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涅槃で また(槍弓)/Novel by 湯屋

涅槃で また(槍弓)

3,946 character(s)7 mins

※劇場版HFのネタバレを多大に含みますご注意!!
今回はFGO時空ではなく、HF時空になります。それも二人とも脱落後というよく分からない空間になってます。
劇場版HFでの二人の身体状況がそのままになっていたりしますので、もろもろご注意です…!
ありえないくらい小話です…!そしていちゃいちゃしてる…私は何故HFで槍弓妄想しているのだろう…

初日に映画きめてきたんですが…もう本当、カロリーかなり消費しました…
あんなに集中して真剣に見てぼろぼろ泣いたの久々でした…
アーチャーの不意打ちにもちろんやられました…!!欲を言えばイリヤとの会話が欲しかったですね…
HFはランサーもアーチャーも脱落して、最終章は推しのいない状態にはなるのですが
それはそれとして、お話としてとても好きで楽しみなので今から待ち遠しいです…!!
あとは桜と凛、士郎とセイバーオルタ、士郎とイリヤ、士郎とアーチャー、士郎と言峰…と見どころまだまだいっぱいでしたわ!w

公開日中にupしたかったので、勢いとノリだけで書き上げてしまいました…!
誤字脱字ゆっくり直していきますね!

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涅槃で また


意識は暗く深い。もう地上は見えない、昏いくらい水の中。亡者は闇に消えるだけ。在るべき場所に戻るまでの旅路。生を逆光していく苦しみ。
いや、もう苦痛も何もない。自分はそういった全てから脱落したのだ。感覚がないのは有り難い。だってだからこそ、隻腕に呻かなくて済むのだから。

(――後は、彼女たちに委ねよう。大丈夫、だいじょうぶ…まだ、最悪に堕ちたわけではない。まだきっと、救うことが出来る)

救い上げて、掬いあげろ。奴の未来はない、そう、私になる未来がなくなるのならば。それに越したことはない。このような歪んだ英霊は、不要なのだろう。
だが今回は、それが功をなした。歪で真っ当な英霊でなかったからこそ、あの影に耐えうることが出来た。最も、あの盾も一瞬しか持たなかったが。
その一瞬で、未来は違えた。この身はそこでブラックアウト。だが、この左腕が何かを為すのならば。未来はきっと、描いた物とは違っていくはずだ。
暗い海に沈んでいく中で、残った右腕を伸ばす。こぽり、こぽ。呼吸する度に昇っていく泡を掴んでみたくて、ただそれだけだった腕は、途端掴まれて。


「――っ!?」
「――よう、やっと来やがったか。あ、いや、来ねぇ方がいいんだろうけどよ」


沈んで落ちていく身だったはずなのに、それが引き上げられるなどとはどうにかしている。ざばり、水面から浮上した身は、それでもどこも濡れていなかった。
心象風景だとでもいうのか、不可思議な退場をしたからか。すぐに座に戻されることがなく、意味の分からない空間へ浮上させられる。
そして何より、自分を引き上げたその人物が、ボロボロの敗戦姿のままのランサーが――そこに存在していた。あぁ、まるで意味が分からなかったけれど。

「てめぇも退場か、お疲れさん」
「あ、あぁ、退場だ。でもまぁ、最悪の終わりではなかったよ。この身にしては、十分やれることはやったと思う」
「てめぇはこの聖杯戦争においては、大抵良くやってる方じゃねぇのか?俺なんか今回が一番やりきれねぇのなんの」
「それは…、…致し方あるまい。君はあの神父から、初戦は殺すなとの令呪を受けていたのだろう?それでは戦いそのものがやりにくかろう」

彼の脱落方法を、詳しくは知らない。ただその姿、ぽっかりと胸に空いた穴から察するに。あのアサシンの仕業だろう。彼が遅れを取るとも思えなかったが。
だが、それが逆に有り難いとも思った。この身から既に霊核が失われていたからこそ。彼があの影に囚われてしまうことはなかったのだから。
ほぅ、と見知らぬ場所でそんな安堵の息を吐いていると。あー、と煮え切らない彼の声。何事かと視線を上げれば、途端その紅が眼前に迫っていた。

「ん、む――!?」
「ん…」

抵抗する間もなく、理由を問う間もなく、口を塞がれ身を抱き寄せられる。まるで意味が分からない。目を見開いて呆気に取られていると、途端侵入を許し。
咄嗟のことに口を閉じるのすら忘れ、久しく忘れていた感覚に鳥肌が立ち。これはマズいと遅すぎた抵抗は、右腕一つではまるで意味がなく。
どんどんと何度も肩を叩いたところで、ようやく解放される。何故、何故だ。どうしてこの瞬間、そんなことをする必要がある。いや理由は分かっていたけれど。

「はぁっ……っ、あの、なぁ…!魔力に飢えているのは分かるが、私とて今すっからかんなんだぞ!?見れば分かるだろうが…」
「あぁ?いや、分かってねぇのはてめぇだろうが、アーチャー。俺が野郎から魔力供給なんざするわけねぇだろーが」
「はぁ?…、…たわけ、魔力供給ということにしておけ」
「しねぇよ。てめぇがなんか、肩の荷降りて気が緩んで、俺にまで柔らかいから、なんか、こう、グッときた」

意味が分からない、いや分かりたくもない。聞かなかったことにして、その視線から目を逸らす。そうしてきょろきょろと、辺りを見渡してみたけれど。
自分の座でもなく、彼の座でもないのだろう。座に戻る前の、空白の空間だとでもいうのだろうか。まるで世界の果てのような、美しい風景。
風が吹いて、草が生い茂って、青空が澄み渡って。あぁ、まるで我々には似つかわしくない。血生臭い英霊には、似合わないだろう世界なのに。
自分が引き上げられた湖だけが、現実を移す。その下には今まさに、切り落とした腕を移植する最中で。あぁ、現実は刻々と進んでいるのだ。

「ここに居るのは、君だけなのか…?」
「いや、先にキャスターがいやがったな。見る物は何もないってんでどっか行っちまったけど」
「そうか…あぁ、そうだな。セイバーやバーサーカーは、まだ脱落とは違うのだったな…」

影に呑まれた黒き騎士と、それに敗れた黒き獣と。あのような敵に果たして立ち向かえるのか。守れる物を決めたのなら、せめてそれだけは守りきれと。
少女たちの未来を思い描いて、それがどうか夢で終わることのないようにと。馬鹿みたいに、愚かにも。未熟な自分に託すしかないのだ。
まだ世界が終わってしまったわけではない、そんな出番はなくていい。じっと水面を見つめていると、それ以上に熱視線が向けられているのだが。

「…、………なんだ」
「いや、俺が聞きてぇんだが?なんでさっきから、俺の目を見やがらねぇんだよ、アーチャー」
「………いや、それは、その」

失敗した。上手く誤魔化せてしまえばよかったものの。一瞬の虚を突かれる。まさか気付かれているとは思わなかったのだ。
無言の抗議。わけを話すまでこのままだと、言わんばかりの熱視線。言えるわけがないというのに、言わなければこのままだとは。なんて地獄。

「…そんなに今の俺の姿は無様か」
「――その逆だ、目のやり場に困る」
「はぁ…?」
「私は、その…君が負けた姿など見たことがなかったからな。その、それはそれで…フ、相変わらず凛々しいな、ランサー」

見惚れた負けだとでもいうのか。あぁ、無様にも白状しよう。薄汚れた右手で、無造作に散ったその青い長髪を梳く。髪留めは壊れてしまったのだろうか。
投影したら付けてくれるだろうかと、馬鹿なことを考えて。その姿を視界に収める。ぽっかり空いた心臓以外に、目立った外傷がないのが彼らしい。
反対にこちらは満身創痍で。外套もぼろぼろ、髪もぼさぼさ、オマケに腕は1本しかない。同じ負け姿でも、根本的に違うのだと思い知らされるようで。

「いつもの整った姿ももちろんだが、そのような姿もまた珍しくてな…思わず見惚れていた、と。これで満足か?」
「…っ、はー…んだよ、驚かせんな、ったく…俺はてっきり、無様な姿に愛想尽かされたのかと」
「愛想、って…いや、尽かすも何もないぞ?そんなものは」
「てめぇはほんっと、見惚れたとかそういう事はしれっと言うくせに、まだ自分の感情受け入れてねぇのかよ!?」

彼の物言いに、思わず首を傾げる。受け入れるべき感情とはなんだ。いや、見惚れているとは確かに言ったが。それが慕情に直結するわけでもないだろうに。
何故か彼は、私を気に入っていて。事あるごとに口説き落とそうとしてくるが、こっちにしてみれば悪趣味の一言に尽きるのだ。

「いや、何を怒られているかは分からないが…君に見惚れない者などいないだろうに。それは敗戦姿だったとしても、失われる輝きではないさ」
「ほんっっっと他意無くそういうこと言うのやめろ!?いや他意あってくれよマジで」
「あぁ、でも、一つ言うのであれば、そうだな」

怒鳴る彼を無視して、そっと指を伸ばして。その穴に優しく触れてみる。感覚などあるのかは分からなかったけれど。痛むことだけはないように。
傷口を開きたいわけじゃない。ただ、当たり前のようにそこに存在している物がないということ。それがどうにも不思議で、少し寂しくて。


「心臓を穿つ君自身の、心臓がないというのは。少しばかり滑稽ではあるな…?ランサー」
「――ハッ!そういうてめぇこそ、腕が1本じゃあ弓は引けねぇなぁ…?アーチャー!」
「フ、確かに…だがそれでも、剣を持つことは出来るぞ…?」


にやり、不敵な笑みを零せば。安い挑発にわざと引っかかり、売り言葉に買い言葉。大胆不敵に、にやり同じように笑われる。それが何故か、可笑しくて。
あぁ、そうだ。いつだって、私達はこんな関係だった。繋がる記憶はうろ覚えだけれど。どこかの聖杯戦争でも、どこかの平和ボケした時空でも。
馬鹿みたいに冗談を言い合って、時には本気で殺し合って、その延長線上で魔力供給をしてしまうような。そんな、愚かでくだらないふざけた関係。

「あーあーあー…ったく…てめぇはどこに居ても本ッ当にいけ好かねぇ野郎だけどよ、それでもとびっきりには愛しい野郎だわ」
「発言が矛盾しているぞ…?でもまぁ、同意するしかないのだがな」
「…てめぇ、俺のこと好きすぎんだろ?とりあえず抱かせろ、こちとらいい加減待ちくたびれてんだわ」
「いや、それは勿論好きだが?それとこれとは違、こら、ランサー!あっ、貴様、私が隻腕なのをいいことに、やめ、たわけッ!」

まるで子供のように、じゃれつく子犬のように。今暫くは遠く離れた、現実のことは忘れて。二人敗退した身を慰めるのだって悪くないのかもしれないけれど。
そんな愚かで愛しい時間もすぐに終わり、水面から金ぴかが這い上がり。愚かさに煩さも加わった時を過ごすことになろうとは、まだ我々は知らない。
隻腕を投影し、文句の煩い彼に合わせた義足を提供し。さぁ、そうして見届けよう。我々は敗者で亡者。もう、未来を見届けるしかできないのだから。



Comments

  • 朱雀

    February 8, 2019
  • そー
    January 13, 2019
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