寝起きが悪い弓さんのお話
アニメ始まりましたね、とりあえず生きています(震)
あ、あと今度夏に人魚パロな槍弓本を出そうと思ってます…よろしければアンケートにご協力お願いします…|ω・`)
***
アンケートご協力ありがとうございました!
- 1,322
- 1,383
- 23,748
アーチャーは寝起きが最悪だ。
「おい、アーチャー起きろ。朝だぞ?」
「ん…」
カーテンから朝日が零れる。時計の針は8を指していた。
今日は嬢ちゃんに頼まれていることがあるから、と起こすのを頼まれていたのだ。
なのに。
返事をしたにも関わらず、もぞもぞと布団の中に潜っていく。
そしてそのまますうっと寝息が聞こえてきた。
「っおい!起きろ!今日は用事があるんだろ!?」
叫びながら布団をはぎ取る。
すると
「んぅ…」
と不満げな声とともに不機嫌な顔をしながら渋々と起き上がりはじめた。
そのままペタペタと廊下へ向かう。
眼はまだ寝ぼけているのか、とろんとしたままだ。
「どんだけ寝起き最悪なんだよ…いつもいつも…」
そう、いつもなのだ。
ランサーとアーチャーは恋仲である。
そのため、一緒に夜を過ごすことも少なくない。むしろ、嬢ちゃんにガンドを撃たれるレベルで多い。
そして次の朝起きる時に、必ずぐずるのだ。
いつもは皮肉たっぷりで憎たらしいあいつが、子供のようにムッとしてるのが可愛くないと言えば嘘になる。寝起きが悪いくらいならまだ我慢できる。
問題はそこではない。
はぁーっとため息をつきながら台所へ向かうと。
トントン、と包丁の音が響く。
慣れた手つきで切った具材を鍋へ投入する褐色の手。
しかし、首はカクン、と時々揺れている。
頭を悩ませる問題とは、寝ぼけながら朝食を作ることなのだ。
最初はやめろ、俺が作ると訴えたのだが、ガンとして譲らなかった。暫く言っているうちに諦め、そのまま放置している。
そのため、いつもハラハラしながらこの様子を眺めるしかない。
手際はいいのだが、明らかに寝ぼけているのだ。
目はぼーっとして焦点が合ってないし、たまにふらついてすらいる。
この前は1度、料理を真っ黒焦げにして黒煙をあげたことがあった。
その時は無理矢理アーチャーを座らせて代わりに朝食を作った覚えがある。
「何でここまで朝食にこだわるかねぇ…」
思わずそう呟いた時。
サクッという音と共に、アーチャーの指から血が溢れた。
「!?っおい!!」
アーチャーの元に行き、その手を掴む。
結構深くいったのか、血は止まらず指がパックリ切れていた。
「アーチャー、大丈夫か!?」
焦ってアーチャーの様子を伺う。
当のアーチャーというと。
「…いたい」
まだ寝ぼけているのか、ちょっと眉間に皺を寄せてそう言っただけだった。
思わずイラっとして頬を軽くつねる。
「お前はよー、いい加減起きろよ…」
このままにしておくわけにもいかず、とりあえず包丁を置かせて救急箱と共に座らせる。
いやいや、と首を振って抵抗したが無理矢理引きずって座らせた。
筋力B舐めんな。
「えーと、どうすりゃいいんだ…?」
とりあえずガーゼを当てて止血ついでに包帯でぐるぐる巻きにする。
まだぼへっとしてる奴に軽く尊敬を覚えながら、アーチャーの腕を引っ張り立たせた。
「おら、もう寝てろ。これ以上は本当に勘弁してくれ…」
そのまま寝室へ引きずるように連れて行く。
後ろでは首をふるふると振りながら抵抗しているが、筋力差的に効果なしだ。
寝室についてぼふり、とベッドの上へ寝かしつける。
「やだ、まだつくってない…」
ぶすっとした顔でそう呟くアーチャーの目は未だとろん、と蕩けたままだ。
その言葉に思わずキレかけて
「だから、何でそんな朝食に拘るんだよ!?」
と叫ぶ。
すると、急な大声にびっくりしたのか、身体をビクッとさせながら、
「だって…らんさー、よろこぶから…ごはんつくると…」
と大変可愛らしい返事が返ってきて、脱力する。なんだこの嫁。
怒る気も失せて、起き上がろうとするアーチャーの肩を押しながら片手で頬をスルリ、と撫でた。
すると、暖かい体温が気持ちいいのかスリ、と擦り寄ってくる。
何でこいつこんな無防備なんだよ、いつもの警戒心は何処だ!?
ムラッときてこのまま抱きたい衝動に駆られるが、ここは我慢だ。
顔を近づけ、額と首にチュッと軽いキスを落とす。
「あー…俺だって、たまにはお前に何か作りたいんだよ。だから今日は寝てろ、な?」
そう言いながら頭をぽん、と撫でる。撫でたことで下ろされた前髪が更にあどけなさを強調させた。
そこでようやく力尽きたのかふっと目を閉じて寝息が聞こえはじめる。
すぅ、すぅという音とともにランサーはそこに座り込んだ。
「あー…なんだこいつ、かわいすぎだろ…」
片手で頭を押さえる。ここまで破壊力があるとは。
とりあえず今は朝食の準備だな、うん。
アーチャーを襲いたい衝動を堪えながら立ち上がる。
去り際に額にもうひとつ、キスを落とし、朝食の準備に取りかかった。
「ん…?」
柔らかいベッドの感触にゆるりと瞼が開く。
カーテンから差し込む光はいつもより眩しい。それと。
「らんさー…?」
いつも、隣にいる男がいない。
(何故、いつも、起きると、隣に、)
『おい、起きろよ。朝だぜ?』
そう、あまやかな声で起こしてくれるのに。
ドクン、ドクン。身体から変な汗が出る。
彼と共に寝ると、いつも起きれない。本来ならば良くないことなのだが。いつもより深い眠りについてしまうのだ。
彼も最初は呆れていたが、最近は慣れたようだ。しかし。そんな彼の好意に甘えすぎていたのか、ついに呆れたのか。
焦って布団を捲り上げる。すると、指にじくりとした痛みが襲ってきた。
「は…?」
なんだ、この包帯。身に覚えがない傷に頭が混乱する。
いつ、何処でこんな傷あったか。いや、昨日の夜までは無かった筈ー。
「お、起きたか」
カタン、という音と共にエプロンを付けたランサーが寝室に入ってくる…エプロン?
「なっ、ら、さ…」
混乱した頭から途切れ途切れの声が溢れる。どういう状況なんだ、これは。
「おーおー、だいぶテンパってんな」
ぐるぐるした頭でそう思っていると。クッと喉を鳴らしてランサーがこちらを見ていた。
その瞳は苦笑してるのに何処か甘さを含んでいて。
思わず目線を包帯のほうへ向けてしまう。
「お前、飯作ってる時に怪我したんだよ。だから、寝かせて俺が今日の飯作ってたんだ」
ランサーの言葉にビクリ、とした。怪我、した?しかもランサーがつくった、だって?
思わぬ事実にチラリとエプロンを付けた男のほうを見る。
すると、にやりと笑って。
「お前、俺が喜ぶから毎回朝飯寝ぼけながら作ってたんだって?」
衝撃的な言葉を投下した。
「はぁっ!?」
何故、それは、密かに感じていて、言葉にしたことなんて無い筈なのに!
顔を上げて反論しようとするがはくはくと口を開閉することしか出来ない。
にやにやと目の前の男の笑みが深くなる。顔が熱くなってく感覚を覚えていると、スタスタと足音が近づいてきた。
「ぁ、ランサー…その、だな…」
否定しようと言葉を紡ごうとしてもうまくいかない。
ギシリ、とベッドのスプリングが音を立てる。ランサーが片足を乗せたのだ、と気づいた時には左腕を取られていた。
「……?」
相手の行動が分からず不審な顔で見ていると。
チュッ。
包帯の上に、唇を落とされた。
「〜〜っっ!!」
声にならない悲鳴のようなものが口から零れる。ランサーは何が楽しいのか、何度もそこにキスをしていた。
「っランサー!」
叫ぶように名前を呼ぶ。すると、最後に手首にかぷり、と甘噛みして。
「俺もお前を甘やかしたいんだよ。だから、素直に甘えてろ」
そう、ふっと艶めいた声で言うものだから。
かぁ、と一気に顔が赤くなるのがわかる。思わず、チッと舌を打つと。
じゃ、早く来いよー、と先ほどの艶は何処へやら。軽い口調でそう宣って寝室を出て行った。
「…あぁ、くそっ…」
反則だろう、あれは。あの狗め。
ブツブツと文句を言いながらベッドから降りる。
じくじくと痛む傷は心地よい熱を帯びたような気がした。
〜数日後〜
「なぁ、あいつの寝起きの悪さどうにかなんねぇか?」
ランサーは、凛に相談することにした。
可愛らしいアーチャーの気遣いは嬉しいが、何度も怪我をしたら、とこっちがハラハラしっぱなしだ。
せめて何か対策があれば、ということで考えた結果だった。
するとその言葉にきょとん、としながら
「アーチャーは寝起きはかなりいいほうよ?いつも私が起きると紅茶淹れてるし、からかってきたりもするもの」
爆弾発言が返ってきた。
「はぁぁ!?」
驚きで思わず叫んでしまう。だって、起こさないと起きない奴がだぞ!?
「衛宮邸に泊まったときも1番に起きてたのはアーチャーだし…それに、寝てるときに近づくとすぐ起きるから寝起きは悪いどころかかなりいいほうよ」
自分の知ってるアーチャーと違いすぎると同時に、あそこまで無防備に寝てるのが自分の前だけだ、と知ってにやけが止まらなくなる。
なんだあいつ、かわいすぎるだろ。
緩む頬を隠さず、今日帰ってきたらどうしてやろうか、と訝しげに此方を見てくる凛の視線を浴びながら可愛い嫁を思い出していた。とにかく、怪我の対策はしなければ。