7:18 一部表現を加筆修正。
埼玉県、秩父からさらに入った山中某所。
全国にいくつかある魔法刑務所の一か所であるここは、その例に漏れず一般には公開されていない。魔法という物理法則に反する力を使う者たちを一か所にとどめておかなくてはならない以上、その脱獄には細心の注意が払われているため……と一般には説明されているが、ここの場合は事情が異なる。
大戦中極秘裏に検討され、そして放棄された核武装構想の実験施設として、ここにはもともとミサイルサイロが存在していた。戦後の軍縮で廃棄が決まったそれを改築し、最高強度の魔法刑務所として運用されるようになったのだ。その経緯により、今でもここの運営者は国防海軍である。
収監されるのは、国防に絡む重大事件の主犯またはそれに準じた魔法犯罪者。要するに、表に出せない犯罪魔法師や海外工作員の投棄先である。
ここに収監される者はすべての公的記録からその存在を抹消され、祖国に帰ることはほぼない。
ほぼというのは、有事には傀儡法で自由意志を奪った彼らを地元に返して自爆させるパペット・テロも企図されているためだ。実際のところ、運用が開始されて以来すべての収監者たちはその肉の一片までくまなく研究資産として使い潰され、敷地を出ることなく火葬されている。
そう、核シェルターとしての機能も有する巨大な地下構造は、刑務所としての機能よりも、研究所としての機能に多くの容積が割かれているのだ。
ここは日本最悪の非合法収容所にして、国防海軍の魔法研究における総本山。十師族にさえ存在を秘匿している暗部の最も暗い所。「
(相変わらず金かかってんなぁ……)
その「生家」から呼び出しを受けた創一朗は、数年ぶりにこの刑務所兼研究所を訪れていた。創一朗が作り出されたのは最深層の調整体エリアだが、今回の目的地は監獄のすぐ下にある汎用研究エリアだった。
ここを知る上層部の人間は、かの十師族を輩出した研究所への対抗意識と、かつての自分たちが作り上げた傑作戦闘機に引っかけて「零研」と呼ぶ。
だが現場で働く人間はもっと相応しい俗称を持っている。「白い地獄」だ。
過剰なほどに無機的で清潔、白一色の廊下が中央の事務所から放射状に延びている。「宇宙コロニーの中」と言われたら信じてしまいそうなSF的内装をしている一方で、構造そのものは至って伝統的なハビランド・システム*1であった。
部屋の中を見るための窓はすべて瞬間調光ガラスであり、スイッチを入れなければ向こう側のシルエットすら映らない。地下であるため外周の窓は液晶になっていて、時間に応じて外の様子を適当に映す。
それぞれの区画は生体認証付きの分厚い気密ドアで厳重に区分けされていて、要所には監視カメラとAI制御の自動銃座が睨みを利かせている。
最新鋭機器は業務用のものでもほとんど音が出ず、「手術室」やら「尋問室」やら「調整室」の防音は完全。ドアも二重になっている。中から響いて来るこの世のものとは思えない悲鳴が漏れ聞こえてくることはなく、独房や廊下はほぼ完全な無音状態が維持されている。
創一朗の足音だけが響く中を数分歩き続け、ようやく目当ての扉を見つけ出す。
(ここか……随分奥まったところだな)
バイザーに映る案内表示によれば、呼び出しの指定先はこの部屋の中だ。
早速認証を通してドアを開けると、空調の暖かい風が頬を撫でる。どうやらかなり高温……それこそ、全裸で寝ても風邪をひかないくらいの温度に設定されているらしい。
入れ替わっての脱走や音漏れを防ぐ二重扉をくぐると、その先は6畳くらいの広さだった。例によって床も壁も天井も真っ白で殺風景な室内は、シャワーブースと便器が1つ同部屋にあることから刑務所の房だとわかる。
部屋は生活感がなく、反対側の隅にベッドが1台置かれているのと、壁際に申し訳程度のカラーボックスが備え付けられている以外、何も置かれていなかった。
だから、室内の様子はよく見える。
ベッドの上に、シーツで身体を隠しただけの、裸の少女が放り出されていることも。
「……っ!!」
創一朗が少女の姿を認めるのとほぼ同時、少女の方も素早く身体を隠し、創一朗の方を「キッ」と睨み付けた。
『クソっ、やはりそういうことか……!』
それは少女の敵意に満ちた声(Fワードたっぷりの英語)だったが、彼女の正体がジャスミン・ウィリアムズだと理解した創一朗も、脳内でおよそ同じ文面を発していた。
同時に、創一朗のバイザーに指示が表示される。
遺伝子情報がどうとか、戦略級魔法がどうとか、色々ともっともらしい文面で小難しくされていたものの、要領を抜き出すとこうだ。
今回の働きに対する褒賞として、予定されていた交配実験は人工授精によるものではなく、生身の女性魔法師を使った自然交配で実施することとした。
ついては遺伝子的・相性的に適切と思われる人員を選定したので、出来るだけ多く交配を実施するように。抵抗する場合は、生殖能力が無くならない範囲で制圧して構わない。
(うわー……Wikipediaのエロ記事みてえ……)
そのほか、創一朗の実年齢と童貞であることを考慮してか、やたら詳細な動作指南が大真面目な文体で記載されていたメッセージウインドウを見えないところに追いやり、そういえば原作でも魔法師製造のために国家ぐるみでこういうことやってるとか書いてたっけ……と思い出した。
それを踏まえて、眼前のジャスミンを見る。
金髪のおさげ姿は戦った時のまま。ベッドシーツと両腕で肝心な部分を隠しているが、カバーできる面積には限りがある。ほっそりとした手足や肩、背中などはさらけ出され、そのためかどことなく所在なさげにしている。
棚には「その手の雑貨」が各種準備されている一方、彼女は着るものを与えられていないらしい。「役目」と脱走防止を兼ねているのだろう。
彼女は実年齢20代前半であるが、調整の影響で12~3歳で成長が止まっている。バイザーの無駄情報によれば一応生殖能力が残っているのは確認済みとのこと。
戦略級としての調整の影響か創一朗と遺伝的相性が極めて良いことが分かったため、廃棄の予定を変更して彼の前に差し出されることになったのだと。
参考資料のつもりなのか、一緒になってバイザーに表示される下着姿やら裸のアップやらの写真たちを追いやる。しかし創一朗は、目の前の「据え膳」から目を離すことができなかった。
「……っ」
生唾を飲む、という表現が相応しいぎこちなさで、ジャスミンの方へ歩み寄っていく。
彼の名誉のために付け加えておくと、創一朗は「そういう趣味」な訳ではなく、肉体の年齢に精神が引っ張られて同世代(に見える相手)に魅力を感じている。
もっと言えば、高い身体機能と運動習慣は副次効果として経験にない強さの性欲を産み出してもいて、そして彼は今人生で最もそれに振り回されやすい「覚えたての時期」に当たる。
ただでさえ魔法師は「人形のような」美貌の持主が多く、ジャスミンも例外ではないため、創一朗でなくとも同じ状況に置かれたら、ほとんどの男は道を踏み外すであろう。
褒章とか言う割にほぼ仕事じゃん、というツッコミが咄嗟に出てこない程度には、彼は欲望に流されていた。
一方のジャスミンはというと、悪態をついてこそいたものの、この時は意外と冷静であった。
魔法師の女として生まれた時点で、さらに言えば海外向けの工作員という仕事に従事している時点で、捕まったが最後まともな死に方はできないと覚悟している。
実際、戦争捕虜になった女性魔法師が辿る道として「敵国の魔法師に孕まされる」というのは、彼女らにとって不幸なことにかなり高い確率で想定されることだった。
そういう場合、相手が途上国などで軍の統制が取れていない時は不特定多数による虐待込みのソレを覚悟しなければならないが、統制が取れている場合はデータ取りのため、魔法師1人に捕虜1人が宛がわれることになると予測されている。今回はまさに後者だった。
("鉄仮面"……どのみち抵抗は無駄か……)
ましてジャスミンは、つい数日前までこの"鉄仮面"の暗殺を試み、そして敗北した結果ここにいる。
その時の徹底的なやり方は、工作員としてそれなりに修羅場をくぐってきたジャスミンを畏怖させるに足るものだ。今この瞬間、創一朗の「鉄槌」が自分をミンチに変えていないのは、創一朗がそれを望んでいないからに過ぎないと彼女は十分理解している。
ゆえに、彼女の取るべき行動は、本人の中で結論が出ている。
無駄な抵抗はせず、創一朗を受け入れるべきだ。可能な限り媚を売って、少なくともいつ殺されてもおかしくない現状を脱却しなければならない。
(ジェームズ……)
仲間の仇の子を孕む。それすら、敵に捕まった調整体の末路としてはとびきり幸せな部類なのだから。
想定と覚悟はあった。だが、いざ現実となったそれを直視して、ジャスミンは敵意を抑えきれなかった。もとをただせば彼女の方から仕掛けたことだが、それを言うなら彼女は政府の命令に従ったまでだった。
別に、ジェームズとの間に何かあった訳じゃない。
ただ、腐れ縁の相棒として長い時間を一緒に過ごした。調整体で家族と呼べるものを持たないジャスミンにとって、ほぼ唯一「近しい」と呼べる間柄だった。
(……いや。何を恐れているんだ私は)
それだけだが、それはジャスミンにとって、命を捨てる理由になると思われた。
幸い、調整体である彼女は無意識のリミッターを外して魔法を暴走させることが可能だった。
彼女たちは非合法の工作部隊である。もはやこうなっては政府からの救援は望めず、せめて意味のある死に様を――
「おい」
がしり、と肩を掴まれる。
創一朗からすれば、何やら考えこんでいる彼女を現実に引き戻させようと肩に手を置いたくらいの認識。暴力を振るおうとまでは思っていなかった。
「ぃっ」
ジャスミンはそれに反応して、見た目通りの少女にしか見えない身体をびくりと震わせる。反射的に出た声は消え入りそうで、声というより喉を空気が通った「ひゅっ」という音に近い。
それはとてもではないが、20代の軍人の反応ではない。それまで所作や態度で辛うじて維持されていた大人の雰囲気が完全に吹き飛んで、そこには怯える少女が一人いるだけだった。
肩を少し掴まれただけで、決死の抵抗を決意していたはずの彼女の覚悟は吹き飛んだのだ。
代わりに、彼女の眼前には川崎での一件が鮮明に想起される。
体格差のため、自己加速魔法を使用したジェームズに手を引かれる形で走るジャスミン。彼女が不意に腕の重さを感じて振り向いた時、そこにはどういう訳か破砕を免れたジェームズの左腕だけが振り回され、彼女の右半身には生暖かいなにかがべったりと――
「ぁっ……ぇ……」
そう、彼女はすっかりPTSDを患っていた。
こうなると訓練でどうにかなる問題ではない。あらん限りの罵詈雑言を飛ばそうと口をぱくぱくさせるが、口の中が乾くばかりでうまく言葉を紡ぎ出せない。
思考は恐怖で乱れ、呼吸が浅くなる。
頭では立派な散り様を覚悟していても、身体はまるでついてこなかった。魔法師としての直感、生物としての本能、経験から学ぼうとする人間としての知恵、その全てが眼前の偉丈夫に屈服していた。
少なくともこの場のジャスミンは、大柄な男の前に差し出され怖がっている見た目通りの女の子だった。
硬直した身体では震えを隠すことさえできず、それを肩から感じたであろう創一朗はいったん手を放し、困ったようにその手を後頭部に持っていく。
「……あぁ、まあ、恨んでくれていいよ」
確かに悪趣味な状況だが、創一朗は年頃の――なんなら今が人生における性欲のピークにあたる――男だ。ここまでお膳立てされては、多少抵抗されたくらいで引き下がる気にはなれなかった。周囲の目や面子としても、さっきから完全に「その気」である下半身としても。
「ッ……勝手にしろ」
内心ではいくらでも威勢のいい罵倒を飛ばせても、圧倒的な体格・実力差を前にした今、それは現実のものにはならない。
ただ彼女は、虚勢にすらならないか細い罵倒と共に、覆いかぶさってくる男から顔をそらして肢体を投げ出すことしかできなかった。
その後すぐ、彼女の目からは光が失われることになる。
真砂「金・飯・寝床は十分与えてるから、こっちで制御できる褒章としては女かなって」
小野田「爆乳の十山つかさにもスレンダーの岬玲にも全くなびかない&一番好印象だったのが五輪澪だからロリ系が好みなのかと」
桝田「相性のいい母体でガチャ回しつつ新鮮な遺伝子サンプル大量確保のチャンスだ」
ちなみに、私のSkebの方にこれと全く同じ内容の依頼が事前に届いているんですが
これはたまたま依頼内容とプロットが一致しただけで当初から内容は変更していません。
依頼者の方に置かれては、入稿をもうしばらくお待ちください。