べったーログ/槍弓(広義)
べったーやら色々書きためてた小話です。槍弓(広義です!)
・能無し共の宴(槍弓):あほな両片思い槍弓inFGO
・誰かを愛して泣きたくなるなんて 初めてでした(キャス影弓):診断で出た美容師×ブライダルコーディネーターなキャス影弓
・数奇な運命(僕の故意)(槍弓):歯医者槍×患者リーマン弓パロ
・醜い僕を赦して下さい(槍弓):上の続き
・伝言(愛しています)(槍弓):キスの日に書いた槍弓inFGO
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能無し共の宴(槍弓)
「アルトリアってば、まるでご飯に恋してるみたい」
「…はい?」
「だって、毎日毎日、美味しいご飯の事ばかり考えて、街中の美味しそうな物目で追ってばかりで、ご飯作ってくれる人にはとっても優しくって」
「まぁ、美味しい物が好きなのは認ますが…でもその例えはどうなのでしょう、マスター」
いつもの他愛ない日常話、些細なガールズトーク。花咲くその会話に、いつだって皆が癒されたり微笑ましくなったり。
瞳細めて、和んでいただろう日常に。ふとひっかかったのは、彼女の言葉だ。ただ呆然と、考え込むように顎に手を当てて。
(――………んん…?)
意識などまるでなかった。そんなつまり、全然なかった。けれどどうだろう。考えてみたら、無意識だっただろう。だがいつのまに。
そんな事態に陥っていたりはしなかったか。ごく自然に、気付かれるだろう事はなく。当然だ。本人だって意識してなかったのだから。
でも考えてみれば、言われてみれば。あぁ、自分はなんて愚かな事を――両手で顔を覆って。なんて事をと、嘆くにはまだ早い。
(――どどど、どうする、どうする…!?ま、まだ大丈夫か!?誤差の範囲内、というよりはバレていないか!?)
今からでも修復は可能だろうか。無かった事にできるだろうか。考えても考えても最善策は思い浮ばない。そんな事には滅法弱い脳みそだ。
それでも今まで、大丈夫だったのだから。これから先も、きっと大丈夫だろう。そうするしかない。いつだって、棄ててこれた。
嫌なものは全部、摩耗したと言い訳して忘れ去って。無かった事にして――そうしてきっと、いつも通りに戻れるはずだ。戻さないといけないのだから…
最近、アーチャーの様子が可笑しい。観察するように、じぃっと睨みつける。至って普通に、今は嬢ちゃん達と話している。
その様子に何ら変哲は見られなかった。楽しそうに、他愛ない会話をして。だから尚更、苛々と苛立ってしまうのだ。
「――アーチャー」
「…、…何だ、ランサー」
呼べば、途端に表情が消え。溜息すら聞こえてきそうなほど、面倒と顔に書いてあり。歩みも遅く、仕方ないといった装いで。喧嘩にすら、なりはしない。
どうして、そうなってしまったのか。いつから、こうなってしまったのか。分からない。少なくとも俺が何かしたわけじゃないと思う。そう、思いたい。
自然に彼は、余所余所しい。いつもの捻くれた笑みが恋しいほどに。だからもしかしたらと、焦りは生まれる。だがそれ以上に、歯痒くて。
「アーチャー」
「だから何だ…何か用か…?」
「――アーチャー」
「何だ…用がないなら、後にするぞ」
薄暗い瞳。まるで全て捨てて壊れきってしまったかのようで、やるせない。こちらを見ようともせず、すぐにでも立ち去りたいというような雰囲気。
だから、核心するのだ。きっときっと、彼は――俺の気持ちに気付いてしまったのだ。俺が彼を、好きだという事実を。
「待てよ…なぁ、悪かったって。別に迷惑かけるような事しねぇよ。つーかまだ何もしちゃいねぇだろうが…」
「え…?…一体何の話なのか、分からない、んだが」
「しらじらしい…お前、隠し事は得意じゃねぇか」
逃がさないとばかりに、腕を掴めば。ぎょっと驚いた顔。眉が下がって、困っている。あぁ、嫌がっている、困らせている。
違う、違うんだ。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。どうしてか、正反対の事しかできないのは。認めたくないからだ。
「な、何、言って、」
「そんなお前がよ、隠しきれなくなるくらい…俺の事、嫌いって事なんだろ?その態度はよ…あー…自分で言っててヘコむな、これ」
「えっ、ちょ、え…ち、ちがっ」
「いや、違くねぇだろ。だから、悪かったって…お前の事、不快にさせちまってたんだな、俺は…」
だって、そういう事に他ならないだろう。彼は隠し事が上手くて、いつだって周りに悟らせない。いつだってそれに気付きたいと、見つめてきた。
それが隠せないということは、それほど俺の事が不快で嫌いで苦手だという事だ。結論に行き着いて、ものすごくヘコんだ。それほど嫌だというのか。
まだ好きとも伝えられていないのに。好意に鈍感な彼に、どうして気付かれたのかは分からないが。不快にさせたいわけじゃない。
「悪かった、だからそう、露骨にされっと俺も傷付くから…止めてくんねぇ?そーいう態度取んの」
「――だから、違うと言ってるだろう!!」
へらりと笑えば、沸騰したかのように彼の顔が真っ赤に染まった。余程怒りが溜まっているとでもいうのか、彼らしくない。
けれど次の瞬間、思考回路は停止させられた。その勢いのまま、ぎゅーっと抱きしめられ。その行動にわけが分からず固まって。
「――…」
「………はっ!あ、や、え、えっと、い、今のはその、な、なんていうか、だなっ」
「…アーチャー」
座る俺を、立ったままのアーチャーが抱きしめるものだから。その顔が見えない。必死の思いで顔を上げれば、そこにあった彼の顔は。
かなり焦って戸惑って狼狽している表情。けれど、顔が赤いままで。逃げ出そうとするその身体を、離さないと強く抱きしめ。
「なんなんだよ、わけ分かんねぇよ…どーいうこったよ、これは…悪ぃけど、説明してもらわねーと、離してやんねぇから、よろしく」
「なっ!?そ、それは、困るっ…あーくそっ、必死に鉄面皮装ってたのというのにっ」
「はぁ…?ますます分かんねぇ…でも、抱きついてくるって事は、少なくとも、嫌われてはいねぇって事だよな…?」
赤く染まった顔を隠そうと、両手で覆う姿がもう愛しくて堪らないのだが。同情されたのかなんなのか、よく分からないけれど。
でも嫌いだったのなら、触れてこようとは思わないだろう。優しい彼の同情なのだとしても、今はそれでもいい気がして。
「嫌、いっていうか、だな、その……真逆なんだが、ランサー…」
「…、………はぁ…?…真逆………?」
「………白状、しないとこれ、解いてくれないんだろう…?…はぁ、上手に、隠せてたと思った、んだが…」
はぁ、と観念したように溜息を吐いて。彼はそれでも、ぐいぐいと俺を押し返してくる。勿論、それに動じる俺じゃなかったが。
気になったのは、その彼の台詞の方だ。逆、逆って何だ。何の逆なんだと。上手く頭が回らなくて、説明を求めるように見上げて。
「…最近、毎日君の事考えてしまうんだ。しかも目で追ってしまうし、特別優しくしたり、意味もなく近くに寄りたくなるんだ…」
「………は、」
「つまりは…私は、君に……恋をしててるって事で…あー…だから、バレたくなくて、なるべく関わらないようにって、していたんだが…」
「………んだそれ………どんなデレツンだよおい…なんでお前は、そう間違った方向に捻じれてんだよ…」
つまりは、完全に予想通りだったわけだ。彼は思ったまま、完璧に隠す事が出来ていたのだ。買い被り過ぎるくらいで調度よかった。
彼はどうやら、俺の事が好きすぎるようで。だからそれを隠そうと必死の鉄面皮。そうして見事、そっけない弓兵の出来あがりだ。
そんなの気付けるはずがない。どうしたって間違った方向すぎる。何より自分が、好かれてるだなんて思ってもみなかったから。
「つーか普通に寂しいからやめてくれ。ヘコむし傷付くし正直どうしようかと思ったぞ」
「う、す、すまない…だ、だって…普通に嫌だろうが…こんな私に好かれるなどと…上手く制御できないし、堪えないと触れてしまいそうで…」
「べたべたしろ。制御すんな。もっと引っ付け。鈍いお前に察しろってのがどれだけ難易度高いか分かってるから言うけどよ」
「?」
慌てながら戸惑いながら必死に距離を保とうとしてくる。けれど視線は逸らさない。逸らせない。けれどやっと、彼の顔だ。
あんな他人行儀みたいなのは嫌だ。せめて今まで通りがいいと望んでいたのに。お前が俺を調子に乗らせた。その責任を取ってくれよ。
「俺はアーチャーの事が好きだ。そんで、アーチャーも俺の事が好きだ。つまりは両想いってヤツ。だから偽る必要は全くねぇんだよ」
「――………んん?」
きょとんと、首を傾げて呆然とする彼に。さてこれからどうやって俺のこの思いを分からせてやろうかと。いつになくやる気になって。
鈍い彼にこれでもかという程分からせてやろう。振り回された分の仕返しも込めて。とりあえずは逃がさないとばかりに抱きしめた。
Comments
- そーOctober 8, 2017