冬木隣人日記
某月某日開始、ランサー。
ほんのり槍弓で、ほんのり不思議で、ほんのり怖い毎日の時々。
続きはありません。この話はこれで完結です。悪しからず御胸に納めて御覧くださいませ。
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某月某日
この国には面白い妖精がいるもんだと話したら、それは妖精じゃなく妖怪とか幽霊というんだと訂正を受けた。どちらも俺たちには同じようなものだろうに。何が見えるのかと聞かれてもいちいち覚えてないと返したら、報告するから記すようにと言われた。成程、嬢ちゃんは見えないのね。まあ、見える素地のある奴とない奴がいるのは当然のことであるので、別段否やはない。駄賃くらいにはなろう。
某月某日
某交差点を奥に入ったところにある電線に、黒くて羽の生えた猫の様なものがいた。線を揺らしながら真っ直ぐ北東に向かってちょっと歩き、飛んだと思ったら消えた。どこへ行ったのか。
某月某日
帰ってきたアーチャーが「肩が重い気がする」というので背中を見てみたら、猫っぽい塊を三個も背負っていた。「重いってよ」と告げたら、にゃーんと二回鳴いてころころと落ちた。迷っているのか知らんが、とりあえず拾って導きのルーンと一緒に窓から投げてやった。肩は軽くなったらしい。
某月某日
新都の喫茶店のバイト帰り、雨の中裏路地の更地の上空に黒い人影がぼんやりと浮かんでいた。暫く歩いて振り返ってみてもずっといる。未練がましい。
某月某日
昼間留守居をしていたら捨てようと思っていた空の缶箱がガタガタなった。空けると紫と赤と白を混ぜた粘土の出来損ないのようなものが入っていた。バラバラに生えた歯と口のようなものをぐわっと剥いて、飛び上がったかと思うと消えた。この国はなんというか、名前のねえ妙なもんが多い。
某月某日
配達途中墓場の前を通った際、池のあるらしきあたりに黄緑色の爺が佇んでいるのを見た。穏やかな面で何かを見下ろしていたが、別に悪いものじゃなさそうだ。だいぶん後に、塀の上から腰が見えるたあずいぶん足の長え爺さんだと思った。
某月某日
教会の水やりの手伝い中、きらきらとなじみのある気配が花壇からする。あと眩しい。ちなみに花屋ではまだお目にかかったことはないが、結構そこら辺にいる。見かけても追い回さないように。
某月某日
海岸で釣りをしていると、白いわだかまった網の様なものが引っ掛かった。一応かかってしまったので釣り上げたが、どうやら妙に触手の長い海月みたいな形をしている。水から揚げると気色悪く痙攣するので逃がした。多分生き物ではない。
某月某日
深夜の居酒屋バイト帰りに神社の前を通ったら、赤い鳥居?の下で白い衣を着たなにかに腰を折られた。手を振ったらいなくなった。顔は白い布が垂らされていて見えなかったが、すらりとした美人だと思う。もうちょっと肉があってもいい。帰ってアーチャーに聞いたところ、あそこはおいなりさんというらしい。
某月某日
教会の地下、赤い、黒い、煩い。以上割愛。迂闊に入らないことを勧める。
某月某日
所用で大女の店番している古道具屋の前を通ると、やったらベルがちりんちりんちりんちりんずーっと鳴っていた。店の入り口越しに煩くねえのか聞いてみると「なんのことですか?」と首を傾げる。なにとは言わずに立ち去った。ベルはずーっと鳴っていた。
某月某日
スーパーの事務所で休憩に入ろうとしたら、窓がノックされた。黄ばんだ小さな手が三つほど見えた。シカトしておいた。外にタバコ休憩に行って、戻ってきたら消えていた。
某月某日
バイトの梯子中に飯を食おうと、手製の弁当箱を開ける。塩鮭弁当の隅、里芋の煮っ転がしが詰め込まれていた入れ物の中にでかいセミの幼虫のような虫がいた。親指の第一関節くらいはあった。驚いて瞬きしたら虫は消えた。里芋をひっくり返してもいなかった。飯を食われたわけではなかったが、それなりに不愉快だった。
某月某日
夜中ふと目が覚めると、アーチャーの髪を触る男の手があった。遠慮なく払い落したら消えた。気分が悪い。
某月某日
茂みから大きな犬が飛び出してきて、向かいの家に玄関の扉をすり抜けて入っていった。犬には下半身がなかった。忠義なことだ。
某月某日
スマホの画面にちかちか光る茶色いものが映り込む。鬱陶しくてたまらんので画面を叩いたら蝶のようなものが落ちた。明かりに寄ってきたのだったら蛾かもしれない。三秒くらいふらふらと宙を舞って消えた。
某月某日
夜も更け始めるころ、パーキングエリアのランプの上にずんぐりした黒い小人が座っていた。ボーっとしているのか、通り過ぎるまでずっとそのままだった。
某月某日
新都の駅から歩いていると、道の途中でなにかに蹴躓いた。振り返ったらちかちかした銀色の金属の塊だった。ポイ捨てかよ迷惑だな、と眉をしかめていたらいきなりごろっと転がって今度は綺麗な姉ちゃんの前で止まり、蹴躓かせていた。性の悪いことだ。ムカついたので人のいない隙に路地裏に蹴り込んでやったらがんごろんといささか重い音を立てて暗がりに消えた。帰り道には見なかった。
某月某日
後ろから来た男が通りすがりに「よお、久しぶり」と声をかけてきたので思わずそちらを向いたが誰もいなかった。真夏にTシャツの長袖はないだろうし、その上に顔がないのはもっといただけない。取り敢えず男であることは間違いないようだったのでシカトしておいた。
某月某日
件の寺に納品に行った際、染み入るような美しい笛の音が聞こえた。が、支払いに出てきた女狐殿には例によって「なんのことよ」とつっけんどんに首を傾げられる。何とは言わずに濁しておいた。意外なことに門番は笛の音のことを知っていて、あれは決まって雨の日にたまに鳴るのだと教えてくれた。澄んだ音であったので、別に悪いものではないだろうということで見解は一致した。
某月某日
夜の最中、煙草を買いにコンビニに寄った帰り、ふとコンビニ脇のベンチを見ると、置き去られたコーヒーの空き缶が倒れていたのに気を取られる。違和感を感じたので見ていると、穴からひょっこりと覗いた目と目が合ってしまった。と思ったらからころと二転三転転がり、中身は失せた。なんだったんだろうか。後味が悪かったので、缶は近場のゴミ箱へ捨てておいた。
某月某日
花屋で店番をしていた昼間。注文確認のためにカウンターにいたところ、右手のカレンダーの影から拳大くらいの女の首が転がってきた。びっくりして見つめていると、俺を見てにたり、と笑った。あまりに気色悪かったので卓上用の箒で掃いてゴミ箱へ突っ込んでおいた。そのあと机の上も掃除しておいた。
某月某日
用水路にかかる橋を渡る際、でかい緑色の亀のようなものを見た。甲羅を日干ししていた。
某月某日
窓の外でどっと笑い声が挙がる。興味を惹かれて覗き込んだが誰もいない。踵を返すとまた笑い声、老若男女といったところだ。だが振り返ると何もない。アーチャーに尋ねてもそんなものは聞こえないと怒鳴られたうえ怖がられた。俺のせいではないのに理不尽だ。
某月某日
新都を歩いていたら、青緑色の円と曲線で描いたような模様が建物の壁を泳いでいた。古く黄ばみかけた壁をするるーっと鮭のように滑らかに上って行って、屋上に折れ曲がって去っていった。なかなか綺麗だった。
某月某日
また先日と同じ笑い声が聞こえた。今日こそ正体を確かめてやろうと目を凝らすと、隣の家の庭先にある柿の木が騒がしい。なんと一羽の烏と古臭い衣装を着た小人が枝に座って、残り柿と一緒に月見酒を飲んでいた。宴会中なら騒がしいのも仕方ないな。
某月某日
商店街で坊主と会う。妙な気配がしたので聞いてみると、昨夜蔵で転寝していたらなにかに踏みつけられたらしい。足のほうから頭にかけて無遠慮に通り道にされたらしく、特に踏みつけられた脇腹が痺れているのだという。尚、姿は見ていないが、大きな蜘蛛のようだと感じていることがわかった。気休めに清めのルーンで叩いてやった。悪い気ではないので、単なる通り道に寝ちまった坊主の運がなかっただけだろう。だがそうでなくても蔵で寝るのはやめさせたほうがいいぞ。
某月某日
金縛りにあう。面白かったのでそのままにしていたら、枕元に髪の長い女が現れた。血走った眼で「あたしのほうが…」やら「こんなに見てるのに…」やら長いことぶつくさ言っていたが、アーチャーを侮るような発言をしたので殴り飛ばしたら消え失せた。面貌は憶えた。
某月某日
道を歩いていたら行く手に煙草が数本落ちていた。もったいねえなと思っていたが、近づくと動く。煙草じゃなくて白くて細い女の指だった。赤く見えたのは爪の間の肉だった。見なかったことにした。
某月某日
波止場で釣りの最中、海に白くて丸いものが浮かんでいる。暫く機嫌よくなにかを歌っていたが、そのうち潜っていった。坊主頭だったのかねえ。
某月某日
商店街で待ち合わせたアーチャーの足に黒い児童の影がくっついている。本人もなにかくっついているような感覚はあるらしい。性質が悪そうだったのでルーンで蹴り飛ばしたら消えた。寒いせいか最近やたらと寄り付くやつが増えて辟易する。帰ったら護符を作ってやろう。
某月某日
窓から空を見上げていたら赤と緑に瞬く光がふらふらとした軌道を描いて空を横切って行った。なんだったんだろうな。
某月某日
骨董屋に納品に行った際、ものすげえ目力の西洋人形と遭遇しガン見された。必死に気づかないふりをした。帰ろうと背を向けた瞬間、ちと久しぶりにゾッときた。塒に戻る前に禊いどいた。
某月某日
久しぶりに衛宮家に寄ったら嬢ちゃんに会う。相変わらず見えないのも納得の、ピカピカの覇気で悪いものを寄せ付けないようにできている少女である。ついでのように現れたお隣のお嬢さんも相変わらず虎なのでなおさら近づくものは今後も現れまい。あれはそういうイキモノである。
某月某日
通りすがった自転車の後輪のタイヤになんかの臓物が沢山くっついていた。グロかった。
某月某日
件の公園は良い意味でも悪い意味でも賑やかである。
某月某日
ぶらぶらと住宅地を歩いていると、光り輝く庭に遭遇した。一般的な一戸建てだが、庭は丹精に世話をされているらしく瑞々しく、こんな季節だというのに弾けるように命の気配に華やかだった。こんな家あったかねえと思いつつ、よいものをみたとその場を離れた。
某月某日
激しい雨の中、まったくスピードを落とさずに横断歩道へ突っ込んでいく車のヘッドライトがあった。ぎょっとした瞬間、すーっとヘッドライトだけが渡っている人間を素通りし、ライトの光だけが遠ざかっていった。もっと遠くまで照らしときゃよかったのにな、と思わず考えた。
某月某日
先日見た庭に連れて行ってやろうと連れ立って出かける。が、何時間歩いてみてもそれらしき家には辿り着けなかった。小さく嫌味を言われるし、残念だった。
某月某日
日が沈んだ後、大橋を渡っていると、橋の下あたりに妙な波を見かけたので少しだけ目を凝らしてみた。無数の手がばしゃばしゃと水面を叩いていた。凝らさなきゃよかった。
某月某日
いつの間にか真っ暗になっていたのでカーテンを閉めようと窓の方向を向いたら、窓いっぱいに巨大な女の顔が張り付いていた。ばっちり目が合った。努めて逸らさずカーテンを閉めた。翌朝には消えていた。
某月某日
三人娘にばったり出会う。なぜか幽霊の話になり、そこからカメラはそういうものを写すのだと教わった。成程、今度試してみるとしよう。
某月某日
久しぶりに以前の岬へ顔を出す。好い空気である。
某月某日
間桐の嬢ちゃんが奇妙な夢を見たらしい。岩に呼ばれて奇形児をあやす手伝いをさせられたそうだ。一度きりだというので大事ないとは思うが、重なるようだったら相談するように伝えておいた。賢しい嬢ちゃんなので心配はいらないと思うが、一応な。
某月某日
良い晴れ間。道端の地蔵が前掛けを取り換えてもらい、供え物に蜜柑、そして綺麗に磨かれて、とてもご機嫌な様子だった。大変よい雰囲気である。別段備えるものはないがついでに挨拶をして通った。おしなべて良い一日だった。
某月某日
一緒に朝釣りに来てみたが、天気は良好だというのに海がうるさい。促して早々に帰宅。仕方のねえことだが最近多いような気がしてむかっ腹が立つ。後日にまた行く約束を取り付けたので取り敢えずそれでよしとする。
某月某日
スーパーの事務所で着替えていたら、また窓がノックされた。手が二つ増えていた。シカトしておいた。
某月某日
例の庭に出会った。もうお目に掛かれないかと思っていたが、変わらず生命の輝きにあふれた庭である。椿が満開だ。誰もいなかったが一言断って写真に収め、塀のこちらに落ちていた花を一輪いただいて持ち帰る。アーチャーには椿は飾る花として相応しくないのだがと小言を受けたが、それでも美しいことはわかると皿を水盆にして窓際に飾ってくれた。
某月某日
聖人の誕生日でも年の瀬でもねえのに花屋のバイトが珍しいくらいに忙しく、いささか草臥れた帰りにスマホで先日撮った庭の写真を探してみたのだが、緑と黄色の光しか撮れていなかった。そんなことだろうとは思っていたが、惜しい気持ちである。
某月某日
先日の椿はまだ美しい。アーチャーがまめに水を換えている。
某月某日
道のど真ん中につるつるした白いもちのようなものが落ちていた。避けて通った。暫くして振り向くと、靴の裏に張り付いて人を引っ掛けている。しょうもない悪戯ばかりするのはどこも変わらんな。
某月某日
捨てようと避けておいた空き箱がぼこぼこ鳴った。放っといたがいつまでもぼこぼこ鳴りやがるので、上から踏んで潰して、古紙として紙袋に突っ込んでおいた。別段何ともなく、それで静かになった。
某月某日
日の暮れるころ何気なく空を見上げたら、丸裸の銀杏の木に四対の羽のある烏らしきものが止まっていた。この国の烏は腹まで黒くて夜にはそれと分かり辛すぎる。
某月某日
椿が一晩で萎びて腐り始めてしまったので捨てる。
某月某日
歩いていると黒いコンクリートの上に金魚と鶏の間の子のようなものがいた。やわらかくてぶよっとして真っ黒、鶏冠だけが鮮やかに紅い。黄色い目できょろきょろとせわしなく周囲を見渡しながら、腹で歩いて去って行った。アーチャーに伝えたらそれは烏骨鶏ではないかと言われたのだが、多分違う。
某月某日
風が強い。雲一つない空を赤い布のようなものが泳いで横切って行った。
某月某日
暫く近寄らないようにしていた骨董屋に納品の仕事で赴く。件の人形の姿はなかったが、結局あれはどうなったのか聞くのははばかられた。
某月某日
所用で出かけたアーチャーが、鞄に妙ちきりんなものをくっつけて帰宅する。どこにでもあるような白い毛のマスコットキャラクターのキーホルダーだが、あからさま過ぎたのでルーンをかけて捨てた。その日の晩、10分ほどアーチャーにも聞こえるほど郵便受けの付近をバンバンやられた。翌朝には消えていた。
某月某日
魚屋での早朝作業中、氷の中に陰毛の塊らしきものが紛れていた。海水と一緒に排水溝へ流した。正直一瞬海藻かなにかかと勘違いして鷲掴みかけた。紛らわしいにもほどがある。衛生的にはなんら問題ないとはわかっているが、掃除は念入りにしておいた。
某月某日
衛宮邸総出の公園への花見に駆り出される。一等立派な大木の上で、沢山のいろんなものたちも浮かれ騒いでいるのが見えた。お互い好き勝手に楽しみ騒ぐ、この国の花見はいいものである。
某月某日
居酒屋のバイト帰り、冬物の長いコートを着たビジネスマンとすれ違う。携帯らしきものを手に「なんで電話に出ないんだ」とぶつぶつ言っていたが、繋がったらそれはそれで問題だろうなあと思った。男には下半身がなかった。
某月某日
春の陽気のせいか、地面からいろんなものが湧き出てきている。半分以上は命の塊だが、もう半分くらいはそうでないものの塊である。
某月某日
昼休憩中外で弁当を食べていたら、白樺に芽吹いた若芽が挨拶してきた。挨拶を返したらびっくりするほどはにかまれ、なんというか、久しぶりに淑やかな令嬢を見た気がして新鮮な気持ちになった。
某月某日
アーチャーと月見酒をしている最中そこそこ酔った奴が「くすぐったい」というのではじめて気付く。いつの間にやら見知らぬ汚い指に脇やら尻やらを撫でられていた。即叩き飛ばし消毒した。追加で護符を作り直す。
某月某日
郊外の森に遣いで出かけた際、蝉と天牛の声が同時にしていた。
某月某日
新都へ遊びに出かける。以前更地だったところに新しいビルでも建つらしく、足場が組まれて白い被いが掛けられていた。だがあまり良い気配がしないので、長続きしない予感がする。
某月某日
月が小さく笑いを降らせている。
某月某日
寂れた公園で煙草をふかしていたところ、一瞬沢山の幼いガキが煙のように現れ、消えた。ボールを蹴る男の姿もあり、遊具に揺られる女児の姿もあった。どうも公園が寝ぼけたらしい。かつての日の夢か、これから望む夢かわからんが、好い光景であった。
某月某日
夜、教会の帰りに高台から街を眺めるとはなしに眺めていると、山の麓のほうが淡く乳白色に輝いていた。
某月某日
新都のショッピングビルのエレベーターの手すりに紫色のゲル状のものが乗っかっていた。触り心地が悪そうだった。
某月某日
花屋に新しく入荷した薄桃色の薔薇に特別美しい虹色の雫が宿っている。店仕舞いになっても売れ残ってしまったので買って帰るとアーチャーはまた小言を言ったが、窓際に飾られた。
某月某日
あちこちで猫が鳴く。時折猫に似て非なるものも紛れて鳴いている。聞きようによっては赤子が泣いているように聞こえるかもしれんが、関わらないほうが身のためである。
某月某日
電信柱のやや上方にひらひらしたものが引っ掛かっていたのでビニールかハンカチかと思って見ると、人の顔の皮であった。多分女。首が吊ってあるほうがまだましである。
某月某日
古道具屋へ納品に行くと、妙な指輪があった。想いが詰まりすぎていて石の色が変わっている。嬢ちゃん向けの品ではないかとアーチャーに伝えておく。手当に期待するとしよう。
某月某日
道を歩いていた際、マンホールの上を通った瞬間蓋が抜け、落ちそうになった。正しくは落ちたように錯覚したのだが、サーヴァントにまで悪戯を仕掛けてきやがるとは、つくづくこの国の隣人は見境がなく無鉄砲だ。とりあえず俺を引っ掛けたのが運の尽きであるので、そこはもう心配せずともよくしておいた。
某月某日
雨の日、傘をさして歩いていると、数十歩前を足跡だけがトコトコと歩いている。狐くらいの大きさである。水たまりを小さく跳ね、茂みに入っていった。
某月某日
じめじめする。じめじめしすぎてあちこちにべたべたしたものが湧いている。踏まないようにと歩くのが煩わしいくらいだったのだが、そこらの一般市民は平気なようで元気に長靴で蹴飛ばし踏覇していた。地の利と慣れというやつだな、感服する。
某月某日
寺への納品時、また笛の音が聞こえた。あれは笙という笛の音だと門番が言っていた。好い音だ。
某月某日
薔薇も傷み始めてしまったので捨てる。
某月某日
夜歩きスマホをしていたら、十字路に差し掛かろうとしたとき車のヘッドライトに照らされる男の両足を見た。一瞬轢かれたかと思ったが、顔を上げても男はおらず、何事もなく車は去っていった。ナンマイダ。
某月某日
いつもの場所で釣りをしていたら、鉱石の目を持つ魚が掛かった。キスに似ている。割合綺麗なもんだったが食えそうにはなかったので逃がした。釣り針に掛かるとは間抜けなやつである。
某月某日
濃い花の香りがした。緑のきらきらとする時期だ。
某月某日
黒くちかちか光るウニのようなものが群れ成して雨樋をすすーっと走り抜けていった。
某月某日
朝早く住宅地を歩いていると、交差点の電柱の上に見覚えのある黒くて羽の生えた猫の様なものが着地した。電線を少し歩き、飛んだと思ったら消えた。方角は南西だった。行か帰りか、どちらであろうか。
わー、こういうの大好きです!