゃないか」。二刀流を続けながら、シーズンを通して先発として投げ抜くため、大谷が出した一つの答えだった。

 シーズンが進み、7月ごろにはさらなる変化が。投げた際に軸足としてプレートを蹴った右足の着地点だ。それまでは左足と横並びになる位置に着いていたが、「左足を追い越して前の方に着く」ようになった。

 このために必要となるのが、打撃フォームでも生かされていた太もも裏の筋肉。右足を大きく踏み出すためには、尻を上げる動作と、それを支える背中側の力が求められる。その結果、体の位置に対してボールを「前で放せるようになって、制球が安定してきた」。スライダーなどの変化球も、打者からは直球と近い軌道に見え、より効果的に使える。

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