小さくて丸くて可愛いの
現パロ、大学生のランサーとアーチャーの、すこしふしぎ系のお話。
短いのでさくっとスナック感覚でどうぞ。
!注意!
・キャラの乖離や解釈違いがあると思います。
・アーチャーが自分だと思ってるもの(よくわからない言い回しですがそうとしか言えない…!)が、いくつか死にます。
グロ描写とかはまったく無いですが、少しでも死の気配が無理な方はご注意ださい。
お楽しみいただけたら幸いです。
*
今回は格好いいランサーさんがいます。
何故ならアーチャー視点だから。
特に現パロだと、私はランサーが白鳥だと思ってるのかもしれません。
スマートなイケメンに見せかけて、水面下でアーチャーに好かれようと必死なランサー…良い…(本編には出てこない)
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「かわいいよな、ちっこくて丸っこいの」
聞き馴染みのありすぎる声に乗ったその音は、同行する友人たちに向けて発されたにもかかわらず、木陰のベンチで弁当を広げていたアーチャーの耳にすんなりと入り込み、すとん、とそのまま心に落ちてきた。
それはまるで狙いすましたように突き立てられた槍のようでもあり、そのために誂えられた空白を埋めるような自然さも持ちあわせていた。
そうだ。その通りだ。小さくて、丸いものは、可愛い。個人の価値観に差はあれど、それに異論のある人はそういないだろう。
そして、「可愛い」は好感情だ。良いと思う、好ましく思う。本人の口調からもそれは感じ取れる。
小さくて、丸くて、可愛いもの。
小さくて、丸くて、可愛いもの。
「……いいな……」
ぽつりと零れ落ちる。
談笑しながら徐々に小さくなっていく背中とそこに揺れる一括りの青髪を、アーチャーはいつまでも見つめていた。
+++
「―――ふぅ……」
湯に浸かり、ぐぐっと腕を伸ばす。固まった筋肉が解れていくのを感じる。学生用の単身アパートの風呂場、ただでさえ長身のアーチャーが足を伸ばすのは叶わないが、バス・トイレ別というだけでも十分だ。
ぴちゃん、ぱしゃん。
自らの動きに合わせて水の跳ねる音だけが、気密性の高い狭所に響く。
『ちっこくて、丸っこい―――』
昼間のランサーの言葉がリフレインする。
ランサー。入学当初からその色味とルックスで目立っていた男は、さらにその気さくな性格でもってあっという間に学部も学年も問わず人気者となった。同じ入学式に出席しただけの関係だったはずのアーチャーとも何の因果か親交を持ち、この家に招いたこともある。
そんなランサーの発言は、アーチャーに深い納得をもたらした。
それはそうだろう。小さくて、華奢で、丸みを帯びていて、柔らかくて、可愛らしい。
そばにあるなら、そういうものの方が良い。
ランサーだってそう思っている。
私はそうじゃないけれど、ああ、もしもそういうものだったら、私だって、ランサーの、
―――とぷん、と、何かが沈む音がした。
+++
気が付くと、私は。
てんとう虫だった。
なぜ、とか、いつから、とか、そんなことは訊かないでほしい。私だってわからない。
しかし自分がてんとう虫であることには深く納得している。
だって、小さくて(5mm程度)、丸くて(半球体)、可愛い(結婚式の定番ソングにも出てくるし、虫の中では比較的女性にも受け入れられやすい部類)のである。
なるほど確かに、これなら良かろう。想定よりも随分小さかったが、邪魔にならないという意味では好都合だ。
そしてここがどこかと言えば。
「ぅい~、今日も元気かー?」
―――そう、ランサーの家のベランダであった。
カラカラという軽い音に続いて姿を現したランサーは、グレー一色のベランダを一瞬で晴天に染め上げた。
まさに光の御子。今日も輝いているな。
笑顔が眩しいからとか何とかで付いた仰々しい呼び名さえ似合ってしまう。寝間着代わりのよれよれのTシャツにくたびれたスウェットでもその美しさが損なわれないことに、もはや今更驚きもない。
おはようランサー。眠そうだな。夜更かしは程々にしたまえよ。
葉陰から飛び立ち、ランサーの周りを大きく一周。気付いてもらえなくて良い。私の気持ちの問題だ。
「お、てんとう虫か?こんなとこにも来んだな~」
認識されてしまった!そうなんだランサー!なんでか知らないが私はここにいるんだ!君の植物たちは私が守ってみせよう!
……上がったテンションのままアクロバット飛行まで決めてしまった私は、一旦ベランダの縁に着地することにした。っこいしょ、なんて百年の恋も冷めそうな(ああでもそれすらもギャップがあって良いとか言われそうだ)掛け声とともにしゃがみこんだランサーの頭頂部を上から眺める。
「ん~、まだ食えねえか-」
そんなことを良いながら、ランサーが持っていたペットボトルをひっくり返した。だぱっ、だぱぱっと水塊が緑に襲いかかる。
ああっ、水やりは根元にそっとだぞ!しかも良く見ればそれはミニトマト、乾かし気味に育てるのがコツであって、あ、そんな、もうやめ、限界だ、止めてくれーっ!
「おっきくなれよ~」
……それは難しいかもしれんぞランサー。
空になったペットボトルを振り振り、ランサーが屋内へ帰ろうとする。それを見送っていた私は、ランサーの一つに括られた毛束の先を見て悲鳴を上げそうになった。
しゃがみこんでトマトを覗き込んだ時に付いたのであろう、土埃やら枯葉やらの混合物。それがランサーの後ろ髪の先にぶら下がっている。美しいランサーの、紺碧の、髪に。
ランサー!待ちたまえ、髪、髪に!今取るから!
私はベランダの縁から飛び立って手を伸ばし、
ぐしゃり
ランサーが閉めた窓に押し潰された、気がする。
(ちょっと、小さすぎたな)
+++
次に気が付くと、私は、私は……なんだろうか、これは。
ふわふわとした身体、覚束無い感じはまさに地に足が着いていないようで。そもそも目とか、手とか、そういったものが無いような、自分のこともなぜだか認識できているといった具合である。
こう、敢えて言うなら、埃の、塊……?いやしかし、自分を一つの個として認識している埃というのも嫌だな。掃除に支障が出そうだ。
だからそうだな、私は……ケセランパサラン、ということにしよう。
そう考えれば悪くない。てんとう虫よりは大きいがまだ小さい(5cm位)し、丸い(放射状に毛?が生えているので球体だ)し、妖精みたいなものだと思えば可愛いかもしれない。
改めて周囲を見渡せば、やはりここはランサーの部屋だ。
何となく意識を向けると、ふよふよとそちらへ進むことができる。人の気配の方へ足(?)を向ければ、マグカップを持ってちょうどこちらに向かってきたランサーが現れた。
ランサー!見てくれ、少し大きくなっ
「うわ、でけえ埃」
ぴたーん!
ランサーにはたき落とされた、らしい。
(せめて動物がいいな。うん)
+++
その次に気が付くと、私は鳥だった。
白い腹と茶色い翼、乗っているベランダの手すりとのサイズ感からして、おそらくは雀だろう。小さくて(手のひらサイズ)、(季節によっては)丸くて、ちょこちょこ動くのは可愛らしかろう。しかも小さすぎず、ちゃんと動物。完璧ではないか。
ふふん、と胸を張る。白くてふわふわな羽毛が視界に映った。触り心地も良さそうだ。
「……うわ、開けても逃げねえのか……すげえな……」
来た!誰かって?勿論ランサーである。前々回と同じベランダであることには早々に気付いていたとも。
ランサーは恐る恐る顔だけ出していたが、私が動かないのを見てそっと近寄ってきた。
「おー……雀、だよな……?」
そうだ、雀だ!良いサイズだろう?これならうっかり窓にも挟まらないし、叩き落とされもしないぞ!
ふふん!と更に胸を張る。もふん、と羽毛が空気を含んだ。
「何で逃げねえんだろ。あ、めっちゃ腹減って動けないとか?」
失礼な。私は私の意志でここにいるんだ。
米食うんだっけ?ご飯の方が良いか?などと未だ空腹疑惑に囚われているランサーに、そろそろわかってもらおうと翼を広げる。ばさりと一つ羽ばたいて、ランサーの肩に着地しようとして、
「っあっぶねえ!」
思いっきり避けられた。なんでさ。
肩透かしをくらい―――この場合の「肩」はランサーのものだが―――、床に降り立った私はランサーを見上げて睨み付けた。
「こーら。野生の鳥は人間の匂い付いたらだめなんだぞー」
はっとした。そうだ、以前公園で「あの鳩頑張ったら1羽くらい捕まえられそうな気がする」なんて宣った男に、群れから追い出されて死んでしまうから止めろと教えてやったのは私だった。
いやでもこの私は群れなど無いし、むしろ他の鳥から離れられるならラッキーと言うか、とにかく問題は無いのだけれども。
ちょこちょこ、と短い足で駆け寄ってみる。ランサーは案の定、するりと足元の小鳥を躱すと、
「とりあえず米持ってきてやるからな~」
そう言って無情にも窓を閉めてしまった。
これは、失敗したな。
どうしたものかと右に左に首を傾げる。すると急に辺りが暗くなり、ふと上を見上げれば。
「……」
真っ黒な猫が、じーっとこちらを見ていた。
うん、怖い。本能的にとても怖い。これが被捕食者の気持ちか。猫って大きいんだな。
くぁ、と猫の口が開く。
あ、待ってくれ。いや私を食べるのは止めないのだが。ここでの食事はちょっと。どこか違う場所で噛み砕いてもらえると嬉しい。ベランダを汚すのは気が引けるんだ。良いだろうか。良い?ありがとう。待たせてすまなかった。では、どうぞ。
がぶり。
(人と一緒に過ごせる動物、か……。意外とハードルが高いものだ)
+++
「散歩行くぞ~」
その言葉に私は跳ね起き、玄関まで駆けていった。遅れて現れたランサーに遅い!と言わんばかりにじゃれついて引き剥がされ、今度は大人しくリードを着けられるのを待つ。いや何、少しテンションが上がってしまっただけで私は本来きちんと「待て」が出来るとも。
そう、今度の私は、犬である。
しかも犬種はポメラニアン。これぞまさに、小さくて(小型犬)、丸くて(ふわふわのもふもふ)、犬の中でも可愛いの筆頭とも言えるだろう。今度こそ完璧。間違いない。
私はふふん!と胸を反らして「待て」の姿勢を取る。保ったのはランサーが扉を開くまでであったが。
犬の本能なのか、外を走るのが楽しくて仕方ない。ランサーを引っ張らないギリギリの速度で駆け、いつもの(だと私が認識している)道へ進もうとすると、くいっとリードが引かれた。
「今日はこっち」
そうか、ついでに用事があるのだな。良かろう、お供しよう。
馴染みの無い道をランサーに並んで進む。木漏れ日が落ち掛かる坂道を、随分歩いた気がした。見上げてもランサーの表情は見えない。いつも快活な男が、静かに、ただただ足を動かしている。
不意に視界が開けた。眩しさに目が慣れると、目に入るのはほぼ等間隔に並んだ巨大な石柱。―――違う、私が小さいだけで。これは……墓石だ。
日当たりの良い墓地を、ランサーは慣れた様子ですいすいと進んでいく。後ろ手に持たれたリードに引かれるまま着いていく。ランサーが一つの墓の前で立ち止まったので、私もそれに合わせて墓石を見上げた。
あれ、これは。
「―――なあ、」
久方ぶりにランサーの声がしたのでそちらを振り仰ぐも、ランサーは立ったまま、視線を墓石に注いでいた。
「お前が何考えてんのか、俺にはちっともわかんねえけどよ。俺はお前と生きたかったんだよ。置いていっちまうなんて酷いと思わねえ?なあ、」
アーチャー。
ランサーの、紅い瞳が、いつの間にかこちらを見ていた。
犬を、呼んだのか。でもランサーが知っているはずはない。この犬が、私であることを。
ざわっと、一陣の風が吹き抜ける。ランサーは乱れた髪を気にする素振りもなく、ひたと私を見据えている。
そうだ。私は。違う。ランサー。君と。ともに。私も。けれど。私では。だから。でも。私が。
再びの強い風に、私は思わず目を瞑る。次に目を開けた時、ランサーの視線は既に戻っていて、私も再びその先、眼前の背の高い石を見上げ、そして。
そこに見覚えのありすぎる名前を見つけた。
二十年近く苦楽を共にした、紛うことなき自分の名前を。
+++
パリン、と。何かが割れる。
沈む、沈む。沈んで、落ちて、そのまま―――。
+++
次に気が付くと、私は、白くて平らなものを見ていた。
それが天井で、つまり私は見覚えの無い部屋で横になっている、という事実を認識するまでに随分時間が掛かった。身を起こそうとするも身体に力が入らず、もぞりと身動きが出来たかどうか。はてどうしたものかと回らぬ頭で思案していると、左手がぐっと引っ張られた。ああそういえば、そこだけやたら熱いのだった。
「目、覚めたか」
「……らんさー」
おう、と目を細めた男が、アーチャーの仰向けの視界に入り込んでくる。青い髪がするりと流れ落ちる。ランサーだ。
私が、小さくて丸くて、可愛いものになってでも、一緒に居たかった、ランサー。
「ここ、は?」
「病院。覚えてるか?お前ん家行ったら、お前風呂場でぐったりしててよー。俺が行かなきゃ死んでたぜ」
逆上せただけにしては熱かったから、熱中症までいってると思って救急車を呼んだ、とランサーは言ったが、内容が頭に入ってこない。面倒を掛けてしまったような気はして、ぎゅうと眉根が寄った。すかさずそこをぐりぐりと押し伸ばされ、気にすんな、と柔い声音が降ってくる。ランサー。ランサー。
「夢……を、見たんだ」
ぐりぐりが止まる。困惑しているだけかもしれないが、止められないのを良いことにまた口を開いた。
「小さくて、丸いものになる夢」
「小さくて、丸……?」
「君が、可愛いって」
大学の中庭で、と言えば、あぁあ~?と、わかったようなわからないような返事。
「……んで、どうなったんだ」
「何になっても、一緒にはいられなかったな。ポメラニアンは、悪くなかったが」
ふふ、と笑いが漏れる。結局何になったところで、私はランサーとはともに在れないと、そんなわかりきったことを突き付けられた、夢だった。
ああでも最後は、少し違ったかもしれない。夢と認識した途端に薄れていく記憶を手繰り寄せようとするも頭が回らず、さらさらと流れ行く砂が零れるのをただ眺めるような気持ちでぼうっとしていると、くしゃりと前髪がかき混ぜられた。
「まーたお前はそういう、余計なことばっか考えやがって」
余計とはなんだ失礼な。私は君のことを思ってだな。
浮かんだ言葉は、髪を梳く指の温さと柔らかい視線によって胸の内に留まることを余儀なくされる。代わりにうぅ、と唸ってやれば、何故だか奴はくつりと笑いを溢した。
その間も左手は捕らわれたままで、そういえばランサーはどれだけここにいるのだろう、と今更な疑問が浮かぶ。
そのままを問えば丸一日との返事に気が遠くなりかけた。
「講義があっただろう……」
「お前と講義が天秤に掛かるかよ。こういう時のために日頃真面目に出席してんだ」
それは違うと言いたかったが音にはならない。胸を占めるのは、罪悪感と、申し訳無さと、―――常に感じている、分不相応さ。
「だめだ……だめなんだ、ランサー。私は、何もない。空っぽで、君の隣に居ても、君に何の益ももたらせない」
口から思考が流れ出る。ランサーは静かだ。
「何故君が私を望んでくれるのか、私には未だにわからない。だからせめて、君が好ましいと思う姿だったら、傍にいても良いと思ったんだ」
じわりと世界が滲んだ気がして目を閉じる。こんな見苦しいものを、ランサーの視界に入れたくなかった。いっそこのまま黙って出ていってくれれば良い。そんな私の淡い期待はやはり叶わず、ランサーは私の左手を持ち上げると、両手でゆるりと撫で回した。
「お前さあ、あんな一言は拾っちまうくせに、俺が散々アピールしてきたのは伝わんねえの」
伝わっている、と思う。だから、困っている。
「いーや、わかってねえな。ちゃんとには理解できてねえ」
……心の声を読むな。
「可愛いものは良い。美人だって嫌いじゃねえさ。でもそういうのと全然別のところで、俺はアーチャーが良いんだよ。大体さ。お前の隣に居たいと思って、でも友達や親友じゃ我慢できなくて。お前にとっての唯一無二になりたいから、恋人って名前を付けさせてくれって請うたのは、俺じゃねえか」
ちゅ、と手の甲でリップ音がして、知らしめるように親指がその場所を撫でる。
知っている。知っているとも。だから、困っている。
「だからさ、俺の隣は可愛い何かじゃなくて、アーチャーがいいの。アーチャーでなきゃ、俺はイヤなの」
きゅっと、左手を握る力が強まる。同じだけの力でもって、心臓が締め付けられる。
「しかし、私には……」
「じゃあアーチャーは、何で俺と一緒に居たいわけ?」
「えっ」
何故バレた。
「俺が好きなものになってでも、俺のそばにいたかったんだろ?夢は願望の表れって言うし」
しまった。何も考えず口に出しすぎた。これじゃ私が、ランサーのことを―――。
「俺と一緒に居ると有益だからか?自分で言うのも何だが、目立つから勝手に人は集まってくるし、集客とか人脈とかには役立つかもな。金があるから?実家のだけど、お前に頼まれりゃ出てくるだろ。あとはまあ、見目が良いから連れて歩きたいって言われたこともあるが―――」
「っ違う!」
羞恥で熱を持ちかけた顔から、一瞬で血の気が引いた。勢い良く身を起こそうとして、まともに動かない身体をランサーに宥められる。
「知ってる。アーチャーがそんな奴じゃねえって。でもさ、さっきお前、俺に似たようなこと言ったんだぜ?」
「あ……」
そんなつもりはなかった。私は、いつもたくさんもらっているから、何かを返したくて、でも返せるものがなくて―――もらっている、もの、とは。
はたと瞬きをした私に、ランサーが顔を近付けた。視線を絡ませてから、ゆっくりと額同士がぶつかる。近すぎてぼやける前に認識できた顔は、緩く紅を撓ませて笑っていた。
「まあ、お前のそういう面倒くせえとこは直るようなもんじゃねえし、なんならそれも引っくるめて俺の好きなアーチャーだと思ってる。―――なあ、俺はさ。ちっこくて丸くてかわいい何かより、でっかくってごつくて可愛げのねえアーチャーがいいんだよ」
「……そう、か」
いつもの快活な笑い声からはかけ離れた、落ち着いた声音で囁かれた言葉は、余計な思考を素通りして、アーチャーの柔らかい部分に染み込んでいった。
完全に納得はできなかったけれど。だってやっぱりランサーの隣には、同じくらいきらびやかで、見目の良いものが相応しいと思ってしまう。
それでも。ランサーが望むのなら、そういうこともあるのかもしれない、くらいには、思っても赦されるような気がした。
ぐりぐりと額が擦り合わせられる。ランサーの前髪が下りてきて、擽ったさに目を閉じた。なあ、とランサーが呼ぶ声は相変わらず優しくて、溶かされてしまいそうで。
「俺は、お前と生きたいんだよ。アーチャー」
言ったろ?
そう、聞いた。あれは確か、ランサーと2人で、やたらと背の高いものに囲まれていて、ランサーの顔も、すごく高いところにあって、私は―――。
急激に目蓋が重くなる。私はそのまま、再びの眠りに落ちていった。
完