ふたを開けてみれば、各チームの選手や監督、コーチによる「選手間投票」で、大谷はDH部門で1位だったほか、先発投手部門でも5位。投手としても選出された。投票権を持つマドン監督は「もちろん。当然大谷に入れたよ」。大谷の投手選出は妥当とみており、支持した選手らの意見を、こう代弁した。
「(3勝にとどまる一方で)他の数字は素晴らしい。それに、彼がやっていることは普通ではない。つまり、打撃と投球をこれだけ高いレベルでやっている。(投票した人は)何勝しているとか何敗したとかではなく、彼がやっている仕事全体を見ているのだと思う」
「ア・リーグで五指に入る」との評価も
現役時代に2度オールスター戦に選出された元投手で、現在はエンゼルス専属のテレビ解説者を務めるマーク・グビザ氏も、大谷の投手としての選出に異存はないという。
「(7失点した7月1日の)ヤンキース戦以前の防御率を見てみるといい。奪三振率、被打率も。大谷はア・リーグで五指に入る先発投手だということが論証できるだろう。(勝ち星は少ないが)リードしたまま降板して、勝ちが付かなかった試合はどれだけあったか。私が思うに、少なく見積もっても、大谷は今6勝していてもおかしくない。ヤンキース戦も大谷が残した満塁の走者を救援がかえして7失点だった」
ヤンキース戦以前の防御率は2.58。前半戦の9イニング換算の奪三振数を表す奪三振率は11.69、被打率は1割9分5厘だった。
選手間投票で大谷は、DH部門で断然トップの501票を獲得し、先発投手部門では121票を得た。マドン監督ら同僚だけでなく、ライバルチームの大リーガーも二刀流を認め、DHそして先発投手としての大谷に票を投じたことを意味する。
なるか、イチロー以来のMVP
日本のファンにとっては、2007年にイチロー(マリナーズ)がランニング本塁打を放ち、最優秀選手に輝いた試合が印象深いオールスター戦の一つだろう。大谷自身も、思い出深いメジャーの球宴は「やっぱりイチローさんの出ている試合」と述べている。
MVPに関しては「結果もそうだが、まずは雰囲気自体をしっかりと楽しんでプレーしたい」と謙虚に語っていた。ただ、客観的に見れば投打でアピールするチャンスが得られるだけに、他の選手よりも可能性は高いと言えるだろう。
グビザ氏も「今年はMVPを取る絶好のチャンスだ」と語気を強める。
大谷は4月4日のホワイトソックス戦に2番投手で、メジャーでは自身初の投打同時出場を果たした。この試合で、一回に投手としては100マイル(約161キロ)超の速球を連発して三振を一つ奪い、その裏に先制ソロを放っている。グビザ氏は、こう話す。
「今年やってきたことをやれば、MVPのチャンスがある。1イニングか2イニングを投げて、三振を三つ。本塁打や二塁打を打つとか、盗塁してホームを踏むとか。そういう活躍をしたら、これ以上MVPにふさわしい選手なんで世界中のどこにもいない。ホワイトソックス戦と同じように100マイルを投げて三振を取って、打者で本塁打を打てば、もう大谷がMVPだ。争える選手もいないだろう。3本塁打を打つ選手がいたって、大谷がMVPだろう」
「必ずプラスになる」
大谷のオールスター選出が決まった時から、周囲は色めき立っていた。後に大リーグ機構が、大谷ただ一人を取り上げた異例の宣伝動画をつくったことからも注目度の高さは分かる。ただし当の本人は、球宴への出場が決まった際にも、いつもと変わらぬ様子で淡々と語った。
「プレーヤーとして必ずプラスになると思う。いろんな選手とコミュニケーションを取って、トップの選手が集まってくるので、どういうプレーヤーなのかなというのは観察できるし、ゲームの中でトップの選手たちのプレーを見る機会もたくさんあると思うので、必ずプラスになると思っている」
豪快な本塁打に、100マイル超の直球。そしてMVP-。膨らみ続ける期待をよそに、本人は至って冷静だ。自身の成長につながるヒントを得られる貴重な場になると捉えているのだろう。
(2021年7月12日掲載)
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