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The Works "あなたの名前を愛と名付けよう(槍弓)" is tagged "槍弓" and "Fate/GrandOrder(腐)".
あなたの名前を愛と名付けよう(槍弓)/Novel by 湯屋

あなたの名前を愛と名付けよう(槍弓)

2,318 character(s)4 mins

蒼天赤を穿つJBお疲れ様でした~!想像以上にたくさんの方にお手に取って頂きとても嬉しいです!
イベントに参加された皆様お疲れ様でした。とても楽しいイベントでしたね…
11月か12月の蒼赤にもまた新刊を携えて参加したいと思います!
こちらイベントで配布した無配になります。イリヤ城inノミヤネタです。詰め込みました。

事後通販開始しています!こちらからどうぞ!
再録本 https://kizuatoyuya.booth.pm/items/4863006
結婚式本 https://kizuatoyuya.booth.pm/items/4863078

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 冬の女神を内に秘めた彼女が楽しそうに笑ってくれるのは、どうしてかこちらの心も自然と在り方を緩めてしまう。立ち並ぶステージにはどこか既視感を覚え、胃の辺りがズキズキと訳もなく痛んでしまうのだが。きっとどこかの時空で私もあれに挑み、酷い惨劇を晒してみせたんだろうな……まぁ今回の私は参加者ではない。役割がないのなら自然と出店を構えてしまうのが、このカルデアに喚ばれてからすっかり私の癖となってしまっている。
 いわゆる周回をすればする程報酬の美味しい戦闘型イベントだ。こうなればマスターである彼女は手持ちの林檎全てを消費する勢いで戦いに挑むのだ。あぁ、またキャストリアが過労死顔を見せている。その後ろでバトンタッチとばかりに太公望とスカディとオベロンが項垂れている。彼らには私が構えた店のフライドチキンよりも紅女将のメニューの方がいいかもしれない。その隣に構えた村正殿の店には見て見ぬふりをしながら。そうしてまだまだ新入りに近い彼が、それでもトップサーヴァントと名高き神が青い顔で顔を見せる。

「一番いい肉を頼む。もうこのままここには帰ってこられないかもしれないからな……」
「有能な全能神であるというのも考え物だな……しっかり食べて精を付けるといい、テスカトリポカ。ミクトランに引き籠って職場放棄だけは勘弁してくれ。彼女が迎えに行くから」
「ははっ、それはもう懲りた。そう簡単に死んでみせるな、なんなんだあのお嬢は……いやむしろ過労死するぞこっちは」

 周回イベントでいつだって過労死寸前になるのは、優秀なサポートサーヴァントであるキャストリア、スカディ、コヤンスカヤ、オベロン辺りではあるが。アタッカーはいつ自身に白羽の矢が立つか戦々恐々としているのは確かだ。まぁおかげでカルデアの資源は潤うから、私達は感謝の言葉を向けつつこうして供物を捧げるばかりなのだが。大きな溜息を零す外見は普通の成人男性にしか見えない全能神を見送った後に、こちらはヤル気満々といった風貌でマスターが現れる。

「今日も周回頑張ってくるね! 揚げたての美味しいチキンをお願いっ、ノミヤ~!」
「ぐっ、いい加減そのあだ名は勘弁してくれ、マスター。真似をする心無い英霊が増えていくばかりだから」

 彼女も周回の付き添いばかりでヘトヘトだろうに、美味しい報酬を前に目がキまっている。せいぜいこの後何事もなくマスターが休めるよう祈るばかりだ。だがいつからか軽い気持ちで呼ぶようになったそのあだ名は本当に勘弁してほしい。他のエミヤを冠する彼らと区別するためらしいが、それにしたってなんだノミヤって。ノーマルエミヤの略らしいが、それを正しく理解する者ばかりではない。特に彼のような者は。

「ノミヤ~! 俺にも美味いチキンくれよ~! 終わったらビールも付けてくれ~キンキンに冷えたやつ!」
「えぇいっ貴様にそう呼ばれる筋合いはないぞランサーッ!」

 マスターが付けてくれた愛称であるからそれ自体を罵倒するわけにはいかない。だがそれをこんなにも馬鹿にした顔でニヤニヤと揶揄ってくる彼だけは許せそうにない。ぐぬぬとこちらは歯を噛み締めるばかり。貴様なんざあのステージで無残に吹き飛ばされてしまえばいいんだ。そうすれば顔なじみの英霊たちと共にランサーが死んだ! この人でなし! と合唱してみせるのに。
 だが私とてやられっばなしは性に合わない。特に彼相手に関してはこちらもどうにもいつもの冷静さは取り戻せそうにないのだ。まるで子供の癇癪のごとく煽り返して結局は些細な喧嘩へと繋がってしまう。今だって同じ、言われたままなんて見過ごせない。だから颯爽と去られる前にぐいっとその蒼き尾を引っ張った。


「待てまだこちらの用は終わってないぞ」
「ぐぇっ!? おいてめぇ髪は引っ張るなって」
「ほら、ついでだ。これも持っていくといい。スタミナは必須だろう? チームメンバーであるセタンタとスカサハ殿にもよろしくな」
「お、おう……? いやくれるっつーんなら有り難く貰っておくけどよ。いや一体どんな心変わりで」
「君の雄姿を期待しているよ――クー・フーリン」
「――あ?」
「君なら余裕だろう? なぁ、クー?」


 ここでいつものように駄犬呼ばわりした所で彼にとっては当たり前の攻撃でしかない。だから打撃を与えるならそれ以上の衝撃をと考えた結果、引っ張った髪を掬い上げ整えてやりながら。まるで愛しい者を見つめる眼差しで親しみを込めてその真名を囁いてやる。嫌悪する者にそう呼ばれては背筋が凍り鳥肌が立つのも当然で。ほら彼はあんぐりと口を開けて硬直している。咄嗟の不意打ちはまさに大成功だ。

「てめぇ……後で覚えてろよ」
「さて、何を覚えていなければならないのかね? 生憎と私は出店で忙しい。君の戦闘相手は暫く出来まいよ」
「そういう相手じゃねぇってんだよ! だーもうっ! 変に滾ってきちまったじゃねぇかエミヤ!」
「っふ、ははっ! さぞおぞましいだろう? 私なんぞに真名を呼ばれるのは。まぁ私は名に拘りなど持たないのでね。君に何と囁かれようがこれっぽっちも痛くないが?」

 かかかっと怒りにか顔を真っ赤にするランサーを見て、こちらも胸の痞えが取れるというもの。せいぜい気色悪さに悶々とするがいいさ、とその気合いに満ちた姿を見送りながら。一部始終を見物していたマスターが、「うん、いきなり好きな人に名前呼ばれたらドキっとしちゃうよね。さすが天然タラシエミヤ」などと感心していたなんて知らないまま。今日も今日とて私は皆のためにせっせと美味しいチキンを揚げるばかりなのだ。

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