エンジン全開。初球で99.5マイル(約160キロ)を計測した。1ボール2ストライクと追い込んでからの高めはこの日最速の100.2マイル(約161キロ)。これはバットに当てられてファウルに。続く99.7マイル(約160キロ)が外角に外れると、6球目にはスプリットを選択。外角低めのボールゾーンに落とし、遊ゴロに仕留めた。
「普段は初回からそんなに三振ばかりを狙うことはないんですけど、きょうは全部取りにいった。結果的に取れなかったんですけど、いいところに投げても、しっかりコンタクトする率も高いし、さすがだなと思うバッターが多い」
思い描いたような理想の投球ではなかったとしても、3人のスターをぴしゃり。「打たせない」との言葉通り、隙がなかった。
ボー・ジャクソンのように
米メディアの間では、投手と打者でメンバーに選ばれた大谷を、かつて大リーグと米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の両方でオールスター戦に出たボー・ジャクソンと比較する意見もあった。ジャクソンは、大リーグでは1989年、NFLでは90年のオールスター戦に出場している。
89年にエンゼルスの本拠地アナハイムで開催された大リーグの球宴には、ノーラン・ライアンやカル・リプケン、マーク・マグワイア、オジー・スミス、トニー・グウィン、カービー・パケットら、そうそうたる面々がそろっていた。そんな中でも一番の注目を浴びていたのが、野球とアメフットの二足のわらじを履くジャクソンだった。
「選手みんなが立ち止まった」
現在はエンゼルスの専属解説者を務める往年の好投手で、89年のオールスター戦に出場したマーク・グビザ氏が、こんなことを語った。
「みんなボーがやること全てを見ていた。その中には殿堂入りを果たした選手がたくさんいたけど、みんながボーの打撃、守備、走塁、全てに注目していた。今回も同じように、ア・リーグとナ・リーグの選手みんなが立ち止まって、翔平のプレーを見ていたね」
今夏の球宴には、MVPに選ばれたゲレロの他、タティス、フアン・ソト(ナショナルズ)ら将来球界を背負って立つことが期待される若きスターたちが名を連ねた。シャーザーやアーロン・ジャッジ(ヤンキース)ら大リーグの顔といえる選手もいた。そうした顔触れを差し置くかのように、観戦したファンから、さらには出場選手からも熱い視線を一身に浴びたのは、二刀流の大谷だった。
大リーグ機構は、大谷一人だけを扱ったオールスター戦では異例の宣伝動画を作成。当然ながらファンからの注目度も随一で、球場内などにある売店で大谷関連の商品はオールスター当日を迎える前に軒並み売り切れ。大リーグ機構によれば、グッズ売り上げは大谷関連のものが最多の28%を占めた。
「感謝の言葉」で締めくくり
大谷は投手としては1イニングで降板し、三回の第2打席は一ゴロでお役御免となった。投手と打者の両方で大活躍、とはいかなかったものの、メジャートップの選手たちと投打で対戦した後とあって、珍しく興奮した様子で取材に応じていた。
「また(オールスター戦に)来られるように、と思わせてくれる素晴らしい経験だった。全体的に球場入りから試合から、ホームランダービーもそうですし、こういう雰囲気はなかなかシーズン中はない。本当に野球が好きな人たちがこれだけ集まって、すごくいい雰囲気だった」
スターの中でも別格の注目を集め、異例の「先発投手兼1番DH」で出場した球宴。囲み取材の終わりに、感謝の言葉を並べた。
「選んでいただいたファンの皆さんもそうですし、こうやって起用してくれた監督、コーチの皆さんもそうですし、本当に、すごくいい経験をさせてもらってありがたいなと思っています」
「ルール自体を変えてもらって、2打席立たせてもらった。伝統あるこういう場では難しかったと思うが、そういう風にしてもらってすごく感謝しています」
(2021年7月20日掲載)
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