好きだと云うなら抱きしめて 愛を囁く前に殺して下さい(狂王弓)
ついったの診断、『どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋』に閉じ込められましたなネタです。
あまーーーーーーいです。砂吐きゲロ甘注意。苦手な方はバックしてください!
SN時代から赤弓受が大好きです。FGOになってからは幅も広がって素晴らしいですね。
運命感じちゃってる槍弓も、知的なキャスニキに翻弄される弓や、狂王に振り回される弓などバリエも広がりつつ
駒扱いも満更じゃない金弓や、男前騎士王に愛される剣弓などSNから相変わらず美味しいです。
美味しい物くれるし違う俺が気にしてるしなんか気になるな旧槍弓とか、
実は片思いだけどばれないよう皮肉っちゃうロビエミとか、
ウェイター扱いされつつ情熱的に口説かれるエドエミとか、
お裁縫コンビで満更じゃないヴラエミとか、初めての恋はゴールデンな金時弓とか…
すっかり胃袋掴まれた王子様な旧剣弓とか
カルデアのメンバー×エミヤでいいじゃない…マイナー大好物です。
取り合いっこや愛されも大好物です。
色んな光の御子に愛され過ぎて困ってますなニキズ×エミヤや
王の嫁は我らの嫁!寵愛しますな円卓×エミヤや
ねぇねぇ喧嘩しようよー何故懐かれた!?なベオ李×エミヤや
面白い余の臣下にいや我の雑種だしなギルオジ×エミヤや
妄想は止まりません愛されエミヤ万歳\(^o^)/
- 327
- 294
- 8,436
好きだと云うなら抱きしめて 愛を囁く前に殺して下さい
唐突ですがあなた方は、『どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋』に閉じ込められました――
「――…ッ!!!!!」
「…、…おい、」
自分たちがそこにいる理由を聞かされた瞬間、アーチャーは絶望した。それはもう、分かりやすく。誰が見ても十中八九絶望していると分かる程に。
膝を折り顔を両手で覆い空を仰ぎみる。言葉を失い、絶句。でも悲痛な悲鳴が聞こえそうなその態度に、あの狂王でさえ哀愁を誘われ。
「…全呪解放、するか?」
「………いや、こういった時空に君は不慣れだとは思うが、このような部屋に物理攻撃は本当に無意味なんだよ…!もうやだ座に帰りたい」
「そうか」
あの狂王に気を遣われている。そんな特異すぎる事実に一瞬アーチャーは冷静さを取り戻しかけるが。だが駄目だった。自分は散々な時空を知っている。
今にも宝具を展開しようとする彼を、ただその一言で窘める。知っている。彼の宝具を持ってでさえ、こういった空間は壊れないのだと。
どんな仕組みだ、と得られない答えを探す気にもならず。ここから出たい――請われたのなら全力で答えるのが彼だから。ずかずかと歩みより。
「…?狂王?」
「――エミヤ、」
「っ、ちょ、ちょっと待て!!」
じっと真摯に見つめられ、首を傾げる。今自分は、みっともない表情を曝け出しているのだろう。こんな時でも変わらない、彼の無表情さを羨ましく思い。
だが途端、飛び出た自分の名前に思わずぎょっと目を見開き。彼の真意を見抜いてしまい、咄嗟に彼の口を両手で塞ぐ。
「…、…(なんだ)」
「なんだ、ではない!今君、何をしようとした!?」
「…、…(早く出たいんだろう。愛を叫べばいいんじゃないのか)」
「や、やめてくれそんな真面目に!はっ、恥ずかしいだろうが!!」
口を塞がれ、言葉を発することを許されない狂王だったが。もごもごと言葉にならない音を零し続ける。それを一字一句間違うことなく彼は理解してみせ。
以心伝心か、とツッコむ者はここには誰もおらず。そしてその反応。怒気だけではない理由で顔を赤く染めてみせる。
そんな姿にムラァ…と欲を狩られる狂王だったが。そんなことにアーチャーは気付く由もなく。認めたくない現状にただひたすら不満を零すだけで。
「ちっ、忌々しい…これがセックスしないと出られない部屋、とかなら魔力供給と称してさっさと終わらせられるのに…」
(さっさと終わると思ってるのか…)
「な、なにも、愛を叫ぶなどと…だ、だいたいこんな強制的に吐かされる言葉に真実味は帯びるのか!?」
(真面目…というより純粋…)
冷静さを失った弓兵は、独り言が全て口から漏れ出ているとも知らずに。ぶつぶつと呟き続ける。目の前の獣に全て聞かれているとも知らずに。
己の嫁のあまりに愛しすぎる行為に、無意識に尻尾が揺れてしまう。もう少しその姿を眺めていたい、と観察する狂王だった。
「こういった場面にならないと言えないヤツもいるんだろう。そういうヤツへの救済措置じゃないのか」
「うっ…君、順応力高すぎないか…?」
ちらり、顔を覆っていた手の隙間から覗かせる弓兵の顔は。なんて美味しそうな表情という表現に相応しいもので。思わず舌なめずりしてしまいそう。
だが今は味見よりも、狂王はその言葉が聞きたかった。自分が叫ぶことを許さないのなら、ならば赤い弓兵は自分で告白すべきだとじっと見つめる。
だって部屋から出るにはそうするしかないのだろう。まぁ、それは建前で。本音は嫁の口から零れるその囁きを聞きたいだけだったが。
「狂王…?…、………ハッ、もしかして君…」
「ん」
「わ、私からの言葉を待っている、のか…!?」
無機質でいて、その中に宿る確かな期待に気付いてしまうアーチャーだった。本当、そんな所だけ敏感な自分に腹が立ちつつも。
きらきらと輝く純粋な視線、そして無意識で振られているのだろう禍々しい尻尾。外見は相当恐ろしいものなのに、そのギャップだとでもいうのか。
そんな狂王が可愛く見えて仕方ないアーチャーだった。母性本能というやつだろうか。だがそれとその期待に応えるかは全く違う問題だったが。
「い、いやいやいやっ、に、似合わないだろうこんな少女漫画みたいな我々は!」
「…そうか」
「うっ」
なんだこの砂吐き必須な展開は、とアーチャーは見るからに狼狽えてみせた。本当、どうしてこうなった。自分の幸運Eを恨むしかない。
散々恨んでも全く改善されないのが悩みだったが。無理無理無理、と首をぶんぶん降れば。垂れ下がる尻尾。それは卑怯というものだ。
「そ、そうだ、ちょっと固有結界作ってみるから、それで脱出できるか試そう!」
「効かないといったのはお前だぞ」
「ううう」
しゅん、という効果音さえ聞こえそうな空気を。今の狂王から感じ取れた。そんなのは狂王らしくない。だがそんな表情を自分が作り出している。
その事実に慌てふためくアーチャーだった。申し訳ないという気持ちと、嬉しいという気持ちがない交ぜになって気持ち悪い。自分が気持ち悪い。
彼に応えたいという気持ちはもちろんある。だが、ちっぽけなプライドが邪魔をして上手く言葉を紡げない。何を紡いだらいいか分からない。
何故言葉なのだ、と考えても考えても深みにハマる。これが何か、例えば口づけだったりしたら。勢いとノリでさっさと終わらせることができるのに。
「うーん、うーん…」
「…、………おい」
「ちょ、ちょっとだけ時間をくれ、待ってくれ…んー…」
「…、…」
顎に手を当て、眉間に皺を寄せ。うんうん唸る弓兵の姿を、狂王はただじっと見つめて待った。待って待って、待ちくたびれた。ほんの瞬間だったけど。
何よりそんなに彼を悩ませ困らせることに、少しばかり悪い気がしてしまったのだ。歪んだ王である自分が、誰かを思い気遣い患うなどと。
そんなものを教えたのは彼なのだから、それに応えたいと報いたいと思う。困らせるのは本意ではないのだ。言葉が聞きたいのは事実だったけれど。
無理やり叫ばせたいわけじゃない。そういうための部屋だったけど。いつかを待とう。彼が素直に、自分に寄り添ってくれる日を。
「――エミヤ」
「んー…うん?なんだ、狂王」
「――、………、………………、離れるな、傍にいろ」
「――……………え、」
叫べというのなら、ありったけを叫ぼう。反転していない自分なら、きっと溢れんばかりを叫べた。だが自分は反転してしまって、光の御子ではない。
好きだとか、愛してるだとか。そんな甘ったるい愛は似合わないし、相応しくない。狂ってしまった自分の喉から込み上げるのは、唸りだけ。
何度重巡しても、吐き出せぬ言葉を諦め。笑みすら浮かべられず、瞳を細めながら。自分にできるありったけをそっと、その耳元で呟いた。
「開いたな」
「えっ」
「出られる、行くぞ」
「えっ、え、ちょ、ちょっと、ちょっと待て、待て待て待て、なんで、さっ」
途端、がちゃりと鍵の開く音がした。そもそも今のが愛の言葉と認定されたのか、誰が判断しているのか、この部屋の仕組みは分からないばかりだが。
開いたのならいいだろう、と細かいことを気にしない狂王だった。だがアーチャーは気にせずにはいられない。今吐かれた、その言葉について。
不意を突かれたにも程がある。甘さとは程遠いのかもしれないが、まさしく自分だけに紡がれた彼らしからぬ言葉。動揺しないはずがない。
しかし狂王は目的は果たしたとばかりに出口に近づき、それを留めようと尻尾に捕まるが。筋力の差かずるずると引きずられていくアーチャーである。
「なんだ、開いたんだからいいだろう」
「そっ、それはそう、なのだがっ…、…っ」
「…、…」
「うわっ!…ッ」
顔を真っ赤にして、俯いて。上手く狂王の顔が見られない。それ程の爆弾発言だった。もちろん、覗く項の赤さは狂王にはバレバレだったが。
そして瞬時に、アーチャーの葛藤も見抜いてしまうスパダリである。自分だけが言われたまま、等価交換が成り立たないとでも思っているのだろう。
むしろいつも与えられているのは自分の方ばかりなのに、と狂王は慰めるようにアーチャーの頭を撫でた。わしゃわしゃと少しばかり乱暴に。
その慰めの意味を正しく理解するアーチャーだった。だがそれでは収まりがつかない。自分は与えられたいわけじゃない、与えたいのだ。
「――っ、…、………狂王、私は何より、君がいとおしい…許されるのならば、どうか…傍に居させてくれ。君になら、何をされてもかまわない」
「――………」
誓いを、ここに。自分にゲッシュなどないから、それは何の効力も持たないけれど。それはまるで、強制契約にも似た、ただの拙い祈りだ。
この身を捧げよう、許されるのであるならば。全て捧げても、傍に居られる資格があるか分からない。それでも、この心は止まらないから。
棘だらけの尻尾に抱き着き、優しく擦り寄り。無数の棘に傷を付けられても構わない。反転しても尚気高い、この王を自分は愛しく思っている。
「――さて、これで私の務めも果たしたぞ。あーすっきりした。慣れないことはするもんじゃないなっ」
「――おい」
「よし、これで心置きなく部屋から出られるな。まったく、こんな事態にはもう二度と遭遇したくないものだね。自分の幸運値の低さを呪うばかりで」
「エミヤ」
すべきことは成しえたと、任務終了とばかりにアーチャーは通常通りへと戻る。赤い外套を翻し、ただの守護者へと戻るべく部屋を後にする。
だがそれは許されない。例えいつもの冷静さを取り繕おうとしても、耳と項の熱までは誤魔化せない。狂王へ偽りは許されない。
何より饒舌に喋るその失態すら逃すものかと。狂王は尻尾を彼の身へと巻き付ける。きつく、逃がさないように、優しく、傷つけないように。
「エミヤ、」
「…、……………分かった、分かったから………本当に、少しだけ、だぞ。姿がないと、皆に怪しまれても困るからな」
「あぁ、それで十分だ」
名前を何度も呼ばれる。ここでは当たり前のように呼ばれる、その自分の名前を。ただ名前を呼ばれる、それだけで狂王の意志を正確に読み取る。
もう少し、ここに閉じ込められていたいと。ただの2人でいたいと。君がそう願うのならば、それに従おう。それは自分の望みでもあるのだから。
少しだけ、少しだけ。それがどれくらいの時間を指すのかは分からなかったけれど。彼が満足するその時まで、今暫く閉じ込められていよう。
「言い訳が欲しいなら、いくらだってくれてやる。だから、俺に閉じ込められていろ。離す気など毛頭ないからな」
「これはこれは…優しい獣の王様だ。ならば仕方ない。出られないのだから、大人しく君に閉じ込められることにしよう」
狂王はたくさんの言い訳をアーチャーに与えた。彼の尻尾が巻き付くから、逃れられない。彼がここにいろと命ずるから、ここにいるしかない。
優しい言い訳だ。情に満ちた命令。たまには素直になるのも悪くはない。そう思いながら狂王に身を委ねるアーチャーだった。