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【倉本聰 ここだけの話 38】 仲代達矢の無名塾が「富良野塾と根本的に違っていたのは・・・」

メディア文化評論家
ユキヤナギ 2026(筆者撮影)

脚本家・倉本聰さんと交わしてきた「ドラマをめぐる対話」を、取材ノートから再構成しています。

碓井 WOWOWのドラマWスペシャル『學』(2012年)の主演は仲代達矢さん。両親を亡くした少年(高杉真宙)に寄り添う祖父を演じました。仲代さんと倉本脚本の組み合わせって珍しいなと思いながら見ましたけど。
倉本 僕が書いた『ブルークリスマス』(1978年)っていう岡本喜八さんの映画があります。
碓井 勝野洋さんや竹下景子さんは覚えているんですが、仲代さんも出てらしたんですね。
倉本 ええ。それと、あの人は「無名塾」ってのをやってたでしょう? 

碓井 いわゆる俳優養成所でした。

倉本 「富良野塾」と形態が似てたんです。だけど根本的に違っていたのは、彼のところは塾生に一切のアルバイトを禁じていた。だから最初は余裕のある人しか入れなかったんです。
碓井 そうなんだ。
倉本 外に出ないでずっと芝居漬けにして。うちみたいに塾生自身が生活費を稼ぐってことはいらなかったんですよ。いらないというより、させなかったのか。でも、結果的に向こうのほうが役者は育ってますよね。

碓井 養成所としては機能していたと。
倉本 役所広司とか結構出てきたけど、アルバイトを禁止して、若者に生活を無視してやらせるっていうのは理解できなかった。ちょっと違うと思ったんだよね。
碓井 言うのもおこがましいですが、先生と仲代さんは、求めている芝居も違う気がします。
倉本 違いますね。
碓井 そういうお2人の『學』が2012年で、2年後にTBSの『おやじの背中』があって。そこからまた3年経って『やすらぎの郷』(テレビ朝日系、17年)になるわけですが、倉本聰の2010年代、なかなかすごいですよ。
倉本 いやいや。この時期、ドラマはあまり書いてないんだ。
碓井 それってドラマの状況というか、テレビの状況自体がよくないほうへ進んだ時代だったからだと思うんです。

倉本 僕もドラマを見なくなっちゃったし、たまに見ても、とてもじゃないけど……。
碓井 ストレスになっちゃう。
倉本 そうなんですよ。なんでみんなこんなに怒鳴るの、っていうぐらい叫ぶでしょう?
碓井 ほんと、役者たちがやたらと叫びますね。
倉本 小声で芝居できないのかよっていう感じがあったし。特に刑事ものだとすぐ叫んじゃう。役者の質もどんどん落ちてった気がしましたね。
碓井 演出側もそれでOKだったりするからでしょうね。
倉本 でも、「警視庁密着24時」みたいなのがあるじゃないですか。
碓井 ドキュメンタリーの?
倉本 ええ。あれを見てると警察官が大声出すなんて、めったにないでしょう?

碓井 ほんとだ。その指摘、当たってますね。逮捕する場面でも冷静に話しかけてます。
倉本 ものすごく優しい言葉でやるでしょう。
碓井 やってる、やってる。
倉本 実際は「バカやろう!」みたいに怒鳴ることってないんですよ。それを無視して警察とか刑事はこういうものだっていう先入観で演じている。

碓井 パターンというか、一種の記号化してますよね。

倉本 役者もそれを観客として見慣れてるものだから、自分が刑事ものに出た時に「このやろう!」とかって怒鳴っちゃう。そうやってドラマ全体がどんどん嘘くさくなっていくわけです。刑事ドラマも、それを見た本物の刑事が「嘘だね」って言うようじゃダメなんですよ。

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ありがとうございます。
メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術選奨」選考審査員(2025年度、18年度~20年度)、「芸術祭賞」審査委員(22年度)。

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