中田によれば、堅実な守備の極意は「経験」と「確認作業」。ソフトバンクの柳田悠岐ら強打者の打球傾向を覚え、その都度細かく守備位置を変える。「前回の試合でここを抜かれているよなとか、こっち(一塁線)に2、3球来ているよなというのはパッと出てくる」。それを踏まえて「半歩」守る位置を変えるだけで、チームを救う好守が生まれることもある。実際に打球が飛ぶ前のシミュレーションも重要だ。「頭の後ろにフライが来たらこう追うとか、セカンドやライトが判断できるように早めに声を出そうとか。当たり前のことかもしれないが、当たり前のことが、いざという時に忘れがち」。豪快な打撃のイメージとは対照的に映る緻密な考え方が、根底にある。
金子コーチは、こう考える。守備は単純に試合数を重ねれば改善するものではなく、大事なのは「思考」だと。「何でなんだろう、というのは常に感じてほしい。『何であれに追い付かないのだろう』『何であの打球をアウトにできないのだろう』と。『何で』というのを思うだけではなく、そこから考えて行動に移せるようになったら、こちらも教えがいがある」。野手個々の意識改革こそがカギを握ると力説する。
若き二遊間候補、渡辺と平沼
守りの危機感は、栗山英樹監督も感じている。「技術も体力も必要。まずはそこを上げてもらう」と春季キャンプでの底上げを目指す。一方で今の日本ハムは若手中心の主力構成になっているため、選手層の薄さも否めない。「エラーしたら使わないよ、というのは簡単だが、それでは選手がいなくなってしまう」。課題を承知済みでも、一筋縄にいかないのも現状だ。それでも「最終的にレギュラーを取ってくれるという光明が見えるのならば、(その選手を)信じ切っていく」。若手への期待と信頼感を示している。
二遊間の候補は、二塁手のレギュラーとして2020年シーズンを戦った25歳の渡辺と、遊撃の定位置奪取を目指す23歳の平沼翔太だ。渡辺は20年、主に5番や6番を打って打率2割8分3厘。平沼も終盤戦で2番を任されるなど、ともに打力には定評がある。ただし守備力は発展途上の段階。だからこそ、伸びる可能性を残しているとも言える。
「伝統」復活への再スタートに
20年9月のソフトバンク戦。敗戦につながるエラーをした平沼は試合後、ベンチでタオルを頭からかぶり、一人涙を流し続けていた。契約更改の後、覚悟の思いをにじませた。「もっと歯を食いしばってやる時期が来たのかなと思う」。渡辺は併殺の精度向上を課題に挙げ、「やっぱり(アウトを)二つ取るっていうのが、流れが大きく変わるところだと思う」と語った。これまで先輩の中島卓也に頼る部分が大きかった気持ちの面も反省し、「野村(佑希)や清宮が出てきてってなったら、僕が一番上の立ち位置になるので、より一層引っ張っていかなくちゃいけない。もちろんミスも出ますけど、その中で声を掛け合うなどしなければ」。レギュラーの自覚を見せているのは頼もしい。
1年前の春季キャンプでは、小笠原道大ヘッドコーチの下で若手が夕方遅くまで体力強化と打撃練習に取り組んだ。今年はキャンプで、守備の下地をつくることになりそうだ。現役時代にセ、パ両リーグで最優秀選手に選ばれ、打撃3部門のタイトルを獲得し、通算2120安打など名だたるスラッガーだった小笠原ヘッド。日本ハムに捕手で入団し、打力を生かすため3年目に一塁手に転向した。当時の古屋英夫コーチの指導下、キャンプで守備の猛練習に明け暮れ、その年から4年連続ゴールデングラブ賞。09年の同賞は、日本ハム勢が内野すべてを含む7人(捕手=鶴岡慎也、一塁手=高橋信二、二塁手=田中賢介、三塁手=小谷野栄一、遊撃手=金子誠、外野手=糸井嘉男、稲葉篤紀)を占めた。そうした「伝統」の復活へ、21年シーズンを足掛かりとしたいところだ。新たなチームスローガンは「01karat~イチカラ~」。再び一からつくり上げて、一つ一つの宝石が光り輝くように―とのイメージは、守備にも当てはまるだろう。(2021年1月26日掲載)
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