今季6ホールド目が節目の大記録となった4月13日の試合では、付け入る隙を与えなかった。その前日、12日の登板では、無失点に抑えたものの芯で捉えられた打球が目立った。ここからが宮西の真骨頂だ。
13日の登板直前。ブルペンで「ボール2個分」だけ横手投げに近くなるように、腕の位置を下げた。相手の左打者に背中からスライダーがやってくるイメージを意識させるため、打者にとって球の軌道が見える角度を変えようとした。同時に、登板過多気味の状況下、肘の疲労を和らげる効果も考えた上での修正。「真っすぐが速いわけでもなく、変化球がすごいわけでもない。自分がこの世界でどう生きていけるか、それは腕の位置を器用に動かせることだと思う」。差し込まれたり、打ち損じたりする各打者の反応を見れば、球の質が変わったのは明確だった。
昨年まで日本ハムで投手コーチを務めた吉井理人氏(ロッテ投手コーチ)は、今まで見てきた投手の中で「自分のイメージ通りに体を動かせる投手」が3人しかいかなかったと明かす。感覚に頼って投げる投手が多い中で、自分の頭にあるフォームを実際に再現できる3人とは、宮西とダルビッシュ有投手(カブス)、上沢直之投手(日本ハム)だという。
◇元コーチや女房役も絶賛
吉井氏は宮西について「心臓に毛の生えた強さだけでなく、したたかさや繊細さも持っている」と語り、「根っからのしたたかなリリーバー」と評する。
投球プランを的確に立てて、ピンチでは誰と勝負をするべきかしっかり考えられるという。「(打ち取るのが)無理と思ったら、平気で歩かせて次の打者と勝負できる。絶体絶命の場面でも相手がボール球を振る確信があるから、その球を投げられる」。それを支えているのは確かな制球力と洞察力だ。
宮西が新人当時から球を受けてきた鶴岡慎也捕手(38)は「頭がいい。バッターをしっかり見て、自分の調子とバッターの雰囲気を合わせて、投げるコースを選択できる」と言う。互いにベテランの域に達した今でも「やばいと思ったら(サインに)首を振る。空気を読むのがうまい」。相手打者の調子や狙いを見透かして勝負ができるのが最大の強み。腕の位置を変える以外にも、「タイミングをずらすのが天才。フォームのためなどでずらしていく」と説明する。繊細な技術でプロの世界を生き抜いてきた。
17年のオフ、宮西は「理想のフォームは10年間で一つもない」と話していた。年を重ね、疲労の蓄積もある中で、その年その年の体に合ったフォームを見つけていく作業をシーズンオフに繰り返すとう。「バッターも同じ。毎年変える人が結果を残す」と向上心が衰えることはないようだ。
宮西の努力を見てきただけに、鶴岡は「いくら変則左腕とはいえ、(球速で言えば)140キロしか投げられない投手。そういうの(努力)がないと生きてはいけなかった。長く稼げる投手はそうじゃないといけない。1、2年の活躍で終わる投手は今までにたくさん見てきた」。歴代2位となる通算273ホールドの山口鉄也氏、シーズン最多のプロ野球記録(47ホールド)を持つ浅尾拓也氏はともに150キロに迫る直球の持ち主だった。それだけに、宮西の異能ぶりは際立っている。
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