検索技術で世界的に評価されているIT企業の社長が、ドミノ倒しをつかった自動発砲装置で撃たれた。社長はドミノを見て驚いて尻餅をついたため、ねらいがそれて足をケガしただけですんだが。
特命係が捜査をすると、中卒の清掃作業員の青年が不思議な行動をとっていた。会社を実質的に動かしている副社長に目をかけられ、数学を教えられて才能が開花しつつあるらしい……
神森万里江脚本による拡大スペシャル。通常より10分くらい尺が長いが、あくまで1話完結で、内容も特に濃密というわけではない。実際に複雑なドミノ倒しをおこなっているのをカットをできるだけ割らずに見せるために尺を必要としたのかもしれない。
内容は、まるでピタゴラスイッチのような無駄にまわりくどい殺害計画の裏に、いわゆるプロバビリティの犯罪をめぐる恩讐が隠されていたというもの。何もかもが17年前の恩師の死を中心に動いており、登場人物も少なく、復讐と考えれば真犯人は最もわかりやすい。
ひとつひとつは犯罪にならないくらいの介入で確率的に対象の死の可能性を高め、犯罪ということが露見しづらく、失敗しても罪にならないことがプロバビリティの犯罪の特色。それをアレンジして、たしかに対象の行動に介入はしていたが、そもそも殺すどころか傷つけるつもりもなく、別の意図があったという真相を用意する。
ドミノをつかった殺害計画の不安定さも、すべてを読みきった犯罪者の天才性を杉下は考えるが、実際は第三者の介入や失敗があったことを解決編で指摘する。対象を殺すかどうか犯人が迷っていたことも指摘され、まわりくどい犯罪をしかけた必然性はそれなりに感じられた。今回は不確定すぎる計画に疑問をもった感想が多いようだが、プロバビリティの犯罪というジャンルを知っているミステリファン向けの変化球としては楽しかった。
ただ、いくら恩師から研究していたアルゴリズムを託されたとはいえ、社長が自分の名前だけで発表したのは剽窃にあたる不正行為ではないだろうか。恩師の死は介入を実行した社長の意図しない結果だとしても、論文のとりさげなり、辞任や降格なりのケジメをおこなわないまま終わったのは釈然としない。