在日ムスリムが直面する“埋葬困難” ──「土葬」を受け入れる寺院もあれば建設計画頓挫も #日本社会と外国人
「埋葬」をめぐる波紋が、日本各地で広がっている。現在の日本では火葬して墓に納骨するのが一般的だが、外国の文化は必ずしもそうではない。約40万人が日本に住むイスラム教徒の場合、ほとんどが「土葬」を希望する。在留外国人数が過去最高となるなか、「死」の現場で何が起きているのか。現場を歩いた。(文・写真:益田美樹/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
日本に暮らして20年 最期の願い
「この場所がいい」 50代後半でがんの闘病を続けていたイスラム教徒のアリ・レザさん(仮名)は土地を見た瞬間、そう口にしたという。今から30年ほど前のことだが、その日のことを妻の恵子さん(仮名)はよく覚えている。自分の埋葬地を探すため、自宅のある首都圏から山梨県へ。ようやく夫婦で心を固めた場所だった。 恵子さんは日本生まれの日本育ち。結婚を機に改宗し、人生の半分以上をムスリム(イスラム教の信徒)として過ごしている。
「夫は物事を正確に進める日本人の気質に共感し、この社会が大好きだった。真面目に仕事し、社会の一員として暮らしていました。最期の夫の願いをかなえてやりたいと思いました」 イスラム教では遺体を大切に扱うよう教えられ、火葬は不敬に当たるため土葬が一般的だ。およそ20年にわたって日本で暮らしてきた夫も、土葬を望んでいた。しかし、日本で土葬用地は多くなかった。 そうしたなか、夫妻は山梨県甲州市にある曹洞宗の寺院「文殊院」にたどり着く。恵子さんによると、知人の外国人ムスリム女性がその何年も前に幼い子どもを日本で亡くした時、土葬を受け入れてくれたのが文殊院だった。恵子さんは、ムスリム女性の事情に丁寧に耳を傾ける文殊院の姿勢に感銘を受けたという。
夫の意思を確認した恵子さんは早速、寺側に直談判した。そして了解をもらい、いずれ必要になる恵子さんの分も含めて2区画を購入した。そのうちの1区画には今、2002年に亡くなった夫が眠る。 実は、寺の墓地の隣には、日本ムスリム協会(柏原良英会長)が管理・所有する「イスラーム霊園」が別にある。 恵子さんの夫が眠る区画は文殊院側の墓地にあり、そこでは仏教徒とムスリムが混在して眠っている。夫妻があえて文殊院側の墓地を選んだのは、眺望の良さに加え、住職らの人柄に心惹かれたからだという。